2018/02/09 のログ
鈴ヶ森 綾 > 「痛いのはお嫌い?なら尚の事、そのままじっとしていなさいな。」

質問には答えず、一方的にそれだけを告げると背後から身体を密着させる。
左手から伸びていた糸は手を離れ、代わりに少年の身体を地面に縫い付けて固定する。
それから改めて左手が少年の首や頬を這い回り、肌の感触を確かめるような動きで弄ぶ。

「……まったく、こういう時はなんと言って迎えるべきなのかしらね。」

そこで一旦手を止め、暗がりから現れた新たな来訪者をねめつける。
先ほどと違い歓迎とは程遠い態度をありありと滲ませ、少年の身体を抱いたままその言葉を聞いた。

「助ける?あなた今この子を助けると言ったのかしら。
 そういう事なら好都合だわ。この子を『無傷』で助けたいなら、そこで指を咥えて見ていなさい。」

右手の爪は変わらず少年の顔に突きつけられたままだ。
迂闊な事をすればそのまま一刺しにするのは容易い状況で、相手の言葉を無視して少年の顔を強引にこちらに向かせようとする。

江風 白 > 「た...たすけて、ください.....。痛いのは...嫌なんです!!」

昨日の今日でこんな目に遭うなんて思ってもなかった。
震える声でそう言えば、目には涙を浮かばせ、息を荒らげる。
首や頬を触れられる度に震えが増す、こういう相手はこれから何をするのかは想像できる。それゆえの震えだった。

「何を...嫌だ!!痛いのは死んでも嫌だ!!ひっ...」

強引に顔の向きを変えさせられる。
自分の能力の関係上死ぬことはない、だが、顔に突きつけられた爪を見ると震えが止まらない。

御輝 炎華 > 「私が何もしなければその子にはいっ・さ・いの危害を加えない。
そういうことなら何もしないでおこう。」

相手の提案に敵意と監視の眼差しとほんのり熱を帯びる刀を向ける。
本当に何もせずに方がつくならー今回は特に、人質をとられているからーその方がよい。
それは本当にそう思っているが本当に何もしないという発言は疑っており。
しかし何かして少年を殺されでもすれば本末転倒。
そのために今は何もせずにいて。
少年に多少の覚悟があれば攻撃できるのだが…

「…痛いのが嫌ならそいつが言うのを信じてみることにする。
痛くてもいいなら今すぐ助けられるが…」

死んでも痛いのは嫌、という情けない少年の発言に深い溜め息をはきつつ刀を下ろし顔を左手で覆っており。

ご案内:「路地裏」に御輝 炎華さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 「えぇえぇ、賢明だわ。
 せっかく可愛らしい顔をしてるのに、無闇に傷をつけるような真似はしないわ。無傷で解放するわよ。」

危害を、と女は言った。一方こちらは、無傷で、と応じた。
つまり、両者は何一つ約束事など交わしていない事になる。
そもそも、危害と言うならこうして彼を縛り付けている時点で加えているのだから。

「ほら、こっちを見なさい。」

それはどちらに対して言ったのか。
ちらりと炎の女に視線を向けてから、あえて女にも見えるような角度で顔を寄せ、少年の唇に自身のそこを重ねようとする。
無論、それが単なる口付けで終わるはずもない。
味わうのは触れ合う唇や舌の柔らかさだけではなく、身体の中から活力が急速に失われていく虚脱感。
抵抗しなければ十秒と経たぬ内に常人なら立っている事さえ困難になる程の不調にみまわれるはずだ。

ご案内:「路地裏」に御輝 炎華さんが現れました。
江風 白 > 「ひっ....。」

無傷で解放すると言ってくれた。
しかし震えは止まらない、自分は知っている。この少女と同じ性質の人間達を。
ちらりと助けに来てくれたであろう女性に目を向けるが、動きはない。
助けてくれ、と目で訴えるが、最早時は既に遅く。

「ん....あっ....。何...これ?」

体から力が抜け、その場にへたりこむ。
死から程遠い体だった自分が感じた死。
そんな初めての体験をした彼は最早笑うしかなかった。

「はは、嘘だ。こんなこと....僕が?死ぬ?」

聞き取れないほどの声でボソボソと呟き。

御輝 炎華 > 「…可愛そうに」

口付けという行為をされた少年に憐れみの感情を覚える。
ファーストキスかどうかは知らないが突然顔を爪で撫でる女にキスなどされたいはずがない。
大人しく見守ろうとー

「…ッ!『聖・炎波』!」

自身の馬鹿さを呪う。
そうだ。無傷で返すのなら傷さえ与えなければいい。
そんなことにも気付けずにいた自身を叱咤しながら異能の炎を膜のようにして二人に飛ばす。
炎は二人に襲いかかりー少年に危害を加えずに女にのみ襲いかかる。
そして地面を強く蹴って数歩で距離を詰めれば斜め下より切りかかって。

