2015/07/30 のログ
ご案内:「スラム」に鬼道椿さんが現れました。
鬼道椿 > 血の海と化したあばら小屋をぐるりと見渡す

「これはまた…派手にやられたものだな」

べりべりと靴の裏にこびりつく血の感触に眉を寄せる
最近はここら界隈に現れる怪異もだいぶ賢くなって見つかりにくい所で人を襲うようになったのだが…

棚の上に置かれた小物類を物色する
「カラオケ、レンタルビデオ…ドーナッツのポイントカード?」

片眉を吊り上げる、見たところこの小屋の持ち主は2等学生のようだが
このドーナッツのポイントカードに引っ掛かった
裏面を見ると研究区支店のスタンプが押されていた

「…これは、ババを引かされたかもしれないな…」

はぁ、とため息をつき靴で床の血を伸ばすと血の中に長い髪が混じっていた

鬼道椿 > いったんあばら小屋の外に出て深呼吸をする
酷い臭いだ、まだ小屋の中で血の臭いを嗅いだ方がましだ

さて、どうしたものか…

今回の『百鬼夜行』からの退魔の依頼はスラムに出没する異能持ちの追跡と祓い
ターゲットは落第街の大通りのカラオケ店の個室で異能を使い客を『潰した』
それが2日前。
そして今回の血まみれのあばら屋、現場には一件目のカラオケ店とレンタルビデオの会員カード、そして研究区のドーナッツ屋

「さてさて、怪異認定されたな…」

眉間に皺を寄せた、研究区で何をやっていたかは知らんが
異能開発の副作用で異形化して
そして残った記憶でカラオケ店に出向いて暴れたか…

「どちらにせよ斬らねばいかんな」

そう言ってレンタルビデオ店の会員カードを見る
次に顔を出すとすればここだろう

鬼道椿 > レンタルビデオ店『AtoZ』
青いネオンの看板が点灯し蛾が纏わりついていた
躊躇うことなく店の中に入ってDVDの棚を眺めた
客は自分以外居ない。
品揃えはなかなか悪くはなかったがどうもいやらしいものが多い
個人経営のレンタルビデオ屋なんてそんなものだろう、と時代劇コーナーを物色する

こういう時術でも使えれば結界でも貼って近くで時間を潰せばいいんだが…
無いものねだりをしてもしょうがない、いっそヘルプでも呼ぶか?
日乃杜が来てくれれば心強い

何気なく手を伸ばしたDVDのパッケ裏を見た
白い肌の女性が赤い縄で縛られてあられもない姿をしているサンプル写真が目に入って
慌てふためいてDVDを落としかけた

「なっ…!な! ッ…駄目だろ、これは…ここにあっちゃ!」

指に力が入りパッケージが悲鳴を上げる
顔が熱い、耳まで赤くなっているのが自分でも分かる

「理不尽かつ暴力的な■■行為…目を覆うばかりの■■的快楽蹂躙地獄!!△△と驚愕、■■と火照り、そして絶望…」

そっと棚にDVDを戻す
縄、縄か…縄…駄目だ、そんな事を言えば何されるか分かったものじゃない
あの鬼畜の手にかかれば身動き一つとれずにあっという間に縛りあげられるだろう
何かと帯で手を縛ってくるからな…

そう言えばあいつは今は温泉に行っていたな…
数日会えないからどうしたと思ったが少し寂しい
そもそもどういう事だ、どこにそんな金がある!そして行くなら私にも声を掛けてくれてもいいじゃないか!
いや、たまには一人でいたいという事なんだろうが…
ズルい…優雅に露天風呂に旬のごちそうを今頃食べているに違いない!

「はぁ…」

帰ろう、そして『百鬼夜行』に報告してもっと適任の退魔士に祓いをしてもらおう
店を出ようとして入口を見て目を見開いた

それはそこに居た

鬼道椿 > 赤黒く変色した制服、異常に長い首、そして奈落の底に通じているような黒い穴の開いた顔
皮膚はこげ茶色に変色し正面は硬質化しているのか螺旋状にひびが入っていた

「ニイヤマ ヨリコ…か?」

会員カードに書かれていた名前を呼ぶ
反応はない、代わりに顔にあいた穴からひるひると不気味な音が漏れた
怪異の全身に走る亀裂が広がり体全体が膨らむ
異能の予兆と判断して抜刀―

『タ   ス ケ     テ  』

斬るか、否か判断が鈍った


刹那、爆縮としか形容しようのない異能が棚を飲み込む
椿が立っている場所を中心に空間が歪み両側の棚と床天井がぐしゃぐしゃと押しつぶされてビー玉ほどの大きさに圧縮された

「ッ―」

咄嗟に後ろへ跳ねていなければ手のひらサイズの肉団子になっていただろう
馬鹿か私は、相手が何を言おうがためらうことなどないのだ

二発目の予備動作を異形が始める瞬間、今度こそ抜刀した

鬼道椿 > カウンターに腰かけて怪異認定された学生を見下ろす
縦方向に真っ二つに切断された遺体から黒い影がぶすぶすと上がっている
穢れは祓った…依頼はこれで終わりだ。
死んでも死体の姿が元に戻らないからもう手遅れだったのだろう
あれは助けを求めたのではなく生前の行動をなぞっただけなのだ
生前の行動を…

「クソッ!」

カウンターを殴りつけると処理班がちょうど入ってきたところで驚いた顔をした

沈んだ表情で店を後にする
夜も遅い…東郷の部屋へ泊ろう
あの男はなぜ居て欲しい時に居ないのだ
声だけでも聞きたい…

ご案内:「スラム」から鬼道椿さんが去りました。