2016/01/03 のログ
ご案内:「スラム」にさんが現れました。
> (薪の爆ぜる音がする。)
(バラックの並ぶ間。少し開けたその場所の中央。)
(時節を考えればお焚き上げ。けれど年始行事の雰囲気ではない。)
(宵闇の中。暖を取るための炎が、燃えている。)

> (廃材が刻まれた木材が、間隔を置いて炎に投げ込まれて。)
(その周りには、身を寄せ合って老若男女。)
(人が居る。それ以外が居る。灯りが照らす。)
(また一本、廃材薪が投げ込まれた。)

> (散った火の粉、火の番へと舞い寄って。触れる直前、風に巻かれて空へ上った。)
(避けようと動く気配のなかったのは、草鞋を履いた素足の主。)
(火に照らされた指の数は五本。炎を映す瞳は二つ。耳が二つに鼻口一つ。)
(嗚呼、火の番をするのは、見える限りは人らしい。)

> (枯れ木にも似た腕が、着物の袖からゆるりと伸ばされ。)
(腕と其れ、どちらが薪やら悩まんでもない廃材薪を、掴んで眺む。)
……■■■さん。
(不意に、低く砂のようにざらついた声。人の名を呼んだ。)
(そして男は廃材薪を、名の主へと差し出して。)
釘だ。使えるよ。
(腕を捻って傾ければ、木片に刺さったままの釘。)
(炎に照らされ、明く光った。)

> (それを受け取った、老人。恐らくは男性。)
(手元にあった釘抜きハンマー持ち上げて。)
(釘抜きを釘の頭へ。その尻をトンカチで叩く。響く金属音)
(先端食い込ませれば、釘を引き抜いた。炎を映す、長釘の銀。)
(手を伸ばした侭だった火の番へと、木材を返して。)
(爺が釘をポケットへしまうのと同時。廃材薪は、炎に投げ込まれた。)

> (ぱぁっ、と。舞い上がる火の粉。)
(揺れた炎に合わせ、景色が揺れる。炎を囲む者達の影も踊る。)
(フードを被るように布を纏った影の一つ、火の粉を見上げて吐息を一つ。)
寒いだろう。
(問うた声。火の番は、炎を見た侭、そう口にして。)
もう直ぐ芋が焼ける。
(継いだ言葉を聞けば、炎囲む影、小さいものたちが身を揺らす。)
(先ほど吐息を漏らした影も、布の端から見える角のついた頭、一度頷いた。)

> (落第街のスラムの一角。)
(明日の宵にはまた火にあたるか。小唄を歌う引かれ者か。)
(年始の終わり。夜が更ける。)

ご案内:「スラム」からさんが去りました。
ご案内:「スラム」に東郷月新さんが現れました。
東郷月新 > 新年、新年である。
人斬りであるこの男とて、新年くらいはゆっくりする。
スラムの一角、どこかの建物の屋根の上で、のんきに餅を焼いている。
香ばしい臭いがあたりに漂う。

「いやぁ、寒くなくて助かりますなぁ」

ほくほく顔で言うこの男を誰が人斬りだと思うだろう。
膨れた餅を前に、いそいそと醤油、海苔、それに皿を準備する

東郷月新 > 「んむ、あむ……」

のんきに餅を頬張り、あたりを見回す。
落第街は相変わらずのようだ。
結構結構。面白く刹那的でこそのこの街である。
東郷はそんなこの町を、結構気に入っている。

「何処かから御屠蘇でも貰ってくれば良かったですなぁ」

ご案内:「スラム」に鏑木 ヤエさんが現れました。
鏑木 ヤエ > 「はい、イケメンのオニーサン。
 やえの席、空いてますかね。こんな場所で飯テロなんてすんじゃねーですよ」

しゅたりと音でもすれば忍者にでも見えたかもやしれないが、
生憎とゴテゴテの服装をした少女は忍者になぞ見えやしない。
寧ろ一周以上回って半回転して暗殺稼業についていると言われれば
ライト・ノベルスじみているがここは生憎現実だ。
ライト・ノベルスほど喜劇的でもなければ若者に大人気な街でもない。
少女も暗殺稼業でなければただの学生街のアルバイターだ。

