2015/06/16 のログ
ご案内:「スラム」にサイエルさんが現れました。
サイエル > 「……みなさーん、おはようございまーす」

小声。すごく小さな声で。
まるでドッキリという看板を持ってるがごとく。
保健医は静かにスラムを歩いていた。
いたって堂々と、しかし、すごく小声で。
ぷらす。お鼻を押さえながら。

「……みなさーん、おはようございまーす」

もう一度小声。そっと歩きながら。
相変わらず”おっさんに興味を持つ人は誰もいない”

彼……サボる保険医こと、サボタージュサイエル(偽名)
は、スラムを歩いていた。
理由? 理由など存在しない。
あるとすればそれは、”サボるため”。
これ以外何もないのである。

「……あ~……鼻痛い……鼻毛抜きすぎた……ジーンとする。気を抜いたらくしゃみ出そう」

適当なことを言いながら、趣向品を物色。
相変わらずこういうところだからこそ掘り出し物はあったりしないだろうか。
なんて考えつつ……ひたすらひたすらフラフラ。

「みなさーん、おはよーございまーす」

それはもういい

サイエル > まぁ、ちゃんとした理由はある。
あるのだ。一つはあまり学校の近くでサボると
見つかって強制連行されてしまうことがある。
極めて確率としては低いが、それだけは避けたい。
重役出勤したいお年頃なのだ。
そしてもう一つは、最近このあたりにこの島の
”風紀・公安ーけんりょくもちー”が”お熱”だという
ウワサを小耳にしたからである。
まぁ、それもおまけであるのだが

――本命は……

「……えーっと、どっかにないかな。葉巻」

時代遅れの葉巻を探しに来たのである。
まぁ上二つは”ついで”だ。

サイエル > 「あと、夜のものとか。そういうのも買っておかないと、うん」

独り身のおっさんである。
お酒だけに溺れるわけではない。
賭博、女。それらにも平等に、しっかりと満遍なく。
きちんと時間配分しなければ。
お金ももちろん。

「ひとつにつきっきりは良くないですからね。偏っちゃう」

ダメ人間まっしぐらの発言しつつ、ゆっくりと物色。
目当てのモノはまだ、見つかりそうになかった

ご案内:「スラム」にウェインライトさんが現れました。
サイエル > ――思ったより荒れてないね?

ふむっと、頷きながら露天を見たり、
体を安くするから買ってと強請るものを愛想笑いで流したり。
目つきの悪い人たちに絡まれる前にとんずらしたり。
”たまに存在感”を出しながら空気を肌で感じる。

「なんだ、大丈夫そうじゃないの」

やれやれと肩をすくめながら。
フゥっと息を吐いて。

タバコをくわえて。”音”を消して片隅で一服

ウェインライト > スラム。

薄暗く/かび臭く/張り付くような湿気が包む

その空気にあまりにもそぐわぬ美貌があった。

燃えるような金の髪/融かすような赤い瞳

元"ロストサイン"マスターであるウェインライトは、悠然とスラムを踏破する。

「ふむ。なるほど。ここはこうなっているわけか……」

入学してから向こう、まともに学園内を歩きまわった経験は少ない。
しげしげと観察しながら歩くその様は正に奇妙。
スラムの住人ですら、そのあまりの"空気の違い"に声をかけられずに居た。

サイエル > ――ゾッとした。

それを見た瞬間理解する。
あれは”違う”。
次元が違う存在が違う、まさしく”世界”がちがう。
男性にも女性にも見えるそれ、
スラムのような価値観では飛びついてしまうほどであろう。
高く売れるだろうと。”普通”ならば

だが、それは叶うことはない。
なぜならあれは”買うものがいない”。”価値がつけられない”

いくら金を積まれようが買えない。そういったものだ。

ゆえに、保健医はゾッとした。

これほど”完成し、未完成のものがあって良いのかと”

