2015/06/17 のログ
ご案内:「スラム」に烏丸 九郎さんが現れました。
■烏丸 九郎 > (少年は、ゲマインシャフトからの情報を頼りにここまでやってきた。
実際この区域まで来るのは初めてであったが…
治安の悪さというかなんというか…瘴気が漂っている気さえもする。
こんなところであの少女は一体何をしていたのか…)
おーい、ソラ…。ソラ。いるか?
(静寂の支配するスラムに、声を響かせる。)
ご案内:「スラム」にソラさんが現れました。
■烏丸 九郎 > (聞こえるのは粗野な男たちの笑い声。
下手な声真似をして、こちらを挑発してる。だが、相手にしてはいけない。
少年は歩きながら、ソラを探し始める。
ここには、もう…いないのか?)
■ソラ > 自分の名前を聞きつけたのか、物陰からひょっこりと少年が顔を出す。
顔も髪も服も見事に泥だらけだ。
烏丸さんの姿に気づくと、歩行補助器具にもたれかかりながら
ちょこちょこと走り寄ってきた。
ご案内:「スラム」にメアさんが現れました。
■メア > ぁ……ソラ……
(街中どこを探しても居ない、入れ違いになったのではと
一度探したスラムに戻ってくれば、探している少女とよく知った
青年を見つけた。そのままふらふらと歩いてくる)
■烏丸 九郎 > ソラ!
(思わず声を上げ、駆け寄り、その体を抱きしめようと手を伸ばす
制服が汚れ用とお構いなしだ。
説教は後。とりあえず、見つかってよかった…。)
■ソラ > メアさんの姿を見つければ、そちらにも嬉しそうに手を振る。
辺りには二級学生……と、比べてもさらに少々目つきの悪い大人が
何人か見える。
もちろんソラはそんなことを気にしない。
烏丸さんに抱きしめられて嬉しそうに笑う。
■メア > さが、したよ…ソラ……
(ソラが見つかり安心したのか壁にもたれる。
気が抜けてしまったようだ)
あ、九郎…も……
お疲れ、さま…
■烏丸 九郎 > メアも、来たのか…連絡の手間が省けたぜ。
……だけど、さすがに治安がよろしくねぇな…
のんびりは、してられねぇぞ…。
(周囲を見回せば…目付きの悪い輩が数人、目に入る。)
早く、ここから出るぞ。
(ソラを抱き上げ歩行補助器具は…もう一方の手に抱え)
■メア > うん…分かった……
(早く出ると言われ大人しく従う、
あまり長居をするような場所でもない。)
■ソラ > 烏丸さんの背中で、ソラは得意げに小さな袋を掲げる。
じゃらじゃらと音がすることから、中にはお金が入っているようだ。
だが、音からして間違いなく小銭である。
治療費の足しになるかどうかといえば、怪しいところだった。
■メア > お金……
(音に気付き周りを見やる。
まさか小銭の為に襲ってくる輩もいるとは思えないが…)
■烏丸 九郎 > そうか、ありがとよ…。
でももう金の心配はしなくていいんだぜ。
(得意そうなソラに、せんべいの二枚入った袋を渡す。
持ってろよ、食べてもいいけど。)
それじゃ、ちょっと急ぐぜ。
(心持ち早歩きで歩き出す。
スラムの住人はそれを見逃してくれるだろうか)
■ソラ > 烏丸さんに抱き上げられながら暢気にせんべいをぽりぽりと齧る。
スラムの住人は、まだ手を出してこない。
■メア > 今の、うち…
(小さく漏らし、九郎の側を歩いていく。
手を出してこないのならその内に行ってしまおう、と)
■烏丸 九郎 > いいぜ、このまま手ぇ出してくんなよ…
メアも、遅れるなよ?
ちょっと速度上げるぞ…
(メアの言葉に小さくうなずき
やや小走りに、スラムを抜けようとかけてゆく)
■ソラ > しばらく何もおきない。
このまま抜け出せるだろうか、と思った矢先に、
銃声が響く。狙いは……?
1:烏丸さん
2:メアさん
3:ソラ [1d3→1=1]
■ソラ > 銃声が一発。狙いは烏丸さんの足。
ソラを抱え、補助器具を持って走る一人を狙えば、
自ずと残りも動けなくなると踏んだのだろうか。
■烏丸 九郎 > ぐっ!!?
(一発の銃声が静寂を切り裂く。
それと同時に足に走る激痛、そのまま崩れ落ちるようにその場に倒れそうになるが、何とか踏みとどまる。
まさか、撃たれたか?)
やべ…これは…やべぇぞ…。
とりあえず…メア…ソラ、頼むわ。
(少年は痛みを堪え背負った少年をメアに託す。)
■メア > え……
(ソラを支え、響いた音に振り返る。)
っ…九郎……
(九郎を撃ったであろう男の方を見る。
手に握られた銃を見て撃った人物を確信する)
■烏丸 九郎 > メア!
