2016/09/24 のログ
■迦具楽 >
黒く焦げ付いた地面、そして壁面。
迦具楽は一年前、一年と一ヶ月ほど前。
この場所で死んで、蘇った。
いや、死んだと言うのも、蘇ったと言うのも不正確だろうか。
恐らく正しくは、《再出力》されたと言うべきなのだろう。
「……私は、蓄積された無数の魂、聲。
反響しあって、混ざり合って、出力されただけの《エフェクト》。
それを、忘れた訳じゃないんだけどな」
迦具楽の知識も、経験も、力も、すべてが借り物。
今のこの感情も、人格すらも、蓄積された魂(データ)から最適化され出力された、現象(エフェクト)に過ぎない。
「私はきっと、生き物ですらないのよね」
恐らくは、生命と呼ぶ事さえ冒涜的な。
酷く歪で、おぞましい、人工物。
目的も設定されず、ただ他の生物を喰らい、命を貪り、生命の真似事をするだけの、人形。
そんな事を考えながら、ふっと、柔らかく頬を緩め笑顔を浮かべた。
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
■櫛鉈 蛟 > 「…ったく、アイツ等しつこいったらありゃしねぇ…」
そうボヤきながら、バラック小屋の屋根伝いに軽い身のこなしで走る男が一人。
ちょっと喧嘩を売られたので倍返しでぶちのめしたら、今度は仲間を呼んで集団で襲い掛かってきた。
で、全員ぶちのめそうとしたら、風紀委員の見回りとかが来たので、ドサクサに紛れて逃げた。
大まかな経緯は凡そそんな感じで、取りあえず現在進行形で逃亡中。
「…取りあえず路地裏で適当に撒いておくかねぇ」
呟いてヒラリ、とバラックの屋根から飛び降りて路地裏へと着地する。
丁度、先客の少女が居る場所から5、6メートル程度離れた場所だ。
(……ありゃ?何か先客さんがいらっしゃるノリかね?)
■迦具楽 >
「それでも、私は私。
今はそれでいいんだよね、七生」
ふと、恋しい人の名前がこぼれる。
無意識の事に気づいて一瞬頬が熱くなり、頭を振る。
彼だけじゃない。
サヤや石蒜、真や蒼穹。
そんな自分を受け入れてくれた友人たちとの記憶。
この迦具楽という《エフェクト》が生まれてからの記憶は、間違いなく、迦具楽が自ら得たものなのだから。
「――っと、なんか感傷的になっちゃった」
いい加減また見回りに戻ろうと立ち上がり。
妙な匂いが近づいてくる事に気づいて、そちらを向いて身構えた。
(……なにこれ。
トカゲ……蛇?
強くはないけど、神性まで感じるわね)
不快な匂いとまではいかないが、気分のいいものではなかった。
去年から少々、爬虫類の類とはあまり良い縁がなかったのだ。
着地する様子を目にしても、近づいては行かない。
声をかけるにも少々遠い距離だ。
このまま通り過ぎていくようなら干渉せずにやり過ごそうかと、そんな風に考えながら男の動向を見守る。
■櫛鉈 蛟 > 今のこの男はいわゆる残骸だ。一度確かに滅ぼされて、人のような形で今ここに在る。
蛇であり、龍であり、神性を持ち、魔性も持つ。ただ、それらの力も権能も今は殆ど使えぬ身ではあるが。
着地した態勢からゆっくりと身を起こして立ち上がる。
彼女とは対照的に、特に身構えもしない自然体にて、迷わずそちらにサングラス越しの視線を向けて。
「よぅ、お譲ちゃん。何かお邪魔しちまったか?悪いな、ちと面倒なチンピラどもに追っ掛けられてたもんでな」
と、飄々とした態度で肩を竦めてみせる。胡散臭いといえば胡散臭いかもしれないが。
さりとて、敵意や殺意は無いくらいは伝わるだろうか?