ウェインライト > 「んん。実に素晴らしいな、ここは。猥雑で汚らしい。
僕の美観には合わないが、それはそれとして価値がないわけではない」

ひとりごとを漏らしながらサイエルの横を通り過ぎて行く。
視界の端でタバコを咥えた男の姿を認めると、目を欠けた月のように細めてそちらを見据えた。

赤い瞳が。
路地裏から射す光に浮かされる。

「ミスター。素晴らしい技術だね」

サイエル > ぼろっと、タバコの灰が落とそうとしたわけではないのに落ちる。
はっとして。短くなったタバコを携帯灰皿にいれてもみ消しつつ

「……ふぁいっ。技術って言ってもなにもしとらんですたい」

あまりの”非現実”的な光景に言語も忘れてしまった。
それほどに、見ているのには時間が”短すぎた”のだ。

つい白衣を正して、背筋をピーンとして立った。
さながら、上官に号令をかけられた軍人のようである

ウェインライト > 「ふふ、そう固くなるのはよしたまえ。この僕がいかに美しいといえども、ね」

笑んだ口はそのまま。伸びた背筋を見て口元に手を当てて吐息を漏らす。

「音を、消していただろう?
美しい静けさだが、この僕ほどになるといささかそれすらも違和感を捉えてしまう」

美の追求者。あらゆる美しきを愛でるウェインライト。
"天災"とも称されたその才覚は、審美眼という点においても遺憾なく発揮される。

指を鳴らし。踵を鳴らし。音を響かせサイエルの近くへ。

サイエル > 「……いやぁ、流石にただのおっさんには刺激が強いといいますか、あっはっは」

困ったように笑いをこぼしながら、新しいタバコを取り出して
吸うのは無粋だろうと、すぐにしまった。

「静かなところでサボるのが好きでしてねぇ
それに、ここには”中身を読める奴もいるもので”」

見られて困ることのひとつやふたつ
人であるゆえに、ある。
だからこそ、ここいらに来るときは必ず”シャットダウン”
しているのだ。

「ここに最初に来た時も言われましたねぇ。警戒しすぎだと」

白衣のポケットに手を突っ込みながら

ウェインライト > 「静かな場所、か。確かに君たちのような定命の者は、少し警戒心が強いぐらいでちょうどいいのかな」

定命の者。永きを生きるウェインライトは、今世の人類をそう呼称する。
あまりにも儚い君たちと美しき己には隔絶された差があるのだと言わんばかりに。

「この僕とは大違いだね。静けさが嫌いなわけではないが、
僕は隠れたりしないし、隠したりもしない。
そう、エクセレントなこの僕の美は、誰にも縛られないものだからね……!」

しなやかな身体を自ら掻き抱き。
くるりと回転して体の向きを変える。

「しかしそうなると、ミスターは今日は自主休学といったところかな?」

サイエル > 「なるほど……文字通り、次元の違うってやつでしたね……」

自分の感性もまだ鈍ってないものだなと思う。
そして同時。やっぱりと思うと寒気がしてきた。

「あっはっは。まぁ、取り柄のないただのおっさんですから。
新入生の願望を打ち砕く保険医なんですよ」

くつくつと笑えてる自分に、正気かと疑いつつ

「いえ、ちゃんと行きますよ。行かないと怒られちゃいますからねぇ
当直の時だけ」

朝の職員会議などはとんずらだ。
面倒だし、話は”聞いている”。
ゆえにサボリ分をチャージする。
それがいつもの日課だ

ウェインライト > 「なに。いかに僕が美しいからといっても、他の美しきの価値が低くなるわけではない。
その静けさは褒められるべきだよ、ミスター」

過大でもなく。過小でもなく。
傲慢にそう言い切ると、自らの唇を撫でながらサイエルを見る。

「新入生の。それじゃあ君は僕の願望も打ち砕いてくれるのかな?」

かつて学籍を取り上げられ、また近日に復籍される予定であるウェインライト。
それを新入生と呼ぶべきかは議論の別れるところ。

しかしいかにも楽しげに肩をすくめて見せて、サイエルへ視線を合わせてみせる。

サイエル > 「では、ありがたく頂戴しましょう。断るのも
謙遜するのも、その”美”を認めていないことになってしまいますしねぇ」

賛辞を拒否するのは、あまり好むところではない。
なので、あまりありすぎる評価だがありがたく頂戴することにした。

「あっはっは、どうですかね。ほら、保健医はセクシーなお姉さんがいいとか
イケメンがいいとか、そう思ってきたりする人がいるでしょう?
生憎と、こんなおっさんで肩を落としたりする奴もいたりするのですよ」

願望を打ち砕く保健医……我ながら上手い表現だと思っているのだが、さて。

「まぁ、アナタが私にどういうことを思っているかわかりませんし、期待を裏切れるかどうかは――」

これから次第といったところですなぁ、なんて。
言いながら無精ひげをじょりっと撫でて。
視線を合わせられれば、目を細めて笑った

ウェインライト > 「…………ふ、ふっふっふ」

目を合わせ。耐え切れないとばかりに肩を揺らして声を上げ、

「はっはっは! 興味深いね、ミスター。小心かと思えば豪胆に。
なかなかどうしておもしろい。いや、なに、試そうと色気を出したことを詫びよう」

相手の態度の切り替わりに感じ入るものがあったらしい。
おかしそうに肩を丸めて本格的に笑いに入り、

自分がビニール袋を踏んだことに気づかない。

「あ」

湿気た路面/滑走するビニール/傾ぐ視界。

ウェインライトはしたたかに頭を打ち付けた。
真っ赤に流れる僕の血潮は、不思議とモザイクがかっている。

徹頭徹尾、どう確認しても死亡確認。
その点において一切の揺るぎなく。
死んでいた。

サイエル > 「……満足頂けたようで何よりですよ……」

はぁっと一息。正直生きた心地はしない。
こうして対峙していること自体しているのが奇跡なのだ。

「いやいや、小心も小心ですよ。手を出せませんからねあっはっは……は?」

流れるような死に様だった。
すごくスムーズ、ギャグか何かと勘違いするくらいには。
だけど、目の前のものはいった”定命”のものと。
となると……

「――なにか治療、いります?」

ウェインライト > 一瞬の、些細な意識の間隙。
瞬き、よそ見、その他諸々。
そんな一瞬で、目の前の死体は痕跡を残さず掻き消える。

突如、サイエルの横から響くフィンガースナップ。

いつの間にかそこに居て/最初からそこに居たかのように

壁に背を預けるようにしてウェインライトが立っていた。

「不要さ。なに、この程度の些事では僕の美しさはいささかも曇らないからね」

サイエル > 推論は正しかった。
ほっとしたやら、その規格外にぞっとするやら
なにやら不思議な気分だった。

「……それはそれは。心から安堵しますよ」

皮肉でもなんでもなくほんとうに。
失ってしまうのが”もったいない”と思うくらいには
その存在は際立っているのだから。
規格外というのは恐ろしい。”そうあることに疑問を感じさせない”。
まぁ、このおっさんの感性もなかなかにおかしいのかもしれないが