(ここで戦闘になるのはまずい。
銃の男をやったとしても、その報復にスラムの住人が襲ってくる可能性は極めて高い。
そうなればどうなるか…)
■ソラ > ソラは一瞬何が起きたか分からなかったようだ、
が、烏丸さんの様子を見て驚いた表情になる。
銃を持った男は下卑た笑いを浮かべて3人に銃口を向けている。
3対1。
それでも余裕のある表情をしているのは、
撃たれていない残りの二人が幼子に見えるからか。
それとも、他に仲間がいるのか。
ご案内:「スラム」に楓森焔さんが現れました。
■メア > ………
(叫ばれ、動きかけた影が止まる)
相手は、1人……
(銃を持った相手に自分と足を撃ち抜かれた九郎とでは
逃げ切るのは難しい。
じっと男の方を見て…)
■烏丸 九郎 > ち…まずいな…
(さすがにこの状況でいてぇだの何だの言ってる暇はない。
確かに痛いが…何とかせねば。
とにかくソラをメアに預けて、先に行くように促す。
自分だけなら、多少無茶すれば、逃げきれるかもしれない。
喉を潰す覚悟が必要だが…)
■楓森焔 > ただの偶然だった。妙に急いだ様子の弟子を見つけて、声をかけようとしたら見えなくなってしまった。
その顔。その表情。それになにか突き動かされるようにして焔は駆けた。
「う、お、お、お、お、お!」
空中から、道着を着込んだ乱入者が"落ちてきた"。およそ高度20mという高さ。そこから飛び降りた衝撃は、あたりに土煙を舞い起こす。
「なんだかわからねえけど、銃声が聞こえた!」
視界の端には撃たれた九郎。即座に状況を把握して前に出る。
「流派・俺流師範! 楓森焔! 怖くねえやつからかかってきやがれ!」
吼えた。三人への注意をそらすように。ずだん、と踏み込んだその衝撃だけで窓ガラスが震える。
■ソラ > 突然の乱入者。
スラムの住人は言葉を失う。
落下してきたこともそうだが、なんか、
もういろいろと規格外というか予想外というか。
ソラは気にしない。むしろ目をきらきらさせている。
ヒーローを見る子供のような純粋な目だ。
■メア > っ…!
(突如現れ土煙を巻き上げた楓森を見て驚く。)
え、えと…?
(一先ず、ソラを抱きしめるように捕まえておく)
■烏丸 九郎 > 師範!?
(なんでこんなところに?いや、それはこちらも同じか。
この状況で彼女が現れたことは、救い以外の何物でもない
それは確かだが…どうする?
この隙に…メアとソラ…二人に声をかける。)
今のうちに、お前らは逃げとけ
■メア > あ、その……
(逃げろと言われたが、ソラと共に九郎の方へ近づき)
もう、多分……だいじょぶ…
(楓森を見て何故かそう確信する)
■ソラ > 我に返ったようにごろつきが発砲する。
狙いは新たな乱入者。
一番体力がありそうで、何より一番怪しい。
立て続けに2発、狙いは足だ。
■楓森焔 > 焔は揺るがない。幸い、スラムの住人たちは焔に意識を向けている。
大丈夫。大丈夫だ。銃弾程度に対応できない"俺流"ではない。
切った張ったの修羅場はこれが二度目の経験でしかないが、
――こんなときに意地を張れないならば。俺流なんて看板は掲げはしない。
「お、お、お!」
銃弾が飛来する。問題ない。その正面から食い破る。
轟砲。そう呼んで差し支えない音を立てながら焔が拳を振り上げた。
銃を構えたごろつき程度ならば、拳圧だけで吹き飛ばせるに違いない。
その拳にぶつかるようにして、銃弾が上空へ弾き飛ばされる。
ついで、その反響する音で、周囲に待ちぶせがいないかを警戒した。
■ソラ > 拳圧で見事に吹っ飛んでいくごろつき。
その様にぎょっとしたのは周囲で奇襲を狙っていたほかの連中だ。
仲間、というよりは銃を持っていた男の獲物の横取り、
あるいはおこぼれに預かる腹積もりだったようだ。
ソラはその様子を見て目を輝かせる。
彼女が思い出しているのは、病室のテレビで見た戦隊ヒーローものの特撮番組だ。
■メア > ………
(目の前で繰り広げられる出来事に驚く。
何が凄いかといえばあれを全て体術のみで行っている事だ。)
やっぱり、凄い……
■烏丸 九郎 > すげぇ……
(その技の冴え…一瞬の出来事だが銃すらも物ともしない俺流
やはり、すさまじい。
自身もその末席に名を連ねるものではあるものの、技を見せてもらったのはこれで二度目だ。
■楓森焔 > 「そこ、そこ、そこォ!」
奇襲を狙い隠れていた相手を順に指さし、改めて正拳を構える。
狙うは一撃必殺、とばかりにいまだその闘志は衰えていない。
「てめえら、こそこそ隠れてやがんな。おい、かかってくるってんなら全員相手になるぜ! 俺を相手にしたいなら、戦車でも持ってきたほうがいいけどな!」
吼える。これは本心でもあるが、威嚇でもある。
殺しあう覚悟などない。なるべく穏便に済ませられれば最高だ。
睨みつけるように、小さな背丈があたりを支配する。
■ソラ > ごろつきたちは多少迷った様子を見せるが、誰も襲ってこない。
奇襲を狙っていたような連中では、正面から今の体術には敵うはずもない。
悪態をつきながら去っていくもの。無言で逃げ出すもの。
すこしして、スラムに静寂が戻る。
■烏丸 九郎 > はぁ……師範、助かったぜ……
(足の痛みに耐えかね、その場に崩れ落ちるように座って焔に声をかける。
もう敵はいないだろう、さすがにアレを見て襲ってくるような奴はそうはいない。)
ついででワリィんだけど…肩かしてくれねぇかな。
■メア > お疲れ、さま…焔……
(静かになったスラムで声をかける。)
助、かった…ありがと……
■楓森焔 > 気配が、去ったか。そう感じた途端どっと疲労が押し寄せる。
肉体的疲労というよりは精神的疲労だ。
まだここを出るまでは予断の許さぬ状況だろうが、ひとまず良し。
多少気を張り詰めたまま、片手を上げて振り返る。
「よう、悪いな。かっこつけてるところで邪魔しちまってさ」
そんな風に笑いながら、三人の方へと歩み寄る。
「おつかれさん。ずいぶん"ロック"なことしてたみたいじゃねえか」
けらけらと笑い声を上げながら、喜んで肩を貸すだろう。
「そっちの二人もおつかれさん。いいのいいの。どうせ暇だったんだからさ」
礼を言われれば、残った手で恥ずかしげに頬を掻く。
■ソラ > 烏丸さんに抱きかかえられたまま焔さんに賞賛の視線を送る。
すごく目がきらっきらしてる。
ヒーローを見る子供の目だ。
笑顔でぶんぶんと手を振ってアピール。
■楓森焔 > 手を振られれば、こちらも困ったような笑みでVサイン。
■烏丸 九郎 > (ソラをおろしてメアに託す。
今ならこうしても十分安全だろうし
正直今の状況で抱え続けるのも辛い。)
いいっていいって、カッコつけそこなってよかったぜ。
カッコつけの代償が命じゃ割に合わねぇし。
(焔の肩を借りてふたたび立ち上がる。
撃たれた足には激痛がはしるが…まぁ、それ以外は問題なさそうだ。)
ありがとな、師範。
■メア > ふぅ……あ、ソラ…
もう、お金…大丈夫、だから……
病院、帰ろ……?
