2016/01/12 のログ
ご案内:「路地裏」に白椿さんが現れました。
白椿 > ……さて、今日は何かあると面白いのであるがの。
(白髮褐色の狐は、基本的に惑いと混乱、そして興味本位と成り行き任せを好む

なんといっても、問題が起これば面白いのだから
扇情的な格好もそれを助長するためであり、何より魅力を隠すこと自体勿体無いと思うが故
出会いがあるならきっかけになるようなことは多い方がいいし、なんだって良いのだ

日常でないほうがむしろ好ましいとも言える
平時には本質のかけらしか現れない……その必要がないからだ
だが、落第街ともなれば、小出しにしてでもそうしていかなければ、会話にすらならないこともある

故に、路地裏や歓楽街といった、無軌道で何が起こるかわからない場所を好んで歩いていた
目立つ事この上ないが、それ故に、どうでもいい有象無象が避けられるのもいい
この場所で目立つ扇情的な格好ともなれば……その格好で要られるだけの理由があるからなのだから

などということはともかく、狐は特にどう、ということもなくなにか面白そうなことがないかと歩いていた)

ご案内:「路地裏」にスノールさんが現れました。
スノール > 路地裏。その奥から騒がしい物音が聞こえる。
怒声が響き、喧騒が響く。丁度、白磁狐の願いを叶えるように。
そして次に響いたのは。
 
……竜の、咆哮。
 

白椿 > ……おおう、珍しい音がするものだのう
まあ、この辺ではある意味、珍しくもないとも言えなくはないのではあるが
(と言っても、狐自身竜を知るわけでもない。そもそも彼女は制作されてそれほど長いわけでもない。
わざわざ角を曲がって覗くまでもなく、その空間の様子を探りつつ、面白そうなことがあるというのならば行かない手はない)

む……コレは随分と大きい御仁であるの
(様子を覗くというよりは現場に近づきつつ)

スノール > 狐がその場の様子を探れば、そこにいたのは正しく巨躯を持つもの。
竜頭頂く巨漢。竜人。
稲妻を纏う蒼い大剣を片手に持ち、未だ紫電を迸らせたまま、目を見開いて、片腕を抑えているチンピラに切っ先を向ける。
チンピラは卑屈な笑みを浮かべた後、手に持ったそれ……財布……といっても、人間が持つには少々サイズが大きいそれを手放し、そのまま後ずさる。
さすれば、竜人も剣先を納め、嘆息を一つ。
そのまま、竜人が一度チンピラをジロリと睨むと、彼は一目散に逃げて出してしまった。
 
それを確認してから、竜人は地面に落ちた財布を拾い、剣を腰の鞘に納める。
 
この落第街では比較的よくある演目であった。
役者の片方が異邦人であるということが少々珍しくはあったが、それもまぁ少々程度で済む。

白椿 > ……ふむ、カツアゲとしては随分と大仰であるの?
(その様子を面白げに見やりつつ、限外に僅かにせせこましいというニュアンスを込めつつ。)

もっとも、この辺りでは多少腕が立つ程度では役に立たぬ、というところもあるからの
偉丈夫がこのようなことをするというのもわからぬではないのであるが

もしすれば単に襲われただけの可能性もなくはないではあるが、その腕なら別にもっと
やりようもあったのではないかえ?
食うにでも困っておるのかの? その出で立ちでは随分と入り用ではありそうであるからの

(別に責めるわけでもないが、言葉の端々にいちいち棘のある言い方をする狐だった
更に言うならこう、ふーん、そうなんだーへーえ。という明らかに興味本位で小馬鹿にしているようなところがある)

スノール > そこで、漸く狐の存在に気付いた竜は、ゆっくりとそちらに顔を向けて、狐の顔を見た。
なおも語る狐に言葉をさしはさむ事なく、近寄ってくる彼女の立ち居振る舞い、語気に聞き入り、目を細める。
そして、何か思うところがあったのか。
狐の詰りが一通り落ち着いたところで、竜は口を開く。
だが。
 
「#######」
 
それは、公用語ではなかった。
ラテン語に似た言葉ではあるが、少なくともこの世界の言語ではないようだ。

白椿 > ……ふむ、言葉は通じないのであるかえ?
雰囲気は通じておるようではあるがの

コレは困ったのう
我は似たことは出来ないではないが、そういったテレパシーじみたものはわからぬであるし
そもそも、その気がなければどうしようもないであるしな
どうしたものであるかの……そうは思わぬかえ?

