2016/01/19 のログ
レンファ > 「………」

まさに蜘蛛の子散らす
散り散りになって消えていった集団
自分に向かってきた男がリーダー格であったらしい

「解除」

ぼそり、とそう呟くと大量の分身が一斉に消え去る
場も落ち着きを取り戻しただろうか、僅かな戦闘痕と一つの死体が残るのみだ

結局雨に濡れてしまったし袖も燃えてしまったことに少々落胆していると、闖入者の女から声をかけられそちらへと視線を向ける

「生かしておく理由もなかった」

淡々とそう答え、竜人のほうも無事であることを確認する

「(……でっかいな、異邦人か、竜人ってのはみんなにでっかいのか…?)」

スノール > 二人の活躍もあり、竜人のほうはそれこそ傷一つない。
だが、涼香からの問いかけに、これまた竜人は困ったように小首を傾げる。
体格差の関係からレンファも涼香も見下ろす形になるため、若干威圧的な趣もあるが、無論そんな意図は竜人にはない。
角の先についた雨雫が大粒となり地面に落ちた時、丁度、竜人は口を開いた。
 
「     」
 
しかし、それは公用語ではなかった。
ラテン語に似ているが、それとも微妙に違う。
どうやら、異世界の言語のようだ。
先ほど不良達に絡まれても竜人が何の反応も示さなかったのは、単純に言葉が通じなかったためなのであろう。
 

永江涼香 > 「(怖っ!)」

生かす理由もないが、殺すに足る理由もなかったろうに。
否……もしかしたら、『生かす理由がない』と言うだけで、この少女にとっては『殺すに足る理由』になるのかもしれない。

「でも、この学校、一応むやみに殺すのはご法度でしょうに」

一応、規則の上ではダメだったとあったはずだ。形骸化しているのだろうか?
スノールの方は……

「……ゑ?」

小首を傾げる。全く意味が分からない。
もしかしたら……

「(……言葉、通じてない?)」

だとしたら、さっきの不良達に絡まれて反応を示さなかったのも、単に言ってる意味が分からなかったのかもしれない。もしくは、聞けるが話せない、とかだろうか?

「えーと、私の言ってる意味わかる?同じ言葉使える?」

と言いつつ、親指を立てて首を縦に振り、その後両手で×を作って首を横に振る。
つまり『肯定なら頷いて、否定なら首を横に振って』と言う意味なのだが、通じただろうか。

レンファ > 竜人の言葉が認識できない
が、取得した波形パターンからそれがラトス語であると理解できた
確かラテン語に類似した異世界言語、学園のデータベースにもしっかりと記載されていた
取得した言葉の波形をデータベースと照らしあわせ、ラテン語との類似点、相違点を算出、言語パターンを構築していく

「     」
レンファの口から発せられたのは、竜人からすれば拙い、片言ともとれるだろう
それでも意味するところは取れる言葉のはずで
『竜人、怪我はないか。お前の名は?』
そう問いかける

返事を待っていると、後ろから女の言葉が刺さる

「……悪いけど、この学園の生徒では───」
言いかけて口を噤む
この格好をしていれば生徒、少なくともこの学園のルールの中で生きていると見られても仕方のないことだ

「………正当防衛だ」

若干苦しい言い訳にシフトした

スノール > 涼香のジェスチャーにも、竜人は困ったように小首をかしげ、その後に首を左右に振った。
簡単なジェスチャーであればある程度は共通認識があるようだが、常世学園の公用語は、どうも聞くことも話すことも困難であるらしい。
だが、横からレンファに話しかけられれば、竜人はそちらに首を向け、目を見開いてから、返事をかえした。
 
『驚いた。よもや、此の地で子女から我が故郷の言葉を聞くことになるとは』
 
そして、一度頭を下げてから、竜人は改めて問いに答える。
 
『我が名は「牙を剥くもの」スノール。
そちらの二人のお陰で、怪我はない。礼を言う』
 
そういってから、腰の大剣の柄に手を伸ばし、引き抜く。
稲妻を帯びた、蒼い大剣だ。
その切っ先を天へと掲げて一度瞑目した。
 
文字通りの儀礼である。
 

永江涼香 > 「(え、アイツあの謎の言語話せるの…!?)」

物凄く取り残された気持ちになりあたふた。とは言え、そのまま固まっているわけにもいかない。
儀礼的な動作から、敬意を示しているのは分かるのだが……首を振った辺り、本当に言語的には通じてないのだろう。

