2015/07/17 のログ
■ワン・W・D > 「まあなに、物騒な呼び名では場所を選ぶ、それだけだ気にするな」
そう愉快そうに笑みを浮かべたまま煙草を咥えてポケットに手を入れて背を向ける。
「次で初めましてしようや、マー君」
そう言って男は路地裏を後にする。
男のいた場所に残るのは臭い煙草の煙の臭いだけになるだろう。
ご案内:「路地裏」からワン・W・Dさんが去りました。
■ライガ > 「ウェッホ、ウェッホ、け、煙たい」
なんか、どうもからかわれている気がする。
煙草の煙に少々むせる。
「さて、この件は……
『路地裏で死体を発見、状況からするに殺害されてから時間はそれほど経っていないようだ。
身元は二級学生と思われ、死体遺棄と殺人で調査を依頼する。』
で、いいか。劇場とは関係なさそうだし、この辺は風紀あたりかなあ」
とりあえずは人を呼ぼう、諸々はそれからだ。
ご案内:「路地裏」からライガさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に惨月白露さんが現れました。
■惨月白露 > 落第街の路地裏で、男に向けて銃を構える。
違反部活の一つ、その末端の男だ。
「あーあー、お前もついてねえなぁ、同情するぜ?」
クックと笑うと、短く数回、銃声が響く。
「ったく、銃ってのは使うやつの気がしれねぇな。
リロードっての?するの、めんどくさくってさ。」
にっと口元を笑顔に染めてその作業を終えると、
逃げ出そうとしたその男に銃口を向け、同じく数度撃つ。
その場に崩れ落ちた男は、やがて、赤い血だまりの上で動かなくなった。
「はい、ミッションコンプリート。」
その場に銃をポンと捨てると、嵌めていた手袋を外す。
今日の依頼は『この銃』で『この組織』の人間を殺す事。
「ま、それで何やろうとしてんのかは知ったこっちゃねーけどな、
頼まれたらやらねーといけねぇのが『二級学生』の辛い所だ。
―――お前らにもわかるだろ?」
くるりと踵を返すと、路地裏をゆっくりと歩き出す。
ご案内:「路地裏」に湖城惣一さんが現れました。
■惨月白露 > 話によると、どこかの『公安委員会』の人間が殺されて、
そして、それを引き金にとある違反部活に、
公安風紀の合同調査が行われるらしい。
「……ああ、俺だ、頼まれごとは終わったぜ。
―――ッチ、誰にも見つかってねぇよ。今何時だと思ってやがる。」
だが、それは『公安委員会の人間』が死んだ場合の話だ、
IDを持ってない人間が紙くずのように死んで行こうが、
公安委員会も風紀委員会も、動いたりはしないし、
当然、それが墓地に葬られる事も無いし、
誰も葬式はあげちゃくれないし、墓参りに来る奴も居ない。
「―――で、次は何だ。
そろそろ、帰って、温かーいココアを飲みながら、
テレビドラマをBGMに宿題でもやりたいんだけどな。」
人の命の価値っていうのは、結局、そいつが持ってる
『技術』と『立場』の価値だ、どっちも持ってなければ、
そいつの命なんて紙切れ同然、俺には幸い、『技術』があった、
だからこうして、この落第街で生きていけてる。
「OK、じゃ、二度とかかってこない事を祈ってるよ、クソが。」
電話を切ると、舌打ちする。
そろそろいい時間だ、健全な学生が居ていい時間じゃない、
学生街のほうに戻ろうか、そう考えつつ、
噛んでいたガムをぷくーと膨らませた。
パチンと弾ける音が、暗い路地裏に響く。
■湖城惣一 > 猥雑な香りの漂う路地裏。酒。煙草。吐瀉物。そして、血。
それらが混ざり合ったような掃き溜めの中、平然と握り飯をかじる一人の男。
ここへ足を運んだのは意味はない。
時折こうして気まぐれに落第街を歩きまわるのは習慣の一つだ。
だからこそ、ここで行われる二級学生の命のやりとりなど見慣れていたが――。
「……む」
足音もなく、気配もなく。ゆっくりと歩んでいた湖城惣一の聴覚が、誰かのやりとりをとらえた。
誰か。いや、聞き覚えのある声だ。ここで顔を出せば面倒事になる可能性も高かったが――。
いや。
少しだけ気になった。もとより、面倒事に巻き込まれるということ自体に無頓着な男だった。
だからこそ、ゆっくりと脚を進め。
「やはり君か」
パチン、という音とともに。彼の草履が地面を踏みしめる音が響いた。
■惨月白露 > 「あ゛?」
かけられる声に振り向くと、見知った顔がある。
確か前に委員会街でカツアゲしてた時に声をかけて来た奴だ、
ハァ、とため息をつくと、不機嫌そうに答える。
「あー、いつかの素敵な腹筋のおにーさんじゃん、久しぶり、元気?」
口元に笑顔を浮かべ、ひらひらと手を振る。
■湖城惣一 > 暗がりの曖昧な輪郭から、ようやくはっきりとしたものに置き換わる。
朱塗りの大太刀。いや、軍刀か。随分と珍しい得物だ。
どこかで見覚えがあったような思いに駆られ、ふと、思案しながらも。
不機嫌そうな笑みで問いかけられれば、いつも通りの無表情で、
「それなりにな」
と、答える。相手の瞳を見つめるようなまっすぐな視線。
聞こえてきた会話。そして香る血風。そこから類推するに、
「君も相変わらず、といったところか」
とくに責めるニュアンスもないし、剣を抜こうとする所作もない。
世間話のように言葉を返した。
■惨月白露 > 「ま、『元気ハツラツ』って帰って来ても困るけどさ。」
何気なしにガムを膨らませつつ答える、
ふと、視線を動かすと彼の無表情な顔が目に入った。
「相変わらずの仏教面だな、あんた。
誰かの葬式ってわけじゃねぇんだから、もっと笑えよ。」
はぁ、とため息をつく、
ポーカーフェイスっていうのはなんとなくやり辛い、
刀に手をかけつつ、やれやれと首を振った。
「人の生き方なんてのはそう簡単に変わるものじゃねぇよ。
宝くじで3億円でもあたりゃ話は別だけどな。」
鼻で笑うと、再びぷくーとガムを膨らませる。
「で、こんな所に何の用だ?