(困ったという割に困っていないというか、別に一方通行でもどうでも面白ければ構わない狐としては
通じないなら通じないで気にしているわけではない

狐としてはからかってみたさはあるが、それはそれとして冗談は通じそうだなと思いつつも
面白そうなのでせっかくだから距離を詰めてみる
放っておけば一足一刀どころかふれあう距離まで距離を詰めるだろう)

スノール > この竜がいた世界では獣耳を持つ獣人はわりかし多くいたため、もしかしたら同郷かもしれないと希望を持って狐に声をかけたのだが、残念ながら違ったらしい。
言葉が通じないとみれば、再び竜は押し黙り、ただ頭を下げた。
女に対して、不躾に声をかけたことを詫びたのだろう。
そして、その隙に狐の接近を易々と許してしまうわけだが、拒絶の意思を見せる様子はない。
少なくとも、敵意は感じないためか。
狐の香が届くほどの接近にも竜は拒否を示すこともなく、ただその様子を見ていた。
竜からすれば、少しばかりの郷愁に浸ったのかもしれない。
彼からすれば、この世界は獣人の数が少なすぎる。

白椿 > ふむ……面白いの、礼は弁えておるのに追い剥ぎじみた真似かえ?
礼が判るのであればもっと触れてみたくなるであるの。

大方、その様子では意思の疎通もままならないのであろ?
さりとて、他人と適切な距離をとってしまうが故に理解されないのではないかの
特に粗暴な輩相手では然もありなん

ふふ、拒絶しないのであるなら此方は好きにさせてもらうが良いのかえ?

(放っておけば狐はしなだれかかってくる。
反応を楽しみたいが故だが、異世界で優秀かもしれない相手となれば、プログラムとしてセットされた目的故に
相手の塩基配列に繋がるものを欲するところがあり、一時的接触や性行為等による体液等のデータを必要とするので
狐の人形はどうしてもそういた相手に興味と好意を抱いてしまう癖があった

つまり……都合が良すぎるぐらい馴れ馴れしく気易い上に艶めかしく妖しく、それでいて嫌なぐらいにちょうどよく好意的で
その割に興味本意でつかず離れずなのだ
ある意味では不気味なほど近しいのに目が離せない、触れるほど馴れ馴れしいのに距離があるそういう人形だった)

スノール > 狐の香りが鼻腔をくすぐる距離にまで近寄られ、流石に眉間を歪める。
不快感からではない。単純な困惑である。
その上で、何かを察したのか、竜人は困ったように財布を取りだし、中身を見せた。
もし見たなら、ほとんど中身が入っていないことがわかる。
だいたいは小銭で、目立つものといえば、牙か何かを加工したと思われるお守りが大事そうに一つ入っているだけだ。
場所も場所であるが、それ以上に狐の出で立ちと香からして何かを勘違いしたのか、竜は全く申し訳なさそうにまた頭を下げた。

白椿 > (人柄と性格とを把握した
あとは実力の程を見る必要が……見なくてもある程度わかりはするものの、ある)

……なるほど、先程のは追い剥ぎではなく、掏られたのであるな
とは言え、隙アリだの?

