2016/05/31 のログ
ご案内:「スラム」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 浮浪者がまばらに座り込む、極めて静かな道路。
人々の面持はいずれも暗く、まるで落第街という場所がどういうところなのかを表しているかのよう。
たまに歩いて通り過ぎていく者たちの中に、フードを深く被った男が紛れ込んでいる。
それが久藤嵯督、その人であった。

(臭いが近いな。そろそろすれ違う頃だが……)

今回の任務は”落第街に逃げ込んだとされる容疑者の確保”。
風紀委員の中でもここまで入り込める人材は限られているため、
”自由”に動ける嵯督にお鉢が回ってきたということだ。

久藤 嵯督 > 証拠品の臭いと一致する反応は、100m先の三人組の中から感知出来る。
用心棒でも雇ったのだろうか。
前後を堂々と歩く二人に対して、中央の男はあちこちに視線を泳がせている。
男はフードを被っているため顔が大方隠れてしまっているが、顔写真で見た顎周りの毛根を見れば一目瞭然。
100%、一本残らず一致している。異能か魔術で顔を取り換えてさえいなければ、あれが容疑者だろう。

今回は『容疑者だけ送ればいい』。
上司からも、背後にある組織に手を出すことは推奨されていない。

(くれぐれも自分たちの邪魔をするんじゃない、ってことだな。
 いいさ、手柄ぐらい幾らでも譲ってやる)

嵯督は猫背のまま、無造作に歩き続ける。
スラムの浮浪者を演じるのにも、もう随分と慣れたものだ。

久藤 嵯督 > 三人組との距離が徐々に縮まってくる。
ターゲットとの接触まで残り5秒、4、3、2、1……

容疑者が真横に並んだ瞬間、目にも止まらぬ速度で手を伸ばす。
手を掴んだ瞬間強化ピアノ線を容疑者の体表に這わせ、一人分の転移魔術を発動させる。
予めマジックカートリッジを打っておいたのだ。
魔力の定着しない肉体に無理やり魔力を捻じ込むことで、魔術の行使を可能とする荒業。
容疑者は一瞬で、拘留施設へと送られていった。

■用心棒 壱 > 「なん―――」

―――遅い。

空いたもう片方の手を一振りすれば、『糸』が二人を同時に拘束する。
そして死なない程度の電流を流し込み、倒れた二人を尻目に何事も無かったかのように去っていく。

これで自分の仕事は終わりだ、と。
念の為に追手を巻くルートに進路変更しながら、本部への帰還を開始する。

久藤 嵯督 > カートリッジの魔力のみを用いた魔術は、使用者の痕跡が残らないという性質を持つ。
故に、発動させた現場で目視確認する以外に使用者を特定する手段は存在しない。
用心棒に巻き付けた糸の痕と電気ショックも、余程精密に検査しなければテーザーガンの一種として処理されるだろう。

どちらにせよ、容疑者周りの今後は他の連中が対応する筈だ。
またこちらに泣き付いて来ないことを祈りながら、落第街から一人の浮浪者が消えていった。

ご案内:「スラム」から久藤 嵯督さんが去りました。