『路地裏に迷い込んだ蚊も殺せないような美少女』を、
外までご案内でもしてくれるのか?」
ケラケラと笑いながら、立ち止まってた足を動かし始める。
宿題も残ってるし、話題を合わせるために見ないといけない話題のテレビドラマもある。
『どっちもやらないといけないのが二級学生の辛い所だな』と思いながら、
その暗い路地裏にゆっくりとした足音を響かせ始めた。
■湖城惣一 > 「…………む」
口元を少し抑えた。無表情は気にしてはいないところだが、
これで気分を害する相手も居るはずで。
「……こうか?」
やや、頬をひきつらせるようにしながら、頬を指で少し伸ばして無理な笑顔を作った。
時折、わずかに笑みをこぼすこともあるものだが本人にその自覚はない。
少なくとも今は、明らかに無理のある引きつった顔を見せただけだ。
一つ、咳払いをして気を取り直す。
腕を戻して向き直り。
「確かに。ここでの暮らしなどそう変えられるものじゃないな」
二級学生。落第街。それだけで随分と世界は変わる。
ここに滞在するためには多くの代償を支払う必要があるはずだ。
それに同情しているわけでもない。ただ、"そういうものだ"と思っている故に。
目の前の彼が行なっている行為も、わざわざ咎めるほどでもない。
だから、
「……別に構いやしないが。君は表向き、それを振るうのが不都合なのだろう?」
ゆっくりと惨月の後を追い始める。ともすれば、背後を狙うような位置関係でもある。
だが、それはむしろ軍刀の保持の仕方から類推される死角をカバーするような位置だった。
「しかし。……帰り道に付き添う相手の名前も知らんのはおかしい話だ。
君の名前は?」
その背に問うた。
■惨月白露 > 「ははっ、相変わらず面白いやつだな、お前は。
いや、別に無理して笑えって話じゃねーよ、悪かったな。」
手をあげ、ちょいちょいと指先を動かしてもういいよ、という意を表明する。
男のひきつった顔なんて見ても何の足しにもなりゃしない。
「そういうこった、生活なんてそう変わるもんじゃない、
たかだか数人死ぬだけでも暮らしが変わる一般学生と違ってな。」
彼に問われれば、コツコツと刀を叩いた。
「ま、ここは『夜のベッドの中』だ、
隠し立てせずに丸裸で踊ってもなんの問題もねぇよ。
それに、別に無力な女子学生で居続けないといけないって事もねぇしな、
暴漢に襲われたら抵抗くらいするさ、一般女子生徒としては、暴漢は怖いからな。」
「……でもな、一応、正式に『審査』に通るように努力はしてるんだ、
『素行に問題が無ければ』とか、どうせ無理な話だけどな。」
『素行に問題が無いような『二級学生』は、ただ死ぬだけだ。』
そう、小さく笑みを漏らし、彼の質問にその耳を揺らす。
「名前?ま、『シロちゃん』とでも呼んでくれ。
本名なんて聞いても意味ないのは分かってるだろ。」
■湖城惣一 > 笑みはどうやら、功を奏したらしい。
それだけは安堵しながらゆっくりと歩んでいく。
猥雑な香りの漂う路地裏。酒。煙草。吐瀉物。そして、血。
ここではほとんどのことが容認される。
むしろ、やってくる一般生徒の方が悪い、とすらされることもある。
つまり夜のベッドの中。……。
「夜のベッドの中?」
その比喩表現が分からず、思わず聞き返してから。
――続く言葉。
審査。素行に問題がなければ。
それを聞いて、顎を撫でる。
見立てさえ間違っていなければ、彼女、いや彼は思ったほど――。
「ふむ、シロちゃん。俺と斬り結ぶ気はないか」
思案の末、その言葉を差し出した。
■惨月白露 > 「そういや、そういうのとはつくづく縁が無いやつだったな。
いや悪かった、忘れてくれ。」
はぁ、とため息をつく。
下品な冗談は、どうやらこいつには無意味らしい。
言うなら、もう少しハイソな冗談を考えたほうがよさそうだ。
「あ゛?前にドヤ顔で『無意味に剣は振るわねぇ』
―――って言ったばかりだろ、センパイ。
そもそも、そいつはどういう意味で言ってるんだよ。」
眉を顰め、彼を睨みつける。
いつでも刀を抜けるように構えつつ、言葉を繋いだ。
「俺に『二級学生』で憂さ晴らしをするような連中と同じように、
理不尽な暴力振るうって意味で言ってるならそりゃ悪いけどブチ殺すし、
一介の『剣士』として死合を申し込むってなら、
俺もそっちの剣には興味はあるし、喜んで相手にもなるけどな、
特に意味も無く戦ったりはしねぇよ、刀の手入れ代だってタダじゃねぇんだ。」
■湖城惣一 > 「…………」
そこでようやくその言葉に気づき、思わず目頭を抑えた。
何を想像したのか、大きく息を吐いて。
明らかな隙のようにも見えたが、構えに移行する"シロちゃん"の動きは男の意識が追っていた。
だがそれでも竹刀袋の紐はまだ緩めていない。
「今のが喧嘩を売っているように聞こえたのなら、それを詫びよう」
脚を止め、息を少しだけ吸ってから。その瞳を正面から見つめ返す。
「最初に名乗っただろう。風紀・公安委員会、嘱託委員……湖城惣一と」
ゆっくりと、実にゆっくりとした所作で紐を解いていく。
「俺の立ち位置は特殊でな。常世財閥に"依頼"されて学生をやっている」
竹刀袋から現れたのは脇差しだ。
妖刀でも、見る者の目を奪う名刀でも、霊刀の類ですらない。
無銘の、他のものよりは優れたただのもの。
生憎とそれと対になる打刀はある男とのやりとりで毀れてしまった。
しかしながら、何の変哲も無いこの刀で。男はあらゆる怪異を切って捨てた退魔業だ。
「俺の仕事はカウンターだ。風紀でも公安でも手の付けられない怪異、異能者。
それの発生に際し、速やかに切って捨て捕縛する。それが仕事だ」
脇差しを露出させてから、懐に手を差し入れる。現れたのは小さな短刀。
いずれも構えることなく、ただそちらに見せるようにして語りかける姿勢だ。
「もし君が本気の俺と正面から相対し、十分の間、耐えることができたなら。
……君を俺の相棒として、常世財閥に打診してみようと思うのだがどうだろうか」
■惨月白露 > 「ああ、そいつは素敵な提案だな、ああ、素敵な提案だろうさ。
湖城センパイのそのチンケな一物を10分間受け止めるだけで、
この町とはおさらば出来るなんてな。」
だが、その言葉とは対照的に構えを解いて、
飽きれたようにため息をつく。
「だけどな、湖城センパイ、
もう少し立場ってものを考えたほうがいいぜ、
特殊な立場だかなんだか知らねぇけど、そういう立場なら猶更だ。」
短刀には興味すら向けず、彼の顔を覗き込むように答える
「―――いいか、湖城センパイ、
お前が何を考えて俺を誘ったのか知らないけどな、
俺は『犯罪者』で、お前は『警察』だ。
『やってる事を見逃す』ってだけならともかくな、
その何してるかもわかったもんじゃない『犯罪者』を
『相棒』として申請するってアホか。」
「センパイ、『二級学生』ってのはな『黙認』されてるんだよ、
いや、認められてすらいない、
存在しない事になってるから『無視』されてる。それだけだ。」
はぁ、とため息をつく、
ま、真面目なこいつの事だ、
善意か何かで誘ったんだろうが。
「『嘱託委員』にどんだけの権限があるのかは知らないけどな、
その『嘱託委員』ってのは、
個人の一存で『二級学生』を『一般学生』に出来るほどの権限があるものなのか?
