2016/11/16 のログ
ご案内:「路地裏」に滝川 浩一さんが現れました。
滝川 浩一 > 夜も更け、大半の生徒は常世祭の出し物の片付けに追われる時刻。
主に祭りが行われている学園地区より離れた落第街の路地裏をジャージを着た一人の青年が歩いていた。
片手には彼の物と思わしきノートPCを持っており、それを開いた状態で画面を凝視ししながら移動していた。

「……ここら辺か?」

立ち止まり、画面を見つめながら空いている方の手で顎をいじる。
PCの画面にはいくつかのアイコンが表示されており、それらのUIに囲まれる形で中央にはサーモグラフィーカメラを使用しているかのように赤や青、黒で構成された落第街の景色が広がっていた。
キーボードを操作して、映し出されている景色をズームする。
ズームした先は路地裏。青く映っている男性と思わしきシルエットが立ったまま、何やら手に持った機器を操作している。

「よし、俺だ。……あと20mほど先か…」

男性と思わしきシルエット。それは正しく、そのカメラを操作している青年その人だ。
手に持っているPC経由で、上空を飛行している小型UAV――無人偵察機――を操作し、それに取り付けられているカメラで自分を映し出していた。
そのカメラによれば、この先20m程の地点に液状のように流動している物体があるらしい。
サーモグラフィーによれば、その物体は真っ赤でカメラで視認すれば良く見える。

その物体と接触するため、奥へと進んでいく。

滝川 浩一 > 路地裏を進んでいく。
元々人もおらず、それに加えて人々が寝静まる時間帯。
静寂が路地裏を包み、青年の足音と手に持っているPCの駆動音が静かに鳴り響くだけであった。
季節もあり、冷たい風が吹く。その寒さに耐えるように肩を竦め、どんどんと進んでいく。

(なんつーか…ここに来るまでアイツをひっ捕らえることに夢中で周りを見て無かったな…怖い)

周囲を見渡して、ぶるりと身を震わせる。
この青年、心霊やオカルトと言った類は信じないし、ホラー映画やスプラッターも平気だ。
しかし、この青年…お化け屋敷は苦手なのである。

よくテレビでやる『心霊写真 写り込んでしまった女性の顔』などは全然平気だし、ホラー映画も大丈夫なのだが何故かお化け屋敷は苦手だ。
恐らく、映像作品や文字での"そういう体験"は鼻で笑って流せるがいざ自分が体験するとなると怖いものがあるのかもしれない。
ともかく、やる事やってさっさと抜けようと考える青年だった。

しばらく歩いていると前方から物音が聞こえてきた。
それを聞けば、ビクッと体を反応させると共に真剣な顔つきへと変わる。
パタンッと手に持っているノートPCを折りたたみ、地面へと置けば、青い光を手元限定で発生させた。

(消さず、浄化せず…しかし、攻撃を受けずに確保だ。やってやるさ…)

手に青い光が張り付き、両手をそれぞれ覆えば生成する物体を形作る。
生成したのは黒い皮手袋のような武器。指の骨のように白いチューブが張り巡らされ、手の甲には一際太いチューブが円状に貼ってある。
ぎゅっ、ぎゅっと手をぐーぱーさせて感覚を確かめてみれば、目の前を向き直り歩き出した。

滝川 浩一 > 進むにつれて聞こえてくる物音が大きくなってくる。
その音に固唾を飲んで前へと進み続ける。
ドクドクと心臓が脈打つ、冷や汗や手汗が噴き出してくる。
深呼吸して、緊張をほぐしてリラックスしようとするが、しようと思って自由自在にできるものでもない。

心臓は高鳴っているが頭は落ち着いているような、奇妙な緊張感に包まれながら、ついに"それ"と相対する。

「居たな…黒い塊。」

見据えたのは全高5㎝、体長3~4㎝程の黒いスライムのように流動している物体であった。
それはウネウネと蠢き、形を変えながらこちらに向き直ったかのように移動する。
その様子を見れば構えを取る青年…構えを取るのだが、格闘技経験も無いため隙だらけの構えではあるが。
ともあれ、それに対して迎撃するように体を向ける。

(…ってどうでもいいけど、『黒い塊』っていうネーミングどうにか出来ないかな。
 もっと語呂がよくて、カッコイイ名前にしたいが…うぅん、俺が勝手に名前付けていいのかなぁ…?)