(ソラの手を握り尋ねる。)
■ソラ > にっこり笑ってメアさんの手を握りつつも、
心配そうに烏丸さんのほうも見る。
まだ自由に動かしきれないらしく、その歩みは遅い。
が、初めと比べると明らかに回復しているのが見える。
■楓森焔 > 「……ま、難儀だったな。言ったろ、弟子の問題は俺の問題ってさ」
怖くないといえば嘘になる。命を賭けた戦いはそう経験してはいない。
何が起こるか分からないのが戦いだ。
だが、それでも堂々と胸を張ってなければ"師範"ではない。
「なに、きちんと運んでやるよ。俺も居るから心配すんな。この程度の傷じゃ死にもしない」
心配そうに九郎を見るソラに、笑みを送って安心させようと。
■烏丸 九郎 > そうそう、大したことねぇ。
俺は学生だから、治してもらえるしな。
(少しどころかかなり顔色が悪い。
激痛に時折表情が歪む。
だが、カッコ悪いところはあまり見せたくないし
こういう時にこそ強がるのが男だ。)
■ソラ > 多少の心配を顔に出しながらも、
二人が平気というなら平気なのだろう、と。
メアさんについて病院へと向かう。
が、その足取りは少し重い。
ソラは分かっているのだ。
片割れが間違いなく怒っていることも。
■メア > (そのままソラと、そして九郎たちと共に共に病院へ向かうだろう)
ご案内:「スラム」からソラさんが去りました。
ご案内:「スラム」からメアさんが去りました。
■烏丸 九郎 > (二人の後に従うように
足を引きずりながら病院へと向かう。
苦痛に多少息をつまらせることはあっても、悲鳴は漏らさない。
男の子には意地があるのだ。)
ご案内:「スラム」から烏丸 九郎さんが去りました。
■楓森焔 > 「ま、とりあえず病院まで送ってやるよ。流石に本格的な治療は俺も無理だしな」
言いながら、九郎に肩を貸しつつ歩いて行く。
流石に相手もかっこつけているだろうことは分かっていたし、敬意をはらいたかった。
「次は技を教えてやるよ」
な。と声をかけながら彼女もまた九郎と歩いて行った。
ご案内:「スラム」から楓森焔さんが去りました。
ご案内:「スラム」にクロノスさんが現れました。
■クロノス > 落第街のスラム、ここには様々な人間が集まっている。
不法入島者、二級学生、落第学生、学園から見捨てられ、
保護も受けられない『弱者』達が身を寄せ合って暮らしている。
『―――ここは、変わりませんね。』
ふぅ、と息をつき、帽子の鍔を摘んで正す。
公安委員の制服を来たクロノスが現れれば、
スラムの人間は怯えたような視線を、
あるいは、敵視するような視線を送って来ていた。
弱者は虐げられ、保護を受ける事もできず、蹂躙されるだけの町。
暫く居心地の悪い視線を受けながら歩くと、
クロノスは1件の建物、と、呼べるかも怪しいモノに入っていく。
■クロノス > 「いらっしゃ……!!!
