2016/09/23 のログ
ご案内:「路地裏」に迦具楽さんが現れました。
迦具楽 >  
 路地裏は危険な無法地帯である。
 かといって治安維持組織の手が入らないか、と言うとそうでもなく。
 しかし、常に手が届くわけでもない。
 だから、好奇心でか已む無くか、迷い込んでしまった一般生徒を助けてくれるのは、自分自身かそれとも運か。

「――まあ、あなたは運が良かった方ね」

 迦具楽は今しがた蹴り倒した男の頭を踏みつけながら、震えている一般生徒に笑いかける。
 そして男が持っていた鞄をぶんどって投げ渡した。
 どうやら歓楽街で遊んでいたところを、ひったくられてしまったらしい。
 こんな所まで追ってくるのだからよほど大事な物でも入っていたのだろうか。
 頭を下げてこわごわと急ぎ足で去っていく生徒を見送れば、足を退けて男も解放した。

 

迦具楽 >  
「やっぱりここは、トラブルが尽きないわね」

 捨て台詞を残して逃げていく男には軽く手を振って。
 ぐっと背伸びをしてから壁に寄りかかった。
 迦具楽がここを歩いていたのは、別にまた古巣が恋しくなったと言うわけではなく。
 一応同居人の手前、こういう場所の見回りくらいは時々しておこうと言う理由だった。
 ここにはここのルールがある。
 下手に風紀委員が歩き回るよりは、よほどマシな働きが出来る……かもしれないということで。

「今日がんばったら何食べさせてくれるかしら」

 焼き鳥が食べたいなあ、なんて思いながらも、食べ物で働かされている自分に苦笑を浮かべた。
 とはいえ、どうせ不正規の雇われ仕事である。
 まじめにやるわけでもなく、適当にのんびりと散歩をしているだけ、といったところだった。

 

迦具楽 >  
 ぼんやり空を見上げれば、もうすぐ夕方になろうという時間だろうか。
 今日の見回りの成果としては、怪しい取引を二つほど潰して、さっきの生徒を助けたくらい。
 路地裏にしては、まだトラブル遭遇率が低い感じだっただろうか。

「……もう少し騒がしくてもよかったんだけど」

 以前、迦具楽がここで暮らしていた頃は、もっと騒がしく、危険な場所だったように思える。
 やはり一年も経てば、どこも変わるのだろう。

「――そういえば、ここって」

 ふと、見覚えのある場所のような気がして視線を泳がせる。
 路地裏なんて場所はどこも似たような光景ばかりだが、それでも慣れれば見分けは当たり前につくもの。
 そして足元を見てみれば、酷く黒ずんだコンクリートの色。
 ゆっくりと屈みこんで、その黒ずんだ場所を懐かしそうに手の平で撫でた。