どのみち、別に目の前の相手と争う理由も無いのだから…と、壁の一角。
彼女が見ていたであろう黒い焦げ痕を一瞥して…路地裏のどの辺りかを把握する。
「…チッ、塒から随分と離れちまってるな…あの連中も面倒な…」
と、一人ごちてからそちらへと顔ごと視線を戻した。しかしまぁ、何か個性的なシャツ着てるなこの娘。
まぁ、自分もチンピラもどきな格好だろうし、服装に付いてはあまり人の事はどうこうは言えないだろう。
「つーか、お前さんこんな場所で何やってたんだ?あんまりこの辺りをウロつくタイプにも見えんが」
不思議そうに尋ねる。サングラス越しの赤い蛇眼が彼女を観察する…得体の知れない何かは感じる。
が、詳細はよく分からない。今の己は制限が多すぎる。
■迦具楽 >
(あらら、話しかけられちゃった)
参ったな、と思いつつも敵意がない事はわかる。
とりあえず自分にとって、少なくともこの場で敵対するような相手ではないのは理解できた。
「別に気にしなくていいわよ。
ちょっと見回りついでの墓参り、ってところだったから」
相手の風貌を眺めれば、明らかにカタギの人間じゃないのはわかる。
こういうのも取り締まるべき対象なんだろうか、と首を傾げつつも、追われているという情報から鼻を鳴らしてみるが……すぐに集まってくるような匂いは感じなかった。
「なんだか大変そうね。
私は今言った通り、見回りと墓参りよ。
私は元々、この場所に住んでいたのよ」
話すにはやはり少々距離が遠い。
会話を始めてしまった以上、仕方ないと、数歩歩いて近づいていく。
観察してわかる事といえば、人間のようなのにわずかばかりの神性を感じるだろう事くらいだろうか。
鋭ければ、外見に比して内包しているエネルギー量、熱量のような物が余りに大きい事までわかるかもしれないが。
■櫛鉈 蛟 > 「見回りついでに墓参り……あ~もしかしなくても風紀委員さんだったりする?」
見回り、と聞いて真っ先に思い浮かべるのは自分の古巣でもある風紀委員会。
しかも、先ほどまでチンピラ連中と纏めて見回りの別の風紀委員の連中に追い掛けられていた。
露骨に、という程ではないが若干嫌そうな顔をしたのがそちらにも窺えるかもしれない。
こちらも、己の感覚を頼りに気配や足音を探るが…どうやら撒いたか、もしくは見つかっていないようだ。
「成る程、落第街の住人だったんか……って。」
彼女が話し難いのか近付いてくれば、元々、観察眼や直感が鋭い男。
彼女の僅かばかりの神性どころか、その内側に内在するとてつもないエネルギー量を感じる。
「…おいおいアンタ、何モンだよ?見たまんまの娘ってこたぁねーだろ、これ…とんでもないエネルギーだ」
言葉の駆け引きは元々苦手な事もあり、感じたままの事をそのまま口にする。
どう考えても、人の身で内包しきれるエネルギーではない。ならば…
(異邦人?それも、普通に俺と同じ神話級レベルじゃねーかなぁ、これ…)
同時に、流石に僅かばかりの警戒心も湧き出る。例えば、今やりあえばこちらが負ける。
”死ぬ事は無いが”勝ちの目がどうにも見えない。とんでもない娘と遭遇したものだ。
「でもまぁ、ここで会ったのも何かの縁ってヤツかもな。俺はクシナダ。そっちは?」
そして、何だかんだで興味も惹かれたので名をこちらから名乗る。
とはいえ、真名ではないし、苗字しか名乗っていないが。
■迦具楽 >
「風紀じゃないけど、そのお手伝いってところかしら。
……ああ、うん、最近ちょっと運動不足だったし、確かに結構蓄えられてるかも」
自身のエネルギー量に関して問われれば、一瞬きょとんとした表情を浮かべた後、自分の体を眺めてみる。
とはいえ、外見的に太ったりとかそう言うことはまったくないので、気分的なものだったが。
そして何者かという問いには、どこか可笑しそうに笑った。
「私が何者、かあ。
怪物、黒い影、異形、堕ちた神性、人間の模倣、人工物、人形、色々と言い様はあるけど。
