2015/08/13 のログ
ご案内:「路地裏」にヘルベチカさんが現れました。
■ヘルベチカ > けんっ、けんっ、と咳の音。
聴く者の居ない路地裏に響いた。
ずっ、ずっ、と。重いものを引きずるような音。
地面からではない。
煉瓦用の材質で形作られた壁面。
赤い絵の具で汚らしい絵を描くように汚されていく。
そこから、聞こえた。
寄りかかり、暗い目で歩く少年。
■ヘルベチカ > はぁぁ、ぁ、すぅ、ぅ、ぅぅ。
震えるように息を、吐いて、吸って。
吐ききった時に一歩を歩み、目を閉じて吸うとともに、次の一歩の力を籠める。
足元、転がっていた空き缶をひとつ、蹴飛ばした。
カラカラと、横向きに回転して、道の端のゴミ箱にぶつかって止まった。
視界の端、赤い色のへこんだそれが止まったのを捉えるとともに、また、一歩。
綺麗に舗装された、とは言えない路地裏の道。
■ヘルベチカ > 歩みが止まった。
ごん、と小さく音を立てて、壁に頭を預ける。
口元に力が籠る。
けれど、歯ぎしりをするだけの力はない。
小さく開いた唇。
30秒、使った、と。
声のない言葉が吐き出された。
壁の上に描かれる赤、筆で触れたままのように滲んで広がる。
■ヘルベチカ > 目を伏せた。悔やむよう。呼吸音。耳に触れる。
嗚呼。遠く。喧騒が聞こえる。
遠く遠く遠く。現実感のない音が聞こえる。
だから歩きだした。
壁に預けた肩。赤い軌跡を描き続ける。
頭の上の猫の耳、憐れむように、ふるり震えて見えた。
ご案内:「路地裏」からヘルベチカさんが去りました。