2018/03/26 のログ
ご案内:「路地裏」に鈴ヶ森 綾さんが現れました。
鈴ヶ森 綾 > 路地裏に面したビル、その側面に設けられた剥き出しの非常階段へ通じる鉄扉を押し開けて建物の外へと出る。
その瞬間、地面から立ち上ってきた路地裏特有の据えた匂いが僅かに鼻を刺激する。

「んっ…んーっ…はぁ。」

少し身体を解すように伸びをし、一呼吸つく。
背後で閉まる鉄扉の音や漂ってくる匂いを特に気にした風もなく、薄汚れた手摺に少し身体を寄せて階段の下を窺う。
付近に人影はなく、実に静かなものだ。

鈴ヶ森 綾 > 地上を見下ろしていた視線を上にあげると、空には半分を少し膨らませたような形の月が見える。
こんな薄汚れた街角でも、月だけは綺麗に見えるものだ。
タバコを吸う習慣でもあればここで一服、というところだが、生憎そういう趣味はない。

1分か2分程の間、月を見上げながら長い髪を指先で弄び、梳いた髪を風に流して時を過ごす。
それから少し乱れていた制服の襟を整え、カン…カン…と小さく音を立てながら金属製の階段を降っていく。
視線は上を向いたままで、その足取りは実にゆっくりとしたものだ。

鈴ヶ森 綾 > そうして階段を下る内にやがて月は建物の影に隠れてしまう。
頭上に向けていた視線を地上へと戻すと、そこに先程は見えていなかった物体の存在に気づいて。

「あら。」

よく見れば地上部分をぐるりと金網のフェンスが囲っており、ご丁寧に上部には有刺鉄線も取り付けられている。
どうやらこちら側からは出入り出来ないようになっているらしい。
表に回っても良いのだが…。

「ほっ。」

わざわざ表に回るのを面倒臭がった女は、小さく声をだすと階段の手摺を乗り越え、
地上4,5階程の高さから空中に身を躍らせる。
フェンスを乗り越え、向かいの地面に悠々と着地すると何事もなかったように立ち上がり、自分の前後に伸びる道を見やる。

鈴ヶ森 綾 > 先程見たまま、路地裏は静かなものだ。
ビルの中も特に騒ぎになっているような様子もない。

「あぁまったく、素敵な事。今夜はよく眠れそう。」

上機嫌に上機嫌を重ね、女はどこかを目指して歩き出す。
その姿は誰知ることもなく路地裏の暗がりに消えていった。

ご案内:「路地裏」から鈴ヶ森 綾さんが去りました。