(……微笑。
次の瞬間、竜人の世界が回転するだろうか
斜め上の地面へと落ちていく感覚
立っているのに地面に倒されているような

対処ができなければ、気がつけば地面に叩きつけられるでもなく寝かされていることだろう
そのお守りのようなものを取り上げられた状態で

無理に対処しようとすればしたで、平衡感覚が恐ろしく狂って揺さぶられるような異常な感覚を
自覚してしまうだろう)

スノール > 「……!?」

一瞬で視界が動転し、世界が揺らぐ。
柔らの技か。それとも魔術か。
確かめている暇は当然なく、何より竜は武人。
考えるよりも先に体が動く。
動く視界に逆らうように、脚を踏み出すが……瞑目する。
目ではない。耳でもない。単純に空気の動きで己の状態を整理し、踏みとどまり、飛び退く。
 
一息で間合いをとり、右手を伸ばすは剣の柄。
見据える先は狐の眼。
意を視線で問い質し、低く唸るが……竜の口元に浮かぶは微笑。
 
怒りではない。
ただ、問うのだ。

武にて問うのかと。

白椿 > ふむ……いまので倒れぬのか、善いの
とすると、其方はだいぶ壊れているか狂った感覚を持っていると見える
正しければ正しいほどおかしくなるからの

それで、別に手を合わせずとも善いのだが……そのほうが楽であろ?
言葉で語れないのであれば、体で語るしかないである故

(そう言っている最中にも、微笑む狐がゆがんでいく
狐が歪んでいるのか、己の感覚が歪んでいるのか、世界が歪んでいるのか
ともすれば足元や、剣の感覚もずれていくかもしれない
わかりやすい、是の答えだった)

スノール > 視界の先で、狐の姿が揺らぎ、霞み、ねじ曲がる。
それどころではない。天地の感覚すら既に消失し、ともすれば今握っている柄の感触すら曖昧になる。
幻術の類か。竜の自答に答えるものはない。
しかし、身体は答える。
ならば、することは一つ。
改めて剣の柄を握り、確りと両足を地に踏みしめ、再び竜は瞑目し、口中で呪文の詠唱を始める。
唱える呪文は異界の呪文。
ゆっくりと、一語一語紡いでいく。
鞘に収まったままの大剣から流れ出す紫電が、バチバチと周囲に帯電し、空気中で火花を散らす。

白椿 > (地に両足は付いている、踏みしめてるはずである
だというのに、放っておけば斜め上に落下し地面に激突するだろう

厄介なのは、感覚と空間が同時にいじられているということだ
つまり、幻術であろうがなかろうが、事実が進行する
狂っていることと正しいことと同時に狂う
そして……肝心の感覚自体も狂わされるということだ

狐の姿が歪んだのは幻術ではなく、空間が歪んだのであり
剣の柄が消失したのは感覚が歪んだためである

狐は妖艶に扇を広げ、妖しげな視線を送る
もちろん意味はなく、そのほうが美しいからである

以前はリミッターをかけられていたこの同時使用も現在は解除され、故に初手から奥義のようなスタンスである

故に……様子見としては強すぎる技でもあり、狐はそのあたりをひどく気に入ってもいた)

……まあ、そのあたりまではそうであろ
問題はその後よな

(声は正面から聞こえる、だが、その方向に狐がいるかどうかはわからない)

スノール > 呪文と紡ぎ終えると同時に。
竜が動く。駆ける。
この感覚が消失し、空間すら歪み始めた場においてそれでなお、疾る。
紫電を迸らせ、大地を抉り、粉塵を巻き上げて。
疾る。
 
己の感覚は信頼できない。
幻の術中では期待ができない。
竜はそう判断した。故に。
 
感覚を『外注』に出す。
即ち大剣……魔剣に宿った電撃を用い、己の意思ではなく、魔剣の電撃……外部の電気刺激により体を駆動させ。
魔術により地との親和性を高め、地を越して自らの『魔力』の動きを探る。
 