―――正直、俺はそうは思えないけどな。」
「で、それでどうなるかっていうのはな、
俺は『二級学生』である事がバレてID剥奪、
今の『表向き真面目な学生』って生活は水の泡、
で、またその生活を取り戻す為に地獄のような日々に逆戻りだ。
しかも、お前はそんなわけのわからん『犯罪者』を
相棒に誘った疑いがかかって立場が悪くなる。」
やれやれと首を振り、離れる。
「―――お互いに損しかねぇよ。
ま、金は払うから仕事を手伝えって言うなら手伝うし、
その依頼をするのに信頼たるか、
ってテストとしてやりたいなら好きにすりゃいい。
『二級学生』である以上、何かと入用になるからな、
金はいくらあっても困らない。」
■湖城惣一 > 「…………ふむ」
目の前に彼の言い分。それは実に尤もな話と言える。
その言葉は誠実で、性根から否定されるほどのものではない。
口だけの約束ではとうてい信じられまい。
「一つ、訂正すると」
だからゆっくりと、伝えたいことは伝えていく。
慎重に、自分の言葉を吟味して。
毎度男は誰かとの会話で誤解を生むことがある。
「『嘱託委員』にそういった権力はない。あるのは公安・風紀と同程度の権限だ」
そして、公安・風紀委員会ではそんな権限は――無い、とも言い切れないが。
かの組織は何かと様々なやりとりがなされている。司法取引のひとつやふたつ、無いわけではない。
「が」
嘱託委員個人に権限はない。つまり。
「俺が交渉するのは、常世学園でも風紀委員会でもない。常世財閥そのものだ。
嘱託委員……という立場に力は無くとも、俺個人には財閥そのものと交渉する程度の力はある」
結局のところ、それは裏取引のようなものだ。
だが少なくとも常世財団からの"通達"であるならば、それは強い力をもって働くだろう。
湖城惣一の実力は財閥も認めるところだ。
だが、皮肉なことに、湖城惣一はこの場所で一度敗北を経験している。
それは様々な出来事が折り重なってのことであったが、それでも"万一"を恐れるのは世の常である。
戦力の増強にあたり、腕の立つ使い手が居ないかという打診も受けたこともある。
つまりは条件が揃っている、というわけであった。
無論それは"シロちゃん"の実力次第でもあるわけだが。
彼の立ち振舞は、少なくともただのちんぴらでないと判断するに十二分な代物であった。
「俺が、本業として彼らと一席打つだけだ。生徒会も風紀委員も介さない。
俺とやり合うだけの力があるならば、"無視"程度で済ませている二級学生を、一般学生に引き上げるくらい喜んでするだろうよ」
この落第街という場所は、自由なそうでいて重苦しい。
それぞれの思惑が絡み合い、出過ぎた杭は叩かれる。
「君がこれまで何をしてきたかは知らないが……
少なくとも先ほどの笑みは信用できるように思った。
君は、今まで一度もこの俺を利用しようとはしていないしな」
最初の出会いこそ騙し合いであったが、それ以降は至ってシンプルだ。
こちらの立場や、あるいは戦力を推し量ってかもしれないが、
それでも相手の態度には真摯さを感じた。
騙されやすい莫迦故に、この観察眼が外れていたならば、一方的に莫迦を見る取引であったろうが。
■惨月白露 > 「なるほど、ま、公安やら風紀やらを介さないっていうなら、
その『交渉』ってやつを試してみるくらいいいんじゃねーの?
それなら、少なくとも俺にはリスクらしいリスクは無いからな。」
はぁ、とため息をつく。
「でもな、二級学生を『いないもの』として扱ってるのは、
その『常世財団』だ、もちろん、落第街について黙ってるのもな。」
「お前に相棒が必要だってそれだけの話なら、
『一般学生』に引き上げる必要もねぇだろ?
何しろ、俺は少なくとも世間的には、いや、
二級学生の存在を認めてない常世財団的には『一般学生』だからな。
―――ま、ソレを報酬として餌にしてくる、くらいはしてくるだろうが。」
『ま、あまり期待はしないでおくよ』と首を振ると、
再び刀に手を添え、構えを取った。
「じゃ、さっさとやろうぜ。
リスクが無いってならやるだけの価値はあるしな、
宝くじは買わないと当たらねぇし、
俺がその宝くじを買えるかどうかすらまだ決まっちゃいないんだ。」
■湖城惣一 > 「もし君が常世財閥にとって真に居ないものとして扱われているなら。
そこで交渉するのが俺の役目だ。
財閥が君に思うところがないならば、勧誘条件としては安いぐらいだろう」
そう言いながら短刀を抜き放つ。これは構えではなく、ただの儀式。
ひと、ふた、み、よ、いつ、むゆ、なな、や。ここのたり。
口中で文言を唱えながら湖城の腹が真一文字に切り裂かれていく。
切腹奉納。死に果てるその時まで、湖城という男が"神域"に潜る道を作る神の加護。
腹部から赤が溢れるかわりに淡い光が立ち上る。
「無論。……その宝くじをつかめるかどうかは、君次第だ」
処置が間に合わずに死に至るまで、およそ15分と少し。
その間にあらゆる危難を切って捨てる剣客。
それが湖城惣一という男である。
「制限時間は10分。あるいは俺を"失血死"の直前まで追い込めれば十二分の成果だろう」
言いながら、脇差しを抜き放つ。
「そちらを殺すことはしないが、君も俺にトドメを刺さずにいてくれると助かる」
まるで当然のように。戦いに命を載せて。
殺意無く、敵意無く。あらゆる意の消えた踏み込みで相手の懐に潜り込む。
■惨月白露 > 「おいおい、ここでやるのかよ。」
やれやれと首を振った、とはいえ、
目の前の男はもう刀を抜き、眼前に迫っている。
その重傷で、落第街で剣を交える事の意味を理解してないのか、
はたまた、理解した上で、その血の匂いに誘われて人食い鮫が現れても
倒せるだけの自信があるんだろうか、
そんな相手に10分耐えるってのは辛いだろうなと頭の隅で考えつつ、
彼の発言に口元を歪めた。
「へぇ、お互いトドメを刺さない、ね、『耐える』だけでいいんだろ?