相対した敵性生物が以前のよりも小さいためか、気が緩んでそんなことを考え始める。
黒い塊と呼称するのも何だかかっこ悪し、カッコイイ名前にしたいが自分がつけていいのだろうかと、どうでもいいことに悶々とする。
完全に舐めきっているが、悶々としているときにふと背中から脇腹にかけて開いた大穴の事を思い出し、我に返る。

そうだ。前回もこんな油断のせいで生死に関わる大怪我を負ったんだ。
同じ轍を何度も踏むのはバカがすることだ。自分はそうではない…と思いたい。

そう考えていると、黒い塊が跳躍し、こちらへと飛んでくる。
それを目を見開いて、動きを読んで、迎撃のために拳を振るう。

ご案内:「路地裏」に錐葉 咲さんが現れました。
錐葉 咲 >
滝川 浩一 > 迎撃のために振るった拳は虚空を切り裂き、黒い塊には命中せず空ぶる。
しまった。と言った顔をすれば、大袈裟に体の向きを切り替えて横にローリングする。

黒い塊は猛スピードで自分の頭上を通り過ぎ、地面へとぶつかる。
ボコッとコンクリートが砕ける音を鳴らしながら黒い塊は地面を抉った。
その様子を見て、顔を青ざめさせる。

「……やばっ」

冷や汗を垂らし、そう呟く。
本格的に危なくなってきた。まさかあれだけのサイズでコンクリートを砕く力があるとは思わなんだ。
しかもスライムみたいな液体だから、衝撃でダメージを食らっている様子はない。
もしあれが当たっていたら…また生死を彷徨う所であった。

即座に立ち上がり、態勢を立て直す。
相手は亀裂の入ったコンクリートの中央でウネウネと流動し、形を変えている。
とにかく、迎撃だ。                                     ・・・・・・・・
相手はこちらにぶつかり、肉体を抉り、貫通して通り抜けてダメージを与えるのに対し、こちらは拳を当てるだけでいい。

ならば楽勝だ。
勝算は十分にある。

「…ッ!」

ウネウネと形を変えていた黒い塊が跳躍し、こちらに猛スピードで突進してきた。
目を見開き、それを見切れば裏拳をぶつける。
すると不思議なことに…瞬く間に黒い塊とそれに触れている部分の手袋が凍り始めたのだ。
体積の小さいそれは即座に凍り付き、手袋へと張り付いた。

「……ふぅ~、あっぶねぇ~…死ぬところだった」

開いている方の手で冷や汗を拭い、手袋を消し去る。
異能により手袋が消え去ったことにより、氷漬けになった黒い塊のみが残った。

錐葉 咲 > 「くそっカスが…逃した上にヘマするなんて、全く。」

裏路地を歩く中、半ば苛立ちを見せる声。
ぎりっと歯を食いしばり軋む音を立て握り拳で路地に置いてあったドラム缶を殴り、ガンッと言う音が鳴り響いた。
足を止めて背中を壁側に向けてもたれ、争ったあとなのか肩についた切り傷を右手で押さえ。
落ち着かせるように目を閉じて深呼吸。

「ふぅ…次だな…やるとしたら。…ん?」

ちょうど向かおうとした先の曲がり角奥から物音か、それも大きく争っている様子。
人の声まで聞こえ耳に留まる。

「厄介ごとじゃなきゃいいけどなっと…様子見と行きますか。」

曲がった先へと足を進める。
視界に映るのは凍りついた何かと安堵の声を漏らす一人、
何だあれは…
と、凝視し心で呟く…

「あんた、なにしてんの?」

だらりとした姿勢、気だるげな声色、睨みつけるような眼差しで問いかけてみる。

滝川 浩一 > 「ふぅ~…よっしゃ」

手をパンパンと叩き、満足そうな顔で氷漬けになった黒い塊を見据える。
一瞬にして氷漬けになった理由。それは別に魔法を使ったわけでも、特殊能力を使ったわけでもない。
ただの気化熱、科学だ。

