2017/11/09 のログ
ご案内:「路地裏」に刃々斬鈴音さんが現れました。
刃々斬鈴音 > 壁や地面は赤黒い染みが取れなくなって血のような匂いが一面からしている。
この辺りの者は寄り付かなくなったとある路地。
そんな所で少女は一人使われなくなって久しいゴミ箱に腰かけてプラプラと足を揺らしていた。

「…来ないねー誰も来ないねー。
 何でと思う?」

【あまりにも同じ場所で斬りすぎだ…。
 相手を殺してもいないのだから噂は簡単に広まる。】

この通りには通り魔が出る。
そんな噂だけで面倒な事を避けたい一般的な落第街の住人がわざわざ来ることは無い。
来るとすれば通り魔に会いたい物好きな誰かか、はたまた噂を知らない可哀想な被害者か…。

刃々斬鈴音 > 「そう言えばクーちゃんが言ってた様な事何も起きてないね。」
【戦闘が必要な状況に陥っていないからな。】

少し前に怪異の血を血腐レに吸わせたのだが…。
未だにこの妖刀に変化らしい変化は起きていない。

「えー…ちーちゃんも早く人間形態になりなよ…。」
【鈴音、それは無いと以前にも話したはずだ。】

刀がそう告げるとぶすっと頬を膨らませて少女は立ち上がり刀を抜くと…

「…えいっ」

刀の側面をおもむろに壁に叩きつける。

刃々斬鈴音 > 【…刀は側面からの力には弱い。】
「…ほら、ピンチの時にこそ新しい力に目覚めるチャンスじゃない?」

ガキン、ガキン。

【鈴音。】

ガキン、ガキン、ガキン。

【なあ、鈴音こんな事をしても己は人間形態にはなれない。】

ガキン、ガキン。

【鈴音、冷静になれ。冷静に…】

ガキン、ガキン、ビシャ。
湿った音と共に、刀は液体の様に壁に飛び散った。

刃々斬鈴音 > 「ちーちゃん!!」
【…少しは落ち着いたか?】

壁に飛び散った赤黒い液体から声が聞こえる。

【鈴音。己は確かに人の形態をとる事は出来ない。
 だが、人の形でなくとも我らは運命共同体だ。】

「壁に飛び散ったちーちゃんが…!」

その壁からの応えるように赤黒い液体は蠢き這いまわり…
壁に人の形の染みが描かれる。

【…不格好ではあるがこれが己に出来る精いっぱいだ。】
「大丈夫、鈴音にはとても素敵に見えるよ!」

壁に描かれた人の形の赤黒い染み。
少女はそれを見て涙ぐむ。

刃々斬鈴音 > 【じゃあ、行こうか鈴音。新たな得物を探して!】

人型の染みが形を変える。
どこかを指さすその赤黒いシルエット。

「うん!」

そうして少女は手に持った妖刀を鞘に納めて歩きだしたのだった!

刃々斬鈴音 > 【…気は済んだか?】
「ぼちぼちかな?」

異能を解けば壁の染みから声が聞こえる事は無い。

【…一人遊びもほどほどにな。】
「仕方ないじゃん一人なんだし!」

刃々斬鈴音、彼女の異能は声を作りだすことが出来る。
一から作るも、誰かの真似でも自由自在に作り出す。

…例えば自分で壁に付けた染みを刀の力で動かした上でそこから声を出すなんてことも出来る。

ご案内:「路地裏」から刃々斬鈴音さんが去りました。
ご案内:「路地裏」に狗隠さんが現れました。
狗隠 > 少女と妖刀が立ち去って少々経過して――入れ替わりに現れたのは、ボロボロのコートやシャツ、スラックスに革靴を纏った長身痩躯の男の姿。

「………?この血生臭さと気配は…あの二人組が居たのだろうか?」

顔見知り、血を提供した一人と一振りの顔を思い出しつつも、足は止めずに路地裏をゆったりとした歩調で歩く。

「…さて、人の擬態にも大分慣れてきたし右腕の再生も完了した。…次は矢張り…」

己の姿を見下ろす。このボロボロの服装一式と、あと何か武器か銃火器を調達したい所だ。

ご案内:「路地裏」に狗隠さんが現れました。
狗隠 > 「……しかし、どうしたものか…矢張り適当に追い剥ぎでも…いや、それで目立つのは望む所ではない」

だが、現時点の格好の方がある意味で目立ちそうなのは否めない。誕生してせいぜい一ヶ月の怪異だ。
裏社会にそもそも知己やコネがあるとは言い難い…むしろほぼ皆無に近いだろう。
当然、表側に顔を出す訳にもいかない。所詮、怪異は怪異だという弁えはある。

「…上手く立ち回れば、俺のような存在にとっては良い場所なのだろうが、な」

人間臭い吐息を一つ零して。こういう所だけ人に限りなく近い仕草になってくる事が可笑しく思えて。

狗隠 > 「……金銭の調達も考えなければならない、か。…人間社会は必要なモノが多過ぎるな…。」

小さく呟けば、どれから取り掛かるべきか…武器は後回しにして、矢張り衣服か。
小奇麗、とまでは言わないがもう少しくらいは見栄えがマシな服装にはしておきたい。

自身を構成する沢山の死者の想念から、あれこれと記憶や情報を引き出してみれば、服装とは多種多様なのだとしみじみ思える。

「…ふむ、個人的には矢張りコートは外せないな…丈が長いと尚良し、だろう」

引き出した記憶の中のロングコート姿に、ウムと頷く。この怪異的には丈の長いコートは必要ポイントらしい。

狗隠 > 「…さて、ではまず衣服に焦点を絞るとするか」

出来るだけ事を荒立てずに衣服を調達したい、と思うのは慎重さなのか少々甘いのか。
どちらによせ、方針が定まったら行動するだけだ。

そのまま、人に擬態した黒狗の怪異は路地裏の闇へと消えていく。

ご案内:「路地裏」から狗隠さんが去りました。