いやここは別に怪しいモンは―――ってああ、アンタか。」
店主の「いらっしゃい」という対応を見る限り、
そこは店らしい、
公安委員会の人間が入って来たのを見て一瞬慌てるが、
彼女の顔を見れば安堵の息をつく。
「久しぶりですね、調子はどうですか?」
ボロボロの椅子に腰掛けると、
これまたボロボロの机に肘をつく。
「……まぁ、ぼちぼちってとこかな。」
店主はバツが悪そうに頬をかくと、
彼女の前にコトン、と『真っ赤な液体』を置く
「そっちこそ、最近来なかったじゃないか。
ま、違法部活のほうで素敵なバーベキューを楽しんでたらしいし、仕方ないか。」
『随分と耳が早い』とクスクスと笑うと、
その赤い液体を一口飲む。
ご案内:「スラム」に照山紅葉さんが現れました。
■クロノス > ―――そう、ここは肉屋だ、『特別な肉』を売る肉屋。
魔術の媒体、実験材料、その他色々。
なんだかんだで『需要』はある。
もっとも、彼女のように『食べに』来る客は殆ど居ないが。
「―――いつもの、一つ下さいな。」
『赤い液体』を飲み干すと、
にっこりと笑って店主に声をかける。
「……はいはい。」
引きつった笑みを浮かべながら、
店主は「いつもの」を持ってくる。
■照山紅葉 > ズル…ズル……と重く引きずるような足取りでスラム街を歩く足音一つ
何か鼻を鳴らすようなしぐさの後、それは急速に足取りが早まった
まるでスピード系のドラッグか何かを決めたかのように、緩急の差は大きく
サーカスの興行を見つけた子供が、それを追いかけるような足取りだ
「邪魔するぜェー……」
ドサ…と、人型大の物体が屋根を伝い、パルクールめいて着地する音が鳴り響く
ソードオフショットガンが無造作にくくりつけられた背中をゆっくり起こし
ギリギリと首を振り向ける
「いたァー……公安のカラス野郎じゃねェーか…ヘヘヘ、シマに踏み込んでアイサツもなしかよ」
鉛色に濁った瞳を爛々と輝かせ、そこにいるクロノスという女を見止めると
ずかずかと無遠慮な足取りで店内へとエントリーしていく
その男は、最近この界隈で公安や体制に見境無く戦いを挑むとして、手配が進んでいる
この事は知っていても良いし、知らなくても良い
■クロノス > 目の前の「いつもの」をもぐもぐと食べる。
世界が崩壊する以前の常識的に考えれば、このような店は明らかな『黒』なのだが、
異世界から『吸血鬼』や『食人鬼』その他、
『それ』を食料とする『種族』が大量に流入した以上、
このようなものを売る店もどうしても必要になる。
幸いにして、治療術、治療の異能の出現もあって、
『一部』くらいならば切り落しても再生可能になっている。
それを食料とする種族に無差別に殺されるくらいなら、こうして
半合法的に販売したほうが安全、というわけだ。
―――実際問題、本来ならスラムに置く必要も無いはずなのだが、
この学園ですら、未だその『文化』に対する差別は根強く、
スラムでの販売を余儀なくされているのが現実だ。
故に、この店は『グレー』でありながら、この『スラム』に存在している。
■クロノス > 「別にあなただけのシマ、というわけではないでしょう。
このスラムは公共の場ですよ。監視番号262。」
歓迎していない来訪者に眉をひそめると、
手早く『食事』をすませ、机にお金を置く。
迷惑料も含めて、若干『多め』に。
「私に用なら、表に出ましょう。
ご用件を察するに、ここだと狭すぎます。」
口元を手で拭うと、くいっと顎を動かし、
『外に出ろ』と誘導する。
■照山紅葉 > 「人を番号で呼ぶンじゃねェよ…へへへ、ゾクゾクしちまうだろ」
おぼろげな、混濁している脳のどこかに想起する記憶があるのか
歯を見せて笑う、なつかしい感覚だ、と呟く
「ここは余所者を拒み、理由無く他者を恨む、そりゃァ…貧しいからだ、わかるか?悪意ってのはソレだよ
ゆえにだ…故に人として当然持つべき仁や愛も育たねぇ…
聞こえるだろォ…今も曲がり角の置くから罵倒と物音が響いてる、だけど誰も気にかけねェ…
一人ひとりが皆、ココを自分のシマだと思い、自分の権利を主張し、自分勝手に難癖を付ける…
そういうもんだろォ…だからゆとりあるアンタを…誰もが歓迎してねェのさ…」
砂塵が埃となって靴と膝を汚し、それを手でパンパンとはたきながら
面白おかしそうに指をクルクル回し、シマという言葉について講釈を垂れる
自分勝手な理屈だ、それは理解している、この街の誰もが。
「あぁ…そうだなァ…」
タブレットケースから取り出した錠剤をもぐもぐと口へ放り込みながら
外に出るようにという指示に頷いた
頷いて、背中に手を伸ばす
「面倒…くせェー……」
そして構えたのは、2連式ソードオフ・ショットガンだ
それを店の中へと、クロノスへと向け、おかまいなしに引き金を引く
BLAMN!
