2016/06/30 のログ
ご案内:「路地裏」に紅葉椛さんが現れました。
紅葉椛 > 「はぁ……」

路地裏に大きなため息が響く。
そのため息の主は、路地裏に居るには些か不似合いな黄色いパーカーにホットパンツといった様相で、身の丈と然程変わらない大きな楽器ケースを背負っていた。

「進級がダメだと思ったら最近は仕事もダメだし、どうしたもんかな……
 最近は貯金を崩さないと買い食いもできないし、なんか美味しい仕事でもあればなぁ……」

またひとつのため息。
憂さ晴らしか、少女は足元の小石を思い切り蹴飛ばした。

ご案内:「路地裏」に夕霧さんが現れました。
夕霧 > 蹴とばした小石はそのまま路地を転がり、やがてコツン、と何かに当たりその動きを止めた。

「あら」

ふらりと暇つぶしをしていた所で、靴先に何か当たる感覚がしたと思えば、それは誰かが蹴とばしたであろう小石であり。

そして正面を見ればどうにもその蹴とばしたのは目の前の、恐らく同年代であろうパーカーを着こんだ女性で。

「随分と不景気そうですけど、どないかしはりましたん?」

ゆっくりと近づく。
普段ならこの辺りで誰かと関わろう、と言う事など無いのだが。

暇つぶし
気 紛 れ と言う奴で。

紅葉椛 > 小石を蹴飛ばした方向からの声を聞き、顔を上げれば女性が一人。
自分の事を棚に置くと、この辺りでは見かけることのなさそうな見た目で。
何か訳ありかもしれないが、それよりも小石が当たったのだろうか、つくづくついていない。そんな思考に支配され、ゆっくりと近付きつつ、自らの不運を恨む。

「あー、うん。最近は不景気のせいか仕事があんまり来なくてさー。
 それより、今蹴った小石当たってない?怪我してたら困るんだけど」

これで怪我をさせていれば治療費でまた貯金が減るなぁと、困ったように笑いつつ、女性の身を案じた。

夕霧 > 「当たりはしましたけど別に何もあらへんでしたよ」

こつこつ、と先ほど石の当たった足先を鳴らす。
ブーツなのでそうそう石が当たった所で怪我もない。
柔和な笑顔のまま、大よそこの路地裏では余り見かけれない表情で。
そして相手の方は何やら相当に落ち込んでいると言うか景気が悪そうな顔。

「まぁ、そうですね。余り下手な事をすると泣きっ面に蜂、といいますしなぁ」

軽く顎に指を置いて、そう呟く。

「ほら、よく漫画とかで。蹴った石が犬にあたって追い回される」

そういうのですよ、と。
言いながら彼女を見る。
大方、手持ちの楽器ケースではあるがこんな所で持っている者は早々見ないし、仕事、と言うのだからきっと「そういうこと」なんだろう。

「まぁ、不景気がいい事もある仕事もありますし」

彼女の都合はさておいて、ではあるが。

紅葉椛 > 「そう?ならよかった。
 もしかしたら治療費請求されるかもと思ってたんだよね」

何もなかったの言葉を聞き、一気に軽い調子へと。
何度も路地裏へ来てはいるが、このような表情をするのは、大抵ここの危険を理解していない馬鹿者か、若しくは自らの力に自信を持つ強者のどちらかだ。
いくらかの警戒はしつつも、軽い調子で言葉を続ける。

「流石に漫画みたいなことにはならないと思ったんだけどね。
 犬とかチンピラくらいなら一応なんとかできると思うし」

冗談めかすかのように笑う。
実際に、異能を振り回すだけのチンピラは何度も相手にしている。
それよりも、と言って更に一歩ずつ近寄る。

「不景気がいい仕事って例えば何があるかな?
 一応何でも屋してるんだけど、最近は依頼すら来ないから困ってるんだよね」

わざわざ言うからには、何かしらのアテはあるのだろう、と食いついた。

夕霧 > 怪我が無い、とわかった途端にその口調は軽いものへと変化して。
どちらかというとこれが地なのだろう、と予想をしながら。

「そうでしょうなぁ」

チンピラ程度どうにでもなる、という辺りに同意する。
まあ、彼女を知る訳も無いが事実そうである以外に考えもつかないし、ただのチンピラなどに敗けるようには到底感じられない。

