2015/09/09 のログ
浮浪者? > ひょいと道を開ければ、巨漢はそのまま少年を追っていった。
自分はその後姿を追っていく。この速度なら『限定』を外すまでもなく追いつける。

「あの少年と何かあったのかな!」

『テメェ何ついて来てやがる!』

先程よりも若干広い道に出れば、巨漢の傍を並走。
さて、この割かし利口なチンピラはどう出てくれるのやら。

「先に道開けてやったんだから、ワケぐらい話してくれよ。
 何かトラブル? ケンカ? 痴情の解れ?」

『ああクソが! あのガキ俺の女にヤク盛りやがったんだよ!
 ヤられる前に帰れたから良かったが、アイツはもう脳味噌トロトロなんだよ!
 だからあのガキはぜってーに殺す! どうだ、満足か!』

息も絶え絶えだというのに、まさかご丁寧に説明してくれるとは思いもしなかった。
ウソをついている様子も無いので情報は信用するが、"風紀委員として"人死にを看過するワケにもいかない。
彼には悪いが、こちらで手を打たせて貰うことにしよう。

「そーかそーか、引き止めて悪かったね。
 特に面白そうなことでも無かったし、俺ぁこれでお暇させて貰うよ」

それだけ言って立ち止まり、巨漢を見送った。

浮浪者? > 並走することで巨漢の方をそれとなくコースから外したが、少年の逃げた先はもっと別の場所だ。

来た道を少し戻って、地面を見やる。よく目を凝らせば、黒く細い糸が道の奥へと伸びていた。
少年が自分とすれ違った時、予め『糸』を引っ付けておいたのである。無論、巨漢の方にもそうしておいた。
『糸』と言ってもいつも使ってるような金属製のものでなく、カーボンナノチューブで編まれたもの。
ちょっとやそっとでは千切れることもなく、また重さも感じさせない。

ゆらり、ゆっくりと、それを辿っていく。

浮浪者? > 糸を辿って辿り着いた先は、数ある廃墟のうちの一つ。
床のタイルに、糸の先が挟まっている。タイルを剥がせば、地下室への階段が見つかった。

場所は覚えた。潜入する前に装備を整えた方がいいだろう。
仮にこの下が"アジト"だとして、全員を逃がさず取り締まるには『糸』が必要になってくる。
単独で動いている以上、手数が足りなくなるのは必然的。
ドラマや映画のようにバディでもいればまた違ったのだろうが、生憎現実はそう甘くない。
要する事ならば、例え自分一人でも成さねばならない。事実に言い訳など通用しないのだから。

一旦拠点に戻り、荷物をまとめ、人目に付かない場所へ。

ご案内:「スラム」から浮浪者?さんが去りました。
ご案内:「スラム」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 『糸』の込められた手袋をキリキリと鳴らし、その手応えを確かめる。
右手の方は修理が遅れているのでまだ使えないが、相手が軍隊でもなければ左手の分だけで十分だろう。
風紀委員の制服に着替えたワケだが、正直浮浪者ルックの方が動きやすい。
これもある程度丈夫な素材で作られているようだが、喰らわなければ別にどうという事は無い。
運動能力の観点から見れば非効率的だが、
この『悪目立ち』している方の格好で来た方が、何かと都合がいいのだからそうするのだ。

準備は整った。先ほど赴いた廃墟へと、足を運んでいく……

久藤 嵯督 > 足音一つ立てずに、光一つ差さない階段を下りていく。
赤外線の強弱は理解することが出来るので、暗視装置は必要ない。
そうしてゆっくりと降りていけば、突き当たり左側に扉を見つける。
扉には鍵が掛かっているようで、外からは施錠出来ない仕組みのようだ。
隙間から糸を這わせれば、解除は容易い。だがその前に、中の様子を調べる必要がある。
幸い耳をすまさずともこの静寂の中では、音が漏れて聞こえてきた。