「なあに、ひとつ分けてくれってオハナシです。
 可愛い女の子に新年のオトシダマでもくれやしませんか」

東郷月新 > 「ん?」

見れば小さな女の子。
なるほど、餅の臭いに惹かれて来たか。

「おぉ、どうぞどうぞ。
幸い、たくさんありますからなぁ」

言って東郷は自分のそばにある餅を示して見せる。
昔の協力者がつきたての餅をたくさんくれたのだ。

「お嬢ちゃんがお好きなのは磯辺ですか、きなこですかな?」

甘い餅の用意もバッチリのようだ

鏑木 ヤエ > 「んー、やえが好きなのはきなこですね。
 オニーサンがオススメなのはどっちです?」

ゆるりと座り込んだ屋根の上。
餅を焼く気ままな彼の横にちょこんと座り込んだ。

「新年だってのにこんな場所で新年を迎えるだなんて。
 オニーサンさてはヤンチャでもしました?」

流れる時間は極めて緩やかなものだ。
新年。それは誰にとっても平等に訪れるものである。
それが人斬りの殺人者であっても、それが学生街のアルバイターであっても。

東郷月新 > 「小生は磯辺が好みですなぁ」

餅を皿に取り、きなこを振り箸と共に少女に差し出す。
自分も醤油をたらし海苔を張る。
まったく平和なお正月だ。

「んー? 小生は脱獄犯でしてなぁ。牢獄に連れ戻されたら補習なのですよ」

はふはふと餅を頬張る。
うむ、美味い。

鏑木 ヤエ > 「あ、じゃあきなこ食べ終わったら磯辺ください。
 やえはハラペコなんですよ。
 聞いてくれます?新年の初売りに行ってきたんですよ。
 働いた給料丸ごと持って。2ヶ月分くらい食費も削って。
 なのにどっこも売り切れ。2ヶ月間美味しいもの食べとけばよかったですよ。
  
 やえの勤労が一瞬で無駄になったんです。
 許されることじゃあねーですよコレ。聞いてます?」

ぱきんと箸を割った。
上手く割れずに左右の長さが違う割り箸を見ればち、と舌打ちした。

もっちもっちと受け取ったきなこ餅を頬張りながら
継いだ言葉を聞けば、またいつも通りの「ははあん」、という声が返る。

「やえが今コーアンのひととかフーキのひとに通報したら今年は
 美味しいご飯を食べられますかね」

嘘はつかない。つけない。
思ったことをそのまま目の前の脱獄犯に投げかけた。
甘しょっぱい。美味しい。

東郷月新 > 新たに餅を乗せる。
ハラペコとあらば仕方ない、ここは大盤振る舞いだ。
どうせ餅は硬くなったら美味しくない。

「ははは、我慢は身体に良くないですからなぁ。
好きな物を食べ、好きな時に寝て、好きなだけ斬り、時が来れば死ぬ。
人生は風の向くまま気の向くままが最高ですなぁ」

物騒な事を言いながら餅を焼く。
少女の言葉にも動じた様子は無く。

「そうなったら、まぁ斬り抜けるしかありませんなぁ。
新年早々、餅が血生臭くなりますなぁ」

鏑木 ヤエ > 「えー、やっぱりそうなりますよねえ。
 困ったなあ、やえどうすればいいと思います?」

無表情にコマッタナー、と連呼する。
大して困っている訳ではないような表情であれど、現状彼女は大層困っていた。

されどなんでもないように餅をポンポンと追加されれば、
またまぐまぐと口の中に放り込む。
物騒な話は少しばかりの恐怖感は植えこめど、どこかのんびりとした
彼の立ち振る舞いには悪い人じゃないんじゃないか、という困惑の色を示す。

「あ、オニーサン。
 オニーサンはなんで好きなだけ人を斬るんです?
 やえはお腹が空いたからお餅を食べますし、やえは服が欲しいから働きます」

東郷月新 > 「まぁ好きに使えば宜しい。
欲しい服を買い、欲しい物を食べれば良いのですよ」

この男に聞いても、それ以外の言葉を発する事は無いだろう。
所詮、男は欲望のままに生きる怪物のような存在なのだ。

今度はきなこ餅を頬張る。
うん、美味い。今度お礼を言っておこう。

「ん? 小生も同じですなぁ。
腹が減るように人を斬りたくなる、眠くなるように人を斬らないと我慢できなくなる。だから人を斬るのですよ」

鏑木 ヤエ > 「ははあん、セーリゲンショーってヤツですか。
 それにしても大変そうですね。
 セーリゲンショーで人を斬りたくなっちゃうって、
 欠伸ずっと我慢して生きてろって言われるようなものじゃねーですか。
 それはそれは生きにくい時代に生まれやがりましたね、オニーサンは」

