2015/08/29 のログ
ご案内:「スラム」に鏑木 ヤエさんが現れました。
鏑木 ヤエ > (週末夜のスラム街では、毎週毎週飽きもせずに無法者の祭典が繰り広げられる。
 公安風紀の目を掻い潜って辿り着けばそこは始まる乱痴気騒ぎ。
 過激な露出をした女たちも、それを食いいるように見つめる男たちも)

「さァて!第一試合ッ!エキシビジョンは前回覇者の《乱神夢想》のマクラヤとッ!
 挑戦者──ッッ!《超量跋扈》のシノミヤッッ!!!」

(狂ったようにストリートファイトで夜を明かす馬鹿も、それに喜ぶ観客も。
 酒にクスリになんでもアリな路上の決闘───男と男の拳が交差して錯綜して。
 そんな中に挑戦する鍛え上げられた肉体の女も混じって、)

「おー、今晩も中々やえ好みに盛り上がってるじゃねーですか!
 やえはマクラヤに千円かけますよ千円!

 マクラヤー!やえの千円を無駄にするんじゃねーですよー!」

(足繁くその路上の祭典に、拳と拳のぶつかるスラムに通うもこもことした少女も存在するのだ。
 伸ばしっぱなしでくるくると巻く濁ったクリーム色の腰まで伸びた長髪。
 きらきらと鮮やかな紫を輝かせるものの緩むことのない表情薄いその顔も。
 どこにでもありふれた落第街のほんのひとコマ)

鏑木 ヤエ > (試合を緊張した様子で見守る少女と観客。
 会場なんてものは存在しない。あるとすればこのスラム街自体が会場か。
 場所なんて決まっていない、ルールはただ武器を持ち込んではいけない。
 頭の悪い喧嘩屋の巣窟なのだ、重傷軽傷は勲章。喧嘩なんかで死ぬほど馬鹿な奴もいない)

「入った────ッッ!!!シノミヤの重い一撃!
 マクラヤこれは立ち上がれるか、それともまさかのジャイアントキリングかー!?」

(否、ある意味馬鹿しかいない。
 それも当然、馬鹿の乱痴気騒ぎかつ、それ以上に)

「ちょ、マクラヤ!負けんじゃねーですよ!
 やえのご飯どうするつもりなんですか!所持金こんだけしかねーんですよ!」

(馬鹿は、馬鹿を求める)

「おっとマクラヤ起き上がれない────!?
 と、ここで次の参加者の募集です!自分に実力のある馬鹿はいるか──ッッ!!」

(起き上がらなかったマクラヤ、と呼ばれた大男を見遣りながらゆっくりと頭を横に振る。
 全財産が呑まれた今、少女の気分は落ちに落ち──……)

「次は誰ですか!誰ですか!
 やえのワクワクと好奇心を刺激する馬鹿は誰ですか!」

(てはいなかった)

ご案内:「スラム」に紅葉 椛さんが現れました。
紅葉 椛 > 仕事もなく、何の予定もない日。
黄色いパーカーの少女は、アテもなく落第街を歩いていた。
そして、どこからか聞こえる喧騒。
何か面白いことでもあったのか。
野次馬根性丸出しで、その騒ぎの大元であろう場所へと近づいていく。
そこには、かなりの人集りがあった。
罵声と歓声、その2つが支配する空間。
そこでは、トトカルチョ付きの決闘をしていたのだ。

「へぇ……こんなところでこんな面白そうなことがあったんだ。
 全く来ないわけでもないのに知らなかったなぁ」

そう言って観客の中に割り込み、中心へと入っていく。
大きな楽器ケースのため、周りからの文句が聞こえるが、そんなことは気にしない。
実況者のすぐ傍までやって来たが、試合は終わっていたようで、無駄足だったかと肩を落とした。

鏑木 ヤエ > (残念ながら、実況している男の傍に来たのが運の尽き。
 サングラスを掛けてマイクを握った男はあれよあれよとパーカーの少女を持ち上げる。
 拒否権はないぞ、そんな笑みを溢しながら口を開く)

「ここで可愛らしいお嬢さんの登場だ───ッッ!
 本日の二試合目の主役はお嬢さん。お嬢さん、お名前は?仮名でも構いませんよ。
 と、くればスラム名物キャットファイトだ───ッッッ!!
 舞台に上がる馬鹿はいないか馬鹿ども──ッ!!!」

(ウオオオ、と沸く歓声。
 それは果たして次の試合の参加者に運悪くなってしまった少女の顔立ちがよかったからか。
 それとも試合が続くことに対する歓声か。
 舞台に上がる挑戦者を求められれば当然、有り金を溶かしきった馬鹿は、)