即席の外注索敵機構を仕上げ、竜は疾しる。
 
狙うは扇を振るう狐。
 
巻き上がる粉塵の揺らぎを魔剣の紫電で捉え、左の拳を振るう。

白椿 > うむ、天晴である、褒めて遣わしても好い

(ただ、コレはあくまでも、ここまでで初めて「己が通常行動できる」だけでしかない
故に、この空間での存在が不確かになっている狐を捉えられるかというとまた別問題である
自動で向かったところでその先に相手がいるかどうかの判別が出来ない
そもそも、距離を詰められるかどうかがわからない

それでも、その状態で内蔵が掻き回されたり平衡感覚の狂いから吐いたりしない時点でそれは素晴らしい
つまりは歪んだ宇宙空間に放り出されてなお戦えるということでもある

……だが。
そう知ってしまえば、狐は好意と興味を抱かずにはいられない

だから、その左手が空を切る代わりに、龍の背中に抱きついた
感情的にそうせざるを得なかったからだ)

……それこそ、此れ程の者と知れば、愛しいと思わざるを得ぬ故
何故にこのようなところで燻っておるのか不思議であるの
(その気があるなら、どこかにコミュニケーションなりなんなりとれるであろう
だがどうだ、此れほどのものが先ほどのように市井のチンピラと小競り合いするような立場というのは如何ともし難い
狐はそう思ってしまえば、己の寂しさと重ね合わすように自分の身を押し付けるしかできなかった

……そういう意味では狐も不器用ではあるのだが)

スノール > 空を切る左拳。ここは敵の術中。ならばそれもまた然り。
故に、その感覚には頓着せず、空かさず敵の気配を探ろうと呪文を詠唱したところ。

丁度、背後から香る狐の匂い。
直後、背を抱かれ、背後を見れば、そこに居たのは、最早敵意がないように思える女狐であった。
実際のところは当然竜には判断のしようがないのだが、敵意があったとすれば先ほどの一撃は抱擁ではなく必殺の刺突であったはず。
それが、両の腕で抱くに留めるとなれば、状況としてはそう判断するのが妥当であろう。

何より、武人として戦場にて背後をとられ、剰え奇襲まで受けたのだ。
立会いならば既に勝負ありといえる。 
故に、竜も拳は納め、ただ向き直った。
 
言葉は未だ、竜には分からない。
だが、勝負あったのならば、最早、場を穢すような真似はしなかった。

白椿 > (……そも、先ほどの攻撃、左腕でなければ所在の不明を確認できたかもしれないのだ
剣による感覚である以上、狐のいる空間がずれれば、剣より遅い体では追い切れないからだ

ただ、狐の方もこうなってしまうと、気持ち的に愛おしさが勝ってしまう
これだけの武人が居所もなく燻っているというのは、通常であっても思うところがあるというのに
ましてやその実力を試すような行為で、更に知ってしまった

一言で言えば、はなれたくない
そう思うよう、感情が動いてしまうのだった)

……しばらくこのままでいてもいいかや?
(あまり勝負をつけたつもりはない
このまま自分ごと電撃にさらされることも覚悟したうえでの行為でもあり、
その場合、竜の耐久力に劣るであろう自身が無事でいられる保証はない

故に、その優しさにも少し浸っていたかったというのもあった)

スノール > 言葉の意味は当然竜にはわからない。
だが、仕草や語気である程度の意図を察する事は出来る。
異世界出身とはいえ、そこまで派手に何もかも違う所からは来たわけではないのだ。
それは竜が剣を扱う武人であり、こちらでもなんとか通用する礼節を扱うことからも明らかであった。
故に、女がそうなっているともなれば、竜の行いもそれに相応しいものとなる。
即ち、ただ身を預けてくる狐の頭に手を乗せ。
そのまま、撫でる。稚児に触れるように。
こちらの事は竜はしらない。
だが、獣人の中には相手の力の程を確かめてから友愛を示す種族もいる。
この狐もその類なのやもしれぬと一人推察し、ただそうした。
最早、敵意も害意も竜にはない。
ただ、じゃれつかれたのだろう程度に竜は先ほどの凶行を片付けていた。