怪物を前に、小市民は喩えを出した。
怪物はそれに反応するかも解らないし、
運が悪ければ自分は食い千切られてしまうかもしれない。
自分の不運が始まったのはずっと昔からだ。

訳に立ちやしない異能を抱えて生きていれば少なからず――少なからず。
抱えて生きていたとしても人斬りに餅をご馳走になるなんてことはあるかもしれない。
そのまま抱いた疑問が気に入らずに殺されてしまうかもしれない不運。
不幸だー、と小さく呟いた。

「それって、捕まったときに言いました?
 オニーサンが"そーゆーいきもの"なら特例措置とかってないんです?
 結構いろんなクニにバショから来てますからね、
 あってもいいんじゃねーかな、とやえは思いますよ」

東郷月新 > 「……何故我慢しなくてはならないのですかな?」

男は人を斬る事が生理現象になっているだけではない。
男には、人を斬る事への罪悪感が無い。
斬るか斬られるか。男にとっての価値観に、人を斬る事が悪い事だという認識が欠落している。
そもそもここは落第街だ。人を斬る事など何とも思わない人間だらけだ。

「幸い、ここは落第街ですからなぁ。
斬る相手に困る事もありません」

のんびり言う。
この街が存在する限り、男もまた生きていける。
生理現象を我慢する気もなければ、無理に「外」の価値観に合わせる気も無い。

「あぁ、捕まった時に公安には言ったのですが。
『分かった補習289年な』と言い渡されまして」

鏑木 ヤエ > 「ははあん、ははあん。
 それはそれは、たいへん大変でしたね」

淡々と、世間話をするような目の前の怪物にただそれだけ告げた。
何故で問うて何故で返される。
きまってこういう類の人間は、それが悪いことだと思っていないか、
若しくは「当たり前」として沁み込んでいるかの二択だ。
目の前の怪物が二択のうちのどちらであるかはわからない。

「ねえオニーサン。
 なんでこの島にいるんですか?
 
 もっと安全に人が斬れるような場所、あったでしょうに」

けれども浮かんだ疑問は後を絶たない。
残念ながらそのすべてが口に出る。不幸にも程があるでしょうに。
この島独自の警備は強固である。
そんな強固な警備の下、何故怪物がこんなところに棲んでいるのか。

気になってしまった。

東郷月新 > 「小生の恩人が、この島に居たからですよ」

さも当然のように言う。
確かに、この島以上に人を斬るのに適した場所もあるだろう。
だが、男はこの島に『彼の存在』が居るからこそこの島に存在し。
そして、何の疑問も無くこの島で生きている。

「ロストサインのグランドマスター殿。かの御方には、多大な恩がありましてなぁ。
あの方が居る限りは、小生もこの島に居ないと」

はてさて、しかしグランドマスターは何処に居るのか。
東郷もさっぱり分からない。
だが、未だ存在している事だけは、分かる。

鏑木 ヤエ > おんじん。恩人。

「あっれ、都市伝説かと思ってました。
 誰かが作ったオハナシを、誰かが誇張して言ってるのかと。
 それか同じオクスリを飲んだひとたちの戯言かと思ってました」

きょとん、と目を丸くした。
この島にいれば、この島で暮らしていれば何度か耳にするロストサインという名前。
死んだだか生きてるだかは知らないけれど、この島でその名前を聞くことは少なくない。
そしてこの目の前の怪物も同じ言葉を洩らした。
ロストサインのグランドマスター。
自称・人斬りのオニーサンの恩人。
目の前に都市伝説そのものがいるような気がして、思わず笑いも込み上げる。

