2015/06/08 のログ
ご案内:「スラム」に東郷月新さんが現れました。
東郷月新 > 「いやぁ、久しぶりの娑婆はいいですなぁ。
2年もあんな場所にいると、いい加減気が滅入りますからなぁ」

男は嬉しそうにスラム街の一角、路地に机を出す酒場の椅子に座っている。
堂々と表に出ているが、この男、お尋ね者である。

懲役289年犯、元『ロストサイン』マスタークラス、東郷月新。完璧な犯罪者だ。

東郷月新 > 「あ、酒は飲めないんですよ、小生。
甘い物あります? できればみたらし団子。あれ、好物でして」

ぱっと見無害にしか見えないが、騙されてはいけない。
血の臭いがこびりついた、真性の人斬り。
もっとも実力のある人間以外は組織の命令でもない限り滅多に斬らないのが、安心できる点といえば点である。

ご案内:「スラム」に浦松時子さんが現れました。
東郷月新 > 「あとは熱いほうじ茶が怖いですなぁ。
あ、これはどうもご主人。いやいや、甘露甘露……」

美味そうに団子を食い、茶を啜る。
今頃公安委員は血眼になって自分を探しているのだろうか。
ご苦労な事だ。何が楽しくて秩序の維持なんてしているのだか。

浦松時子 > 長いこと日陰者だったせいか、時折こういったスラム街の空気が懐かしく感じる時がある。
夕飯も食べ終えて散歩の場所にとここに来てからは踏み入ったことの無い場所に無性に入りたくなった。

「懐かしい、と言えば懐かしいですね、この匂い、まったくもって腐りきった、昔を思い出す懐かしい匂いです」
そう独り言をつぶやいてふらふらと歩いている。

東郷月新 > 「ご主人、すまぬがもう一皿、お願いします。
あ、代金の事ならご心配なさらず……」

脱獄の時、自分の刀を取り戻すついでに公安委員を3.4人斬って所持金を奪っておいて良かった。
世の中、先立つものは金である。まったく世知辛い。

外をふらふらとする少女には、まだ気付いていない。

浦松時子 > 「そりゃあ、ありますよね…お酒はあまり得意ではないけど」
建前上は未成年である故にあまり酒は飲まないのだが、矢張りこういう場所故に…という気持ちはある。

「すみません、ちょっと…」
野外の酒場の店主に声をかけようとした時、長年の感か全身から寒気がした。
幕末やWW1の時代に時折いたタイプの匂い。
殺意が服を着て歩いているような危険な匂い、その匂いを発する剣士のような恰好の男の方を見る

東郷月新 > 「うん、美味い……ふぅ、あの連中も見習えばいいんですがなぁ」

間延びした声で美味そうに団子を頬張る男。
しかし突然止まった少女に、ふっとそちらを振り向くと

「おやお嬢さん、小生がどうかしましたか?」

どうもこうも、お尋ね者である。

浦松時子 > 今のことを危険は無い。
だがこの手のタイプは何をするかわからない。
だからこそできるだけ平静を保たなくてはいけない

「いえ、何も…お隣よろしいですか?」
座る前に店主に烏龍茶と枝豆を頼む

東郷月新 > 「お、どうぞどうぞ。
いやぁ、おなごを見るのも2年ぶりでしてなぁ。
あの連中、少しは色気など見せればいいものを」

はははと笑いながら機嫌良さそうに喋る。
ちなみに団子は3皿目に突入した。
ほうじ茶のお代わりも主人に要求する。

浦松時子 > 「へえ、2年も…随分遠い所にでも行ってらっしゃったのですか?あまり良い環境ではなかったようですね」

とりあえず話を合わせる、どうやら機嫌がいいようなのでいきなり何かするということはなさそうだ。

「失礼かもしれませんが、どちらから帰ってきたので?私も結構すごい所に行ってた経験はありますが…1991年ごろのロシアとか」
烏龍茶のお代りを頼んで。

東郷月新 > 「ほぉ――ロシアですか。いやぁ、小生寒い所は苦手で――
あ、小生はへまをして2年ばかり公安の連中に捕まっておりましてな。
いやぁ、あのむさくるしい監獄は、もう二度と御免ですなぁ」

あっけらかんと言いながらふと考える。
1991年? あれ、今何年だ?
目の前の少女は、どう見ても10代だが……

浦松時子 > 「はあ、公安ですか、それはそれは…」

…2年前?公安がそんなに長く拘束するような人物?
今から2年前の事件って言ったら。

「ロス…」
ロストサインと言おうとした所で慌てて口を閉ざす。

「いやーそれは大変でしたねえ」
いつでも何があってもいいように虫の準備だけはしておいて

東郷月新 > 「いやぁ、ひどいと思いませんか? 奴ら、小生を289年監禁するつもりだったんですよ?
いや、普通死にますよね、本当。
あの連中の性根は腐っておりますなぁ、まったく」