浮浪者の喧嘩とは比較にならない、重火器の火薬の炸裂する音が響いた
弾丸は散弾となり、店内を暴れまわるだろう、その中心にはクロノスがいる
少なくとも銃を構え、引き金を引こうとした時点では。
■クロノス > 「そんな特殊性癖があるとは思いませんでした。
ですが、名前は呼びませんよ。監視番号262。」
やれやれ、と首を振る。
「―――ええ、よく知っていますよ。
弱者はより強い弱者に喰われ、その強い弱者ですら
所詮井の中の蛙、外に出れば『弱者』でしかない。
誰も保障してくれないなら、自分勝手に権利を主張するしかない。
そうして生きているのが、このスラムの人間です。」
『それを少しでも変えるべく公安委員になったはずなんですけどね。』
ぐっと帽子の鍔を握ると、地面に手をつく。
異能によって地面から天を貫くように発生した杭が、
壁になってクロノスと彼の間に立ちふさがった。
ショットガンから放たれた弾丸が店内の『モノ』に当たり、
どこからともなく零れ出た赤い液体が床を汚す。
「めんどくさいなら、私が表に出してあげましょう。」
トン、と杭の壁に手をつく。異能で作られた杭は連鎖する。
杭で作られた壁からさらに飛び出る第二の杭が、
殺意のある壁になって照山紅葉を店の外に押し出そうと迫る。
もっとも、それに触れれば押し出される以前に串刺しになるだろうが。
■照山紅葉 > 「おいおい…随分興奮させてくれるじゃねェか…へへへ、お前、さては良い奴だなァ…」
くぐもった笑いを響かせる、散弾銃の引き金を人間に向けて引いた。
という、人として備わっているべき罪悪感や焦燥は微塵も感じられない顔だ
「そうだなァ…アンタ達がケツで椅子を磨くだけの閉職じゃない事を申請する為に
そんな場所にせっせと首を突っ込んで
2~3人しょっぴいて晒し、善良な生徒は安堵する訳だ
『正義は行われた』ってな、へへへへ……それも自由、良いじゃねえか…Win-Winだ…」
「でも、俺は気に入らねェー…」
放たれた銃弾の行く末、しかしそれは阻まれる、何事か?と目を細めるまでもない
「おっと…へへへ、ちょい、ちょい待ち…死ぬって、へへへ!」
再現なく伸びてくる杭、右頬を鋭く掠め、咄嗟にショットガンの銃身を絡めたままアスレチックめいて後ろに飛ぶ
奇しくも、それは指定された場所、誘導されるように店外へともつれ出る
頬には赤い一筋が生まれていた、結構ざっくりいったみたいだ、顔が熱い、焼けるように。
「良い…目をしてるぜェー……」
いまだに己を突き殺さんしている杭に対し
ショットガンを持たないほうの手を翳せば
燐光がボウ…と浮かび上がり…
その杭が異能よる生成物ならば、たちまちコロイド光へと分解され
自身の生命力として体内へ吸収されるだろう
■クロノス > 「そうですね、良い人、正義の味方ですよ。
なにしろ、公安委員ですから、ねぇ、監視番号262」
にぃっと歪んだ笑みを零す。
「確かに公安委員ですが、先に言っておきますけど、
私は『そんな甘い公安委員』じゃないですよ?」
顔を大きく歪め、先ほどまで食べていたモノで真っ赤に染まった口を歪な三日月の形に開く
「悪人は全て殺す。それが私の『正義』です。」
杭は確かに異能による生成物だが、
生成された『杭』は異能的特性を持たない。
―――その光が効果を成すかは、その能力次第だろう。
手を横に翳すと、白銀の鎌が現れる。
ひゅんと鳴らすと、その鎌を構えた。
その血のように紅い瞳は照山紅葉を捕らえて離さない。
『お前を、殺す。』と。
■照山紅葉 > 際限なく伸びる、質量保存法に従わない自然物などは存在しない
そんな物質を、超自然能力であるこの青白い燐光は許さない
燐光が吸い上げるのは、物質の中にある生命エネルギーだ
それを取り除かれれば、杭はやがて数千年の経年劣化を経たかのように風化するだろう
だが、それは一瞬の事ではない、バキ…とひび割れる様に、徐々に崩壊していくかもしれない
「ワーオ…カートゥーンのヒーローって訳かァー?
マーヴェルの雑誌から飛び出てきたのかよ…すっげェー…
でもよォー…俺ってヒーローに憧れる少年であり、ヴィランでもあンだよなァー…
だから…」
吸い上げた反自然エネルギーにより、徐々にその瞳は金色の光となって圧倒するように覗き込む
「ヒーローは全部標本にしてやるぜェー…『悪役』としてなァー…」
虚空から鎌を取り出し、こちらの命を刈り取ろうとしているクロノス
その視線は気の弱い者ならば、それだけで失神、無力化されるだろう
だが自分はといえば、落ち着き払って一発の残ったソードオフを向け
「はじめるぜェー……」
引き金を引く
BLAMN!
新たに放たれる無数の弾丸の嵐の中、同じように相手をにらみ返した
『殺れるものなら殺ってみろ』とでも言う様に、その瞳は挑発めいて煽った
■クロノス > 『ふむ』と、緩やかに朽ちた杭を見下ろす。
同系統の能力か、と冷静に分析しつつ、
吸収に時間がかかるならば、
即時で無効化される事は無いだろう。と計算し、判断を下す。
「ヒーロー?ヒーローではありませんよ。
自分が正義と言う人間が、『正義の味方《ヒーロー》』を名乗るなら」
べろり、と、口元を舐める。
「もはやそれはただのエゴ、自分の目的の為には手段を選ばない
―――私も、悪役《ヴィラン》です。」
『だから標本はお断りしますよ』と再び地面に手をつく。
再び地面から現れる無数の杭が、その弾丸の嵐を防ぐ壁になる。
防がれなかった弾がスラムの住人に当たり、
数人をもの言わぬ肉塊と化した。
「その攻撃は通じないのが分かっているのに、
なんで同じ事を繰り返すんですか?
―――仮にも『ヴィラン』を名乗るなら、もう少し賢くなくては。」
クック、と彼を嘲るように笑い、挑発する。
何も考えずに同じ攻撃をしてくるわけがない。
もし、してくるならば、彼はさほど脅威ではないのだろう。
向けられる挑発めいた視線を薄汚れた笑みで流し、
彼を値踏みするような、見下した視線を返す。
■照山紅葉 > 「文脈が繋がらねェなぁー…正義の味方だけどヒーローじゃねえ?