水というのは蒸発する際に周囲の熱を奪っていくらしく、真夏の超熱いコンクリートに水をばら撒いて、周囲が涼しくなるのは気化していく水が熱を奪っていくかららしい。
それを使えば、相手を即座に凍らせる事が出来る…のだが、気化で相手を凍らせて戦うという戦法はとんでもない量の水が必要となり、それを主力として扱うにはあまりにも不便だ。
そういう問題を解決するのが自分の異能である。水が足りないなど、些細な問題である。

手元にタオルを生成し、氷漬けになった黒い塊をそれで覆う。
更に、空き瓶を作りだせば、布に包んだそれを押し込んで蓋をした。

「よし、完りょ……!?」

瓶を見て、満足そうにすれば聞こえてきた声。
そちらに振り向けば明らかに不機嫌そうな眼差しでこちらを見つめる少女が居た。
固まる。こんな時間にここに人が居るわけないと思って、その予想が覆され固まる。

(言い訳を…言い訳を考えなければ…!)

冷や汗を掻き、目を泳がせる。
自分のやっていたこと。それは特に悪いことでも無いのについつい言い訳を考えてしまう。
思考をフル回転させ、思いついて口を開く。

「ははは!私は美化委員会の者だ。何、別段、特別なことはしてないよ。ただゴミ拾いをしてただけだ」

我ながら酷い言い訳だと思う。
自分の周りには無数の紙くずやほこりが散乱しており、それに対して掃除用具の一つも持ってない青年。
こんな時間にこんな場所を掃除する委員などいるはずもなく、第一凍りついた何かと大きく争っている音を聞いているはずの少女ならば即、ウソを看破出来るだろう。

錐葉 咲 > この場所でこの時間、かつこの散らかり様子。
明らかな虚言に無理のある誤魔化しっぷりに不信感しか抱くことができない。
それに、暗くてよく見えなかったが黒い何かをしまったようにも見えた。
ジトりとした視線を包帯で巻かれた間から向ける。

「…嘘の下手クソっぷりには驚きだっての…完了、ね。もう一度聞くよ、あんた、此処で【何してた?】」

冗談ではない、威圧的な声で再び問いかける。
完了という言葉、もしかしたら悪事を働き終わったことを示しているかもしれない…

だとすれば目の前の相手は私の討つべき対象となり得るかもしれない、返答次第では…

滝川 浩一 > 「はは、やっぱりバレますか…」

苦笑いで、彼女にそう反応を示す。
やはり、即席の嘘は見え見えでバレやすいかなどと頭を抱えれば観念して説明しようと口を開く。

「少し前、風紀委員主導で行った妖怪もどきの大規模討伐があった事はご存知でしょうか?
 その討伐対象である『黒い塊』…それの確保を行ってました」

一転して真面目な口調に切り替わり、真っすぐと彼女を見据えてそう説明を開始する。
瓶を掲げて、その中を見せる。氷漬けになった黒い塊は布が包まっているために瓶の外からは見えないだろうか。
彼女にわかるように瓶を示せば、ジャージのポケットに瓶を入れる。

「そういう君こそ、ここで何をしているんですか?……その包帯にその傷。…もしかして喧嘩でも?」

目を細めて、包帯と肩の傷を交互に指さす。
こんな時間にこのような少女が喧嘩を…いや、珍しくない事かもしれないが、ここは一つ注意をしとかなければと使命感にかられる

錐葉 咲 > 「あたしは世間の動きに疎いからな、妖怪もどき?だっけ、その大規模討伐なんて知らない。
…その中にあるさっきの黒いやつが、妖怪もどきってわけか…なるほど、悪かったね、突っかかりすぎたから。」