ウェインライト > 「ふふふ。いいぞ、いい感じだ。君はなかなか僕という美を心得ているではないか」

このところ。この異常に死にやすい体質も相まって、
どうにもウェインライトは軽視されがちだ。

その程度で己の美の価値観が揺らぐようなものでもないが、
正当な賛美や扱いは素晴らしいものがある。

目の前の彼の美観がおかしいなど、そんなことあるはずもない。

「何。この僕の美は永劫不滅。君も安心して僕の美を称えるといい」

サイエル > 「あっはっは、どうもどうも。サボリ人生に間違いなしといったところですか」

くつくつと、喉を鳴らして笑い。

「語彙力がなくて、悲しいですが、私が見た者、モノのなかで
もっとも美しいと思いますよ」

ええ、っと何度も頷いて。
称える。
それが至極当然というように。

「言葉に出すと安く聞こえるという人もいますが
言霊で、より宿る方でお願いしますよ」

ウェインライト > 「素晴らしい! その通り。確かにサボった甲斐があったというわけだね、ミスター」

指を鳴らして、こちらもその賛辞が当然であるといったように受け止めると。

「おっと、用事を思い出したよ。次に会うときは学園棟かな?」

空の具合を見上げて呟き、そのまま踵を鳴らして歩き出す。

「ふふ、アデュー!」

ゆらりと上げた片手を振って挨拶の代わりにすると、路地の裏へと消えていった。

ご案内:「スラム」からウェインライトさんが去りました。
サイエル > 「……やれやれ、心臓が止まって成就するかと思ったよ、ほんと……」

ため息一つ。紛れもない感嘆のそれを落として。
タバコを一つくわえ、手を振って見送る。

「……生きた心地がしなかったなぁ」

でも悪くないサボリだった。
そう感じつつ、紫煙を空に漂わせた

サイエル > 「……学校、行くか。このまま余韻に浸りつつ、継続するか……」

悩みどころである。
もう少しぶらぶらしてみて、それから考えよう。
そう考えて、30分ほどぶらついてみることにして……

ご案内:「スラム」に名取理子さんが現れました。
名取理子 >  (フードを被った女子が一人、ポケットに手を突っ込みながら歩いている。頭部や顔の大半が隠れているが、そのスタイルから女であることは一目瞭然だろう。)

 (周囲の雰囲気から逃れようとするかのように、視線を前に向けたまま足早に歩いている。)
 (と、ズボンのポケットから小さな掌サイズのポリ袋が落ちる。中には薬包紙に包まれた粉末が入っているだろう。)

 (しかし、当の本人は気付かずに歩き続けている。)

ご案内:「スラム」に名取理子さんが現れました。
サイエル > ――おや……

立ち去ろうとしたとき、その存在に気づいた。
ここで生きたいなら警戒はするな。
そう聞いた気がしたが……さてどうしたものか。
行くのは面白そうだが……さて。

――もう少しサボってみようか。

”音”を消しながら、教員証を外し。
煙を曇らせながら女を伺い見る

名取理子 >  (数メートル歩くと、辺りの様子を伺い始める。出来るだけキョロキョロしないように伺おうとしているが、逆にその行為がこの場では目立っているだろう。明らかにスラムの空気に慣れていない。)

 (脇に避けるように物陰に向かう。建物の壁に背を預けると、ズボンのポケットに手を入れ換える。と、マスクの上から覗く瞳が絶望の色に染まるのが見てとれるかもしれない。冷静を装っているが、手元はポケットをひっくり返し、視線は忙しなく泳いでいる。)

サイエル > その姿を見つめつつ

――良くない目をしてるねぇ……

あまり好ましくない瞳だ。
見ていて心地よいものではない。
動きも、あまりそうしていればあたりの”敏感な”連中に
気づかれてしまうだろう。
用意は万全に身元を隠そうとする。

―ー表の人間、かな?

推論を立てつつ。いつでも”出れる”ようにしながら。
”時が来るのを”待つ。
――さて、どうしようかな……?

名取理子 >  (散々迷った結果、元来た順路を引き返すことにした。落としたのは自分が作った“ただの”薬である。しかし、場所が場所なだけになくしてしまうのは落ち着かない。)

 (再びパーカーのポケットに手を突っ込みながら歩き始める。俯きがちに地面の上を滑るように見ながら歩いているようだ。…近くの音のない白衣の影には気が付くことなく、通り過ぎようとした。)

サイエル > 「……落としたよ?」

それを拾い上げてあくまで自然に。
声をかけた。
タバコを消しながら、そっと。
”音”を立てて。

「おや、粉末。もしかして”あぶない”それ、かな?」

キミ、スラムの人じゃないね?

そうつぶやいて。

名取理子 > わあっ…!?
 (突然現れた…というよりは、音そのものが現れたような感覚に飛び上がって声を出した。そして目の前に出された探していたそれを見る。…一瞬妙な薬を渡されでもしたのかと思ったが、何を驚くことがあろう、自分が落とした薬だった…。)

あ、ありがとうございます…。
 (動悸がおさまらないままに口から絞り出したお礼の言葉はおざなりに聞こえてしまうかもしれない。)

 (薬のことを疑われると、相手の容貌を観察する。白衣を来ているためきっとそういった職に就いているのだろう。が、身なりの乱れを確認すると、場所が場所なだけに視線に疑念が宿る。)
…違います。ただの鎮痛薬です。

 (小さい声だが、しかしはっきりと否定する。そして自分のことは誤魔化すように、同様に聞き返した。)
…あなたこそ、この時間にこんなところで何をしている人なんでしょうか。お仕事はどうされてるのでしょう。