「過剰防衛……いやーでも、殺す気はあったっぽいし正当防衛になるのかしら?
……で、ちょっと翻訳してくんない?」

情けない、と言う気持ちを脇に置いてレンファに翻訳を頼む。
流石に、まるで会話出来ない、と言うのは辛いものがあるのだ。

レンファ > 『急拵えだ。拙くてすまない』
なんとか通じていることを確認し、言葉を続けてゆく
この竜人はこちらの発音ではスノールという名であるらしい
その言葉遣いから、武人めいたものを感じる

『礼には及ばない。自分の身を守っただけだ。ボクはレンファ……』

そこまで言葉を投げたところで、女…涼華へと振り返る

「細かいことはどうでもいいだろ。
 この竜人はスノールという名らしい、礼を言っている。
 女、お前の名前は何だ」

都合の悪い話題を遠投で放り投げるような態度であるが、淡々とそう問いかける

スノール > 『レンファか。結果的に此の武を濁さずに済んだ。重ねて礼を言う。
言葉に関しては、むしろ吾が身こそ、流浪の身にも関わらず其方の言葉を話せず、申し訳ない。手間をかける』
 
岩をすり合わせる様な低音でそう語りながら、涼香にも向き直り、同じように剣を天に突き立てて礼を言う。
 
『こちらの剣士にも、礼を言いたい。同じ言葉で礼を言えないのは口惜しい限りであるが……』

永江涼香 > 「人殺しといて細かい話かなぁ……ま、いっか。
私は涼香。天照大御神の力を宿す天性の巫女、永江涼香よ!」

ドヤァ、と言わんばかりの笑顔で名乗る。
涼香にとって、天照大御神の力を宿す天性の巫女、と言うのは大事な拠り所であり、誇りでもある。
故に、えらそーに喧伝してしまうのだ。

「で、スノール、ね。じゃあ『別にいいわ、単にチンピラが目についたから祓っただけだし』って言っといて」

今度は少し照れくさそうに。
涼香は善を良しとする。が、同時にそれになんとなくの恥ずかしさを持っている。
ので、素直に礼を言われてしまうと、なんだか気恥ずかしくなってしまうのだ。

レンファ > 『武人の方が出歩くには此処は少々薄汚れた街だ。異邦人街に近いから仕方がないが…』
実力者ならば危険はそれほどないが、
誇りあるものを汚したくないならば近寄るべきではない場所ではあるだろう

『あの剣士は永江涼香というらしい、礼を言っているということは伝えておいた』
ところどころ詰まるような、付け焼き刃のラトス語ではあったがなんとか通じているだろう

「………」
ちら、と涼香へと一瞬だけ視線を向けて

『超かっこよく助けてやったんだから感謝しなさい、とのことだ』
ついさっきのドヤ顔が気に触ったのかまるっきり大嘘を翻訳して伝えるのであった

「で、やたらと殺人を気にするがお前は何だ…風紀委員か何かか」

スノール > 『残念ながら、あの塀の向こうに行くことは私は出来ないようでな。
数少ない同じ言葉を話す者たちが教示してくれたが、身元の判然としない亜人はこちらの区画に押し込めるのがこの街の慣わしらしい。
故に、私もそうするほかないだろう。郷に入らば郷に従うべし。流浪の身であるなら尚更だ』
 
異世界から転移事故という形でこちらに来たスノールには、当然ながら戸籍がない。
そんな状態の異邦人では、おいそれと気安く異邦人街には入れないのだろう。
 
『ふむ、わかった。レンファ、申し訳ないが、重ねて感謝の意を伝えてくれ。
業物を振るうに恥じぬ武辺。美事である、と』

永江涼香 > 「……?」

小首をかしげる。あれ、今レンファからなんか嫌な感じ(悪戯方面で)を感じたような……?