はははと笑いながら、ふと気付く。
殺気が迫っている。
公安の追手か――まっすぐにこっちに近づいてくる。

浦松時子 > 「289年ですか、公安も随分杓子定規なことをするものですね」

会話をしながらも自分に向けられたものではないが殺気に気付く。

「そろそろ席を立った方がいいですよ、最後に…お名前をよろしいですか?」

東郷月新 > 「やぁ、申し訳ない。巻き込んでしまいましたなぁ」

ゆっくり立ち上がる。
殺り合ってもいいが、折角の少女の好意だ。血なまぐさい場面は見たくない。
己の事はともかく、妙に律儀なところがある男であった。

「小生は東郷月新。縁があれば、またお会いしましょう」

男は会計を済ますと足早に立ち去った。

ご案内:「スラム」から東郷月新さんが去りました。
浦松時子 > 東郷と名乗る男が去っていくのを見送って

「ふう~~~~~」
と大きくため息を漏らす。

「あれは関わったらやばい人ですね~幕末の岡田さんとかの同類です~」
大昔の知り合いの人切りのことを思い出して烏龍茶を飲み干す

浦松時子 > そして今のことをいったん冷静に思い返してみる

(2年前、無茶もいい所の懲役刑、と言うことは恐らくロストサインっていうやばい所の幹部クラス?非常なんとかとかいうのの騒ぎが収まった思えば…まったく次から次へと、面倒事のバーゲンセールですねこの島は)

大きくため息を漏らすと
「私はもう少し平穏に、ちょっとした刺激がある程度の人生を送りたいんですけど~」
と店主に愚痴をこぼす

店主は知らんがな、と言わんばかりの態度をとる

浦松時子 > 「どの道、ここで生きていく上ではもう少し強くあらねば」
お勘定を済ませて席を立ち。

「300年生きていてもまだそういう感情があるということは…私もまだまだ若いってことですね」
独り言をつぶやいて去っていく

ご案内:「スラム」から浦松時子さんが去りました。
ご案内:「スラム」に狛江 蒼狗さんが現れました。
狛江 蒼狗 > スラム中央通りは俄かに騒然とした。
生と死の間で生の岸辺に辛うじて手をかけている無気力な者らも、その騒ぎには誰もが見入った。
捕物である。
制服姿の白髪の青年が一人。腕章からして公安の者だろう。
対して体制側に挑戦的な着崩しをした金髪の男が一人。不良のステロタイプを具現化したような者である。

狛江 蒼狗 > この二人がここに至った経緯もシンプル極まりない。
不良生徒(それは往々にして二級生徒であり、金髪の男も二級生徒である)と公安委の生徒が向き合う理由など一つしかない。
学則違反だ。

狛江 蒼狗 > その違反に背景組織の匂いはない。
ただ、【異能】を持つ者が誰でもなりうる病気に罹ったまでの事である。
すなわち、“万能感”に支配され自己中心的な暴虐を行った。
ただそれだけのこと。

公安委はごたごたしている。
ごたごたしていたなのか、未だごたごたしているのか、ごたごたは終わったがまだごたごたで起こったもろもろを片付けるためごたごたしているのか。
それは蒼狗には解らない。興味がないためである。
とにかく公安委は忙しい。
護送中に脱走したつまらない“二級生徒”にかまけている時間がないほどに。

狛江 蒼狗 > そのために蒼狗が動かされた。
公安委“特雑”はこんな雑用までやらされる。
それは“特雑”が“特雑”であるため仕方のない事だ。
理由などない。
公安委もそれをそう認識していて、狛江蒼狗もまたそれをそう認識している。
だから、単独で捕り物をしている。
ただそれだけのこと。

狛江 蒼狗 > 場面はスラム、大通り。
落第街でも特に表舞台に立たぬ場所である。
ここは力なき者が集まるからだ。
つまらない者達と言い換えてもいい。
たとえ事件が起ころうとも、それはつまらない。
暴力沙汰、殺人沙汰、なんであろうとも、つまらない者がつまらない事をした。
ただそれだけのこと。

公的な権力によって動く“力ある”者、狛江蒼狗は敵を睨め付ける。
「………………」
黙して語らない。狛江蒼狗はそういう男だ。

狛江 蒼狗 > 『一人か?』
見れば解る事を、違反学生は訊く。
否、この島においては見ても解らない場合がある。彼は用心深いのだろう。
「…………」
返すはまた、沈黙である。
10メートル程の距離を保った睨み合いは続く。
狛江蒼狗は軽く膝を落とし、拳は軽く握り前方に構えている。
不良生徒は自信を持った仁王立ちでそれに向かい合っている。

狛江 蒼狗 > 『公安は余っ程手が足りてねぇみたいだな。何があったか知らないけどよ、忙しいんだろ?』
引き攣った笑いを浮かべて、違反学生は蒼狗の睨みを見下した。
一迅の風が吹き抜ける。
乾いた尿の匂いがする。
金髪の男は顔を顰めて、蒼狗の表情は崩れない。

ただ、蒼狗はハナの利く男である。
痛烈なアンモニア臭を、馬耳東風と右のハナの穴から左のハナの穴へスッと流すことはできない。
我慢している。一刻も早くここから離れたかった。