守りに徹したほうが楽だってのに、わざわざ攻めにはいかねーよ。」
懐に潜り込まれれば、その鼻先が彼と突き合わされる。
「殺されないのが分ってるなら、
特に何もせずに10分待つだけでもゲームクリアだ。
――ほら、存分に刺せよ。殺さない程度にな。」
絶体絶命の危機でも、挑発するように彼は笑う。
■湖城惣一 > ――沈む。沈む。
抱えていける意識は一つだけ。相手を殺さない程度に切り伏せる。
いつも通りだ。治療程度ならいくらでも。
死にさえしなければ、再生治療程度金を払えば時間次第で問題はない。
湖城惣一という男は、容赦がない。否、容赦というものができない。
何故なら男に敵という概念は存在しない。ただ神域に至るだけ。
その過程で、ただ抱える意識に沿うだけに過ぎない。
『存分に刺せ』
そんな言葉も、湖城の上っ面を撫でていく。
無防備な身体を晒すなら、先ずはその肺の片方を突いて切り薙ぐ。
■惨月白露 > 肺を狙った一撃を見て、焦ったように目を見開く。
殺さないとか、無力化するどころじゃない、これは確実に死ぬコースだ。
死なないにせよ、脳に確実に障害が残る。
「ちょっ、おいッ!!お前、殺さないって言ったろ!!
あぁもう、―――≪アクセル≫ッ!!!」
異能で一瞬だけ超加速した体が、その一撃を僅かに避ける、
逸れた刃が、脇下数センチを切り裂いた。
ぜーぜーと息を吐きながら、彼に向けて怒鳴る。
「お前な、普通の人間ってのは肺がばっさり逝ったら数秒で死ぬんだぞ!?
この学園に居る人間なら超人ばっかりだと思ってんじゃねーよ!!」
「この―――ッ!!」
斬り薙ぎ浮いた腕を、脇下に腕で挟んで捕えようと動く。
■湖城惣一 > 超加速。それは湖城には存在しない速度だ。
彼はあくまでも身体能力を強化するわけではない。
ただただ、剣を振るという機能に特化していくだけ。
だからあっさりと刃は空を切る。
しかし、動揺はない。そんな意識すらはるか彼方に置いて、
ただ、沈む。
「安心しろ」
沈みゆくほどの意識の上っ面。残った湖城の残滓が抗議めいた叫びに答える。
そのまま剣を回すようにして背を向ける。刀はくるりと手元で周り逆手へと。
まるで水を掴むが如く白露の手をすり抜けていく。
「治療はする」
ただサンドバッグになるだけで掴めるならば、それは宝くじではない。
数千、数万、数百万。それだけの選択肢を抜けてこそ掴みうる。
故に、その認識を糺すかのように。背を向けたまま、回るような逆手突きが白露を襲う。
■惨月白露 > 「『治療はする……キリッ』じゃねぇよ、んなもん食らったら死ぬっつってんだ!!
それで死なないのは未来から来た殺人ロボットくらいだっての!!」
刺されれば当然人は死ぬ、人じゃなくても死ぬ。
死なないならば、それはただの化け物だ。
つまり、死なないと思ってるという事は、
高確率でこいつはその『化け物』だ。
「―――っぶね!!」
うずくまるように体を屈め、耳を伏せて、
その逆手突きをよけようとする。
■湖城惣一 > 突きを交わされ、翻るようにして距離を離す。
「切腹治療用の護符がある。効き目は抜群でな。
応急手当がすめば、あとは治療室に金を投げて再生治療。
簡単だろう」
もちろんどれも圧倒的にコストは高い。だが、一切そんなものに頓着はしない。
腹を切って神域を目指す男にとって、あらゆることは等価値だ。
金も。権力も。己の命も。敵の強さも。敵の弱さも。
一切合切考慮はしない。ただ"神域"に潜る。
抱え込んだ意識によって、身体の方向性を変えるだけ。
だから事も無げに言い放つ。
湖城惣一とは、精神という点ただ一点に置いて魑魅魍魎の類に相違ない。
「ただ避けるだけではいずれ追い詰めるぞ」
その長大な刀は明らかに一対一には向かないだろう。
しかし、本気を出さないでいいのか、と。男は問う。
本来ならばそんなことはせず、ただ淡々と切り捨てるのみであったが――。
「どうする?」
問うた。
■惨月白露 > 「―――ったく、こんなクレイジーサイコ野郎だとは思わなかったぜ。」
右太ももに取り付けられた箱から、符を二枚取り出す、
額に当てると、その紅の塗られた口から『文字』が漏れる。
おいでませ、いまおいでませ、おいでませ。
おいでませ、ここはおばけの、とおりみち。
おいでませ、ならざるものの、とおるみち。
いまおいでませ、すぐおいでませ。
―――こなけりゃ、べにのつばきが、おちるだけ。
「―――我が命、救わくば、捕えッ!!!」
手を前に突き出す、背後から走り抜けた二つの霊の手が、
湖城に向けて伸ばされる。
■湖城惣一 > 言葉に時間を使いすぎた。これだけで二分。
時間はあっという間に過ぎていく。
「――――」
しかしそれだけの成果はあった。符術。
少なくとも"シロちゃん"は手札の一枚を切ったことになる。
切り捨てるか。否、それがどういう性質のものかは分からない。
触れた途端に魂ごと"連れて"いかれては敵わない。
コンマ一秒の躊躇もなく、湖城が跳ねる。
ジャケットの裾から一枚の紙が舞い落ちた。
それは契約の証。霊を祓い場を整調するための祝詞。
――淨め祓いの神業を 以って成し給へと 恐み畏みも白す
一瞬の内に心中で奏でられた祝詞は湖城の霊的防護を高めていく。
そのままに、二つの手をくぐり抜けるようにして踏み込んでいく。
■惨月白露 > 二つの手は霊的防護に阻まれ、
がりがりと削られていき、やがて消えていく。
「こりゃ相性がわりーな。」
斬魔の太刀は魔を斬る為の剣、神気を斬るようにはできていない。
やれやれと首を振る、とはいえ、時間稼ぎは出来た。
「リロード」の終わった異能を、再度発動させる。
「―――≪アクセル≫ッ!!!」
二回目の異能の使用、大きく後ろに飛ぶ。
加速された体が、彼と距離を取るように動く。
異能が使えるのはあと1度か2度が限度だろう。
■湖城惣一 > 「……」