悪役ですゥ?何だよ、へへへ!笑っちまうぜ
私は正義の番人ですが、人類みな兄弟
だからあなた達の気持ちはよくわかります、手を取り合って仲良くしましょう
ヘヘヘ!ハハハハハハ!腹痛てぇ!」
欺瞞だ、欺瞞しかないセリフを耳にする、少なくとも自分にはそう聞こえる
揚げ足を取るように、演技めいたセリフでおどける
人間は0か1か、白か黒かでしかない、そんな存在が居てたまるかと
「へへへへ…なるほど…何の制約もなくブッ放せるタイプかよォ…妬ましいぜェー…」
相手の能力の程はこれで大体理解した、手札を全部見せていると思うほど間抜けではないが…
金色の瞳がカッ、と見開き
「ならよォー…俺は、こうだァ…」
バッ…と右手を翳す、握りこむように力を込めた
瞬間、店内の排水溝、水道、蛇口、エアダクト
様々なドレインから、津波のように押し寄せるのはコールタール
流動的異能エネルギーの塊である、黒い粘性のヘドロの濁流が
ガラスを突き破り、クロノスの背後から殺到するだろう
それは、触手のように四肢を絡めて取ろうと伸び
杭で守ればその隙間から生き物のように蠢いて、肌に触れれば膠のようにへばり付くだろう
■クロノス > 「―――私は私《せいぎ》の味方だって言ってるんですよ、
国語の点数悪いんじゃないですか?監視番号262。
私が気に入らない人間を全て殺す、私が守りたい人間を全て守る。
その為に、私は公安委員会にいるんです。」
ぐっと帽子の鍔を握って、正す。
紅い双眸が、貼り付けたような笑みが、哂う照山紅葉を睨みつける。
ふと、異音に振り向く。
咄嗟に杭を立てて防御するが、その液体は隙間から入り込み、
襲い掛かるコールタールの触手が、彼女の四肢を捕らえた。
「チッ……。」
これが彼の異能か、と舌を打つ。
捕らえられたまま、なお値踏みするように彼の瞳を睨みつける
『確かに捕らえたが、それで、どうする?』と。
■照山紅葉 > 「悪ィなぁー…お前らみてぇにまともに学園生活送ろうと思ったらよォー…
その前に脳みそほじられて捨てられたンで、学がねぇのは大目に見てくんねぇかなァー…へへへ
でも大体判ったぜェ…お前らが自分の事しか考えてネェのは今に始まった事じゃねェってなァー…」
口にする皮肉も、心から相手を非難するものではない
むしろ好感すら抱いている、こんなにも熱心になれるものがある
それは、素晴らしい事だ、人生ってのは素晴らしい
だから思うさま潰し合いって楽しもう、自分の理念に従うように
相手へと向けるのは享楽と乾きに満ちた視線で
「へへへ……応、当然よォ…やる事ったら一つだろォ…へへへ…」
シャフトのレバーを上げると、ショットガンの中ほどがくの字に折れる
銃身の方へ押し込むようにして、ショットガンのシェルをもたもたと目の前でリロードした
しかし、その動作はフェイクだ、ショットガンに注意を向けさせ
その四肢を捕らえた触手から、枝分かれしたように、別の一本が器用にうねる
「うかつに近寄っとあんまり愉快な事にはならねェー…からなァー…」
まだだ、まだ相手はきっと何かを隠している…こんな物騒な女が
何の隠し種もなくこんな場所をウロつかねえだろ…
無軌道に見えて、極めて困難な無法の生活の中、自分をここまで生かしたのはその警戒心である
一歩も近づく事もなく、ショットガンを構えた
引き金は…引かない、指に力は入っていない
そしてそれと同時に、忍ぶような動作で、枝分かれした触手が
手首の脈に針のように硬化した細かな針を刺そうとするだろう
刺されば、体内を自身の廃棄したエネルギーが回りこみ、神経毒となって行動力を蝕むだろうが…
■クロノス > 「そうですか、貴方も学園の被害者だったんですね。」
『ご愁傷様です』と付け加え、顔だけはにっこりと笑いかける。
彼がショットガンを構えれば、目を伏せ、クックっと哂った。
「なるほど、その銃でトドメというわけですか。
……どうぞ、撃ってみたらどうですか?」
『にぃ』と口元が歪み、
彼を見る紅い瞳は誘うように揺らめく。
ふと、首筋に突き刺さる違和感を感じて首を傾げる。
流し込まれたのは『破棄された異能エネルギー』
―――つまり、彼女の『異能の餌』だ。
彼女は笑う、狂ったように。大声を上げて。
「これがっ…ハハッ!!あなたの奥の手ですか??
