2015/09/12 のログ
■鏑木 ヤエ > 「………ははぁん」
(曖昧な溜息。
ぼうと虚空に灯ったその炎を見遣って。
誰かを助けられるのがかっけー、という言葉をぼんやりと耳にして。
不機嫌そうな溜息がふ、と漏れた)
「なるほど、やえはそういう手前がどうにも好きになれなくてですね。
ジコギセーセイシンの正義の味方も、正義の味方であることを好む連中も。
どーうにも、好きになれねーんですよ。
ほら、救済ってのは自己満足の押し付けであることは間違いねーでしょう。
そんな気紛れで自分より下──二級学生を拾いあげようってフーキイインが先日いまして。
やえはね、嫌いなんですよ。
持っているニンゲンが同じニンゲンでも持たない人間を上から救おうとするのが」
(恨みつらみも先刻のテンションと全く変わる様子を見せない。
されど、何処かジイと見つめる紫水晶は濁ったようで。
固定された右手を見遣れば「ありがとうございます」、と)
「そうですねえ。
甘いモノがあるってんなら食べねーこともないですよ。
あと奢り、ってんなら喜んでついていきましょう」
(やや声色を明るく撥ねさせて。彼のスカイブルーのそれを覗き込んだ)
■アーヴィング > (好きではないとはっきりと言われれば目をぱちくりとさせ
一瞬遅れて理解が追いつくとケタケタと楽しそうに笑う)
ははっ、あーなるほど確かに押し付けられちゃぁたまらねーわな
おう、俺が救ってやるぜ感謝しな、なんてセーギのミカタ様なんざ肋骨三本くらい持って行きたくなるわ
つーか持っていくわ、着払いで
けどまあ、むっずかしーわなぁ
押しつけは良くねーけど、助けてくれって声上げれねぇ奴にゃこっちから手ぇ出してやらねーとだしな
けどまあ、俺の身内がお前を上から見て不愉快にさせたなら、悪かったな
つっても俺の方が下っぱだろうけどな、そいつよか
(けけっと下品な声で笑い飛ばすと、改めて肩をすくめ、それで謝罪の意を示す
頭を下げるのはなんとなく、わざとらしい気がした)
OKOK、奢ってやるよ
んで勘違いされる前に言うけどよ
俺はおめぇを哀れんで食わせるわけじゃねーからな?
気の合った奴と飯食いてーって思うのは変じゃねーだろ?
(な?と首をかしげ、それから決まりだ、と炎を握り締めて消す
それからふと、彼女の服のあちこちに傷が付いている事に気付くと、強引にサマージャケットを押しつける)
肉ねーと寒いだろ
(余計な一言を添えて、んじゃ行くか、とゆったりとした歩調で歩き始め)
店知らねーから、行きたいとこ選べよ
■鏑木 ヤエ > (想像とは違ったリアクションに少しばかり驚く。
楽しそうに笑うその様を見て小さく小首を傾げた)
「普通に考えて肋骨じゃあ済まねーですよ。
やえはホンキでキライですからね、誰が何と言おうが断固キライですね。
かみさまにでもなった心算ですかと。
…………、」
(少しばかりの逡巡を挟んだ。
視線はあっちへ行ってみたりこっちへ戻ってきたり。
瞬く星を最後にもう一度見上げたあと、また口を開いた)
「構いませんよ。
セーキのガクセーから見たらそんなモノなのでしょうて。
二級学生ってのはカワイソーなものなんでしょう。そんなモノですよ」
(ある種自分に言い聞かせるように、子どもにやさしく物語を読むように言葉を紡いだ。
それは随分と穏やかで、静かで、)
「ダイジョーブですよ。
ナンパに引っ掛かった、ってことにしておきましょう。
哀れんでるのが一瞬でも滲んだらそれこそ肋骨持っていくので安心してくださいな」
(サマージャケットを受け取った。
身長の高い彼のモノはそれこそ30cm以上も低い彼女が羽織ればワンピースの裾と変わらないくらいで。
ぶかぶかのジャケットを少しばかり弄んだ)
「そこそこですよ。
ていうか可愛い女の子に向かって肉肉言うんじゃねーですよ。
肋骨折りますよ」
(彼の歩調に合わせてまた一歩と立ち上がる。
それから小さく、)
「……ああ、歓楽街にクッソ美味いパンケーキの店あるんですよ。
ドチャウマかつあのホイップクリームの量………!