サイエル > 「さっきも、ポリ袋、落としてたね? うっかりさんなのかな?」

なにかなくして困ってたのかな? と付け足しつつ。

「へぇ、鎮痛剤。なにかの病気なのかい?」

くつくつと笑いながら、静かにあなたを見つめ。

「私? 私は”サボリの保健医”だよ? だからサボってる」

ユニークなマスクだね? なんて

名取理子 >  (薬を受け取りながら、腑に落ちない表情で。)
…何がおかしいのですか。私は病気ではありません。…その言い種だと聞くまでもなく私がここの人間でないことは分かっているでしょうに。

 (目を逸らしつつ、冗談混じりの言葉を聞き流す。)
保険医…ねぇ。あまりそういう風には見えないのですが。そもそもサボれる仕事ではないでしょうに。例え事実だとて、こんなところにいる時点で感心はできませんが。

 (横目で睨み付けるような視線を飛ばす。理子自身医学的な技術をかじっているが故、飄々とした態度が気に入らないようだ。)

サイエル > 「いや、何分。きになる瞳をしていたものでね? 落としたりしてるうっかりなところを見てる私としては微笑ましくてねぇ」

その視線を受ければ、降参というように手を挙げて。
そっとポケットから教員証を取り出した。

「そうでもないよ? 保健医は”よくサボれる”
それにここにいる”生徒”を理由も聞かず摘発してないだけ。優しいと思わない? 
ほら、今サボリ中だから」

少しカマかけをしながら

名取理子 >  (なんだか弄られている気がする。少し不満そうな顔をする。)

 (と、不意に取り出された教員証を見て、目を丸くする。本当に教員とは思っていなかったようだ。素直すぎる反応。同時に自分が今置かれている境遇が心配になる。)
摘発って…。私は見ての通りここに来るのは初めてなのです…実際、このような場所があることも最近になって知りました…。入学したばかりなのです。

 (表情に影が射す。マスクを外して素顔を見せる。なんてことはない普通の女子の顔。)
私は薬を作る異能を持っています。風の噂でまともに公共施設が機能していないところがあることを知りました。最近個人的に思うところがありまして、何か自分に出来ることはないかこの目で見に来た次第です。しかし…。
 (ぐっと唇を噛み締めると震える声で呟く。)

私は大きな勘違いをしていたようです。

サイエル > 「まぁ、ここは”なかったことにされる場所”だからね
勇気があるというか、なんというか……怖かったかい?」

ふぅむっと顎を触り、タバコを加えつつ。
普通に美人さんでほんと、最近の子のレベルは高いなぁなんて思いつつ。

「……出来ると思ったけど、何もできなくてがくぜんとしちゃったかい? それで絶望したかい?」

あぁ、何もしないから安心して。サボリ中だよ、サボリ中
とカラカラ笑いながら付け足しつつ

名取理子 >  (かけられた言葉に瞳が波打つ。しかし、より唇を深く噛み締め、頑張って堪えた。教員とはいえ、初対面の人間の前では強がっていたかった。)

元々、そんなに使える異能ではないのです。ましてやあなたのような職についていませんし、異能自体未熟ですから。

…知り合いが怪我をしたり、揉め事に巻き込まれているのを見かけたことがあって。
 (正確にはもう一人の人格の美子が遭遇している。しかしそこまで説明するのは今は無理があるだろう。)

肉弾戦は無理ですが、何かできないかな、と思ったのです。…実際はこの場にいるだけで足がすくむような思いになってしまったのですが。

サイエル > 「……いや、教員なんてのはここでは飾りの称号みたいなものだけどね?
そんなに地位は高くないよ、少なくても私はね」

タバコに火をつけながら。
その強がりを知ってか知らずか
飄々とした態度を保って。

「おやおや、相変わらず穏やかではないねぇ
しかし、その勇気は賞賛するが行為はよろしくない」

周りを見てご覧としてきすれば、獲物を見つけた狩人のように
スラムの住人は目を光らせていた。

「見てくれのいい女の子が歩いていれば、”見世物・おもちゃ”にされてもおかしくないよ?
その恐怖は覚えておいたほうがいい」

名取理子 >  (見世物やおもちゃという直接的な表現に、思わず自分の体を抱く。流石に周囲の視線にも気が付いたようだ。)
…そうですね。ただ、もう少し慎重に考えていこうと思っています。自分の力を役立てていくためにも。

 (少し考えたのち、真っ直ぐに相手の顔を見詰つめる。)
…あの、あなたは学園の保健室にいるのでしょうか。その様子だと、サボっていることも多そうですが。もしよければ、色々ゆっくりお話しできたらと思います。自分の異能に近い専門家が生憎知り合いにいないもので…。

 (疑ってしまったことを気まずく思ったのだろうか、小さな声ですみません、と謝りながら問いかけた。)

サイエル > 「わかってくれたならいいさ。サボり方でいいなら……サボるついでに話してあげよう」

ちょっと妙な間を空けて。
いや、教えるのはいいんだが、こう
そういうと負けた気がする、サボタージャーとして。

「ん、今日は当直だからいるよ。このあと向かう予定だったし
あっはっは、サボっていないことも確かに多いねぇ……」

なんて言いながら、支援を吐き出して。

「まぁ、私はそういう異能じゃないから底辺なんだけどそれでもいいなら?」

気にしない気にしないと手を振りつつ

名取理子 > サボり方は結構です。
 (きっぱりと。しかしこの会話のテンポはとても理子を安心させた。表情は先程までとはうってかわって緩和されていることだろう。)