こんな栄養剤を相手に打ち込むような異能がッ―――!!!!」
こいつは傑作だとばかりに暫く笑うと、
自らを縛り付けていたコールタールの触手を『噛み千切る』
異能のエネルギーの固まりである事が分かれば、
こんなものただの『特別食べやすい餌』でしかない。
口元を乱暴に拭うと、
彼をその紅い双眸で睨みつける。
「―――それで?」
クックと哂うと、彼の瞳を鮮紅の瞳が見る。
値踏みは終わった、これからは『狩りに行く』と予告するように。
■照山紅葉 > 「まぁ人生ってのはエンジョイするモンさ…今は中々楽しんでるぜぇ…
人生のデッドエンドって奴をなァ…」
さして感情の動かない、むしろ笑みをもって銃口を迎える女を見て尚
こちらの感情もなんの揺るぎもなかった
「悪食な女だぜェー…よく食う女は気持ちがいいが
ゲテモノ食いは控えた方がいいなァ…美人が台無しだぜェ…」
ゴムのような物質が、体内へ侵入し、そして何かせめぎあう感触がした
暗黒物質は、己の体の一部だ、故に、その末端に至るまで、己の感覚として感知できる
「あァ…そうだなァ…
それが、『栄養』って奴なら俺には、お前はスゲェとしか言いようがねェー…へへへ」
パンパンと手をたたく、まるで目の前でサソリか何かを生食するショーでも見たようだ
感心している
「あァ…それで…どうだ?気分はよォ…」
これで尚殺しに来られるというのなら、飛車角落ちだ、自分には打つ手がない
なすすべも程ほどに殺されるだろう、だが…
相手が食らったエネルギーは、『自身の欠けた異能を埋めるべく食い尽くす負のエネルギー』だ
女の体内で取り込まれたその不燃性物質の淀みは、まだ知覚している
金色の瞳が、その体内に入り込んだマターを操作するように、見開かれた
その動きは、まるで『クロノスの異能を取り込んで食いつぶそうとしている』かのように感じられるかもしれない
少なくとも、完全にすぐさま消化しなければ…それは能力を奪い取ろうと蠢くだろう
■クロノス > 自らの内側を見るような金色の瞳、
そして、内側から食い破られるような違和感、
―――腹部を押さえ、ごふっと黒いものが混ざった血を吐く。
口元を拭うと、にっこりと笑った。
「なるほど、あまりいい気分ではありませんね。」
少量ならば負の異能だろうが異能である以上消化できる。
とはいえ、これ以上食べるのはまずそうだ。
「ええ、ゲスの異能は、ゲスの味がしますよ。
気分がいいわけがありません。」
ツバでも吐き出すように口から何かを吐き出すと、
地面に黒い液体が広がった。
―――この力は、もう『取り込んだ。』
この吐き出した黒い液体は、私の『異能』だ。
「試しに、貴方も一口どうですか?」
未だ消化しきれぬ彼のダークマターが内側から自らを食い破ろうと蠢く。
その不快感に顔をゆがめつつも、吐き出したその黒い液体を操作する。
激しい動きは出来なさそうだが、自分が動かずとも異能は動く。
この内側で蠢くコレを消化するまでの時間稼ぎが出来れば十分だ。
あくまで余裕を持った笑みを浮かべ、彼を見据える。
紅い瞳が彼と同じように真紅に輝き、黒い液体は獰猛な獣のように彼に襲い掛かる。
防ごうとすれば生き物のように蠢いて、肌に触れれば膠のようにへばり付くだろう。
彼のソレと同じように。
■照山紅葉 > 「オエー…落ちてるモンを食うなんてよォー…浮浪者でもやらネェぜぇー…」
ペロ、と色素の濃い舌を突き出し、ジェスチャーをする
己の放ったダークマター、枝分かれしたそれの感覚が失われた、食われたのだろう
「教訓になったなァ…へへへ」
2連式ソードオフの銃口が、二つ纏めて火を噴いた
BBLAMN!
ショットシェルが弾け、散弾が打ち出される
自分のものではない、新たに生み出された異能力エネルギーの塊に対し
だが、液状流動エネルギーであるそれは、不定形である為
弾丸の通り過ぎる部分だけが散り、霧散させるまではいかなかった
「ンだよ…畜生…また俺から何か持っていこうってのかァ…」
べちゃ…と顔に覆いかぶさろうとしているものを、左腕でふさぐ
それにより、左腕が顔の左半分に固定される形となって膠のように暗黒物質に覆われる事になる
「クッソ面倒臭ェー……ヘヘヘ…でもよォー…覚えとけよォ…
俺の『これ』はよォ…能力に反応すンだ…お前のその杭を出したり、変なもん食ったりする力
まだ使えるか?どうだ?ヘヘヘ……淡水魚の水槽でピラニアは飼えねェ…
あるいはピラニアとピラニアを一緒には飼えねェ…それと一緒さァ…
ほかに能力があれば、ソイツを食いつぶすかもしんねえ…お前は、オレになるんだよ…
生きてるのか死んでるのかも判らねえ…ゾンビーみてェになァー…」
無事な右腕の人差し指で、こめかみをトン、と指し示す
この能力は欠けた脳細胞を占拠する泥の塊のような無念の呪い、その結晶体だ
相手がそれをコピーするというのなら、能力は自分と同じようにニューロンを蝕み
体組織の崩壊を促すだろう…まさしく、生きたままゾンビーになるのだ
それは、まるで能力を持たないモータルの老人や子供の恨み、呻きが
体の奥底から聞こえてくるかのようにサラウンドとなって体内を這いずり回るだろう
「へへへハハハハ…お前がこのノロイめいたクソみてェな能力にどう抵抗するのか…
地獄の2丁目で見ててやるぜェ……」
バサァ…と猛禽類めいた翼が生える、手も足も出ず、結果として屈辱だけが残ったかもしれない
だが…相手はコピーしてはいけないものをコピーしてしまった…どうなるか、それは自分にもわからない
楽しみだ…とでも言うかのように、再び濁った鉛色に戻った瞳を細め、後ろへと下がろう、左手は、やはりへばりついて固定されたままだ
■クロノス > 打ち出された散弾の一部は、彼女にも届き、
痛々しい弾痕をいくつか作り出した。
「ぐッ……くッ………。」
ギリっと歯を結ぶ。弾の痛みは感じない。
『明らかに不味いものを取り込んだ』
その感覚だけが、彼女の思考を支配する。
内側から聞こえる声が、蠢くその黒い力が、
脳を焼ききろうと、彼女の中の力を全て喰らおうと『暴走』をはじめる。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ!!!」
頭を抑え、膝を突く。
目を見開くと、地面に黒い黒い液体をドロドロと吐き出す。
彼女の中に取り込まれていた異能力を彼の異能力が食い、吸い込みきれなかった黒い液体が口から漏れだして行く。
「今なら見逃してあげましょう。監視番号262。」
後ろに下がる彼を睨みつけ、口元を拭い、
腹部を抑えて嘔吐くような動作を取りながらそう声をかける。
「―――逃げるなら、逃げても構いません。」
口元から黒いものを垂らしながら、彼に向き直る。
■照山紅葉 > 「あァ…クソ!落ちねえ!我ながら汚物そのものみてェな能力だぜ…ヘヘヘ…」
ズキン…と能力を酷使する程、脳を蝕む黒いマターは侵食度を上げていく
その痛みに絶えかね、右手にもっていたフリスクケースから3錠ほど口の中へ放り込み
白い高純度の芥子で出来たタブレットを奥歯で噛みしだく、痛みよりもアドレナリンが過剰に分泌される
具合が良い…
「へへへ…どうしたよ…やっぱ明らかにダメなモンは口にするモンじゃねェなぁ…」
見逃してやる
その一言は、どうにも自分を煽って仕方ない
いや…相手の言うとおり本当に撤退するべきなんだろう、だけど…
「良いザマだ…そのままじゃ眠る事も出来ねェな…お前がお前で居られるか?