「んー?別に風紀じゃないわよ、私。単にほら、これでも私、神に仕える身だから。安易な殺生はちょっと気にかかる、ってだけ」

軽い調子で告げる。
言ってしまえば、涼香の持っている良識・常識の問題である。
あっさり殺しちゃうのはどうよ、常識的に考えて……的な物であるため、涼香自身もあまり強く推す気はない。
『思ふこと 言はでぞただに やみぬべき 我と等しき 人しなければ』と言う短歌もある。自分と同じ心の人などいないのだから、思ったことは口にせず黙っておくべきだ、と言う意味の、在原業平の歌だ。
涼香自身はおしゃべりな性分なので口は開くが、それでもごり押しはしなくてもいいか、位に割り切っているのだった。

「で、スノールはなんて言ってるわけ?」

なので、殺生の話題もそこそこに、翻訳を促す。まさか嘘っぱちを翻訳で伝えられているとはつゆ知らずに。

レンファ > 『成程、ままならない異世界での生活、苦労は察する。
 ……わかった、伝えておこう』

あまり異邦人の街を歩いたことはないが、やはりそういった事情は色んな所に混在しているのだろう
望んでこの島にいるわけではない、というのは僅かだが親近感を覚える

「……どうした変な顔をして、
 『業物を振るうに恥じぬ武辺。美事である』だそうだ」

そしてスノールの翻訳は脚色加えずそのままするのであった

「神こそもっとも安易に命を弄んでいるだろうに…まぁ良いか」
続く言葉は小さな声で呟くように、聞こえたか聞こえなかったかは、わからない

スノール > 『ありがたい。先ほどから何度も手間を掛けさせて済まないな、レンファ。
時に、レンファ。いや、スズカもだな。
先ほどの武の冴えを見れば心配無用とは思うが、此の街は女性の独り歩きには似つかわしくない。
この区画を抜けるまでは吾が身をせめて盾に使ってほしい。
申し訳ないが武に対して支払えるものがそれくらいしか今はない。
許してくれるだろうか』
 
変わらぬ声色のまま、無機質にそう尋ねる。
いや、おそらくは竜人なりの感情の色はあるのだろうが、それは人のそれとは若干異なるのだろう。

永江涼香 > 「……はぁ!?」

顔を真っ赤にして首を横に振る。
そんな、武辺だなどと言われては余計に恥ずかしい。そもそも……

「あ、あの『天孫降臨』は、この『天照』の力を使っただけよ!そんな褒めるもんでもないし、ああもう!」

謙遜と言うよりは単なる照れ隠しで、手元の宝剣……『天照』を指差しながら声を荒げる。
偉そうなくせに、いざそう扱われると恥ずかしくなってしまうあたり、まだまだ子供であるとも言えようか。
そして、わーきゃー言っているがために、最後の言葉は幸か不幸か、耳に届かなかった。

「あーもう、翻訳!さっさとしなさいよね!」

照れ隠しのために余計偉そうに、レンファに指示を出す。
とは言え、「天性の巫女」だなどと言う自称からはかけ離れた、威厳も何もない姿であるため、高圧さよりは微笑ましさを感じる類のものかもしれない。

レンファ > 『意思の疎通ができないのは不都合も多いだろ、気にするな。……わかった、好意は受け取るよ』

要するに危ないから送ってくよ、ということである
なかなかどうして、こんなところに押し込められるのは勿体無いものだ

「ウルサイなお前、神職なら少しは落ち着け。
 ……此処は危険だからボク達を町の入口まで送っていくそうだ」

わーきゃー煩い涼香にジト目で肩を竦めつつ、そう通訳する
本人の照れ隠しとかは正直どうでもいいので放置である

スノール > 『立つ瀬を与えてくれて感謝する。では、早速いこう。雨露も体に障る』

そういって先を促し、先導を引き受けるが、照れ隠しに騒ぐ涼香の様子を見て、竜人は僅かに眉間に皺を寄せる。
その後、申し訳なさそうにまた頭を下げた。
 
『どうやら、スズカ程の腕ともなると武を徒に囃し立てることは誹りと受け取られてしまうようだな。
軽々しく業前に言葉を重ねたことを謝りたい。良ければ、そう伝えてくれレンファ』
 