 (相手の今日の行き先を聞くと、表情が明るくなる。)
そうなのですね!良かった…。私は薬が作れても、珍しい事例になると処方の仕方が分からないのです。異能とは関係なく、色々参考にさせていただければと思います。

…あ、そう言えばお名前が…。
 (教員証でちら、と見えた名前を口にする。が、合っているか自信なさげに。)
ミラー先生…でよろしかったでしょうか?私は名取…理子と言います。

 (学籍名簿では美子になっているため、しばし躊躇ったが、これから交流をはかって貰えるのであれば、いずれ人格のことは話すだろう。そう判断し、敢えて理子を名乗った。)

サイエル > 「おや、残念」

がっくしっと肩を落として見せて顎を触り。

「あっはっは、だいたいサボってるからあてにしないように」

からから笑いながら。名前を呼ばれればこくりと頷いて。

「覚えておくよ。さ、元気になったのならお帰り? あぶないおっさんにこえをかけられちゃうぞー?」

がおーとかしつつ。似合わない

名取理子 >  (結局サボるのですか…と、呆れたように溜め息一つ。)

分かりました。暇な時に顔を出しますから、もしお会いできたら、その時はよろしくお願いします。
 (口調こそ呆れてはいたが、表情は緩い。丁寧に頭を下げた。)

 (サムイ動作をじと目で見つつ。)
…まったく、さっきまで上手にお説教していた人がこれですか。
 (はあ、とわざとらしく肩を落として見せてみたり。)

…でもありがとうございました。次はお礼を兼ねて伺いますね。
甘いものはお好きでしょうか。料理でも構いませんが。
 (もちろん作るのは美子である。しかし、単なる人格の違いなのでノープロブレム。)

サイエル > 「あっはっは」

笑ってごまかすように。
もう大丈夫だと安心したのだろう。
サボリの間に仕事はしたくないのである。

「説教とは失礼な。ただほんの少し喋ったただけだよ」

くつくつ笑い

「嫌いじゃないよ。でもこっそりねこっそり。生徒からもらったとかうわさになったら大変だ」

名取理子 > …その“ほんの少し”が、私にはとても助かったのですけどね。
 (なんて、小さな声で呟いたが、聞こえただろうか?)

…!べ、別に他意があるわけではありませんからね。私もあなたとおかしな噂が立つのは困りますから…。
 (真面目な性分故、こういった冗談にものってしまいやすいのだ。赤くなりながら言い放つ。)

 (こほん、と軽く咳払い。)
…では次は保健室できちんとお会いできればいいですね。全然関係のない場所で教員のサボりには遭遇したくありませんから。

 (くるり、と踵を返し、振り向きながら。)
本当にありがとうございました。

 (穏やかに微笑んだ少女。マスクをつけ直すと、足早に去っていく。その振る舞いは先程よりも少し堂々として見えただろうか。)

ご案内:「スラム」から名取理子さんが去りました。
サイエル > 「あっはっは。ではまたね」

手を振って見送り一息。
可愛らしいなと思いつつ。

「さて私も変えるとしようかな」

ゆっくりと、歩き始めた

ご案内:「スラム」からサイエルさんが去りました。
ご案内:「スラム」にメアさんが現れました。
メア > はぁ…んっ……

(スラムの端に少女が現れる。
学園地区から直線に最短距離で転移してきたせいで息が上がっているが、
すぐに息を整え。)

…ソラ……

メア > っ……

(スラムの事は知っていた。
路地裏とはまた異質な雰囲気を放ちこちらを伺う落第生や二級学生達。
不良やチンピラとはまた異質な彼らに自分が一級学生と気付かれれば
どうなるか…だがそんな事はどうでも良い。
転移を使い、スラムの中を駆け巡る。)

ソラ…どこ……

メア > (転移を使いスラムを駆け巡る小さな少女。
それはここに居る者達からすれば自身の異能をひけらかしに来たよう
にも写り…面白くない。
そう感じる輩もいるだろう、もしかすれば誰かが何かを仕掛ける
かもしれない。)

ご案内:「スラム」に設楽 透さんが現れました。
設楽 透 > 【破落戸だらけのスラム街に場違いな雰囲気の男が一人】
【転移をする少女へと声を掛ける】

「やあ、お嬢さん。」
「こんなところで必死になって、」
「何かお探しかい?」

メア > ん…?

(声をかけられたのに気付き声の主へと振り返る。
金髪碧眼の優男、こんな所に居るような男性にも見えないいが…)

…金髪の、女の子…知らない?

(今は少しでも情報が欲しい、そう思い尋ねる)

設楽 透 > 「金髪の女の子、か。」
「いや、今日のところは見かけてないね。」
「それより少し落ち着いた方が良い、」
「ここの連中を変に荒立てて、」
「その子が巻き添えを食ったらどうするんだい?」

【穏やかな口調で少女を宥める】
【何だかピリピリした空気なんだよねえ、】
【どこか間延びした調子で、男は付け加えた】

メア > 知らない、なら…いい……

(男が知らないと言えば興味を無くしたように向き直る)

落ち着いて、られない……

(ハッキリ言ってここに居るかも分からない、だが居るのなら
早く見つけないといけない。
そんな事態に知りもしない人達が慌てるかどうかなど
気にもしてられない。)

設楽 透 > 「なるほど。」
「じゃあ君の所為で君の友達が不幸な目に遭っても、」
「君は、君の自己満足だけでそれを見ない振りをするというんだね。」
「大した友情だ、涙が出るよ。」

