2017/10/23 のログ
ご案内:「路地裏」に狗穏さんが現れました。
狗穏 > ひたり、ひたり、…足音少なく気配は薄く。されどその存在感は確かにあり。
昼夜関係なく暗い路地裏。その一角を歩く一匹の獣…いや、狗かそれとも狼か。
赤い獣眼、鋭く白い牙、そして――墨をぶちまけたかのような黒い体毛。その全長はおよそ2メートルはあろうか。

狼にしては大型過ぎるし、大型犬にしては見た目や存在感が異様…そんな風体の獣だ。

『……』

無言で狗は路地裏を歩く。勿論普通なら狗が喋る事はない。普通なら、だが。
今夜は少々収穫に乏しく、残念と言えばそうだが空腹の心配は無い。
――この辺りは、死と死人の想念で溢れ返っているから…だから餌には困らない。

狗穏 > この獣が生まれたのはつい最近の事だ――まだ一ヶ月も経過していない。
ただし、その素性は単純にして明快。怪異、と呼ばれる類の一種だ。少々特殊ではあるが…。

『…今夜は外れ、といった所か…死の気配が薄い。』

獣が口を開く。ひたり、ひたりと歩きながらも獣の耳と鼻は何も捉えない。
何時もなら、争いの形跡、死体、そういった類のものが転がっている筈だが。

…だが、スラムよりは幾分かマシなこの辺り。こういう日もあるのだろうと納得する。

狗穏 > 人間の気配は無い、人ならざる者の気配も無い。僅かに漂う血臭、腐臭、埃っぽさがこの空間を支配している。
それでも、スラム辺りに比べれば矢張りかなりマシと言えるだろう。塒にしているからこそ分かる。

自身の知識は、己を形成する死者の想念…特に記憶から抽出される。殆どの者が大した知識を持たないが例外も多く居る。
この街の言葉を理解し、言葉を話し、理性的な考えが出来る…獣はそんな例外の知識や記憶を引き出し用いている。

『…落第街…公には存在しないとされる街…か。我が生まれるのも自然の成り行きと見るべきか』

遅かれ早かれ、自分のような怪異が誕生していただろう。否、既に溢れているやもしれぬ。
だが、それも仕方ない事だ。この街が、スラムがある限り…死者の想念がある限り遅かれ早かれ獣は生まれる。

狗穏 > やがて、狗はゆっくりと路地裏の闇の中に消えていく。ひたり、ひたりと死の存在感を纏いながら。
ご案内:「路地裏」から狗穏さんが去りました。