ほら、行きましょうアーヴィング・ヴァン・オルブライト」
(何時も通りにフルネームで彼を呼ぶ。
先刻までの不機嫌は何処へやら、華麗に影を踏んだ)
■アーヴィング > 別に嘘たぁ言ってねーよ
いいか?世の中最強の理由ってのは「嫌い」と「気にくわねー」だ
だって仕方ねーじゃん、嫌いならよ
まあ嫌いだからって何してもいいってわけじゃねーけど
(初めて見せた戸惑うような仕草にようやく勝てたとでも言いたそうな嬉しそうな笑みを浮かべ
すぐにその子供っぽさに気付いて苦笑に変わる
楽しそうな、という共通する要素を残して)
かもな、持ってる奴が持ってねー奴を哀れむってなぁ一種仕方ねー事だ
でもよ、それを相手に察せさせちまうっつーのは、俺はお前より上だぜっつってるようなもんだしな
思うのは勝手、でも思ってるって見せちまうのはそいつの落ち度だ
んでおんなじ看板背負ってる俺の落ち度でもあるわけだ、世間様から見たらな
(ああ、判っている、そんな事は判っている
世の中そんなもんだ
だが、そんなもんだと思った上での立ち回りというのも、どこかにあるはずだと、そう思う)
ふむ……じゃあアレか?隙見て肩を組もうとするとか、そういう破廉恥な振舞いを……
OK、冗談だから俺の肋骨ちゃんにおイタすんじゃねーぞ?
(へい、とおどけた調子で両手を挙げて
何もしませんのポーズ)
肉ねーのと可愛いのは同居可能だろがよ
ま、見栄えがいいっつーのは認めてやるよ
………それパンケーキっつーかアレだよな?
クリーム乗っける皿が食えるような配分だよな?
やべぇ俺食えるもんあっかな……
っと、へいへい、エスコートさせていただきますよ
ヤエ
(ポケットに手を突っ込み、周囲に視線を巡らせゆったりとした脚運びのチンピラムーブで追いかけ、横に並ぶ
歩調を合わせて)
(余談ではあるが、彼はパンケーキの上にアイスを乗せて花火を突き刺した物に惹かれ
メニューより明らかにでかいという逆メニュー詐欺を食らって腹の底から冷却されるハメとなった)
ご案内:「路地裏」から鏑木 ヤエさんが去りました。
ご案内:「路地裏」からアーヴィングさんが去りました。
ご案内:「路地裏」に三枝あかりさんが現れました。
ご案内:「路地裏」に梧桐律さんが現れました。
■三枝あかり > 第三部 星空の観測者編 三枝あかり
最終章『覚醒』
三枝あかりと梧桐律は変革剤の取引が行われるという現場に潜入していた。
路地裏。危険な場所。でも、彼と一緒なら怖くはない。
ただ、変革剤の売人が現れるのを待つ。
兄が変革剤を使ったことが罪の一つなら。
その罪を背負うことも妹の役目。
それに、梧桐先輩を巻き込むことは、少し気が引けたけれど。
■梧桐律 > この手の荒事はその道のプロに任せるべきだと言った。
風紀も公安もそれなりには仕事をしている。
それは正論であって持論でもあるが、子リスの方にも枉げられない理由があった。
コトは自分の過去に繋がっている。
三枝あかりとその兄貴には清算すべき過去がある。
本当の解決を望むなら、自分自身でやっつけるしかない。
過去と向き合うために必要なことなら、避けては通れない道だ。
全てあかりが望んだことだ。独断といえば聞こえは悪いが、こちらに相談してくれたのは正解だった。
俺はこの一幕を、愚にもつかない悲喜劇にさせないためにここにいる。
今の俺に与えられた役目は、彼女の物語に音楽をつけることだった。
説明は十分に受けた。このあたりは目を瞑っていても歩ける。あとは開演のときを待つばかりだ。
■三枝あかり > 物陰に隠れながら、梧桐先輩に目配せをする。
携帯デバイスはボタン一つで風紀に繋がるようにしてある。
あとは現場を押さえて、風紀を呼ぶ。