「ふむ……仕事ですか」

さてさて、と少しばかり目を細めて唸る。
それは考えているようで、どこかふわっとはぐらかしているようで。
やがてふと思いついたのかゆっくりと腕を動かして椛の下顎に触れるか触れないかの位置に指を伸ばしていく。

「一日お相手してくれる、言うんでしたらええですよ」

ふふ、と先ほどの柔和な笑顔と一転し、少しばかり艶が入った笑みを貼り付けながら。
彼女に冗談か本気かそう提案して。

紅葉椛 > 喉を狙うかのような動きに、反射的に左手をパーカーのポケットへと動かすが、それが敵意からのものではないと理解すると、その手をゆっくりと、なるべく自然に下げた。

「相手っていうと……」

相手と言えば、まず浮かぶのが買い物などへ付き合うこと。次に浮かぶのが手合わせだが、この雰囲気から察するに、恐らくは前者だろう。
そう結論付け、続く言葉を紡ぐ。

「デートってことでいいのかな?
 普通はお金取るんだけど……情報料だしいいよ、いつ?」

内心では、艶っぽい笑みに気圧され、少し恥じらいつつも、その様子をなるべく出さないように。対等な交渉になるようにと、負けじと微笑を浮かべた。
……決して艶っぽくはないが。

夕霧 > 「あら、意外と」

あっさりと快諾(と言う訳でもないのかも知れないが)され、さっきまでの笑みはどこへやら。
毒気を抜かれたような顔を一瞬した後、最初の柔和な笑顔に戻り。

「流石は何でも屋、という所ですなぁ」

ころころと笑う。
冗談ではあったが。

「―――別にもう一つの意味でもええですよ」

くす、と最後に一つだけ艶のある笑いを溢した後に。
すい、と最初にあった時の表情へと戻って。

「じゃぁ、お仕事のお話、しましょうか」

特徴的なイントネーションでそう話す。

「といっても。うちもそれほど困った事、と言う訳でもないのですけど」

強いて言うなら気になる、程度の話。
壁にもたれ掛かる。

「あぁ、そうですね。どうせならデートの時にでもお伝えさせてもらお、思いますけど」

勿論お茶代は此方持ち、と続けて。

紅葉椛 > 「何回か経験あるからね」

去年の依頼を思い出す。
似たような内容の者はそれなりの数が来ていたが、受けたのは半数にも満たない。

「めんどくさそうなのは断ってたけど、今回はどちらかというと楽しそうだし」

相手の様子を見ると、冗談のつもりだったのだろうか。
真に受けたことをやや恥ずかしく思いつつ、最後に付け足した言葉に対し。

「私もそっちなら望むところだけど?」

と、挑発するかのように、微かな殺気を漏らす。
その殺気をすぐに収めると。

「で、そのデートはいつになるの?
 できるだけ早いとお財布的に嬉しいんだけど」

と続けた。
元より奢られるつもりだったと言わんばかりにお茶代の部分には関心を示さない。
今の彼女の財布には、カフェテラスで満足に食事ができないほどの中身しかないのだから。