【やれやれ、と大仰に肩を竦める】
【聞く気の無い子に話しても無駄か、と】

「じゃあまあ、好きにしたら良いさ。」
「次に君に話すことが不幸な報せじゃないと良いけど。」

メア > ……

(優男に向き直る。
事情も知らないくせに堂々と偉そうに…
焦りのせいか、男に向ける視線に敵意がこもる)

事情も、知らない…なら……知った風に、言わないで……

設楽 透 > 「事情を知ってるか知らないかは肝心じゃない。」
「むしろ知らないからこそ言えることだと思うけどね。」
「僕はただ知らない身から忠告してるだけだぜ。」

「知ってる人間が何か偉いわけでもないだろう。ってね」

【だからまずは落ち着けよ、と】
【先に言ったのと同じ言葉で締めくくる】

メア > 知らない、なら…急ぐ、理由も…
分からない…でしょ…

(男の言う事は間違っていない。
だが焦る子供にそんな道理は関係ない。
でも今は…)

…落ち着いて、どうするの……?

設楽 透 > 「急ぐな、とは言ってないし」
「理由を教えろ、とも言ってない」

「君が焦る事で君の友達に降りかかる火の粉が増す、って言ってるんだぜ。」

【ふー、と眺めに息を吐き】
【やや険のある碧の瞳が少女を冷ややかに見据える】

「君がそうやって落ち着きを失ったままで、」
「まるでひけらかす様に異能を使えば、」
「ここの連中に知らない顔への不信感が生まれ、」
「同じくまだ顔の知れ渡っていない君の友人にも何らかの矛先が向く可能性が上がる」
「だから、まずは落ち着けって言ってるんだ」

【その言葉は淡々と、しかし異様な重みを纏って響く】
【あたかも男の言葉が実現されるかの様な、】
【生々しい重みが少女の耳へと纏わりつくかもしれない】

メア > そう、なったら……

(考える、男の言葉はあくまで予測。
だがもし本当にそれが実現したら…)

全員……

(言いかけた言葉を飲み込む)

…異能じゃ、ない…これは…魔術……
誰にでも、出来る…

(小さく言葉を漏らす。
完全に子供の言い訳だ)

設楽 透 > 「それで君の友達が喜ぶのであれば大いにするが良いよ。」

【少女が言いかけたことなど手に取る様に判る】
【そう言わんとするかのように男は言い放ち、】
【そして溜息を一つ零した】

「君は自分の幼稚さを自覚すべきだね。」
「まあ、それが出来たら苦労は無い、か。」

【んー、と髪を掻き上げながら周囲を見回す】
【金髪の少女、それだけしか判断材料は無いし、】
【子細を聞き出そうにもこの冷静さを欠いた少女が相手ではそれも難しいだろう】

「せめて他にも誰か連れてくれば良かったろうに。」

メア > 時間が、ない……
病気、だから…

(正確には病気ではないが、ともかく放っておくのは危険
と漏らす)

もう、いい……知らない、なら…しかた…ない…

(そう言って男に背を向けて今度は歩き出す。)

設楽 透 > 「分かった。」
「じゃあせめて君の名前を教えてくれるかい、」
「見かけた時に迅速に君の元へ戻るよう伝えるから。」

【名前を出せば何らかの反応があるだろう】
【それを判断材料として扱えば良い。そういう考えもあっての提案だった】

メア > 私は、メア……

探して、るのは…ソラ…髪が、金色…目が…赤い……

(見た目の特徴を伝え駆けて行く。
その背中はかなり焦り、困惑しているようにも見えた)

ご案内:「スラム」からメアさんが去りました。
設楽 透 > 「金髪、赤目、ソラ……そしてあの子はメア、と。」
「これだけ分かってれば充分かな。」
「やれやれ、子供の相手ってのは妙に疲れるよ」
「言わなくても伝わることまで言わなきゃならないんだ。」

【嘆息混じりの愚痴をこぼす】
【しかし、すぐに普段通りの笑みを浮かべると、】
【遠巻きにこちらを眺めていたスラム街の住人達へ向き直った】

「そういうわけで、金髪赤目の女の子……もしかしたら男の子かもなあ。」
「まあ、そんな感じのソラって子を見かけたら宜しくね。」

【スラム街の住人達からの返事は無い】

設楽 透 > 「………」
「………さて、と。」

【適当な建物の壁に寄り掛かって】
【物思いに耽り始める】
【この場所は危険だが、同時に静かで】
【それで居て身の危険を感じられるので、考え事や脳内整理に打って付けだ、と設楽は常々思っている】

設楽 透 > 「………」

「………」

「…………別にここにはメロもドラも無いよ?」

【壁に寄りかかり、】
【目を閉じたまま】
【誰に対するでもなく、そう呟いた】
【見る路地間違えてないかい、と】

設楽 透 > 「異能の成長、一つ上のステージか……」


【そのまま数十分の間、その場で考え事を続けていたが】
【辺りの人間が気付かないうちに、】
【忽然とその姿は消えていたという】

ご案内:「スラム」から設楽 透さんが去りました。
ご案内:「スラム」に磐野 州子さんが現れました。
磐野 州子 > 「…さっき誰かいたような。気のせいです?」
学校帰りに隠れ家に向かっている途中に感じた気配があったが気のせいだったようだ。

「そんなことより…風紀やら公安やら彷徨くようになってからこの辺に居辛くなってきたです
あの虞淵?みたいな奴が現れてから良い迷惑です…お陰で何回も事情聴取されそうになったです」
ふぅ、とため息をついて息を整える
どうやら走って撒いたようだが、そもそも相手方には追いかけるつもりはなかったので撒けるのは当たり前である。