人の魂、声、その残響……やっぱり《エフェクト》って言うのが正しいでしょうね」
可笑しそうに、どこか力なく、けれど負の感情を背負うでもなく、笑みを浮かべた。
言葉の意味は、恐らく伝わらないだろうが。
落第街で生きていたのなら、黒い異形の影と言えば噂に聞いた事はあるかもしれない。
とはいえ、その噂と迦具楽とが繋がるとは限らないが。
「ふぅん、クシナダね。
その名前で蛇っぽい匂いとなると、どこぞの著名蛇を思い出すけれど……まあいっか。
私は迦具楽。
親殺しの火の神から勝手に取った名前よ」
相手の正体に少し興味を持ったものの、もし想像どおりの相手ならあまり踏み込むべきじゃないと追及はせず。
自分も答えて名乗ると、おまけに名前の由来も意味ありげに付け加える。
「それでクシナダ。
さっきも言った通り私は風紀のお手伝いをやってるんだけど。
風紀委員的に見て、クシナダみたいな人って、やっぱり取り締まらないといけない人だったりするのかしら?」
だとしたら面倒なんだけど、とやる気なさそうにまさかの質問を投げかける。
距離はもう1~2メートル程度。
会話にこそ適しているが、少々近い距離だろうか。
■櫛鉈 蛟 > 「風紀の手伝いねぇ。また、何と言うか俺的にはビミョーな立ち位置だ事で…」
やり過ごせる可能性は低くは無いが、高くも無い。そんな感じの相手な気がする。
いや、まだ出会ったばかりで、この少女の人となりをよく知る由も無い。
早合点はよくねぇな、と己に言い聞かせつつ。
「ふーーん……ま、俺から見れば美少女って一言で片付くけどな」
彼女の、力なくもそれでいて負の感情が無い笑みを眺め、己の感想を正直に述べた。
黒い異形の影には確かに覚えがあるが、確信が持てない段階なので質問には出さない。
「あーカグツチからあやかったのか……つぅか、その蛇で間違いねーけどな。」
あっさりと肯定する。基本自分から口にしないが、バレそうな場合はさっさとこちらから口にする方針だ。
そもそも、苗字がクシナダで、彼女には名乗っていないが名前はミズチ。
蛇を意味する名前だ。それと蛇の気配を感じ取れるなら、直ぐに連想できる者も少なくはあるまい。
と、いうか彼女の踏み込むべきではない、という思考をこちらからバラす事でぶち破っていた。
あと、何か物騒な質問が飛んできたが、取りあえず正直にこう答えようか。
「あー俺、風紀委員と公安委員会から特別監視対象に指定されてるし、あながちそれも間違いではねーな。
まぁ、こう見えて2年前までは俺も風紀委員だったんだけども」
腹の探りあいは至極面倒だ。だから、さっさとこちらの立場や元・風紀委員だという情報すら暴露してしまう。
喋りすぎだ、と思われるかもしれないが男からすれば、大々的に言わないが大した痛手でもない。
「つーか、あんまりカグラみたいなイイ女とやりあいたくはねーんだけどなぁ」
ポツリ、とボヤくように。虚勢でも戯言でもなく、本気でそう思っている口調で。
■迦具楽 >
「……私が美少女?
ふぅん、クシナダってばなかなか見る目があるのね」
それくらいの感性で想い人も自分を見てくれればいいのにと思いつつ、まあそれはそれとして。
少し機嫌よさそうに、口元をにやりと緩めて下から見上げるようにサングラスの向こうを覗き込む。
「ああ、やっぱりそうなんだ。
それにしては……ちょっと物足りない感じだけど」
恐らくこの島にいる多くの神性同様、力を失ったか封印されているかで、全盛の一割にも満たないとかそう言う類なのだろう。
まったく何でもなさそうに暴れまわる破壊神あたりが異常なだけで、彼ほどの神性が力そのままに歩き回って良いほど無法地帯ではない筈なのだ。
「うーん、それじゃあ私の立場としては、何もしないでさようなら、ってするのもよくないのかしらね」
と、首をかしげながら少し悩み。
「特別監視対象って、見つけたら捕まえて突き出さなくちゃいけなかったりするのかしら?