『惜し―った―ぁ……もう少し――れば、売―――せた――けど』

先ほど聞いた、少年の声。
それに言葉を返したのは、ガラガラ声。

『能力――健康体で連れ―――ゃならない―らな。
 でなきゃあっ――への―り物にゃあなんねーしよ』

完全にクロだ。揺すれば証拠も出てくることだろう。
全員気絶させて護送するとして、後は誰一人逃さぬよう内部事情を把握するだけなのだが……

『ちょっくら行って来ますわ~』

扉に近付いてくる、三人目の男の声。どうやらノンビリしてる時間は無さそうだ。

久藤 嵯督 > 金髪の痩せ男が、懐中電灯を持って階段のある通路へと出てくる。
面倒くさそうに開いた手で鼻をほじりながら、階段を上がり、外に出ようとしたその時。


きらり


首に巻きつく糸。潰れた蛙のような悲鳴を出される前に、手で口を覆う。
片腕はしっかりと極めており、そこらのチンピラでは脱出など不可能だ。
相手が素人なのは扉越しにでもわかっていたが、ずっと後ろを歩いていて全く気付かれないのも滑稽な話だ。
金髪を前倒しにして、額を階段の角に押し付けながら話しかける。

「俺の質問に対して正直に答えろ。でなければ地獄を見るぞ」

金髪はこれにコクコクと頷いた。往生際のいいヤツだな、つまらない。
だが時間は節約出来る。
金髪から中にいる人数と隠し通路、非常時の逃走経路まで聞き出せば、生体電気を流して気絶させて、四肢の間接を外した後放置。
感知される可能性を危惧して、通報は事が済んでから行う。

そうして再び扉の前にやってくれば、今度は迷わず糸を這わせ、鍵を開ける。


かちゃり


それが、開戦の合図。

久藤 嵯督 >  

本来なら中からしか弄れない鍵がひとりでに開いた時点で、彼らは扉を警戒していた。

1.彼らが一斉にガンホルダーに手を伸ばした時点で、扉が開く。
2.彼らが銃を構える途中で、扉の近くにいた髭男の喉を拳が抉り、これにて一人無力化。同時に室内にいる人間の位置関係を把握。
3.彼らが銃を扉に向けた時、左手の糸は既に彼らをマークした。五人の首に巻き付いた糸が、バチバチと音を立て始める。
4.侵入者の高速移動に気付き、彼らは狙いを定め直す。その間電流を流せば五人を無力化。
  金髪の話では八人いるとの事で、今元気でいるのも二人。そのうち一人は先ほどの少年で、予想外の事態に対応しきれていない様子。
5.空いた右手で苦無を投擲。引鉄に指を添えた一人の腕を貫いて、構えた銃を落とさせる。
6.周囲の物音を確認……どうやら彼ら以外の人間は本当にいないようだ。
  少年は掛け軸に向かって走っていく。恐らくはそこが隠し通路なのだろう。
7.ひょいと跳んで、少年を押さえ込む。これにて制圧完了。風紀委員に連絡を取り、護送部隊の手配を行わせる。

久藤 嵯督 > 『ひ、ひぃぃ……』

発砲すら許さぬ電撃作戦。相手の未熟により、これを成功させる。
そのあまりにも早過ぎる決着に、少年は恐れ戦いていた。

「人を売っていると言ったな。まだ売っていないヤツはいるか?」

『ぜ、全員売っちまったよ……ちょっと遊んだあとに゛ッ!!!』

「わかった、もういい」

掌から直接生体電気を流し込めば、少年は痙攣を起こしながら気絶。
どうやら相当溜まっていたのか、"インク漏れ"が激しい。
気の毒だが、その後始末は後続の部隊に任せることにしよう。