磐野 州子 > 「物事が落ち着くまで他の場所に行くですかね?
訓練区はこの前施設のシャワールームのドア吹き飛ばしたですから危ないですし…
次は未開拓区とか農業区行くですか…でもその2つ絶対に力仕事任されるですからしんどいです…
働きたくないです」
そんなことをぶつくさ呟きながら、風紀や公安の目から逸れはじめるまでの引っ越し計画を模索する。

そもそも落第街のこのスラムに隠れ家を作っていたのは維持費がそこまでかからないで、爆破しても被害が少なさそうだからである。
ただ、野次馬根性のある生徒や情報収集しにきている生徒、
そもそも調査しにきている公安風紀を事故爆破に巻き込んだら自分の評価が危ないというだけである。

「ほーんと良い迷惑です。早く捕まらないですかねー…」
肩を竦めてやれやれ、と言った様子で帰り道を急ぐ

磐野 州子 > 「…うるせーです。誰のせいでこんな生活してると思ってるんです。
欲しがった州子も州子ですけど元はといえばアンタが原因です。」
道すがら軽く周囲に誰もいないことを確認するとぶつぶつと誰かに向けて喋っているかのように口を動かす
決してその視線は帰り道の方向を向いているが話し相手については迷子なのかそれとも誰か見えているのか

「もういいですけど。アンタがそれで満足なら…州子はピエロになってやるです。
何をしても文句は言うなです」
不機嫌そうな表情を浮かべながら隠れ家へ向かう。
そもそも州子はこの島に隠れ家がいくつあるかというと、学生区はそもそもとして人が沢山いる為に存在はしない
やはり多いのはここ、落第街。次に異邦人街である。
そもそもの理由として知り合いに落第街と異邦人街に住んでいるという人が少なく、巻き込んでしまう確率が低いという、
割りと最低な理由でもある

磐野 州子 > やがて州子は隠れ家のプレハブにつくと中にある日用品等を纏めた物と学校に使う鞄を持って外に出てきた後に
手をかざし、プレハブを爆破しようとするが勿体無いお化けに遭遇するのも嫌なため今は何もしないでおくことにした

「そーですね。明日辺りに研究区か異邦人街にでも行くですか。
州子はその前に腹ごしらえしに行くです」
荷物を持っていない誰かにそう知らせるように告げた後州子は落第街を後にするのであった

ご案内:「スラム」から磐野 州子さんが去りました。
ご案内:「スラム」に鳴鳴さんが現れました。
鳴鳴 > 折り重なり積み上げられた城塞の如きスラム。
かつての九龍城めいた建築物の中を悠然と歩くものがあった。
星空を見上げながら、それは闇の中より現れた。
褐色の肌。赤い瞳。ゆったりとした道服。
かつてのロストサインのマスター。腐条理という異名を持っていた童女。
悪しき仙人であった。

「……ああ、まだまだ時は遠い」
スラムの一角で、胸を抑えながら星空を見つめる。
胸には、赤く発光する刻印が刻まれている。
歪んだ五芒星。その中央には燃える瞳のような印があった。

鳴鳴 > 「この星空からすれば、この宇宙からすれば――「道」という大きなものからすれば……」

星空を仰ぎ、手を伸ばす。無論、それが届くはずもない。

「何もかもは矮小に過ぎない。区別も何も、同じようなもの。
 実在とは渾沌。生ける渾沌だ。
 あらゆる対立と矛盾をそのまま自らの内に包む大いなる無秩序。
 是も非もない。だけど、人は縛られすぎているんだ。
 生ゆえに死があり、死があるゆえに生がある。
 そこに絶対的な価値などありえないわけだ。
 ……君達もそう思わないかな?」

振り返れば、ごろつきたちが童女の追うように迫ってきていた。
それをみれば、童女は口角を吊り上げて笑う。

ご案内:「スラム」にソラさんが現れました。
ソラ > ごろつきのさらに後ろ。
歩行の補助器具にもたれかかった少女が
話を聞いている。

いや、聞いていると言っていいかどうかはわからない。

その表情は、少なくとも深く話を理解しているものではない。

鳴鳴 > 「だからこそ、僕は享楽を第一とする。
 君達もそうだろう? こんな場所で僕を狙っているんだから。
 君達は君達のしたいことをしているだけ。
 僕は僕のしたいことをするだけ。
 それでいい。それでいい。
 誰もそれは咎めることのできないものだ。
 誰もそれは正しいと認めるしかないものだ。
 さあ、来ると良い。君達の享楽を僕に見せてほしい。
 その結果、どうなってもそれはそれ。全て楽しいものだ――」

『何言ってやがるんだこのガキは。ただで飲み食いしておきながらぺらぺらと!』

童女はこの落第街のある飲食店で無銭飲食をしたのだった。
それ故に、店が雇った男たちに追われていた。ある意味当然だった。
あまりに堂々と店を出たために気づくのが遅れ、今やっと追いついたというわけだ。

「僕は僕の享楽の導くままに行動したまでだよ。
 君達がそれを非とするならばそれでいい。
 好きなようにするといい。僕もまた僕のしたいようにするだけだ」

『な、何言ってるんだ。意味がわからねえ……! まあいい。ガキでもなんだろうと、とっつかまえるだけだ。後は俺たちの好きなようにしていいってことだからな!』

男たちは下卑た笑みを浮かべた。それに合わせるように童女も薄い笑いを浮かべた。
男たちが一気にとびかかる。童女はそれを薄笑いで見つめているだけだ。
不意に、ぐるりと首を回して、話を聞いていたらしい少女に視線を向ける。