特に問題を起こしてないなら無視していい、ってくらいだったら焼き鳥でも奢ってくれれば見なかったことにするのだけど」
自分の行動を決めあぐねて、そう改めて質問する。
さてどうしようかと、首をかしげて見上げながら。
■櫛鉈 蛟 > 「どっからどう見ても美少女だが?むしろ、もう彼氏の一人や二人居るんじゃねーの?ってくらいには」
と、ケラケラと笑って見せるが、からかってはいない。美少女という意見は正真正銘本当だ。
元々の怪物だった頃から、生贄的な意味であるが女好きだったのもあり。そういう感性はそれなりにある。
「そりゃ、一度有名な英雄様に殺されてるからなぁ。今のようにまた”生きてる”ってのがむしろ奇跡的だろーさ」
肩を竦めてみせる。物足りないどころか、再生する体質を除いて本来の力は全て失っている。
むしろ、この島において伝説級や神話級の連中が、力の制限をされてない方が稀だと思う訳で。
「公安委員会からは一定の監視が常にあって、風紀委員会からは、見つけ次第職務質問されるのは確定だな。
現状、俺は問題は起こしてない…つもりだが、さっき風紀委員から逃げたからなぁ」
自分に不利になる要素も隠さずサラリと零す。最悪、ここで彼女と戦うとなれば…まぁ、受けて立つだろう。
(…とはいえ、正直まともにやりあって勝てる相手ではねーんだけどなぁ)
内心でボヤく。まだお互い何の手の内も見せてないが、それでも実力差は分かる。
唯一、マシだとしたら彼女の攻撃はどれもこの男には致命傷にはならない、という事くらいか。
傷でも呪いでも異能でも魔術でも、精神干渉でも魂のあれこれも全て再生する。
それが、神話の残骸の一つたるオロチに現状残る唯一の特殊性だ。
(…いや、でも気休めにもならんわソレ。死なないだけで半殺しで連行っつぅパターンもある訳で)
そう、死なないだけで彼女に勝てる手段というのがまず無い。
■迦具楽 >
「ふふ、ありがと。アナタもイイ男だと思うわよ。
でも、そう言って貰えるのは嬉しいけど……私に恋人なんて、分不相応よ」
想い人はいる。
けれど、その隣にいるべきは、きっと自分ではない。
迦具楽が望むのは、彼が幸せな人生を歩む事。
彼の幸せに必要なのは、自分ではないのだ。
ただし。
最後には彼の全てを『食べる』つもりではいるけれど。
「そういえばそう言う伝承だったわね。
……だけど、そっかぁ。
とりあえず問題がなければスルーしてよさそうだけど……追われてるって言ってたし、風紀からも逃げたなら……そういうことなのよね。
んー、どうしよっか?」
と、相手にまた聞きつつ、指を三本立てる。
「三つくらい選択肢があるわね。
一つ、私とちょっとゲームをする。
二つ、私に焼き鳥を奢ってなかったことにする。
三つ、私からも今すぐ逃げ切って見せる。
さあさあ、好きなのを選んでくれていいわよ?」
そうして指を三本立てたまま、とても楽しそうに笑いながら選択を迫る。
迦具楽としては、どれになっても面白いので構わないのだ。
だけどまあ、出来れば、焼き鳥をたっぷり奢って欲しいところではあった。
しかし、迦具楽の持つエネルギー量を考えると、その食べる量もまた、察せられるかもしれない。
■櫛鉈 蛟 > 「おっと、これまた俺みたいな蛇には勿体無い褒め言葉だな…イイ男かぁ。そう言われたの何時以来だろうかねぇ。
…ま、恋人じゃなくても見守るとか色々あるだろうよ。
男女の形は恋人だけじゃねーんだしよ。それに…」
ここで一度言葉を切ってニヤリと笑ってみせる。
「俺が思うにカグラ。お前さんは最終的にその男を自分のモノにする。そういう女だと思うぜ」
略奪愛とかそんな陳腐なものではない、だけど最後の最後に丸ごと貰う。
あくまで男の直感だ。だが、あながち間違いでもない気がした。
「…うっわ、選択肢をわざわざ迫るかよ…しかもすげぇ楽しそうだなオイ」
苦笑いを流石に浮かべつつ、示された選択肢を眺めて。さて、男が選ぶのは…
「じゃあ、ゲームして焼き鳥奢って、あとアドレス教えて貰おうかな。…流石にベッドインは無理だろうし」
と、男は指を4本立てて4つめの選択肢をチョイス。
あと、ベッドインとか言っているのは、ある意味この男らしいとも言える。
■迦具楽 >
「……あら、よくお分かりで」
クシナダの言葉に浮かべた笑顔は少女のものではなく、少しばかり怖気のする怪異としての笑みだった。
「わぁお、まさかの選択肢!