白椿 > ふ……ぁ……

(撫でられてしまえば、抗えない
正確にはそのようなことをするなと突っぱねてしまいたいところだが、コレはむしろ撫でられたさがある
むしろ撫でられるのは好きであり撫でられたい
ただ、それを認めてしまうのは狐としていただけない
いただけないのだが、自分から抱きついてしまった手前、抗えなかった、ぐぬぬ

もどかしい気持ちを抱えつつも、実際はただただ嬉しそうに撫でられているだけであり
更に身を預けるしか出来なかった
気が多く扇情的で高圧的なくせに、とにかく寂しがりで甘えたがりなのだ
だからこうされてしまうと、どうしようもない

それがターゲットとしての目標とも一致すればプログラム的にも抗えなかった)

スノール > やはり、先ほどの行いはじゃれ付いただけであったか。
そう、手前勝手に竜は納得し、ただ頭を撫で続ける。
狐。特に獣人の狐はいつまでたっても若い見た目であることも珍しくないため、外見では年齢が判断しづらいが、恐らくこの狐は本当に年若い狐なのであろう。
ならば、噛みつかれたが実際に傷を負ったわけでもなし。
先ほどの事は甘噛みとでも解して、ただ竜は無骨なその手で頭を撫でる。
見た所、喜んでもいるようなので、まぁ大丈夫だろう。
このような獣人の少ない世界では、この狐はどこか心細かったのやも知れない。
そう思えば、無下にする気も起きなかった。

白椿 > んぅ……其方、名も呼べぬであっては、寂しくも思えるの
我は白椿という……せめて名を知れればその方を呼ぶこともできるのであるが

(甘えるにしても、名前も呼べないのは少々寂しい物がある
狐の仕事は強い相手を見つけては甘えるなり何なりし、相手の情報を持ち帰ることにある
が、プログラム的にはそうであっても、狐本人からすれば、キュンと来るだけでありフィーリングが合うように感じるだけである

だから甘やかされてしまうと、こう、どうしても溺れてしまう
きゅ、とジャケットをつかむその細く綺麗な指に力が入るくらいには、そうだった)

スノール > 衣服の袖を強く掴まれ、先ほどよりもしおらしく思える声色で話す狐。
言葉は依然不明なままであるが、好意的な感情をこちらに抱いていることは流石の竜にもわかった。
やはり、先ほどの手合わせは力量をみるため。
そして、その力の程度によって相手そのものを量る。
戦に身を投じる種族ならば珍しくもない慣習だ。
故に竜もそれらを不信には思わず、ただ撫でた。
一先ずは、この狐が落ち着くまでは続けるとしよう。
ここで文字通り袖を払うなどという真似は余りに無体である。

白椿 > ぁふ……んっ
このようにされては……御前様が……愛おしくなるばかりぞ……

(むしろ撫でられ続ければ狐はどんどん止められなくなってきてしまう
高潮し、吐息は色を帯び、さらに身を預けるようになる一方である

狐にはこうなってしまったらどうしようもない
自身では抗えないし、抗いたくない
プログラムの通りであろうとなんだろうと関係なく、抗いたくない

だって……目の前の竜はこんなにも立派な武人なのだ
それを意識下で理解してしまったら、どうしようもなく甘えたいしめちゃくちゃにされたかった
そういう人形なのだ
……だが、狐はそうなることを望んでしまうのだ

その様子は竜にも判るだろう、明らかに狐は発情し始めている)

スノール > 明らかに声色に艶の混じった様子の狐をみて、竜は眉間に皺を寄せる。
戦の熱が昂じての求愛。それこそ、戦を是とする種の雌ならば珍しいことではない。
だが、それは大半に於いては一時の気の迷いである。
しかも、この狐は明らかに若い。刷り込みという可能性もある。
ともなれば、竜のとる手は一手である。
そっと手を離し、首を左右に振る。
ぽんぽんと、今度は肩を撫でる。
 