それだけのミッション。
ただそれだけなのに。
この物語は彼女の歩んできた道を台無しにしてしまう。
その通りに学生服を着た猫背の男がやってくる。
そこに目立たないよう黒い服を着た男が続けて来た。
待ち合わせの指定時間ぴったり。
情報屋の情報通り、ここが変革剤の取引現場。
私は梧桐先輩を見てから風紀に通報する。
彼らはあっさりと金とトランクを交換すると、黒い服を着た男は足早に立ち去っていった。
それを確認してから学生服の男が声を出す。
『そこに二人、隠れているな?』
『こういう仕事をしていると尾行の類にも敏感になる』
顔が蒼ざめた。梧桐先輩の袖を引く。早く逃げよう。
ご案内:「路地裏」から梧桐律さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に梧桐律さんが現れました。
■梧桐律 > いくら何でも露見が早すぎる。
それも取引が終わってから間もなくのことだ。
情報屋とやらが節操無しだったか、その大元の情報自体に作為があったか。
そもそも、子リスも俺も探偵めいた動きにかけてはずぶの素人だ。
もっとずっと単純に、はじめから気づいていたというのが正解だろうか。
今は結果が先にある。それが全てだ。
あかりの目を見て首を振る。亜麻色の髪に触れた。
今になって声をかけてきたのは、既に手を回してあるってことだ。
事態が転がり始める前に、あと一瞬の猶予がある。
その使い道を誤るわけにはいかない。
ケースを開いて仕事道具を取り出した。
無数に枝分かれした可能性のひとつ。いくつもの分岐点から選択された未来がはじまる。
異界の旦那方は手を貸してくれるだろうか。
まだ選曲が思いつかない。返答代わりにG弦を一撫でする。
■三枝あかり > 髪に触れられると心が締め付けられた。
彼は大丈夫だと言ってくれているのだ。
私を守ると。
守られるだけの弱い私。
猫背の男が闇のように黒い髪をかきあげて笑う。
周囲の輪郭が滲んで見えるのは気のせいだろうか?
『俺の名前は杭全 遊弋(くまた ゆうよく)』
『なんで名乗るかって? そりゃ冥土の土産ってやつだよ』
『どうせ風紀を呼んであるんだろ?』
『アイツらが着くより先にお前らを殺してこの場を離れるほうが早い』
『お前らがどんな異能を持っていようと、な』
杭全と名乗った男が首筋に無針注射器を押し当てる。
薬液が体内に流れていくのがここからでも見えた。
「まさか……変革剤!?」
「先輩、気をつけてください! 相手は確実にこっちを仕留めてくるつもりです!」
どうしよう。どうすれば。一体、何ができる?
■梧桐律 > 「クマにしちゃ小柄な方だよな」
「お生憎さま、俺はとっくに死んでるんだよ。女に殺されてね」
「死体が増えたっていいことないぜ。余計に足がつくだけだ」
姿を見せて答える。
全能感あふれる自信たっぷりな台詞に首を傾げたくなる。
一応の説明を受けてはいるが、あのクスリってのはそんなにいいもんなのかね。
「こうなる可能性はあった。お前も考えてたはずだ」
「……俺も度胸がある方じゃないが、慌てる必要は全くない」
それもこれも判断の結果だ。
子リスが一人で安全にここを抜けだす望みが薄いなら、相手方の頭を潰すのが次善の策だ。
「離れるなよ、あかり。俺のそばにいれば安全だ」
「その間に何か考えてくれ」
今夜最初の曲は、アルカンジェロ・コレッリ作。
『ラ・フォリア』。直訳すると「狂気」だ。
■三枝あかり > 『その安い煽りが末期の言葉になるがいいのか?』
『お前らはメッセンジャーだ……無残な死体が風紀すら震え上がらせる』
『変革剤の調査の足も鈍るくらいにな』
その言葉にぞっとする。
自分は禁忌に触れたのではないか?