ふふ、じゃあそれでいこうかしら。
ベッドインは……残念ながら私、性欲ってあまりないのよね、興味は無いでもないけど。
あと携帯電話とかは持ってないから、ゲームに勝てたらアドレスの代わりに住所を教えてあげる」
一段階すっ飛ばして、報酬がレベルアップしました。
「ふふ、それじゃあゲームの内容だけど……」
そこでまた、迦具楽は三本指を立てた。
「三手。
私はこれからあなたを捕まえようとするけど、その手段を三手試します。
その三手とも、あなたが回避、脱出、防御、なんでも、どんな方法でもいいけど完全に捕まらないでいられたら、あなたの勝ち。
どうかしら、わかりやすいでしょう?」
と、試すようにルールを説明する。
■櫛鉈 蛟 > 「おーぅ、怖いねぇ。ゾクゾクするぜ。でも、そういう表情はやっぱイイ女だわお前さん」
わざとらしくブルって震えてみせるが顔は笑顔。こちらとて怪物だ。
その怖気のする怪異の笑みを楽しむ余裕すらある。本質はこちらも案外似たような感じなのだ。
「え、性欲あんまりねぇのか…でも、興味が多少でもあるならチャンスはあるな」
食いつくのはそこではない気がするが、きっちり食いつく男であった。
と、いうか彼女の見た目だけなら犯罪臭がしそうだが、この男はイイ女と判断したら相手の外見年齢は問わない。
そして、報酬がランクアップしてるんだが。これはもう、勝ったら家にお邪魔しに行きたい。むしろ行く。
「成る程、その三手をどういう手段であれ凌ぎきれば俺の勝ち、か」
一度そこで言葉を切る。そしてサングラスを一度外して胸ポケットに。彼がこれを人前で外すのは実は珍しい。
「よし、やろうぜ。カグラの家で一夜を過ごすチャンスだからな!」
あくまで住所を教えて貰えるだけで、一夜を過ごす訳ではないがそれはそれだ。
もうこの時点で、というか赤い瞳を晒した時点で不意打ちにも備えている。
■迦具楽 >
「ちなみに私、まだ満一歳だから、手を出すと色んな意味でまずいと思うわよ。
まあそんなの、関係ないんだろうけど」
そう、この娘、まだ生まれてから一年ちょっとしか経っていないのだ。
外見的どころか実年齢的にも完全にアウトである。
あくまで人間の観念的には、だが。
「それじゃあやる気みたいだし……さっそく始めようかしら」
そう言って、軽くその場で足踏みをして準備運動を見せると、まっすぐに大蛇の赤い目を見据える。
「まず一手目はシンプルに――っと!」
両腕を何かを握るように振り上げながら、まっすぐに突進する。
怪異らしい常軌を逸した運動能力での突進は、1、2メートルの距離は一瞬で詰めてしまう。
そして振りかぶった両手の先からは、黒い流体――万能物質とも呼ぶべきエネルギー体があふれ出る。
Creation
「――《創造》――!」
両手の先には、人間が納まるサイズの巨大な虫取り網が《創造》され、クシナダの頭上へと振り下ろされるだろう。
網の材質は鋼鉄を編み込んだ糸。
一度捕まってしまえば並の力では裂けないような、頑丈すぎる網だった。
■櫛鉈 蛟 > 「え、何それ犯罪じゃねぇか…なんてな。イイ女なら年齢とか関係無し!」
と、真顔で断言してみせた。元々が人間でないので、そういう倫理観はあまり気にしない。
そして、今はそんな事よりも…この三手を凌ぎ切る。その為にただ彼女の動きを見定めており。
「…ふむ、シンプルながら…!」
こりゃ凄い。と、感心している間に創造された人間が納まるサイズの巨大な虫取り網が迫る!
むしろ、感想を述べてる時点で、彼女の高速の動きで既に頭から虫取り網を被せられ――何の手応えもなく地面に網が叩きつけられるだろう。
「ま、初手はボーナスみたいなもんだろうしなぁ」
何時の間にか、ギリギリ虫取り網の射程から一歩だけ外れた場所に佇んで笑っていた。
何も特別な事ではない。間合いを見切って、わざとギリギリまで引き付けて交わしたのだ。
頭から虫取り網を被ったような状態から、身を低く縮めて一歩ズレる。
言うだけなら簡単で動作もシンプル。ただ、それを高速で精密にやるのは並みの動きではないだろう。
「…次、二手目来いよカグラ」
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
■迦具楽 >
「あら、思ってたよりすごいのね。
まさか体捌きだけで避けられるなんて」
並みではない、どころか非常に高度な洗練された技術と言っていいだろう。
ちょっと驚きながらも、感心してから面白そうに笑い、ぴょん、と軽そうに数メートル……5~6メートルといった距離を作る。
「それじゃあ二つ目行くわね!」
少し声を張って言えば、今度は迦具楽の背中から二つの巨大な鉄の柱が《創造》される。
それは円柱状の筒。
その筒に縦に亀裂が入り、内部の構造が展開される。
そこに並んでいたのは、非常に小型の、一つが手のひらサイズほどの弾頭。
そう、全部で六十発のマイクロミサイルである。
「材質は簡単に壊れるようにしてるし、爆薬は全部鳥もちにしてあるから安心してね?」
そんな声とともに、六十発の鳥もち搭載マイクロミサイルが、一斉に発射される。
狭い路地裏でそんなものが飛べば、もはや面制圧のようなものだが、さらに当たり前のように全てがクシナダを狙って誘導されているようだ。
■櫛鉈 蛟 > 「そりゃ、こちとら魔力も異能も無い現状だぜ?この体一つで何とかするっきゃないだろーよ?」
つまり、人間が使う体術や足捌きを独学等で習得している事。
実際、純粋な体捌きは落第街の環境でも磨かれたのもあり、そこらの連中より上だ。
そして、続く二つ目…カグラが距離を取って創造したのは…
「ん?鉄柱…いや、筒?……って、オイオイオイ」
亀裂が入ったかと思えば、そこには小型の…マイクロミサイルというやつか?それがギッシリ。
ザッと目視で数えた限りでは5,60発はあった。
…で、それが一斉に放たれてた訳で。この狭い路地裏でそれは既に面制圧状態だ。
「安心できねぇなある意味で!!」
言いつつ、回避でも防御でもなく、…ダンッ!!と、強い踏み込みで前へ。
震脚からの縮地法へ即座に繋げ、ミサイルの”面”の一点へと突進。
一瞬で加速をつけた勢いで両手を手刀の形に構え…振るう!