先ほどのような嘘をつくような素振りではない、嘘が見えない真剣さが見え、信用に値すると心得る。
威圧的な態度は一変、気だるさの見える元の立ち振る舞いに戻った。

「あんたも答えてくれたし、あたしも答えないとね…、そう、あんたの言う通り、喧嘩だよ。それも、私の勝手な正義感からくるね…。今日は失敗しただけ。傷はその代償、全く、あたしもまだまだだ…。」

ポッケに入れていた包帯の余りを肩に巻きつけ応急措置、目を細め此方の様子を見る相手に包帯隙間からの視線を合わせ。

「何?あたしが悪事を働いてるか、気になるってか?」

滝川 浩一 > 「そうで…そうか。ちょっとばかし、この黒いのは危険でな。
 色々と調べるために確保したって訳だ。…話が分かるようで助かった。恩に着る」

威圧的な態度が消えたのを確認すれば、安心したように胸を撫で下ろす。
そして、気だるさを感じさせる立ち振る舞いを見せる彼女に舐められないように敬語を取っ払う。

「そうか。喧嘩、か……」

顎に手を添えて、目を細める。
こんな細身の少女がこの時間に喧嘩とは、余程の訳アリと予想する。
詮索するのは野暮だとは自覚しているがどうしても気になってしまい、彼女へと数歩近づく。

「…それもある…が、とりあえず、迷惑でなければその傷の治療をしてもいいか?
 そのお礼って形で事情を説明してくれれば助かるんだが…」

肩の傷に頭の包帯。
女性がしていい怪我とは思えず、自分の変な正義感が働いてそう申し出る。
傷の治療をする代わりに事情を説明してほしいと、彼女にとっては別段悪い話でもないはずだ。

錐葉 咲 > 「止まれ…」

相手が此方に数歩近づいた瞬時の事、
腰に携えた二対の刀の内一刀を右手で鞘から引き抜き、
金属の擦れるシィン…と言う音と共に其方に剣先を向けた…まるで警告を暗に告げるように。

「この包帯はあたし自身の身を隠すため、肩の傷は気にしないで、あたしは優しくされる必要の無い人間。…もう、引き返せないところまできてる。
あたしの討つべき対象ではないあんたを敵にしたくない。
だから、それ以上近づいてはダメだ。
知ってしまえばあんたをこの手で殺めなくてはならなくなる。」

刀を下ろす気は無い様子。
くるなと言わないばかりの拒絶の目、
まるで避けなければならない運命にしばられているかのよう。
静かな吐息だけが空間に響く…

滝川 浩一 > 「……!」

止まれと言われ、腰の刀を抜かれてこちらに向けられる。
その様子に驚きを隠せず、口を紡いだまま目を見開く。
薄暗い光が切っ先に反射して美しく光る刀の刃を見て、両手を挙げて後ろへ下がっていく。

「…わかった。俺も殺し合いが好きなわけじゃないからな。素直に引き下がるよ。
 ただ…その、アレだ。名前くらいは聞いてもいいだろ?」

刀をなお向けられたまま、こちらはなお両手を挙げたままで苦笑いしてそう聞く。
あまり、今の状況で敵を作るわけにはいかない。
そのため彼女の指示には従うが名前のみは聞いておきたいと。

「……俺は、滝川 浩一。二年生で、転校生だ」

両手を挙げながらこちらの自己紹介をする。
義理堅く、正義感を持っている彼女だ。自己紹介することを祈りながらこちらが勝手に名乗った。

錐葉 咲 > 名前ぐらいは…、刀の先を向け、その先に映る相手から目をそらす事なく深く思慮する。

「わかった…名前ぐらいなら。あたしは錐葉 咲。」

学園生徒である事はあえて伏せた。
特定されてしまう可能性が大きくあるからだ。
顔は包帯ぐるぐる巻きだからわからないだろう。

「安心しな、この刀はただの牽制。あんたを切るつもりはないよ。
…去る前に一つだけ、質問していい?
あんた、なんであたしの傷を癒そうと?
この時間、この場所、肩に傷、危険にしか見えないこのあたしを何故?
答えたくなければ首を振って、これはあたしの勝手な質問、あんたに答える義理はないから。」

向けていた刀を地におろし、鞘へとしまいながら問いかける。