避けるように踏み込んだはずだった。
しかしそれを違わず命中させたのは対手の手腕だろう。
"受ける"よりも"避ける"を善しとする男の運足に当てにきたのは、
「"あの男以来"か」
湖城惣一が敗北を喫した男。その姿を蘇らせながら、なおも湖城の意識は沈んでいく。
少なくとも、相手に距離は離された。
"アクセル"。その速度は尋常ではない。
あっという間に間合いを離され仕切り直される。
「フゥー…………」
調息のままに更に意識を沈めていく。
次なる手を見極めようと、脇差しを掲げた。
■惨月白露 > 『赤鞘流』の技は、その赤鞘の大太刀が示す通り、
人と戦うようには出来ていない。
顎からぽたり、と汗が落ちた。『手が無い』。
「タイムアップを狙うしかねぇな。」
刀を抜くと、それを正面に構える。
相手との距離を正確に測り、攻撃を防ぐための構え。
■湖城惣一 > まさに仕切り直し。調息と見極めに使った時間でまたも時間を使っている。
依然として相手に傷のひとつもつけていないが、さて。
対手の間合いはひどく長い。まず先んじて仕掛けることができるのは白露。
防ぐに徹するというのならば、正面からあの長刀を圧し切るか、
あるいはかいくぐるか。
脇差しの切っ先を白露に向かってゆらめかせながら、
湖城惣一の身体が沈む。相手の視界から掻き消えるが如く、踏み込んでいた。
相手の左側面に回りこむように。
■惨月白露 > ―――ぐるり。
彼が消えたのを見れば、その長刀をぐるりと振るう。
どこに踏み込んでいようが関係ない、360度を全てカバーするように。
■湖城惣一 > 大味。しかしその長大な間合いから繰り出される円周は、いわば防空圏の如き堅守を示す。
――沈め。
飛び上がり、壁を蹴り、三角飛びの要領でその太刀を回避した。
その城壁を飛び越えるがごとく、飛び込みながら身体をひねる。
まるで独楽のようにしなる身体。
上方から繰り出される斬撃が、白露を袈裟斬りしようと迫る。
■惨月白露 > 「ま、横がダメなら、上から来るしかないよな?」
―――ぐるり。
その回した勢いを生かして、そのまま上に向けて
振り上げるようにその長刀を振るう、長い刀による対空砲火が、
湖城の翼を捥ぎ、打ち落とそうと迫る。
■湖城惣一 > 「――――」
体をひねる。当然、上空では思うように身体を動かすことなどできはしない。
だから、湖城は当然のように選択する。
手足はそのまま、白露の太刀が湖城の腹を薙ぐ。
白く輝く神気が勢いを増した。
同時、湖城の背中に"術法"が展開する。
それは古い言葉で『死に果てるまで、十全の身体を約束する』と書かれたもの。
いくら血を失おうが傷を負おうが、
"死ぬまでは"そのパフォーマンスを落とすことがない。
あらゆる傷を頓着しない。痛みにすら顔を歪ませることなく、
だからこそ。狂気の剣が白露を狙い通りに襲うだろう。
■惨月白露 > これは避けれないな、と舌を打つ。
そもそも、斬られながらもそのまま突っ込んでくるあたり、
やっぱりこいつはキチガイの類だ。
「―――ッチ!!≪オーバーアクセル≫ッ!!!」
ドクン、と銀色の目が金色に染まる。
「≪フリーズタイム≫ッ!!!」
超加速された時間が、一瞬だけ『止まった時間』を見せる。
刀の振るわれる軌道、それを写真を見るように捉えると、少しだけ体を逸らす。
音すら立てず、湖城の刃がずぶり、と体に沈み込むのを感じる。
僅かに逸らした為に致命傷は避けられたが、
深々と斬りつけられた身体から地面に血の池が広がる。
「―――ってぇな、クソッ!!!」
ギリっと歯を食いしばり、目を見開く。
踏み込んで、着地した彼に殴りかかる。
■湖城惣一 > もちろん、今の一連の動き。デメリットが無いわけがない。
切り裂かれ吹き出す"神気"は、湖城が死に近づいたことを表している。
あくまでもかの術法は、十全に身体を動かすことを約束するもので、延命を願うものではない。
「浅かったか」
長大な間合いと打って変わって、こちらも脇差しでは間合いが遠い。
極めつけの瞬間的超加速――一撃で仕留め切れなかった。
そのまま未練なく脇差しから手を離し短刀を抜き払う。
殴りかかるその腕の筋を断つかのように、相打ち覚悟で短刀を走らせた。
■惨月白露 >
結果は覚悟の通り相打ち、その短刀は惨月の腕を斬り、
惨月の拳は湖城に突き刺さる。
■惨月白露 > 「―――ハァ、ハァッ!!!」
斬られた身体を手で押さえ、
口から吐いた血を腕で拭い取る。
息を整えながら、彼を睨みつけ、荒い息をしながら声を絞りだす。
「おいお前、そろそろ10分じゃ―――。」
そこまで言ってふっと目を閉じると、その場にばたり、と倒れ伏す。
■湖城惣一 > 強く殴打され、その反動のまま身体を転がし距離をとった。
駄賃とばかりに脇差しを引き抜いていく。
時間に余力はある。しかし――。
「…………見事なものだ」
そう言って、脇差しの血を拭った。
腹部に一発。胸部に一発。時間も削られた。
これならば、評価に値するだろう。
見立てからすれば、彼の技は一対多を相手取るもの。
符術などを鑑みれば、特に怪異に対する効果の強いものだ。
「合格だ」
元々、持久戦や集団戦は不得手であるのが湖城という男だ。
常世財閥を説得する言い分の一つにもなろう。
だからゆっくりと近づいて、
「約束しよう。君を表に連れて行くと」
そういって、倒れ伏した彼の胸に護符を置いた。
その加護は、ひとまず切り裂かれた胴体を癒着させることだろう。
■惨月白露 > 「―――あ゛?」
ゆっくりと体を起こすと、がりがりと頭を掻く。
そして、真っ赤に染まった制服を見るとつまんで、
ハァ、と息をついた。
その一連の動作を終え、彼の声が耳に入る。
頭上の耳がぴくぴくと震え、その顔が不機嫌に染まり、
彼を睨みつけた。目元には微妙に涙が浮かんでいる。
「『約束しよう』とか『見事な物だ』とか何様なんだよ、お前ッ!!