久藤 嵯督 > 今回は少し、アシを付け過ぎた。
しばらくスラムの拠点には戻らない方がいいだろう。
そんな、仕事帰りの道中でのこと。

彼らは能力者だけ別口で売っていると言っていた。
能力者のサンプルを欲してる者と言えば研究者であるが、マッドサイエンティストなどここでは珍しくもない。
買い取っていたのは研究区の人間かもしれないし、またはそれ以外のはぐれ研究員の可能性もある。
財団の人間として在るべき闇を駆逐するのはどうかと思われるが、財団が自分を風紀に配置したのだから『そういう事』なのだろう。

帰りに巨漢の糸を辿ってみたが、どうやら彼は自宅へ戻ったらしく
彼女さんとよろしく……いや、やらしくと言うべきか。これ以上は語るに落ちる。
今日も一仕事終えたワケだが、この落第街の事だ。
歩いているだけでもトラブルが舞い込んでくるので、どうせ遅くなる事だろう。
早帰りには期待せずに、帰路につく青年がそこにいた。

ご案内:「スラム」から久藤 嵯督さんが去りました。
ご案内:「スラム」に椚 真さんが現れました。
椚 真 > 少しばかり考え事をしながら散歩しており、ふと気付けば何時の間にか落第街の方へと来てしまった教師。
何時の間にか日も暮れており土地勘もあまり無い為、取り敢えず進んでは更に迷うと言った悪循環の繰り返し。

それならばと開き直って探したのはスラムの中でも大きめの雑居ビル。
屋上から大まかに眺めりゃ帰る方向ぐらいは分かるだろ、と。
有言実行、何とも暢気な足取りで、そのビルの屋上へと姿を現す教師。

「――…ヤレヤレ。参ったね、こりゃ。」

全く参った素振りの無い口調で呟く。
道中、案の定数人の集団に囲まれた訳だが、何時もの授業の要領で少しばかりお手本を示してお通し願ったとか、そんな所。

高い場所へと訪れて少し強くなった夜風に目を細めれば端の方まで歩みを進めて落第街全体を見回して――。

椚 真 > 不幸中の幸いだったのはスラムの中でも比較的歓楽街の方へと近い場所だったから
少し見渡せば無数の明かりが目に付く訳で、其方の方へ向かえば取り敢えずは帰れそうかなと言う事で一安心。

「他の奴に近寄るなとか言っておきながらコレだもんなァ。
まっ、何事も無けりゃ問題も無いっしょ、ウン。」

幾ら考え事をしていたと言えど、何も無しにこのような所へと足を運ぶだろうか?
心の奥底では危険の中に身を置きたかったんじゃないのか?自分がどれくらいやれるのか確かめたかったんじゃないのか?

そんな褒められない思考が頭の中を廻っては一度だけ首を左右に振った。

「――…アホくさ。」

なんて短く呟いては少しばかり何時もと違う、質の悪い夜風へと身を委ねては顔を顰めて。

椚 真 > 空気が澱んでいるのは正直あまり好きではない。
けれども、そこまで居心地が悪いかと言われるとそうでもなく…。

「案外、俺もこっちの方が向いてんのかもなァ。」

平和な学園生活とは無縁の常に危険と隣り合わせ。
別に頼んだ訳でもないが身に付いた異能。
他人と違うと言う特別な境遇、戦闘の心得もある身としては悪事には興味が無いが
純粋な強さ、力と言った単語には惹かれる物がある。

何処までやれるのか?何処まで行けるのか?

普通の一般教師が考えるような事じゃないなと溜息混じりにまた打ち消される思考。

椚 真 > 「さて、と。」

くるりと反転、来た時と同じようにゆっくりと歩みを進め始めて。

「明日も朝早いしとっとと帰って風呂でも入って寝るべ寝るべ。」


何処か憂いを帯びていた表情も何時もの暢気そうな物へと戻れば、やがてそのビルの屋上から姿を消す。

案の定と言うか何と言うか真っ直ぐ帰るつもりが更に迷って睡眠時間を削ったのは言うまでもなく。

ご案内:「スラム」から椚 真さんが去りました。