俺みたいに…狂って…枯れ果てるだけだ…」
ずるり、と引きずるような足音で近づいていく
近づけば判るだろう、その体は一部分がカサカサに乾燥し、ミイラのような肌になっている
腐肉めいた手を翳し、クロノスのおとがいに手を伸ばす
「全部吸い出してやろうか…お前が取り込んだもの…へへへ…
俺が元に戻してやろうか、つってんだよ……」
届くなら、くい、と持ち上げようとするだろう
■クロノス > 「まったくです、最悪の気分ですよ。」
にぃっと歪んだ笑みを零す。
自身の内側の異能力を餌に、内側の異能力を押さえ込む。
異能に反応するならば、異能を与え続けている限り、
それは脳に達しない。―――だが、それがいつまで持つかも分からない。
そもそも、響く声と口から出続けるこの黒いものは止める手段が無い。
やれやれ、と頭を振った。
「確かに、夜眠る事も出来なそうです。
床が汚れてしまいそうですしね。」
腹部を押さえ、ふらふらとしながらも、彼女はその不敵な笑みを崩さない。
「そうですね、出来るならお願いします。正直、手に負えそうにない。」
彼の提案には、そう言って頷く。
おとがいを持ち上げられれば不快感に顔を顰めるが、
にっこりと笑って彼にそう答える。
彼女から流れ出た『黒いモノ』はいつでも彼に襲いかかれるというように蠢いている。
余計な事をしたら、最低限お前は道連れにする―――とでも言うように。
■照山紅葉 > 「あァ…良い格好だ…ちょっと煽る癖は頂けネェな…あのままゴリ押してりゃ…
まあ…間違いなく俺は半殺しぐらいの憂き目だったかもしんねェな…だが、そうはならなかった」
もしもあの時出した鎌のようなもので直接切りかかられていたら
もしもあの杭を構わず突っ込まれていたら…
いくつかのもしもが頭を過ぎる
きっとこの女は自信に見合う力を持っていたのだろう、町のチンピラにすぎない自分よりは
余程大きなものを背負い、そしてそれを体現する意志とパワーを…
だけど
人間の意志だけで制御できる痛みには限界がある、それに自分が耐えられなかったように
脳から響く痛みと声は別物だ、それは、人格を狂わせる
だからこそ…相手が本当に、ブラフではなく苦しんでいると、核心したからこそ手を伸ばした
そして
「オーケイ…肩の力を抜けよォ…肩の力を…抜くんだ…」
手を伸ばす
抵抗がなければ、その顎をクイ…と持ち上げ、唇を落とそうとするだろう
粘膜の接触は皮膚接触より強い、それは、相手の記憶諸々を吸い上げる力だ
相手の腹の中に眠る淀んだ力の記憶、それから力の根源、それらを徐々に纏めて吸い上げようとするだろう
唇を、重ねる事によって
■クロノス > 「ええ、我ながら『油断した』といわざるを得ませんね。」
フフっと笑う。
この男はあくまで学園にとっての『被害者』だ、
―――彼女が斬るべき『悪』ではない。
その雑念が、彼女の振るうべき鎌を、あるいは杭を鈍らせた。
本当に彼を殺していいかどうかを見極める必要があった。
目を伏せそう考えていると、唇に奇妙な感触が這う。
「んっ……んんっ!?」
一瞬、彼女と、それに呼応するように共に黒いモノがピクりと蠢く。
だが、その後の感覚から、『余計な事』ではないと判断すると、腕をたらし、力を抜いた。
「ん……んん……」
自分の中から『黒いモノ』が抜けていく感覚を覚えながら、
彼女は『終わったら蹴る。』と考えながらその紅い瞳を伏せ続けた。
■照山紅葉 > 「『次は気をつける』事だなァ…へへへ…」
そう言うと、くぐもった笑いを浮かべる
その弛緩は『人が良いから』なのだろうか
人には性善説があると、俺の中の善性を信じてくれている?
そんな奴が、まだこの世界に居るとは思わなかった…
確かに、こんな女を廃人にしてしまうのは勿体無い
「ん……ふう…どうだ…段々…ラクに…」
接触部、絡まる唾液が淡く光り、記憶が流れ込んでくる
肉屋の前で相対する、この女視点での自分、吸い上げた時の悪寒
それから…
「なってきただろ……」
後ろ髪に手をやれば、かき抱くように伸ばし、そして
舌を入れ、絡めようとする
接触部分を増やし…そして仕上げのように記憶を吸い上げていくつもりだ
それは、徐々に深度を増していく
自分の目の前の人間は誰なのか
自分が今何故ここに居るのか
自分の大切な人は誰だったのか
自分はどこに所属しているのか
自分は何を信じていたのか
自分はいったい誰なのか…………
まるで、催眠術めいて、気づかない内にその脳にアクセスし
白い霞みで塗り潰していこうと………