いいかこの馬鹿、死ぬところだったんだぞ、俺も!!!お前もだ!!!!」
自分と相手を順に刺して怒鳴ると、
がっと目の前の男の服の襟を掴む
「怪異と戦う相棒が欲しいって話だったな、
悪いけどな、それは受けられねぇよ。
その提案はな、宝くじじゃねぇ、ただのドロ船だ。」
「命知らずな上に高圧的な相棒とペア組んで?
それで『退魔』の仕事を請け負う?
絶対に御免だね、そんなもん落第街でちまちまと悪事を働くよりも、
よっぽど命に関わるっての!!!」
ぱっと、その手を放した。
ふぅ、と息をつき、湖城を睨みつける。
「いいか、確かに俺は『二級学生』でいる事は良く思っちゃいねぇよ、
でもな、俺は普通の学生として学校に通いたいとは思っても、
毎日毎日生きるか死ぬかのデスマッチがしたいわけじゃねぇんだ。」
はぁ、とため息をつくと、
近くにあった鞘を拾い上げる。
「相棒を探すってなら他を当たれ、
『治療すれば大丈夫』とか言って、
命を捨てにくるような奴と『退魔師』の仕事はできねぇよ。
―――このクレイジーサイコ馬鹿野郎。」
パチンと長刀を納めると、身体に括り付けた。
「『怪異』ってのは『1発』食らうだけでも、
何が起こるかわからねぇから『怪異』って言われてるんだ。
―――そんな戦い方してるといつか死ぬぞ、お前。」
■湖城惣一 > 襟首を掴まれれば、抵抗はしない。
まったくもってそのとおりだ。
高圧的――というのも、普段ならば言うつもりもないものだったが。
こと、提案したことに関して評価をせねばならないと思ったのだった。
「……む」
相も変わらず、己の口はあまり人に対して良く働かないらしい。
それに、確かにわざわざ命を賭けるほどのものではない、という彼の言い分も実に正しかった。
「…………済まないことをしたな」
良かれ、と思って言ったことではあるが。
確かに湖城惣一の仕事は危険が伴う。
己の評価、それ自体もあっさりと受け入れながら、己の顎を撫でた。
「元々は――いや、言い訳だな。忠告、感謝する」
力の質を見極めることも一つの技量であるが。
いずれにせよ自らの命に頓着しない己と仕事をしたくない、というのは事実だろう。
わずかに目を伏せ、息を吐き。
「君の言うことも道理だ。
いずれにせよ、無理に誘うつもりはない。
気が向く時でもあれば言ってくれ」
自分も、竹刀袋に脇差しを戻し。もう一度、深呼吸した。
■惨月白露 > 「―――いや、悪いな、俺も言い過ぎた。」
バツが悪そうに頬を掻くと、
杖をつくようにその長刀を床につく。
「でもな、命ってのは1人1個だ、
別に『命は尊いものです、大事にしましょう。』
……とか、そんな事はいわねぇけどな、
てめぇの命を安売りすんじゃねぇよ、この阿呆。」
刀を腰に括り付けると、
近くにあったカバンを持って、肩に担いで歩き出す。
「ま、湖城センパイが、自分の命を守る為に、
相応の金を出して俺を雇うって言うなら力になってやるよ、
慈善事業で命捨てれるほど、俺は狂っちゃいないからな。」
連絡先を書いて丸めた紙くずを後ろ手に彼に向けて投げつける。
「じゃあな、湖城センパイ。」
そのまま手を振ると、斬られた部分に手を当てながら、
その血の匂いが漂う路地裏から立ち去った。
ご案内:「路地裏」から惨月白露さんが去りました。
■湖城惣一 > 「…………大事に、か」
つい最近、それに近しい話を別の人間としたが。
やはり、己は自分の命というものにほとほと執着がないという事実を再認識しただけだった。
少なくとも、目の前の彼が今を生きるのに懸命であることには違いない。
だからこそ好感が持てるというものだが。
「……ああ、もし治療費が必要ならば連絡をくれ。
その傷は俺の責任だ。働けなかった分の色も多少つけておこう」
連絡先を受け取り、こちらもかわりを渡しながら。
彼に背を向けるように湖城もまた歩いて行った。
「ではな、シロちゃん。もしまた会うことがあれば。
そちらも、命を大事に」
ご案内:「路地裏」から湖城惣一さんが去りました。
ご案内:「路地裏」にエルピスさんが現れました。
■エルピス > 公安委員の腕章を腕に通し、落第街を歩き回す。
公務の一つとしての巡回・監視中だ。
「ううん……」
道中で喧嘩の仲裁、違法店舗の解散及び後ほどの出頭要請の告知などをこなしつつ、路を歩き、裏路地へと辿り着く。
ご案内:「路地裏」にメアさんが現れました。
■エルピス > 「フェニーチェ、は沈静化しつつあるみたいだけど……」
思案を続けながら路を歩く。
フェニーチェに関するあれこれは当然公安委員として入手しており、把握している。
公安と風紀の共同作戦もあったと聞く。
何れにせよ、次第に沈静するだろうか――。
「……そうなら、いいんだけど。」
■メア > 【路地裏の奥、ぽっかりとそこだけ吹き抜けように空から光が差し込む空間
木製の椅子に座り少女が一人座っている】
ふぅ……
【ここはなぜか人があまり来ない。薄暗い中で一人きり…
なんだか落ち着く、そう思いながらだんだんと薄暗くなってきた空を見上げる。
路地裏の巡回をつづければ偶然その場所を見つけるかもしれない】
■エルピス > 「あれ、あの子って……」
路地裏の最果てで少女を見つける。
確か以前の騒動で姿は見かけた事はある。
雰囲気の違いにちょっと違和感を覚えながらも、黄昏れている少女へとゆっくりと近付く。
「……こんばんわ、えっと、迷子?」
■メア > ん…
【声に気が付き視線を下げる。半分寝ていたような状態だったので動きがいつにもまして少し遅い】
…ん…?
…えと……ロボット、さん…
【落第街での騒動の時に見た事がある少女を見て尋ねる】
…迷子じゃ、ないよ……
■エルピス > 「ん、ボクはエルピスって言うよ。キミは?」
くす、と、微笑んで、軽く視線を上げる。
黄昏れていると言うよりも微睡んでいたのかな。
動作が緩慢な少女を見れば、そんな風に思案する。
「……そっか。でもここは危ないよ。
家出とかなら、相談に乗るけど……」
■メア > えと…私は、メア……
【目をグシグシとこすりしっかり目を覚ます】
危なく、ないよ……?