そう、竜人は少しばかり勘違いをしていた。
あまり不都合のある勘違いでもないだろうが。

永江涼香 > 「神職として静かにしろ、なんて聞き飽きたわ。だから出てきたんだから。
あー……んー、別にいいわよ、って言いたいところだけど、無粋かしらね」

うーん、と少し考え込む。
涼香は日輪の象徴、天照大御神に仕える巫女である。そうは見えないが、そうなのである。
なので、出来る限り堂々と、誰に守られることも、誰に恥じる事もなくいる、と言う事をある程度自分に義務付けている。神に仕える者の誇り、と言う奴だ。
とは言え、だからと言ってこの竜人の、恩を返したいという善意を袖にするのは、それはそれでどうなのだろうか。
そんな葛藤を少しの間続け……

「見栄より義を取るべきね。いいわ、じゃあ『お願いする』って言っといて」

うん、と頷きそう決める。
自分の誇りと言う意地より、目の前の竜人の誠意を重んずるべきだ、と判断したのだ。

レンファ > 『あぁ、心配することはない、あれは単に素直な褒め言葉を向けられて照れているだけだからな』

巨大な体躯に近づけば、風で斜め降りになっていた雨が遮られる
少しずつ少しずつ、雨足は強くなっているようだ

「そもそも男の申し出を不躾に断るものじゃない ……と思うぞ。
 義とか面倒なものより、女なら男を立てろと習わなかったのか、お前」

謎の古風な概念を持ち出しつつ涼華にそう答えて

『じゃ、お願いするよ。スノール』

スノール > 『照れか。確かに、人の女性は特に若いうちは良く照れると聞いたな。
感情の幅は剣の威にも乗る。それが、もしかしたらスズカの武威なのやもしれんな。
何にせよ、意を受け取ってくれて感謝する。行こう』
 
雨から二人を護る様に少し前に立ちながら、路地を進んでいく。
異邦人である上に言葉が通じない以上、決して落第街に溶け込んでいるとは言えないとはいえ、単純に長く過ごしていれば土地勘はつく。
慣れた様子で路地をいくつも曲がりながら、二人を先導していく。
 
『しかし、此方の世界には女の武辺が多いな。
私の世界にもいなかったわけではないが、此方の世界程の数ではなかった。
もしや、この世界では男よりも女の方が武に優れるのが普通なのか?』
 

永江涼香 > 「私は天照大御神に仕える巫女よ、私が変になよなよしてたら天照大御神の神威を疑われてしまうわ」

妙に毅然とした表情で、レンファに告げる。
まるで自分≒天照大御神、と言わんばかりの物言いではあるが、そこまで的外れでもない。
なんせ、天照大御神と言う女神と非常に親和性の高い神的適性を持った肉体で生まれ、生まれたその時から天照大御神の加護を受け続けているのだ。
故に、自分は、天照大御神の影響を最も受けている存在だ、と考えている。
奔放なのは我儘としても、最低限常に誇り高く、を旨としているのである。
……我儘による妥協もそこそこに含むため、まあ中々理解されがたい誇りではあるのだが。

「ま、いいわ。今はよろしくお願いするわよ、スノール」

軽い調子で言いながら、スノールの巨体に近寄って一緒に歩くことにする。
……言ってることはまるで分らないので、総じてレンファの翻訳待ちではあるのだが。

レンファ > 「天照ナントカの神威が疑われる前に、お前の女性としての品格が疑われなければいいが」
余計な一言を言いつつ、その巨大な背について歩く

『素直な賛辞を嬉しくも恥ずかしいと感じる種族だ、個体差はあるが。
 ……どうだろうな、かくいうボクも此処には流れてきた身なんだが…』

異能力者が集まる島
その能力の優劣に男女の差が占める割合があるのかどうか…

「涼香って言ったか…。
 この島は男よりも女のほうが強いのかと聞いてるぞ」

スノール > 『ほう、レンファも同じ流浪の身か。
ならば、レンファも此処とは違う世界から来たのか?
スズカは見るからに此方の世界の住民のようだが、レンファからは少し異質な威を私も感じている』
 
完全な直感でしかないようだが、そう受け取ってはいるらしい。
 

永江涼香 > 「なっ……私の品格って、そりゃあもうパーフェクト……とは、言えない、けど……」

破天荒に振る舞っている自覚はあるらしく、ちょっと気まずそうになる。
そもそも、親に『もっと淑やかであれ』と言われ続けて、それに反発してきた身だ。女性らしさ、と言う意味では微妙と言わざるを得ない自覚はあるのである。