据え膳喰わぬは何とやらとはいうが、だからと言ってそれにむしゃぶりつくほどの獣欲はこの竜にはない。
 
それは律するものである。
何故か。それは竜が武人であるが故。
 
潤む瞳の狐の目を見て、笑みを象った後、首回りの鱗を一枚手に取り。
まるで岩の葉ともいえるようなそれを、迷いなく千切り取る。
軽く出血するが、構うことなく鱗についた血をふき取り、狐に差し出す。
 
立会いの勝者に向けて、渡すものである。
あくまで我々は尋常な立ち合いをしたという証。
そう、女ではなく、友とみた証であるのだが……それがこの世界では常識ではなく、竜の世界の文化……しかもごく一部の文化を知らない限り、まず伝わるはずもないということには、竜は気付けなかった。

白椿 > ……ん、っ
(残念そうにその手に自らの手を重ねる狐
少女にとってそれは律するものではない、設定されるものである
だが少女はそれを理解できない
寂しそうに愛おしそうに、その手に口づけをする

強力な機体でありなおかつ美しくコミュニケーション性も完成度も高い
相手に警戒させずに調査をし、その上で目的を遂行するのに非常に都合がいい

だが、プログラムによる寂しさゆえに独り立ちできず人を求めてしまうのだ
有事であれば誰かを思い、そうでなければ自ら事件を探してしまう、そういう人形でありそうできている
鱗を手に入れれば大事そうに抱え唇を這わせるだろう
ターゲットの必要なそれをひとつは手に入れたのだから

だがその気持ちが設定されたものだということを理解できない狐は、プログラムに従い、大事なマテリアルに
寂しさと満たされない愛しい気持ちを預けるのみだった)

……まったく、詮無いの
(ここまでされてしまっては、返す言葉もない。寂しいが従うしかない
それに、狐は甘やかされたあとは弱いのだ)

スノール > 鱗を受け取り、過剰に手と鱗に口付けをするが……それ以上には及ばぬ狐を見て、竜は頷く。
どうやら伝わったらしい。
別に完全に伝わったわけではないのだが、やはり、それに竜が気付ける材料は今此処にはなかった。
故に、竜はそれを持って相互理解と解し、踵を返す。
いずれ日も落ちる。
ともなれば、いつまでも身を置くには此処は不適切な場所だ。
少なくとも、あまり落ち着く場所とはいえまい。

白椿 > ……ん、また……の

(寂しそうながらも見送る狐
普通ならコレはお守りのように誰にも触れさせずに持っておくのだろうが。
だがこの後、すべての出来事を洗いざらい研究所で晒した上で鱗を提出するのだ
無論、整合性や関係性のために鱗そのものは手元に持っておくが、それでもサンプルとして出してしまうことには変わりない
そして必要なことはすべて後継で最強の姉妹機であるヴァルトラウテに引き継がれる

だが狐はそもそも人形であることすら知らないし理解もできない
優秀な狐として奔放に振る舞うだけだった

満たされない寂しさを抱えたまま)

スノール > 狐の事情をまた、竜が知るはずもない。
だからこそ、今はただ互いに別れる。
強い相手と出会えた喜びを胸に。
竜は武人であるが故、見る所はそこであった。
一度、大きく手を振ってから、路地裏の奥へと消えていく。
学籍がない竜の戻るべき場は、一先ず今はそちらなのだ。

ご案内:「路地裏」からスノールさんが去りました。
白椿 > ……あれ程の者が在野で、何も出来ずにおるとは寂しい限りだの

(自身の気持ちをあえて別の言葉に置き換えつつ、見送る狐
学校に行くでもすればまた方法もあるのだろうが、本人にその気があるかどうかでもあるし
そこにまでどうこうするということでもない

それに狐には自身のすること……正確には自身がしたくてするわけでもないこともある
故に、その場からするりと、跡を残さないように消え失せた)

ご案内:「路地裏」から白椿さんが去りました。