2016/12/16 のログ
ご案内:「路地裏」にリネンスさんが現れました。
リネンス > ―― 絡まれやすい、とは自分でも思う。

  こんな片袖のない奇抜な白衣に、若く見える顔だ。
  身長は人並みでも、体躯も華奢、姿勢も悪い。
  自覚はしている、理解もしている。
  それは紛うことなき事実だ。

  ・・・ただ、一つだけ言いたい。

  医者がすべて金持ちだと思うのは、偏見ではないか?――と。


「・・・ですからね、持ち合わせがないんですよ。生憎と」

頭では理不尽な先入観に辟易しながら、彼はもう何度目かの同じ言葉を伝える。
壁を背にして、面前には男が3人。・・・どれも身なりが良いとはお世辞にも言えない。

“落第街”には決して珍しくない光景だが、3人というのは、リネンス自身は経験がなかった。

リネンスが先の言葉を言い終わるかどうかという所で、
3人のうち、リネンスの眼前に立っていた短髪の男が右足を振り上げる。
振り上げた足はリネンスの左腕すれすれ・・・いや、肘辺りを少し掠って、路地裏の壁を強く蹴った。

その男はリネンスの顔に自分の顔を近付けると、
フカすな、だとか、身包み剥ぐ、だとか、穏やかでない事を穏やかでない声量で叫んだ。
当のリネンスはただ彼の吐き出す唾が顔まで飛ばないかを懸念しつつ、
後ろには下がれないので、ただただにこやかな表情を変えないまま雑言を聞き流す。

路地裏はなにぶん狭く、公共の迷惑を考えず広がり歩く3人、それとすれ違おうとしたリネンスは、
必然的に、今は壁を背負って立っている形になっていた。

リネンス > (3人・・・うーん、3人ですか・・・)

多いか少ないかで言えば、彼には多い数だ。
2人だったらまだ何とかなる、大抵一人は逃げるか、返り討ちだ。

・・・だが、3人だとどうなのだろう?
一人をどうにかしても、残り二人が来たらどうするか。
そして、もしもそのうちどちらかでも、攻撃的な異能持ちなら・・・?

怒声を聞き流しながら、ぼんやりとそう算段をする。
聞いてんのか、という怒声にも心の中で、聞いていませんよ、と軽口を返しつつ熟考。

第一、後ろの二人だって、小太りの男はなにか鉄パイプ的な長物を持っているし、
長髪だってポケットで何かカチャカチャさせている。折り畳みの刃物だろうか。
・・・しかし、武器持ち、ということは、逆に異能や魔術に乏しいのかもしれない。

―― そこまで考えた時に、リネンスの顎辺りにシュッと何か鋭いものが突きつけられた。

手前の短髪の右手の指が、鋭い爪のように鋭利に伸びていた。
異能だろうか、それとも異邦人の体質だろうか。
どちらにせよ、致死性のそれを突きつけて、殺すぞ、と男は凄んだ。

ご案内:「路地裏」に八百万 頼さんが現れました。