「知らないわよ、私もここにきて少しだし。ただ、そうねぇ……神社の近くの道場だと、普通に男が強かったわ。師匠も男だし」

ここでいう神社とは、涼香の実家の神社の事である。
一応、この宝剣『天照』を扱える才能があったため、剣術も一応教えられたのだ。
そこまで熟達しているわけではなく、実際伝位としては表位(下から二番目)ではあるが……その道場では、やはり男の方が強かった記憶がある。
そこそこに出来る女剣士もいたはいたが、トップ10くらいを並べればほぼ男が独占するくらいであっただろう。

「私は特別。天照大御神の加護があるから、そこらの男よりは強いだろうけど……普通は男の方が強いんじゃない?」

レンファも強そうだけど、と肩を竦める。
もしかしたら、この島は本当に女の方が強い世界なのかもしれない。だとしたらびっくりではあるが。

レンファ > 転移事故によるスリップフィールド、
意図しない世界線への逸脱移動であったが、そこまで詳しい説明は付け焼き刃のラトス語ではできず…

『うん、事故みたいなものでね。
 幸いこうやって言語を適応させることができる、スノール程苦労はしていないな』

簡潔にそう答える
目の前の巨躯は、それほどの勢いもないとはいえ横から殴りつける雨から自分たちを覆っている

『ありがたいが、風邪はひかないようにな』
と言葉につけくわえる

横並びに歩く涼香の言葉に耳を貸せば、なるほど
この女もこの島に来てそう経ってはいないらしい

「身体的にはそうだろうな。この島は異能者の巣窟だからわからないが」

肩を竦めつつそう答え

『性別の差よりも能力の有無で決まるんじゃないか、この島では特に』
とスノールに言葉を返す

スノール > 『レンファも事故か。では、同じ身の上ではあるな。
何、言葉の有無は武人にとっては二の次でしかない。
丈夫さだけが取り柄の身体と相俟れば、それこそ不便など、この雨露のようなものだ。
何より、言葉が通じたところで話が出来るとは限らないからな。
この世界では亜人は殊更畏れられるようであるしな』
 
言葉が通じずとも、竜人も此処にきて亜人がどう扱われているかと知る事くらいは出来る。
異邦人街の存在などを遠巻きに見ても、この世界の人間が異世界の亜人に対して迎合的な姿勢を取っていないことは明らかだ。
だからといって、竜人がそれに思う所があるわけではない。
程度、種族、立場の差はあれど、どこでもあることだ。
 
『ふむ、そうか。確かに魔術だけではなく、他の力もこの世界には色々あるようだからな。
思えば、以前に手合わせした雌猫の亜人の武もそういえば、そういう類ではあったな。
何にせよ喜ばしい事だ。私の世界では見られない形の武も、この世界にはある。
性差や体躯にも左右されない武。是非とも賞味を続けたいものだな』
 
先日、手合わせした猫の亜人。
ステーシー・バントラインの太刀筋を思い出して、思わず笑みをこぼす。
先ほどと同じような、岩がこすれるような笑い声。
 
『そろそろ、区画の外れだな。レンファもスズカも、中央通りのほうでいいのか?』

永江涼香 > 「ま、異能には男女差はないもんねー。寧ろ女性ゆえの異能もあるわけだし」

私みたいに、と胸を張る。
天照大御神との親和性。
それは、女神である天照大御神と同じ女性であるからこそ、持ちえた異能であるのは間違いないだろう。

「そう言うのを含めたら、強さに男女差はないのかもしれないわねー。レンファのさっきの分身も異能だったりするの?」

スノールに雨から守られつつ、小首をかしげてレンファに問い掛ける。
確かに、涼香にも10人くらいのレンファがちらっとだが見えたのだ。分身か、投影か……単純な興味として、気になる所である。

レンファ > 間もなく中央通りが見えてくる
ここを抜ければ歓楽街である

『人は見た目の違うものを畏れる。言ってしまえばボクだって9割は人じゃない。人の形をしてはいるけどな。
 ……あぁ、どうせ学生街の方面にいくには歓楽街の駅に行く必要があるからな。
 ボクも涼香もそれで問題ないはずだ』