「っは、はは。
 恩人なのに居場所がわからないってのも凄いハナシですね。
 なんて言いましたっけ、ハチ公でしたっけ」

実在した都市伝説を前にして、思わずアルバイターは笑った。

東郷月新 > 「あー、もうそんな風に言われておりますか。
これでも小生ら、一時期は学園を恐怖のドン底に陥れたという自負はあったんですがなぁ」

はぁと溜息を吐き、餅をパクつく。
まぁ、仕方が無い。
ロストサインの栄光も今は昔。
今では都市伝説のようなものなのだろう。

「まったく、何処に居られる事やら。
あ、お嬢さんも、もし見かけたら小生に教えていただきたい」

まぁそんな事も無いだろうが。
一応、声だけはかけておく事にしよう。

ご案内:「スラム」から鏑木 ヤエさんが去りました。
ご案内:「スラム」に鏑木 ヤエさんが現れました。
鏑木 ヤエ > 「なるほどなるほど、

 やえがこの島に来て日が浅いというのもありますし。
 それにやえは友達がスクネーですからね。
 そんな面白いことが実在したのを知れなかったやえの職務怠慢です」

目の前の怪物の言葉を只管に噛んで飲みこんだ。
ただ、昔は都市伝説として欠伸をしながら聞いていたハナシも、
今となっては目の前に存在する紛れもない現実であり。

そんな都市伝説の現実に少しでも触れてしまったのが運のツキだったのかもしれない。
   ・・・・       ・・・・
触れてしまった。興味が湧いてしまった。
だから、

「オニーサン。やえとお友達になりましょう。
 やえはオニーサンの人探しを手伝います。
 オニーサンは、やえに面白いお話を沢山聞かせてください。
 あと斬らないって約束してください」

子猫のような足取りで屋根から降りようとしながら。
興味心だけで彼女はそう、問い掛けた。

東郷月新 > 「ふむ、友達に?」

面白い少女だ。
なるほど、彼女もまた、危険感知能力が『壊れている』のかもしれない。

「小生は構いませんよ。
まぁ、小生と仲良くなると、公安が煩いかもしれませんが」

くっくっと笑いながら、右手を差し出す。
こうやって伝説に惹かれた者を、昔はロストサインに引っ張りこんだものだ。
まぁ、今は組織も無いので、言葉通り友達になるにとどめておくが。

「小生は東郷月新。かつてはロストサインの『殺刃鬼(ヒトキリ)』と呼ばれておりました」

鏑木 ヤエ > 生憎にも人斬りの怪物の想像は外れていた。

少女は、危険関知能力が『ズバ抜けている』というのが正解だろう。
「怖い組織があるから家に閉じ篭る」のではなく、
「怖い組織の仲間になれば少なくともその怖い組織には狙われずに済む」。
「誰彼をも殺す病原菌」があるのならば、「自分で死んでしまえば病原菌に殺されずに済む」。

「ロストサインの人斬りが人を斬る可能性がある」のならば、
「ロストサインの人斬りの友人になれば少なくとも他の名前も知らない彼らよりは長く生きられる可能性がある」。

「相手が自分を殺す」のならば、「自分が相手を先に殺せば死ななくて済む」ように。
少女は、いつだってこうして生きてきた。
それを変える心算もなければ、変えられるほどの度胸もない。
この生き方であれば、落第街で生きていくのも大して苦労はしなかった。

「ダイジョーブですよ。
 ここは天下の落第街です。やえはそこまでお間抜けさんではないので」

「公安がもし自分を如何こうする」のであれば、自分が「―――……、
そう上手く行くとは思っていない。
けれども、面白いものを前にして、背を向けられるような人間ではない。

「トーゴーですね。よしなに。
 やえです。やえはやえ、通りすがりのハラペコアルバイターです。
           ヒトキリ
 どうぞよろしく、『殺刃鬼』のオニーサン」


好奇心は、猫を殺さなかった。
そのままくるりとゴシックなスカートを揺らして、猫のように屋根から飛び降りるのだ。

ご案内:「スラム」から鏑木 ヤエさんが去りました。
東郷月新 > 「……ふむ」

少女は猫のように飛び去った。
さて、また奇妙な縁が増えたものだ。
だが、ここは落第街だ。
どんな事でも起こりうる。

「さて」

餅を片付けると、東郷もふらりとビルから去った。

ご案内:「スラム」から東郷月新さんが去りました。