鈴ヶ森 綾 > 「ごちそうさま。悪くなかったわ。」

放たれた炎に撒かれるより早く重なっていた唇は離れ、その口元から熱っぽい吐息が漏れる。
吐いた息は白く濁って空中を揺蕩っていたが、炎に飲まれて瞬く間に掻き消えた。
炎と斬撃を垂直に飛んで躱した直後、その身体が空中であらぬ方向に跳ねる。
糸を壁に付着させ、自らの身体を引っ張る事で空中を移動したのだ。

「何を怒っているのかしら。私は自分の言葉は守ったわ。
 もし私がその子に『危害』を加えないと思っていたのなら…滑稽でたまらないわね、正義の味方さん。」

その場に居合わせながら為す術のなかった女を嘲弄し、さらに空中での跳躍を重ねる。
既に少年を戒めていた糸はその役割を終え回収済みだ。
これでもうこの場に残る意味はないのだが、さぞや業腹な思いをしている女に置き土産をしてやろうと、
空中で体勢を整えると、その頭上に一撃を加えようと加速と体重の乗った爪の一撃を振るう。

江風 白 > 「僕が?死ぬ?先生にもらったこの体が?だから僕は....。」

理解不能。理解不能。理解不能。
鼓動が激しくなる。意識が遠退く。
そして僅かだが理解できた間違いない、自分はいま食われたのだと。

「化け物.....あぁそうか。その手が...。」

目の前に映る光景、薄れゆく景色の中、彼はそうぽつりと呟いた。
同時に視界が真っ暗になる、第三者の炎に照らされながらかれはその場で気を失った。

ご案内:「路地裏」から江風 白さんが去りました。
御輝 炎華 > 「ック…」

気を失い倒れそうな少年を支えて壁にもたれさせて女を睨む。
女はあり得ない動きを繰り返し空中を移動している。
魔法か異能による力と仮定してどういうものか考える。
動きからして空中浮遊や飛行の類いではないだろう。
道具の線も考え始めて。

「信じるんじゃなかったな…
最初に言ったよな?どうなっても知らないと…」

上からの攻撃を難なく弾く。
伝わる衝撃でしびれる腕に痛みを感じ顔をしかめる。
だがそんなものどうでもいいのだ。
足に筋力増強の魔法をかけて壁を蹴って近くの建物の屋根に乗る。
そして刀をその場で一度振れば刀は豪炎を纏い、二度振れば刀は炎の斬撃を女にむけて放つ。
その速度は銃弾にも匹敵するものでー

鈴ヶ森 綾 > 置き土産、顔に深手の一つでも与えてやろうかという一振りだったが、
なかなかどうして、怒りや悔恨で精神を乱すこと無く捌いた腕前は見事。
口にこそ出さないが賞賛を送ろう。
だが、彼女は一つ勘違いをしているらしい。

「…でも、腹の探り合いはまだまだ。」

地に降り立った自分に向けて放たれる返しの一撃。
こちらは受けるにせよ反撃するにせよ不十分な体勢。
だが、逃げるとなれば話は違う。

互いが交錯すると思われた一瞬、その身体は不自然な体勢のまま弾かれるように宙を舞った。
未だ身体と繋がったままの糸を使うならば、再度糸を放つ必要すらない。
予備動作無く跳ね上がった身体は再び放たれた糸によってビルの屋上へと導かれる。

とはいえ、相手の攻撃速度はこちらの予想を上回るものであった。
避けたつもりの炎が引火したマフラーを首から外して打ち捨てると、最後に眼下の女を一瞥して踵を返す。
女が後を追って屋上へと登ったとしても、既にその姿は何処かへ消え去った後だろう。

ご案内:「路地裏」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。
御輝 炎華 > 「…逃げられたか」

空中でなぜあんな動きができるのか。
そんな疑問を浮かべつつ屋上まで登ったがすでに女の姿はなく。
屋上の一角を八つ当たりで切り崩せば考えを巡らせる。
最後の回避行動。
その動きからは引き寄せられているという感じがして。

「糸…か?魔法か異能か…道具」

等と考えながら屋上づたいに報告しようと帰路についた数分後。
少年を置き去りにしたままなのを思い出してあわてて引き返したそうな…

ご案内:「路地裏」から御輝 炎華さんが去りました。