夕霧 > 「成程」

ぽん、と手を打つ。
まあ少なからず、そういうのが目的のものも多かっただろうし、相当に吹っかけたんだろう、などと思いつつ。

「あら、そう思ってもらえてるなら嬉しおすなぁ」

またころころと笑って。

「―――」

にぃ、とその微ずかな殺気に満足そうに再度口元を歪めた後。

「そちらでも十分楽しめそうですけど。これにはなりませんし」

指でお金を示す古いジェスチャー。
非常に魅力的だし、何時かはそうなってもいいが。

「さて、それじゃあとりあえずお茶、します?少しばかり、裏を取ってから依頼、したい所ですし」

それで彼女に依頼料は発生するが、己とて学生である。
相場がどれほどかも確認を取ったうえでお願いする、と言うのが筋であろう、そう考えて。

「勿論これは別で。まぁお会いしたのも何かの縁、ですし。今回も御馳走、します」

よっぽど切羽詰まっているようなのでひとまず、その形を取る。

紅葉椛 > 「それなりの見た目してる自信はあるしね。
 相手があなたみたいに女の子だとあんまり断らないけど」

眼前の女性が年上か年下かわからず、女の子と称していいものかはわからないが、学生である以上女の子でいいはずだろう。

目の前の女性が口の端を吊り上げたのを見、釣られるかのように口の端を歪める。

「それなら気分次第で無料かもよ?
 特に今みたいに鬱憤が溜まってると……なんてね」

ころっと表情を変え、楽し気な笑みへと。
今すぐやりあうつもりはない、といった様子で。

「ん、今から? 別にいいけど。
 あと、裏を取るのが目的なら別に依頼料はいいよ、奢ってくれるなら。
 信用が大事な仕事なもんで」

今までは口コミや、偶々会った相手に営業をしてきたが、裏を取るためにお茶をしたいと言われたのは初めてだ。
相手の慎重さを見るに、信用さえ得られたら固定客になる可能性もあるだろうとの打算もあり、そのような言葉を口にした。

夕霧 > 彼女の言に少しだけ頷く。
確かに容姿は非常に整っているし、女性から見ても十分に可愛い、綺麗だと思える容姿だろう。

「怖いですわぁ」

笑い、さて、と一つ。
相手の了承を確認すれば。

「じゃぁ、まあこの辺りでは何もありませんし、一旦繁華街まで」

そう言えば、くるり、と元来た道の方を指示して。
一歩、そちらへと歩を進めた。

紅葉椛 > 「オッケー。
 着いてくから、案内は任せるよ」

自分より少なくとも15cmは高いであろう女性の少し後ろを歩く。
これだけの身長差なら見失うこともないだろうが、手が届く程度の距離を維持しつつ。

夕霧 > 道すがら、お互いの簡単な自己紹介を終えて、適当な繁華街の喫茶店へと。

席に付けばひょい、とメニュー表を渡し。

「好きにどうぞ、あ、といってもお手柔らかに」

と、冗談めかして一応の釘を刺しつつ、自分はホットミルクを注文して。
相手が注文するのを指を組み、その上に顎のを乗せて待ちながら。

紅葉椛 > 「まさか同学年とはね……私のが年下だけど
 私はサンドイッチとコーヒーで」

ウェイターに比較的少なめな注文を終えると、テーブルに肘を置き、頬杖をつく。

「で、裏を取るって言ってたけど具体的には何が知りたいの?
 仕事の内容ならなんでもとしか言えないし、素行は見ての通りよくないけど」

注文の品が来る前に本題に入る。
目の前の女性が何を知りたいのか。それが彼女にとっての疑問であった。

夕霧 > 「授業では、見かけませんでしたけどね」

くすくすと笑って。

何を知りたい、と言われれば、少しばかりきょとん、とした後。
そういえばそんな事も言ったなあ、と言う様な顔をして。

「特に」

はぐらかすように言えば、ころん、と少しばかり首を傾けた。
彼女にとっては少しばかりの会話を楽しめるようなら、とそれだけで十分に裏というかある程度の信用のラインはクリアできる、と思っている。
故にそういう意味では現状でも彼女の言う歪な裏取りは続いている訳だが。

「冗談ですよ。ま、あちらでは誰が聞いてるかもわかりませんし」

そんな事をおくびにも出さず、一応の理由を提示した所ですい、と一枚の写真を寄越す。
そこには一人の生徒の写真。
椛には見覚えが無い生徒だ。

紅葉椛 > 「忙しくてね。出席は常にギリギリだから」

ギリギリにすら満たなかったから留年などという結果になったのだが。

特に、の言葉で頬杖からずり落ちるも。冗談という言葉に安堵し、また頬杖をつく。

「これは?
 この人が浮気してないか見てこいみたいなやつ?」

誰が聞いているかわからないという言葉から、最も依頼料の高い仕事の可能性を感じ取るも、万が一に備えて浮気調査という当たり障りのない依頼かの確認を取る。

夕霧 > 「そうですねぇ」

やんわりと。

 ・・・・・・・・・
「何もしていなければ、それに越したことはないです」

そしてにこりとしたままそう伝えて。

……そして恐らく一点勘違いがあるとすれば、所謂彼女が提示したこの生徒は「公安委員会の監査対象に『なるかもしれない』生徒」と言う事であろうが、どちらも今は知る由は無い。
―――そもそも、椛に対して己が公安であるとは一言も伝えていないのだから。