言葉を返しつつふと、脇から眺め見ただけなので確信には遠いものの、
スノールの声色と表情の僅かな変化を感じて

「(笑った、のか?…不便はないとはいえ、やっぱり意思の疎通はあって然りじゃないか)」
そんなことを考える

「ボクは異能を保持していない。魔術の素養もない。…種明かしはしたらつまらないから言わない」

そんな多少意地悪にも聞こえる言葉を涼香へと返して、
開けた道、中央通りに出る
強くなるかと思われた雨足は心配通りとはならず、しとしととした霧雨へと変わってゆく

スノール > 『それは驚いた。確かに気配が少しばかり異質とは思っていたが……いや、それでも言われなければ見抜けなかったな。
体捌きと加えてみても、美事な技だ。
レンファのその武の冴えも、機があればこの身で味わいたいものだな』
 
冗談の色なく、それでいて殺気もなく、純粋に武辺としてそう伝え、区画の外れで足を止める。
 
『私がついていけるのは此処までだ。表通りでは私がいると却って面倒の種になる。
ここでお別れだ。
すまないがレンファ、スズカにもそう伝えてくれ』

永江涼香 > 「ふーん、なんか種はあるって事ね。じゃあ聞けないか」

あっけらかん、と引き下がる。
と言うのも、単純にその個人の戦闘における秘奥や術の種は軽々に聞くものではない、と教えられていたからだ。
『武人は、自分の秘奥や技の術理なんかは、身内以外には……ものによっては、身内にすら明かさないものだよ。種が割れていれば、対策なんかも容易に出来てしまうからねえ』とは、涼香の剣術の師の言である。
よって、これ以上踏み込むべきではない、と判断したのだ。

「え、なんか笑ってるの?なんて言ってるか教えてよ」

そして、そのままレンファに通訳を催促する。
……勿論ながら、二人がどんな会話をしているかなど、全くわかっていないのである。

レンファ > 『技の冴え、か…まぁ、どうせあんまり話し相手もいないんだろ。此処に定着しているのならたまに遊ぶくらいはいいかもな』

武人らしい言葉にはおそらく良い返事であろう言葉を返して、横に並ぶように立ち止まる

「ここでお別れ、だってさ涼香」
言われた言葉を涼香へと通訳する
霧雨とはいえ雨は雨、じっとしていると濡れてゆく一方だが、
歓楽街に入れば屋根付きのアーケードもあるだろう

「見破ってもらうほうが楽しいしな。
 あぁ、純粋にこの世界で今まで見もしなかった闘争術があるのが楽しいらしいよ。
 根っからの武人って感じだな、こいつ」

ちらりと見上げつつ、そう涼香に告げると、一足先に歩き始める

「それじゃ、またな」
『それじゃ、またな』

2つの言語で別れを告げて軽く右手を上げると踵を返し、歓楽街の方へと歩いて行った

すっかり制服も濡れてしまった
このまま部屋に入ってたら居候先に文句を言われるだろうか、まぁいいか、などと思いつつ…

スノール > 『期待している。先ほどの気配の消し方といい……徒者ではないことは良くわかるからな。
では、また。汝等に炎王の導きがあらんことを』
 
竜人もまた、そう別れの言葉を告げて、背中を向ける。
向かう先は落第街。来た道を戻るのみ。
路地裏の闇に巨躯を押し込めるようにして、竜人は消えて行った。

永江涼香 > 「ああ、成程。まあちょうどいい物ね」

言って、スノールを見上げる。
そして。

「ま、通じないだろうけど……『貴方に日輪の加護のあらんことを』。日輪の巫女のおまじないよ、効果は保証するわ」

にか、と笑って『天照』を軽く振るう。
精々、数日ちょっと運が良くなる程度のものだが……折角の縁だ、雨避けにもなってくれたしこれくらいでもしておこう、と言った所である。

「じゃ、機会があったら見破ったげるわ。正直自信はないけど」

武術はそこまでなのよねー。とレンファに向けてボヤきつつ、二人に別れの挨拶を飛ばす。

「それじゃーね。縁があったらまた会いましょ」

言って、背を向けて歩き出す。
ああ、やっぱりここは面白いところだ。精一杯、楽しもう。

ご案内:「路地裏」からレンファさんが去りました。
ご案内:「路地裏」からスノールさんが去りました。
ご案内:「路地裏」から永江涼香さんが去りました。