2016/11/01 のログ
ご案内:「路地裏」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > ―――こつ―――こつ―――こつ。

白と黒の影は迷いなく歩いていた。
髪と”糸”から歪な電波を辿り、重たいクリームを連続して叩き付けたような音を追って。
接近を知った足音が、こちらへ向かってくるのを感じている。
入り組んだ路地裏の中、最短距離で向かい合う。

久藤 嵯督 > 星と月の光が差し込む闇の中。凍てつく空気に身を震わせる。
嵯督の目の前に現れたのは、人のカタチをした、流動する赤黒い液体。
それは血の匂いを無遠慮に振りまいており、いくつもの流れが絡み合う様はまるで挽き肉のようだった。
もはやそれが生きているのか死んでいるのかもわからない、『異能の塊』。

それはかつてリキッド・ソーサーと呼ばれた、液体使いの男。

■液体男 > 「久しぶりだなァ……おまわりさんよ……」

泡《あぶく》が幾千と重なり合ったような声で、液体は話しかけてきた。
ぐぷぅ、ぐぷぅ、と嗤っているかのように気泡が割れる。

■液体男 > 「あー……案外、なんとかなるもんだなァ、人生。
自分でやっててさ、これ。正直死ぬかと思ってたんだぜ?」

ぼふ、と液体男の右腕が弾けた。しかし断面から伸びた赤い川が飛沫を捉え、再び右腕に戻す。
制御がままならないのだろうか。それとも弱っているフリをして油断を誘っているのか。

久藤 嵯督 > 「……磨り潰したのか。自らの肉体を」

■液体男 > 「ブッ殺される直前なら逃げられると思ったんだがなぁ、流石に人一人分の体積じゃあタカが知れてたよ。
当然俺は撃ち殺されたが……自分の血に触れた時、異能の発動に成功した」

液体男の体中から、何人分もの血達磨人間がゲル状で再構成される。
血ゲル人形の一体が奥歯を発射してきたが、嵯督はそれを難なく受け止めた。
挑発のつもりなのだろうが、大して動揺はしなかった。
むしろ歯が残っているお陰で身元を特定出来ることを幸運に思っていた。

■液体男 > 「俺の異能は『液体を操る』こと……
それは、俺自身をミキシングした液体であっても、どうやら例外じゃねえらしい。
俺は不死身になった。わかるか? おまわりさん」

「知ったことじゃあないな」

液体男の語りはいまいち要領を得ない。が、真面目に考える気も、答える気もなかった。
この男の言葉に塵芥程の価値もない。
人として生きることさえ捨てたうえに、犬も食わぬその身体。

それでもただ一つ、価値があるとするならば。

久藤 嵯督 > 「今のお前が何者であれ、俺のやる事は変わらない」

目標、死刑囚。凶悪犯。人的被害絶大。死者多数。戦闘能力危険域。
一人で戦う言い訳は出来た。
風紀本部へ信号は送らない。一定以上の脅威が相手ともなれば、自分一人で十分になるのだから。
そも、学生上がりの素人に手を出せる領域ではないのだが。

「初段解除」

嵯督の周囲に稲妻が迸る。

前進の細胞が活性化し、超人的な身体能力を得る。

所謂、戦闘形態。


「二段解除」

怒槌《イカズチ》と等速の第二段階。

髪が青白い光を放ち、迸る稲妻が勢いを増す。

風紀委員としての嵯督の誇る、切り札の一つ。


しかし……風紀の鬼、その真の姿。

未だ嘗てその姿を見た者はいない。

久藤 嵯督 > 「………クク」

ひび割れるかのように、顔面に青白い光のラインが奔った。

目の下より頬を伝い、首元を通って全身へ。

瞳もその青色を映し、口元は歪に吊り上がる。

周囲の磁場が狂い、半径1kmの電子機器が全て使い物にならなくなった。


「三段、解除」

眩い光を纏った嵯督は、最後に糸付きグローブを外した。

―――それは、殺人解禁の合図。

久藤 嵯督 > .





               「―――死刑を執行する」