「少しばかり、素行を調べたいのですけど……うちはあんまし、そういうの、得意じゃありませんし」

身長があり、どうしてもそういった事には不向きだった。

「と言う訳で、そうですね。数日ほど彼の素行を調べてもらえれば、と」

うん、と一つ頷いて。

「浮気なんて許されませんからなぁ。まあしてないならそれでええですし。」

裏口を合わせるように、そう付け足して。

紅葉椛 > 「……それだけ?
 なーんだ、それなら大した金額じゃないよ」

拍子抜けといったように写真を受け取り、料金を提示する。
然程高い訳でもなく、探偵を雇うよりはかなり安く済むといった程度の額だ。
ため息をつきそうになるが、ここから信用を得ることで次の依頼に繋がるかもしれない、
何より、今は依頼を選り好みする余裕はないのだ。

「この額でいいなら引き受けるよ。
 浮気してたら写真でも撮っておいてそれを渡す感じでいいかな?」

既に依頼を受けたつもりで話を続ける。
浮気をしているということはないのだろうが、何かしらの素行不良でもあるのだろう。
それならば路地裏でこの女性を見かけた理由にもなる、と一人で納得した。

夕霧 > 「ふふ、そう腐らんと、最初ですし」

信用に足るとして実用に足るのかはまた別問題。
それだけの事であって。
あくまで段階の問題だ、と言うニュアンスを伝えれば。
料金を提示され、うん、と一つ頷く。
この額ならば問題は無い、という意思表示。

「えぇ、それで構いません。ああ、実害を被るようでしたらある程度はどうぞ」

降り掛かる火の粉は払ってもいい、と言う事で。
そしてある程度と言う事はそれはすなわち殺すな、と言う事でもある。

そして財布からつい、と先ほど提示された額に少しばかり多めの額を目立たないようにすい、とテーブルに置き、彼女の方へと滑らせた。

「お困りのようですし」

それだけを伝えて。

紅葉椛 > 「ん、それなら食事が終われば早速取り掛かろうかな。
 数日後にまた連絡入れるよ」

写真をじっと見つめ、顔の細部まで記憶しようと試みる。
数分もすれば目を離し、ポケットの中に仕舞った。

「ある程度がそれくらいかはわからないけど、まぁ過剰防衛にならない程度にしておくから大丈夫。多分」

最後に付け足した言葉が不安を誘うが、素行調査に殺す気で行くつもりは毛頭ない。
そうなるとすれば、殺す必要が出た場合か、不慮の事故くらいだろう。

差し出されたモノを目の前で数え、少し困ったような顔になるも。

「ありがたくもらうよ。額面以上の働きはしてみせるから」

そう言って運ばれていたコーヒーを一息に飲み干した。

夕霧 > 「えぇ。それじゃあよろしくお願いします。ま、程々で」

多分、の辺りは華麗にスルーすれば。
何はともあれ、契約は完了した。
後は任せるだけだ。

「まぁ、個人的なうちからの期待料、みたいなもんです」

額についてころころと笑いながら言い、ホットミルクに口を付けてこくりと飲み下せばゆっくりと伝票を持って立ち上がり会計を済ませて外へと出る。

「では椛はん、よろしゅう頼みます。お手並み拝見、と言う事で」

そう彼女に告げて。
住宅街へ続く道に足を向けた。

紅葉椛 > 「程々で、ね。
 とりあえずご馳走様」

ゆっくりと座席から立ち上がると、伸びをひとつ。

「ん、んー、お腹もとりあえず膨れたし、早速探してくるよ。
 行ってくるね」

夕霧に手を振ると、踵を返し、先程居た場所へ向く。
すると、すぐにパーカーの裾を翻し、闇夜に融け込んでいった。

ご案内:「路地裏」から紅葉椛さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から夕霧さんが去りました。