狛江 蒼狗 > それにより痺れを切らせた形になったのか。
撓んだ緊張感の中で戦いの口火は切られた。
猛烈な疾駆で蒼狗は、スラムの砂利を蹴り上げて男へ迫る。
「………………!」

狛江 蒼狗 > 金髪の男の瞳が、鈍い緑に輝いた。

瞬間、吹き荒れる風が迫る蒼狗を押し返す。
颶風もかくやという風に、蒼狗は一瞬脚を止めた。
前方を見ると、躍りかかる影!
「…………!」
『でえええっ!!』
風の支援を受けた猛烈なソバットを、上体を逸らして回避する。
柔軟な骨格と練られた内部筋肉は、膝の角度を直角にして蒼狗の大柄な身体を保持する。

狛江 蒼狗 > そのまま蒼狗の身体は撥条のように跳ね、バック宙を3連続で決めて彼我の距離を離す。
「………………」
沈黙のあと、蒼狗は息をつく。
静かだ。【異能】によって起こる風のうなりがよく聞こえる。
スラムの住民は自らの住居を捨てて別の区画へ引っ込んでおり、周囲から人の気配は消え去っていた。

狛江 蒼狗 > 『どうしたよ? 鬼の捜査第一課はこんな程度か。イヌも群れなきゃこんなもんか』
違反学生の笑みから引き攣りは消える。
(こいつは、大したことない)
脱走して間もないにも関らず、どうして自分の居所をこんなにも早期に突き止められたのか。
違反学生はそこを懸念していた。
もしかすると、自分など相手にならぬほどの腕利きが差し向けられたのかもしれない。
しかしその疑念も露と消えた。
当たり前といえば当たり前だ。
なぜなら、金髪の彼は自分が“つまらない”奴だという自覚があったから。
何の後ろ盾もない、単なる跳ねっ返りだ。
ただ喧嘩で“やりすぎた”だけの。
だから、自分に差し向けられる者もまた“つまらない”奴なのだろうと。

狛江 蒼狗 > 名もなき不良学徒は勝負をかける。
【異能】により発生した力場は半径50メートルを覆い、その内側の大気を自らの指示下に置いた。
金髪の彼の緑の瞳は鈍く発光し、半身をその力場に同化させる。
当然の権利のように、半分“魔物”のようになった彼は宙へ浮かび、そのシルエットを風に溶け混ざらせた。
蒼狗は、じっとしている。最初に対峙した時と全く同様に。
『──────死ねッ!!!』

狛江 蒼狗 > 「………………」
その交錯で何が起こったのか、傍目には理解し難い。
地上で棒立ちをしていた蒼狗の姿は消失している。
かわりに、空中で二つの人影が縺れていた。
「《地の果てまでも追い縋る猟犬》」
違反生徒の腹部に拳が突き刺さる。
踏ん張る場所のない空中であるにも関らず、重い、重い衝撃が彼の体内へ駆け巡る。

狛江 蒼狗 > 『そん』
「………………うん」
小さく頷くと、蒼狗は腕を打ち上げるように動かし、敵の顎を揺らした。
意識を刈り取られた“獲物”は【異能】の発現を停止し、ふらりと空中で頭を揺らがせる。
蒼狗はその身体を受け止めて、二人揃って落下していった。
高度は目測で10mほど。

狛江 蒼狗 > 蒼狗は軽く空を見上げて。
とん、と。
軽く地面へ降り立つ。
階段のステップを一段降りたかのような、自然な仕草で。
「……………………任務、完了」
呟くと、違反学生を地べたへ寝かせ、後ろ手に手錠をかけた。

狛江 蒼狗 > 「…………………………」
小さな溜息をついた。
“つまらない”任務を完遂した、“つまらない”自分へ対して、自嘲を篭めて。

そもそも、なぜ金髪の違反学生がこのスラムに逃げ込んだのか。
公安捜査第一課から直々に捕縛命令が下るほどの【異能】を持ち“力ある”者であるはずの彼がなぜ。
簡単なことである。
この男はつまらない者にしか強い立場で振る舞えない“力なき”者であるためだ。
【異能】に振り回され、自らの運命を狂わせただけの“つまらない”者である。

「…………………………つまらんな」

狛江 蒼狗 > 制服のスラックスの後部ポケットへ手を突っ込み、携帯端末を取り出す。
電源を押して短いジェスチャで、登録してある番号へ発信する。
「…………こちら公安委“特雑”狛江蒼狗。目標を捕縛した。外傷はほぼなし。これより帰還する」
低い声でそう言うと、犯人を抱え上げる。
「……………………」
『う…………』
男が目を覚ました。米俵のように担ぎ上げられた彼は当惑する。

狛江 蒼狗 > 『おま、』
「警告しておく」
歩調は変わらない。穏やかに蒼狗は語る。スラムの荒い砂利を踏みしめて。
「逃げても良い」
「ただ、俺はきみを“視”ている」
「逃げられると思うな」
『………………』
寡黙な青年が語った言葉は、違反学生を寡黙にさせた。

ご案内:「スラム」から狛江 蒼狗さんが去りました。