と、次の瞬間、その狙った一点を”搔き分けて”ミサイルの面を突破する。動作が速すぎたのか、搔き分けた後にミサイルが男の後ろで破裂しており。
当然、飛び散る鳥もちは進行方向へと飛び散り、男には届かない。
「ふぃ~…体術地道にやっといて良かったぜ…で、次が問題だな」
最後の三手目。これを凌げるかどうか。
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
■迦具楽 >
「あははっ、すごいすごい!
本当に体一つで何とかしちゃうんだ?」
心底面白そうに、クシナダの動きを見てはしゃぎだす。
確かに迦具楽自身の能力がいくら高くとも、それによって作られたミサイル自体は、ただの物理兵器だ。
速度も機動も、相応のものでしかない。
だからとはいえ、実際にそれを処理できる能力は、明らかに尋常のものではありえなかった。
「あーあ、次で最後になっちゃうのね。
それじゃあ……ちょっとだけ本気を出すわね」
迦具楽がそう言うと同時、周囲の空気が急激に冷えていくのを感じるだろう。
それはあっという間に真冬のような気温になり、冷蔵庫の中にいるような気温になる。
「これが三手目。
ちゃんと逃げてね?
うっかり死なれちゃうと、後味がちょっと悪いから」
そう言って笑いながら、一歩近づくと。
途端、空気が凍りついた。
空気中の水分は凍って結晶となり、気温はすでに、マイナス数十度に達しているだろう。
そして、なお気温は急激に下がり続けていく。
迦具楽は足を止める事も無く、一歩二歩と距離を詰めようと近づいていく。
逃げ出そうとすれば即座に追えるように気をつけながら。
この極寒のフィールドは、蛇の目からすればそれでも半径10メートルほどは形作られてるように見えるだろう。
いまだ迦具楽とは4メートルほどの距離はあるが、このまま温度が低下し続ければいずれ動く事も出来なくなるのは、体温を持つ生物であれば明白だ。
■櫛鉈 蛟 > 「楽しんで貰えて何よりってな!あ~ちくしょう、やっぱ元の体が恋しいぜ…。」
無いモノ強請りでしかないのは分かりきっているが、矢張り本来の力をほぼ全て使えないのは痛い。
そして、最後の三手目が厄介そうなのは分かりきった事であり――…。
「カグラからすればちょっとの本気でも、今の俺にはハードルめっちゃ高ぇんだがなぁ」
と、ボヤいても始まらない。周囲の空気が急激に冷え始めたのを察知したからだ。
すぐにそれは真冬の如き寒さとなり…いや、これは冷蔵庫?むしろ冷凍庫ではなかろうか?