そう考えると震えてしまう。
「せ、先輩………!」
「わかりました、何か……何か、必ず考えます」
演奏を始める直前に杭全が獰猛に笑った。
指をパチパチと鳴らしてこちらを見ている。
『音で精神攻撃か、音波で直接攻撃か、あるいは召喚系の異能ってところか』
『まずは音をシャットアウトさせてもらう』
『絶対恐怖(アブソリュート・テラー)……!』
演奏が始まると同時に杭全の姿が多面体のフィールドに包まれる。
フィールドを張ったまま左に走りながら、フィールドを鋭角に尖らせて射出してきた。
バリアを張る能力。それを変革剤で自在に操れるように強化している。
何もかもを遮断し、全てを切断し、足場に使うことで回避能力も得る。
これが彼、杭全遊弋の異能。
■梧桐律 > 「はは。あいつらのこと、ずいぶん甘く見てるんだな」
「一人や二人死んだからって、それがどうした?」
「犠牲が出るほど想いが強まる。止まらなくなる。悪党としての経験則だ」
「その一線を越えたとき、お前は後に引けなくなる。どう転んだって身の破滅だ」
「先輩の忠告は聞いとくもんだぜ」
俺は死んでも替えがきく。最悪それは構わないが、俺の天使は一人だけだ。
うちの子リスをどうにかされると困るなんてもんじゃない。
時間いっぱい凌ぎきればこちらの勝ち。あいつも俺も時間との勝負だ。
さて、「フォリア」というのは一つの形式を示す言葉だ。
バロック期に主流を成した表現のひとつで、元はイベリア半島に起源を持つ。
民族調の激しい舞曲が時の流れに洗われ、いつしか優雅に流れゆく旋律に変わった。
「狂気」とはつまり、日常からの逸脱だ。
フォリアは祝祭の音楽であって、祭礼には付き物の舞踏の場で奏でられた音楽だ。
思い浮かべてみて欲しい。
中世のスペインかポルトガル、カタルーニャやバスク地方のどこかでもいい。
これはハレの日に奏でられる音楽だ。
素朴な人間の感情と日々の暮らしの悲喜こもごもを歌う調べだ。
ビビッドな原色が目まぐるしく入れ替わる極彩色の泡が湧き出す。
顕現した異界存在が狙いをわずかに狂わせ、無形の力場を呑んで対消滅する。
それは一にして全。全にして一なるものの片鱗。不定形のその身から沸き立つ泡だ。
存在ではなく現象と呼んだ方がいいだろうか。
そういうものだと思うしかない。深く考えれば狂気に堕ちる。
「カマイタチ?にしちゃ風が起きてないな。死ぬ気で考えろよ子リス」
ただの現状維持だ。攻め手に欠ける。攻勢が強まる前に牽制をかけることもできない。
この先のなりゆきは俺の守護天使にかかってる。お前のことだよ。三枝あかり。
■三枝あかり > 『何が先輩だ、くだらない』
『風紀が本気になるならそれもねじ伏せて俺は日常に戻るだけだ』
『俺が使っている変革剤は副作用を小さく、効果は高めたハイエンドモデル』
『2分以内にお前の詰みだ』
対消滅していく力場に歯噛みをする杭全。
どうやら召喚系能力であることに違いはなさそうだが、規模が想像の遥か上のようだ。
だが完璧なコントロールをしているならば即座に杭全の存在そのものを消しにくるはず。
現状で杭全の勝ちは揺るがない。
目を見開いて杭全遊弋と梧桐先輩の戦いを見た。
でもそれだけ。私の異能はそれだけのもの。
悔しい。私に力があれば。
私に大切なものを守るだけの力があれば――――――
そう願った時。私の傍に小さな球体が浮かんでいるのが見えた。
漆黒の球体。その時、私の瞳の色が変わっていることを何故か、私自身が観測できた。
これは敵の攻撃? 違う。
私の異能。力を求めた結果のサードステージ………?
しかしこの黒い球体は何だろう。
その時、私は全てを理解した。
ワンオブサウザンド、量産品の銃が1000丁にひとつの割合で奇跡的に最高のパフォーマンスを発揮すること。
その奇跡のように、私の中の異能への理解が完成した。
カチリ。歯車が噛み合う。
「あははははははは………!」
笑い出す私を前に杭全が苦笑いを浮かべる。
『恐怖で狂ったか、哀れな女だな』
私は前髪を指で撫で付ける。
「違いますよ、私は私の異能を正しく理解したんです」
両手を広げる。
「私の真の力は重力と時間を操る異能、それに今気付きました」
「星空の観測者(スターゲイザー)は物体の偏差を把握していただけ」
「星屑の幻灯(ザ・ライト・オブ・スターダスト)は時間を停止させていたのに自分が動けないと決め付けていただけ」
風が吹いた。一陣の風。
周囲に自分の意思で黒い球体を作り出す。
「私は名前をつけます。この子たちは『小さき者』」
「そして私の異能の名前は――――――」
梧桐先輩の隣に立つ。
「虚空の神々(インフラブラック)……!!」
■三枝あかり > http://guest-land.sakura.ne.jp/cgi-bin/uploda/src/aca818.jpg