「面倒なことに巻き込まれる前に、ここから去った方がいいと思うけどね」

男たちにではなく、少女にそう言った。

ソラ > 声をかけられたことに気づくと、少女はにっこりと笑った。
そう、笑うだけだった。

関わるな、と言われてもただ笑って眺めている。
理解が及んでいるのかどうかすら怪しい。
その笑顔は、スラムに似つかわしくないほどに
純粋で明るかった。

鳴鳴 > 「そうか。それが君の享楽か。
 なら、その結果どうなっても、それはそれだ」

「 ――さあ、「門」の向こう側を、少しだけ見せてあげよう」

最後の言葉は、男たちに向けたものだった。
そして、童女の目が赤く輝いた。

刹那、男たちの頭上に、何やらぽっかりと大きな穴が空いた。
吸い込まれそうな闇がそこにあった。

「……“彼ら”が帰る時は今ではない。きっと、遠い遠い未来だ。
 だけど、僕は“彼ら”のいる場所の一部に、道を繋げることができる。
 安心してほしい。僕は殺戮こそが享楽なんて思っていない。
 そんなものはその時々に変わるんだ。
 ――大丈夫。君達は生かしてあげるから」

「開け、鳴羅門」

その闇の中から、名状し難い何かの叫び声が木霊した。
その瞬間、男たちは色を失った。
穴の中の“何か”を見つめて、絶叫するのみだった。
あり得ざるものをそこに見た。
存在してはならない何かをそこに見た。
支離滅裂な言葉を口走りながら、男たちは嘔吐し、泣き叫ぶ。

「……星辰が上古のものに近かったから、門を開いてみたとはいえ。
 いくらなんでも脆すぎるね。これでは僕がつまらない。
 ああ……面白くないな」

倒れていく男たちを見下し、心底つまらなそうに呟くと、男たちを蹴りながらソラの方へと歩いていく。
天に開いた門は消えていた。

「こういうわけだけれど、君も面倒なことに巻き込まれたいのかい?
 それが君の享楽なら、それで結構だけれど」

ソラ > 少女は答えない。
先ほど『門』があったあたりで
ぴょんぴょんと跳ね、何もないのを確認して首をかしげる。

その表情は相変わらずの笑顔。
それは確かに享楽のひとつも言えるのかもしれない。
少女はひとつひとつの行動を楽しんでいるようにさえ見える。

鳴鳴 > 「……つまらないな。
 さっきから話しているのは僕だけじゃないか。
 僕は自分の享楽を満たすのは好きだけれど、人の享楽を満たすために使われるのは好きじゃないんだ」

未だ薄笑いを浮かべながら、ソラに近づいていく。
相手はこちらの一つ一つの好意を楽しんでいるらしい。

「……君もまた、あの門の先を見たい?」

ソラ > へらっと笑う。
それはYesともNoとも、
あるいは理解していないとも取れるだろう。

楽しそうに、童女の周りを回る。
器具が倒れそうになって慌てて止まるも、
その表情はやはり笑顔だ。

鳴鳴 > 「……やめておこう。僕は享楽を満たしたいだけだ」

目を閉じて静かに首を横に振る。

「その様子では君を楽しませてしまいそうだ。
 いや、それもいい。だけどそれは僕の享楽じゃない。
 だけど、そうだな――」

考えるように顎に手を当てる。

「古の道を得る者は、窮するもまた楽しみ、通ずるもまた楽しむ。 楽しむ所は窮通にあらざるなり――
 窮していることさえ楽しむ。僕もまだ修行が足りないようだ。
 このような状況下にあっても楽しむのが真人というものだ」

そういうと少女に手を伸ばす。頭を撫でんとしているようだ。

「今日の僕の享楽は、君と遊ぶことになるはずだったみたいだ。
 だけど、たぶん君は完全じゃないんだね。
 その時が来たら、また会おうじゃないか。
 僕たちの享楽のために」

ソラ > 頭を撫でられれば、嬉しそうに、やはり笑顔を返すだろう。
そして、頭に触れれば活力が流れ込んでくる。

髪はスラムの住人と違ってきちんと手入れされており、
さらさらとして気持ちがいい。
太陽に当てられた布団のような香りがする。

鳴鳴 > 「おっと……」

頭に触れると、何やらエネルギーめいたものが童女に流れてきた。
それを感じるとスッ、と手を離す。

「……君は、オリオンの彼方から来るものに近いのかもしれない。
 僕にとっては苦手な相手だ。君もまた真人なのかもしれない。
 僕は人の嘆きや絶望が好きなんだ。君のその笑顔は、どうにもだめだ。
 ――だから、君が完全な状態になったとき、また会おう。
 そのときは、君の口から言葉を聞けるといいな」

そう言って赤い口を開いて嗤い、踵を返す。

「さようなら。名前も知らない子。
 今の僕では君を絶望や嘆きに染められそうにない。ここは逃げておくよ。
 星が上古のものに揃いしとき、会おう。
 君と僕が完全になったときにこそ、出会うのがふさわしいね」

後ろを振り返って言うと、そのまま落第街の闇に消えて行った。

ご案内:「スラム」から鳴鳴さんが去りました。
ソラ > 笑顔で手を振り、その姿を見送る。
そのまま、補助器具にもたれかかりながら歩き出す。

すぐに、その場には静寂が戻る。

ご案内:「スラム」からソラさんが去りました。