それに、落ち着く…よ…?
【確かに最初は絡まれることもあったがそのたびに撃退していっている内に
黒い服の少女には関わらない方が良いと路地裏内で密かに囁かれ始め、
現在では難癖をつけられたりすることもなくなっている】
…エルピス、は…公安…さん…?
【ふと腕章が視界に入り、尋ねる】
■エルピス > 「メア、ちゃん。だね。えへへ、宜しくしてくれると嬉しいなっ。
危なくない?……それならいいんだけど……」
ううんと困りげにうなるものの、それ以上の追求はしない。
どうしようかな、と頬を描いて考え込んでいれば、少女の方から尋ねる声。はた、と、それに気が付けば。
苦笑のような仕草と共に言葉を返す。仕草で頭が揺れて、髪が舞う。
「うん、そうだよ。表に出る方の公安さん。
公安のお仕事は、中々難しいけどけどね……」
■メア > …よろしく……
【少し警戒の色が瞳に宿る。目の前の少女は優しそうで警戒することも
ない様に思えるが…今まで出会ってきた公安の人間を思い出すと
どうしても警戒してしまう】
表…?
……そっか…
【少し安心した、表…という事は普段からパトロール等を行っているという
事だろう。そしてそういう役目を与えられているという事は】
エルピス、は…人を…殺さない…?
■エルピス > 「……無い、とは云わないよ。
やむを得なく仕事として、そうした事は凄く少ないけどあって、殺さなくても止められなかった事はいっぱいある。」
気落ちした様相を見せ、その場で項垂れる。
「それでも最初に殺しをした日、ボクは多分人間の身体なら胃液が無くなるまで吐いていたし、
……3日4日、ずっと家に引きこもってた。その時は仕事だからやったけど、やっぱり、慣れないし、慣れたくないね。」
今は少し慣れちゃったけど。そう付け加えながら空元気の苦笑を浮かべ、メアへと向けた。
■メア > 【後悔はしているようだが…公安は表の人間でも殺しをするのか、と認識を改める】
そう、なんだ……
大変…なんだね……
【少し慣れた…そう聞いて改めて公安に対する不信感を抱くが目の前の少女は…今は決めかねる、善人にも見えるしそうでない可能性もまだ十分にある
だが、もし彼女が善人だったなら……】
内部から…正す……
【以前図書館であの男に言われた言葉が頭をよぎる】
■エルピス > 「――うん。でも、本当にどうしようもない時だけ。
そうでなければ、ボクは無闇、あるいは思惑を以って、殺したりはしないし、したくないよ。」
何処からの通達なのか、極稀に見かけたら殺しても良い、と言った人物の情報は稀に見かける。
その手の人物と相対し、そうせざるを得ない所以を痛感しつつ、そうするに至った。
故に表側の公安委員であり、
『常世財団のある一派が寄越した、健全な公安警察のシンボルとしての公安委員』 とも噂される程でもある。
真相は、さておき。
いずれにせよ、それを語った所で単なる言い訳だ。
そう思えば、言葉を飲み込む。
「……ごめんね、何か重い感じにしちゃって。」
■メア > しかたない…
【しかたないから殺す、まぁそういう時もある…あの時だってクロノスを
止めなければ被害者はさらに増えていた。仕方ない…そう頭の中で繰り返し】
…エルピス、は…多分…優しい……
だから、気に…しないで…
【これまで出会ってきた中で一番人に優しい公安の人間だと確信し、警戒をやめる。
少なくともこの人は安全、と】
■エルピス > 「う、うん。ありがとう。」
……安堵を見せて小さく息を吐く。
「……そういえば、メアちゃんはここで何をしてたの?
家出もないみたいだし、迷った訳でもないみたいだけど……」
■メア > どう、いたし…まして…
…のんびり、してた……
ここは、静か…だから…
【路地裏の奥地、耳をすませば周りはやけに静かで路地裏の奥地という
事とある程度の汚れに目を瞑れば確かに瞑想などにはうってつけだろう】
■エルピス > 「確かに、路地裏でもここまで来る人は少なそうけど……」
先を見ない建築が繰り返された結果路地裏の最奥に出来た、開けた空間。
言われてみれば、とても静かで――落ち着く。
だがやはり不安そうにしてみせるのは、此処が落第街であるからだろう。
不安の色が、表情からも伺える。
■メア > だい、じょうぶ…ここ、あんまり…人が、来ない…
【あんまり、と言うのは偶に来るからだ。メアに…グリムに拷問をされた者たちのお礼参りが】
それに…落ち着く…よ…?
■エルピス > 「う、うん、それは分かっているんだけど……
……それでも、気をつけてね。」
先程の言葉と合わせて、うまくいなしているのだと言外に察する事は出来る。
やはり心配は尽きないが、此れ以上は逆にメアへの負荷となるだろう。
そう思えば言葉を止めた。
「……えっと、一人が好きなの?」
■メア > うん、気を…つける…
【確かに気を付けなければ、あのままだと確実に眠ってしまっていた】
んーん…でも、知らない…声が…たくさん、は…
嫌……
■エルピス >
「……知らない声が、嫌?