「いや、死なないからそこは安心しろ。俺としてはどう凌ぐかが問題なんだ」
実際、ある特定条件を満たされない限りは、塵芥にされようが魂が砕かれようが再生する。
その体質だけは残っている…とはいえ、これはキツい。
彼女が一歩踏み出す。それだけで即座に極寒の空間だ。
(…感覚的に10メートル範囲の極寒空間か・・・その圏外に出るには)
既に足元が凍り付き始めているが、慌てず騒がずそこで右手を素早く腰の後ろに伸ばし、一振りの短刀を引き抜いた。
途端、僅かだが漂う神性。己をかつて殺した神剣の欠片で造られた短刀だ。
で、それを――
「―せぇ、のぉっ!!」
右手一本で短刀を彼女、ではなく己の真後ろへと振るう。途端、極寒の空気と気流が”裂かれた”。
次の瞬間、凍りついた右足を”千切って”跳躍。千切れた右足は即座に再生し、凍り付いて残った右足が赤い粒子となって消え去る。
再生能力と、短刀による独自の技を駆使した合わせ技。一気にそれで10メートルの距離を飛んでしまおう。
とはいえ、彼女が高速で追撃してきたら対応を変えないと行けないが。
(流石に、こりゃ短刀と技を使わないと詰んじまうからなぁ、”今の俺”だと)
■迦具楽 >
「ハードルが高いくらいじゃないと、ゲームは面白くないでしょ?
それに、私にとっても最悪の環境なんだからこれっ!」
体温のある生物――その類には当然迦具楽も含まれるのだ。
そして、迦具楽の場合も、自身の体温が一定以下になれば死ぬのだ。
そうならないように、周囲の熱エネルギーを吸収して極低温の空間を作ると同時に自分の体温をエネルギーを消費して維持し続けなければならない。
ゆえに恐ろしく最悪に効率の悪い大技である。
「死なないなら安心だけど――そんな事もするんだっ!」
右足を切り離して、さらに空間を切り裂く事で意図的に気流を作り出し、跳躍の速度を上げての脱出。
もうこの時点で迦具楽としては十分すぎる程楽しめていた。
だが、このまま負けるのも面白くない。
離れるならば、全力で跳躍し、追いかけるのみ。
そのスピードは十分に常軌を逸したものであり、完全に離されるまでは行かないが。
恐らく有効距離の端に捉える程度が精一杯だろう。
S-Wingを創造し空を飛ぶなりすればもっと早く追いつけるが、それでは提示した三手ではなくなってしまう。
極低温の空間は、いずれ絶対零度にまで到達するだろう。
しかし、迦具楽の消費可能なエネルギー量、そして気温を元に戻すだけのエネルギー量を考えれば……持続できるのは後数秒が限界。
これでまた距離を離されれば、迦具楽の敗北は確実となるだろう。
■櫛鉈 蛟 > 「確かに、そうかもしれないけどよ!!」
と、彼女の言葉に同意しつつも。こちらもこちらでヤバいといえばヤバいのだ。
どのみち、何とか切り抜けないと本当に死んでしまうのは言うまでもない事だ。
「再生体質だけが、唯一の請った特殊能力だから、なっ!」
自らの体の一部を犠牲にしてでも、直ぐにそれが再生するのを生かした捨て身技に近いのだけれど。
だが、これであっさり終わりとは思えない。案の定、彼女が全力で跳躍してくる。
「そう来ると思った…ぜ!!」
ニヤリ、と笑いながら右手に持った短刀を振るおう…真下に。
そして、再び空気を切り裂いたかと思えば、その反動を利用して更に加速。
彼女にギリギリ追い付かれる…前に、その極寒空間を勢いよく抜け出してしまおうか。
「…これで、俺の勝ち…だ!!」
で、そのまま地面へと着地していこうか。
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
■迦具楽 >
「やっぱりそうなる――もうちょ、っと!」
空間を切り裂く事で脱出していく姿を追って、もう一度跳躍しようとするが。
彼我の距離と相対速度、そして残り時間。
「……私の負け、かぁ~」
熱エネルギーの吸収をやめ、今度は熱エネルギーを放出する事で周囲の気温を本来の状態まで戻す。
それによって凄まじい量のエネルギーが消費されたが、まあ、最近蓄えすぎていた分が消費された程度と言えばその程度で済んだところか。
離れた距離を近づいていって、互いに自然な距離まで近づくと、改めて敗北宣言をした。
「悔しいけど、本当にすごいわねあなた。
もっと最初から全力でやればよかった」
とはいえ、そんな事をしていたらお腹が減って仕方が無いのだが。
負けたというのに、少し悔しそうな表情を見せればすぐ清清しく気分よさそうに笑顔を見せる。
「さ、それじゃあ約束通り鶏肉を奢ってもらおうかしら。