「やえです!やえですよ!
 やえに遊ばせてもらえませんか!ここに一人馬鹿がいますよ!」

(ぴょんぴょんと跳ねて自己主張。
 もこもこした存在に実況の男が目を付ければさあ始まるは馬鹿の祭典)

「出た!対する西は───ヤエ!《堕落論》のヤエ!
 西も東も知らねえがこれは知ってる!前回、前々回と参加するもあえなく2勝で終わってしまう!
 さあ今回はどうなるやら!」

(差し出された実況の男の手を取るも取らないも、黄色のパーカーの少女の自由だ)

紅葉 椛 > 突然の指名に驚き、困惑する。
この雰囲気で辞退するのは難しそうだ。
元より、こんなに面白そうな場面に出くわして辞退するはずもないのだが。

「仮名は思いつかないしモミジでいいよ。
 二つ名っぽいのは……何でも屋でよろしく」

そう言って、実況の男の手を取る。
笑顔で手を振り、愛想を撒きつつ舞台へと上がる。
準備運動とばかりに屈伸をしつつ、実況の男へ問いかける。

「えっと、ルールとか賞金とか教えてくれる?
 武器の有無、異能使用が可能か不可能か、賞金の有無くらいでいいから」

そう言ってノビをし、楽器ケースを降ろす。
この試合に賞金があるのなら、これを使うのも───
そんな事を考えつつ、対戦相手らしいヤエと呼ばれた少女を見据えた。

鏑木 ヤエ > (乗った。
 当然こんな場所に足を踏み入れて乗らないような奴はここにはまず来ない。
 実況の男はチェシャ猫もびっくりするような笑みをニイ、と浮かべた)

「さあて!北は──南だっけ?東?
 そんなことよりも《何でも屋》のモミジ!参戦!
 お金さえ出せば俺みたいなヤツとでもイイコト───わかったわかった、謝ろう!

 ルールは簡単、会場はこのスラム街ならどこでも戦闘可!
 武器は"持ち込みは"禁止。初めの段階ではステゴロ!何を使っても構いやしないが
 相手を殺すのはNG!なんでって?そんなの面白くないだろう!
 
 賞金は一度あたりこの試合の掛け金の半分!
 異能の使用は構いやしないが大抵ここいらの奴らは自分のチカラだけでが好みだね。
 勿論禁止はされていない。ほかに質問はあるかな?」

(テンション高く劈く男と意気揚々とぐ、ぱ、と手を握って閉じてする少女。
 見据えられたのに気付けば、男と同じように口元を吊り上げた)

「やえです、どうぞよろしくモミジ。
 やえは可愛いので手加減よろしくお願いしますね」

紅葉 椛 > 武器の持ち込み禁止。
その言葉に愕然とし、腕から一瞬力が抜ける。

「えーっと、お金さえ払ってくれたらデートくらいならする……っていうのは置いといて持ち込み禁止だけならその辺のモノ使ってもいいんだよね?」

自慢の大刀は当然だが禁止のようだ。
最近は無手で戦う事も少なく、少しの不安を感じる。
楽に儲けられると思っていたが、そんなことは当然なく、多少の怪我を覚悟する。

「正々堂々、全力を尽くそう。よろしく、ヤエ」

優しげな笑みを貼り付け、ヤエへと応えた。

鏑木 ヤエ > 「ええ、全く以て構いませんよォ!
 そこのヤエも道端のモノで戦う上になんでもアリですから!
 道端に落ちてる饅頭ですら食いますしね!」

(どこかズレた回答を返しつつ、さらりと少女の戦闘スタイルまで口にする。
 言われた少女は「不利ですー!開幕からクソほどやえが不利なんですけどー!」と文句を。
 よろしく、と椛が口にすれば実況の男はドン、と椛の背を押した。
 それに応えるようにして観衆も道をずらり、開けた)

「流石に落ちてる饅頭とか喰わねーですから!」

(容易は万端、と言わんばかりにない胸を張って椛を迎え討つ算段だ。
 周囲には転がった鉄パイプにおかしな刺さり方をした標識が何本か)

(───、幕が上がる)

紅葉 椛 > 「道端に落ちてる饅頭は流石に……」

苦笑しつつ、相手の戦闘スタイルの情報を得たことで、内心ほくそ笑む。
実況の男の近くに楽器ケースを置き、服の下に隠している6本のナイフを楽器ケースへと仕舞った。
まるでモーゼのように開けた視界。
舞台へと上がる準備はできた。
後は───やるだけ。