えっと、それは知らない人が居ると落ち着かないとか……そう云う……?」
そのワードから幾つかの理由や意味を推測する事は出来なくもない。
とは言えそれは確実ではないし、何か抱えているものがあれば聞きたい。
お節介かな、と思いつつも尋ね返すだろう。
■メア > 知らない、人も…声も……
沢山、は…いや…
【確かに人と言う意味も含んでいるが、声とはそのままの意味でもあるようだ】
沢山……だと、いや…
■エルピス > 「そっか……沢山だと嫌なんだね。
知らない人は、やっぱり怖い?」
うん、と頷いて、じっとメアを見つめる。
ふと、脳裏によぎった事を直接口走るだろうか。
「……ボクと居るのは、大丈夫?」
■メア > うん……
けど、怖くは…ない…
【怖いかと聞かれてそこだけははっきり否定する。意識しているわけでもなさそうだが…】
エルピス、は…だいじょぶ……
綺麗、だから…
【じぃ、とエルピスを見つめる】
■エルピス > 「……じゃあ、知らない人は煩わしい?」
怖くはないとなれば、そうなるのだろうか。
一つ神妙な面持ちで、尋ね事にした。
ものの、綺麗、っと言われれば――
「も、もうっ。からかわないでよ。メアちゃん。
ボクは綺麗なんかじゃないと思うよー……」
やや恥じらいを見せただろう。
照れた様子で首を横に降れば、長い長い髪が踊る。
■メア > ……
【煩わしい、そう聞かれて押し黙る
無言の肯定…否定しようとしたがその言葉が出てこない】
エルピス…綺麗……
とっても…
【恥じらうエルピスを見つめる。異能の影響かメアの瞳にはエルピスが淡い光を放っているように見える。
容姿を褒めたわけではなくいうなれば心の色…薄汚れた者やはたまたヘドロの様な者も居るが、彼女はとても綺麗な光が見える】
■エルピス > 押し黙ればその先を聞く事はしない。
僅かに、メアから危うさを受け取ったものの。
「……う、ううん。も、もう。
これでも元々は男の子で、綺麗って言われると、ちょっと恥ずかしいかも。」
頬を掻いて恥じらう様な笑みを、仕草を魅せる。
しかしながら、もし、心の色が、ひいては心が見えるなら。
――エルピスとなった彼(彼女)の心の色そのものは負性の少ない、『強い輝き』を見せている。
しかしながらその輝きの影には細工がされた跡が見えるかもしれない。
そして、黒い黒い、別の何か、彼(彼女)の心――感情の動きからエネルギーを搾取する、
異常な『何が』が、見えるだろう。それは澄んだ漆黒でありながらも、途方も無いおぞましさを感じ取れる、かもしれない。
――もし異能によって、彼(彼女)の感情の動きを搾取し動力に変える『地獄炉』が、
見えたとするならばの話ではある、が。
■メア > 男…の子…?
【恰好、仕草、容姿…どれを見ても女性にしか見えず思わず首をかしげる】
……?
【よく見れば彼女の影の方に何か見える…はっきりと見えない。
あくまでメアが読み取れるのは感情、妙な動きがあるように見えるがその『何か』ははっきりとは見えない。
誰にでもある心の中の天使と悪魔、そんな風に思い感情を見るのをやめる
あまり人に見られて嬉しい物でもないだろう】
■エルピス > 「う、うん。元々は男の子でね。ちょっとした事件があって、
その時にこの身体になったんだ。
……えっとメアちゃん、サイボーグって分かる? ボクはそれなんだ。生身の部分は殆どないけれどね、女の子のサイボーグになっちゃった。」
こてん、と小首をかしげてメアを見る。
メアから不思議そうな様子が見えたものの、気のせいかと思って追求をやめた。
(……?)
■メア > サイボー、グ……
【体の機械化は知っているが、何で女性タイプに?
と考える。女の子になりたかったのかと考え自分の中で納得する】
エルピス、は…男の子、でも…綺麗……
【心はもう見ていない、だが元が男でも女でも心は偽れない
つまり彼女…彼?はいい人だとメアの中で確定した】
■エルピス > そんな彼女の内心はつゆ知らず。
多分言ったら、はわわと物凄い勢いで否定するだろう。
「……も、もう。でもありがとう、メアちゃん。えへへ……」
やや恥じらいを残しながらも、
無邪気に無防備に微笑んでみせた。
■メア > うん……
【何でそんなに恥ずかしがるんだろう?そんな風にも思いながら微笑むエルピスを見つめる】
…ん、そろそろ…帰る……
【何だかエルピスにはあまり路地裏は似合わない、そんな思いから椅子から離れエルピスの、袋小路の入り口の方へ近づいていく】
■エルピス > 「あっ、それじゃあ途中まで送っていくよ。
一応これでも、見回り中だからね。」
一歩近づき、メアの隣を歩こうとするだろうか。
「一緒について行っても、大丈夫?」
■メア > ん…お願い……
【一応安全とは言え二人の方が安心できる。エルピスと並んで歩きながら】
1人、より…安心……
【そう言ってこちらに尋ねる少女を見上げる】
■エルピス > 「えへへ。そうだね。
何かあってもボクが頑張るからね。安心してて欲しいかも。」
自信のありげな様子を見せてから、花が綻ぶような笑顔をメアへ向ける。
そのまま、路地裏を歩いて行くだろう。
ご案内:「路地裏」からエルピスさんが去りました。
ご案内:「路地裏」からメアさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に久藤 嵯督さんが現れました。
■久藤 嵯督 > 風紀委員は本来、落第街における単独での出歩きを推奨されていない。
それはこの久藤嵯督も知っての通りだ。
しかし自分には単独行動で立ち回れるだけのやり方は心得ているし、むしろ一人でいる方が色々と動きやすいこともある。
特に自分は、風紀委員でありながら常世財団のエージェントなのだ。
魔術結社エグリゴリをはじめとした機密情報を取り扱うには、その方が都合がいいのだ。
単独行動であるが故、『糸』での索敵は欠かさない。
これがあるだけで、不意打ちに対する対応力や検挙率が大分違ってくる。
ビルの谷間を歩いては烏合の衆を縛り上げ、護送部隊に突き出す。
■久藤 嵯督 > ほかにも、単独行動している風紀委員に対する注意喚起なども行っている。
所謂、『見張りの見張り』というやつだ。
率先して単独してる自分が偉そうに言えた事でないのは重々に承知しているのだが、風紀委員というやつは思いの外聞き訳がいい。
『お前が言うな』とは毎回のように言われるが、少なくともその後は自分が同行するので単独行動はやめさせられる。
今宵はそのような者も見かけていないのであるが……
■久藤 嵯督 > 路地裏を巡回しながらも、件の調査は欠かさない。
聞き込みや尋問を繰り返すものの、これといった成果は見られない。
情報屋から聞けることは、もう既に知っていることばかり。
それでもこうして自分が出歩くことで、連中に対する牽制にはなっているだろう。
少しでもボロを出せば、組織ぐるみで追い詰めていく。
何か大きな事を成される前に、早々と叩き潰してしまうのが冴えたやり方だ。
それを相手もわかっているからこそ、迂闊に動けないでいるのだろう。
『フェニーチェ』が未だ統率を持って動いていたのなら、それを隠れ蓑に裏で動けたのだろうに。
■久藤 嵯督 > 迷い込んだ一般生徒がチンピラに絡まれていたので、片手間に助けておく。
チンピラはこちらに抵抗する様子を見せず、そそくさと退散していった。
一般生徒には厳重注意を架して、後日反省文を提出するよう指示しておく。
こういった手合いは罰の一つでも架しておかなければ、また繰り返す。
情報の方は一向に集まらない。