思ったよりもずっと楽しかったから、一夜を過ごす……のは無理だけど、うちで晩御飯くらいは振舞ってあげる」
その場くるりと反転し、振り返りながら異邦人街の方角を示す。
異邦人街での商店ならば、たとえ落第街の住人であっても問題なく買い物もできる事だろう。
■櫛鉈 蛟 > 「ふはぁ~…ったく、これが殺し合いとかじゃねぇのが幸いだぜ」
着地をした先は、既に極寒領域の僅かに外。そこで一息ついてから短刀を腰の後ろへと仕舞い込む。
正直、限られた戦闘手段しかない時点でこちらが不利なのは否めない。
たとえそれがゲームであっても、だ。今回は初見というのがある意味で良く作用したが。
(こういう手は二度は通じないだろうし、ゲームなのがやっぱ幸いか)
と、思うが最後の極寒領域は地味に命も下手したらヤバかったかもしれない。
いや、死にはしなかっただろうが捕まっていたのは間違いないか。
彼女からの敗北宣言も聞いた所で、やっと全身の力を抜いて。
「最初からやられたら、そもそも俺に勝ち目ねーって。そっちと違って、再生体質以外の力が使えねーんだし」
と、苦笑いで肩を竦めてみせるだろう。ともあれ、相手は清々しそうな笑顔だし、悪くは無い結果だ。
「あいよ、まぁベッドインは無理でもカグラの家にお邪魔出来るだけマシだと思うさ」
と、軽く楽しげに笑って。示されたのは異邦人街の方角。
自分の塒の一つもそちらにあるし、それなりに慣れ親しんだ区画だ。
「よし、んじゃ早速行きますかぁ!」
と、いう訳でカグラと並んで歩き出そうか。
余談、鶏肉の買い込む量の多さに、手持ちの金が危うく底をつく所だったとか何とか。
ともあれ、新たな友人?も出来たそんな出来事。
ご案内:「路地裏」に櫛鉈 蛟さんが現れました。
ご案内:「路地裏」から迦具楽さんが去りました。
ご案内:「路地裏」から櫛鉈 蛟さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に真乃 真さんが現れました。
■真乃 真 > 落第街の路地裏に男が一人座っている。
首から黒いタオルを垂らした一人の男。
片手には表ではまず見る事の出来ないような場所のラベルが貼られている。
見れば、密造酒の作成を専門として落第街では広いシェアを誇る誇違法部活のものであることが分かるだろう。
そのラベルを緊張したような興味深いような顔で眺める。
…安くてそれっぽいものをてきとうに選んだので味とかもわからない。
試してみて駄目ならその時はその時である!
瓶の蓋を開けて匂いを嗅ぐと強いアルコールの匂いがする。
もう一度ラベルを見るがこのままでは何も始まらない!
「…いただきます。」
小さくそういうと口につけた酒瓶を傾けた。
■真乃 真 > 「おいしくない!!」
口に含んだ分は飲み干してしまうものの美味しくない!
そして喉が熱い!すごい熱い!
「なんでこんなのを望んで飲むんだろう…?」
安酒だからなのか真がアルコールを苦手としているのかはともかくかなり辛い。
二十歳になったら美味しく飲めるようになるのだろうか?
そんなことを考えていると首から垂らした黒く長いタオルに波紋が走った。
…どうやらこれだけでも良かったらしい。
飲料よりも消毒などの方が向いてそうな酒が入ったその瓶を傍らに置くと
今度はタバコを取り出した。
こちらは普通に市販品。落第街にて購入したものである。
…未成年だから他の場所では買えない。
■真乃 真 > 袋を開き一本取り出した。
周囲に吸っている大人があまりいなかった真にとっては非日常感あふれる物である。
…吸い方が分からない。
と、とりあえず火をつければいいんだろう。
それを加えて吸う…。
「…ゴフ。」
…思いっ切りむせた。
再度、タオルに波紋が走る。
…なんとかいけたらしい。
それにしてもこんなところで制服のまま座ってタバコとか一昔前の不良感がすごい。
■真乃 真 > そうそうにそれを口から離すと準備していた携帯灰皿にまだ長いそれを捻じ込む。
携帯灰皿…もう二度と使う予定はない気がする。
「もう、吸わない、二度と吸わない…。」
少し瞳に涙を浮かべながらそんな事を言う。
だが、苦労したかいもあってこれで少しゴールに近づいた。
「後は…スラムの方へ行って、開拓村の方にも行って、後は人探しか…。」
立ち上がり無駄に悪カッコいいポーズをとったあとどこかに向かって去っていく。
※未成年者の飲酒、喫煙は法律により禁止されています!!
絶対にやめましょう!!
ご案内:「路地裏」から真乃 真さんが去りました。