「さて、開始の合図はなしで始めちゃっていいのかな?」

ゆっくりとヤエに歩み寄り、いつでも奇襲を仕掛けられる準備をする。

鏑木 ヤエ > 「はいはいどーぞ、問題はこれっぽっちもねーですよ。
 それから饅頭なんて食いやしませんよ、さすがに落ちてるモノ食う程飢えてねーですし」

(ふわりとスカートを揺らして屈伸を。
 「準備運動はばっちりです」、と言外に語り、椛を見据える)

「期待されてますよ、モミジ。
 やえはいつもいますけどモミジは初めてですからきっと賭け金も多いでしょう。
 それでもやえは戦わねーと明日の飯もねーですから本気でやりますよ。

 やえはちょーつよいんで!」

(ゆっくりと刺さった標識に歩み寄り、一歩、二歩)

紅葉 椛 > 相手も準備完了らしい。
それならば遠慮はいらない。
今すぐに仕掛けるまでだ。

「それじゃ、先手だけもらおうかなっ!」

そう言った瞬間、観客、実況、そしてヤエの視界から一瞬で掻き消える。
直後、ヤエのすぐ横に現れる。
目にも写らない速度で移動した椛は、そのままヤエに向かって回し蹴りを放った。

鏑木 ヤエ > (その一瞬刹那の攻勢。猛攻。先制。
 何らかの異能を使ったのか?それとも認識できない速さで?
 そんな思案に大した時間は掛からなかった。
 ───、否、必要がない)

「なるほど」

(放たれた回し蹴りを喰らわざるを得ない。
 避けられるものではない。──が、喧嘩屋には意地がある。
 強気に口元を歪めて、背にした止まれの標識を引っこ抜く。
 そして引き抜けばそのまま、蹴られた勢いもそのまま乗せて)

「ザンネンでしたねッ───!」

(羊のような体躯から繰り出される一発。
 愛玩動物ヨロシクな見た目とは裏腹に、羊の体当たりは大概痛いものなのだ)

紅葉 椛 > 予想外の反撃。
完全に先制し、優勢になったと油断したところへ。
まさかこんな小柄な体躯で標識を武器にするとは思っていなかった。
避ける事が不可能、せめて被害を最小限にと左腕を盾にしつつ後ろへと跳ぶ。
標識に触れた左腕に鈍い痛みが走った。

「いったー……まさかそれがエモノだったなんてね」

着地点付近に転がっていた鉄パイプを無造作に掴み、追撃を待つ。

鏑木 ヤエ > 「あったり前じゃねーですか、こんなところにいる馬鹿ですからね。
 モミジこそ中々にオモシロ手品してくれるじゃねーですか。
 何でも屋ってのは手品もできなきゃッ!」

(会話の途中での疾走。
 椛の縮地じみた移動とは対照的にニンゲンそのものの単純な直線運動。
 疾走の勢いそのまま、鉄パイプを構えた少女に大振りな一閃───ッ!)

(左手を掠めたのを確認した上で、左から横に薙いだ。
 これは果たして当たるか、それとも)

「いけないんですかッ!」

紅葉 椛 > 「っ!」

対面の少女が疾駆する。
平凡な速さの、単純な接近。
しかし、非凡な腕力によって振るわれる大きな標識。
横薙ぎであることを確認し、それを飛び越すように跳躍した。
空中からの一撃を狙い、右腕の鉄パイプを思い切り振り下ろす。

鏑木 ヤエ > (飛び越えたのを見た。
 飛んだ。それならばニンゲンは重力には逆らえない。
 飛行の異能がなければ、空中で浮いていられる異能がなければ、魔術がなければ。
 重力を操る異能が、その他諸々考えられる可能性を全て排除すれば────)

「ニンゲンは空を飛べませんから」

(ずしり、鉄パイプを左腕で受け止める。
 右手で振り切ったままの標識を、まるで逆再生をするかの如く。
 先程よりもやや上めがけてひと思いに振り切る。
 平凡なニンゲンの、ごくごく非凡な、喧嘩屋の戦い方)

「ぅおありゃ!」

(多少の怪我は勲章、舞台を盛り上げるスパイスに。
 ───、二人の少女が互いに肉薄し、互いに───)

(歓声が沸いた)

紅葉 椛 > 受け止められた。
そして、人間は空を飛べないの言葉。
もしもこの少女が勢いやスピードに乗せて標識を振り回すだけでなく、膂力によって無理矢理な方向転換をさせる事ができるのであれば。
その最悪の予想は的中したようで、後ろから微かな死の気配を感じ取る。
このままでは、負ける───

「ぁぁあああああ!!!!!」

後ろの気配を意識の外へ。
鉄パイプを強く握り、"空中で踏み込む"
動けないはずの空中で加速し、その場で回転。
その勢いでもう一度思い切り振り下ろす。
さぁ、どちらが速い───!

鏑木 ヤエ > 「甘いんですよ、モミジ」

(相手が空を飛べたとしても。相手が海を歩けたとしても。
 このスラムでは避けることなど馬鹿は考えない。受けたうえで如何に美しく、如何に反撃するか。
 このストリートファイトの定石であり、また彼女の喧嘩における美学であり。
 タイミングを見つければ、)

「喧嘩ってのはこうやるんですよッ────!!」

(肘鉄。なんの面白みもないものの、喧嘩における定石。
 一歩だけ相手の懐に潜り込んで、標識を放り出して。
 当たり前で、フツウの一撃。
 故に威力も先刻に比べれば大したことはない。
 
 ────それでも、ただ痛いのだ。)

紅葉 椛 > 踏み込まれ、自分の間合いを外され、鉄パイプが空を切る。
標識の衝撃が来るであろうタイミングより速い衝撃。
鳩尾に肘鉄が深々と突き刺さっていた。

「っ……」

強烈な衝撃に悶絶し、鉄パイプを落とす。
地に落ち、胃から来る衝動を抑えるも、息が出来なくなる。
それでもまだ、終わっていないはずだ。
予想以上の衝撃で手足が震えているが、目は死んでいない。

「まだ、終わってない……」

強烈な一撃を受け、呼吸が苦しくなっても尚、立ち上がろうと全身に力を込めていく。
相手を睨みつけるその目は敗北を覚悟した目ではなく、油断すれば命まで奪わんとするような鋭い光を放っていた。

鏑木 ヤエ > (当てた感触が自分の肘に伝わった。
 柔らかい腹部の感触、恐らく綺麗に入ったのだろう。
 小柄な体躯を生かした戦闘は彼女にとっては十八番だった。
 標識という馬鹿でかい獲物で大振りな攻撃を幾度か繰り出したのちそれを放り出し、
 相手の懐に忍び込んでからの重い一撃)

「これこれ、終わりですよ」

(毎度毎度と喧嘩に明け暮れるヤエは鉄パイプに打ちつけられた鈍痛を堪えることはできた。
 故にどこか落ち着いて、静かな言葉を落とす)

「ここは人死にはえぬじーです、喧嘩を観たくて来てる馬鹿しかいないんですから」

(その言外に語る瞳を見遣れば困ったように口元を緩めて、)

「おやすみなさい、子羊さん」

(傍らに放った標識を手に野球ヨロシク振り切った。
 歓声が沸き、実況が叫び、───観衆からの怒号と罵声がスラムを包んだ)

紅葉 椛 > 標識を持った少女が近付く。
隙を見せたのなら本気の一撃を。
しかし、少女は最後まで油断せずにトドメを刺しに来た。
標識による強烈な一撃。

「ぐっ……」

ゴキンという嫌な音が響き、宙を舞う。
椛を罵る怒声、そしてヤエを讃える歓声の中、地面に叩きつけられる。
勝鬨をあげるヤエの姿を見ると同時に、意識が闇へと吸い込まれていった。

鏑木 ヤエ > 「き、き、決まったァ────ッッッ!!!」

(止まった時間が動き始めたかのように、一瞬の静寂を男の声が引き裂いた。
 同時に賭けに負けた悔しさと勝った嬉しさでスラムは二色の感情が渦巻く)

「今回の勝者はヤエ!《堕落論》のヤエだ───ッ!
 勝ったお前らは存分に喜べ!負けたお前らはヤエに続いて起死回生ッッ!」

(勝利を手にした少女は左手を庇いながらゆっくりと立ち上がって、)

「これで3日は飯が食えますね。
 やえはちょーつよいんです……、じゃなくて。
 モミジは本来武器使って戦うニンゲンなんでしょうねえ。喧嘩とはまた違った」

(倒れた少女をちらりと一瞥して、賞金を受け取りに観衆を掻き分ける。
 欠伸をひとつ、その場にゆっくりと背を向けた)

(無法者どもの週末は、まだまだ終わらない)

ご案内:「スラム」から鏑木 ヤエさんが去りました。
ご案内:「スラム」から紅葉 椛さんが去りました。