2017/04/25 のログ
ご案内:「スラム」にイレイスさんが現れました。
イレイス >  
竹村がスラムをぶらついていると、悲鳴が聞こえてきた。
意を決して走っていくと、骨の外骨格を持つ怪人としか形容しきれない存在が暴れている。

「クソッ、ブラックデザイアの怪人じゃねーな!」

異次元からベルト型変身アイテムを取り出すと、腰に装着した。

「ジョイント・オン!!」

そう叫ぶと全身にグリーンのアーマーが装着されていき、赤いエネルギーラインが浮かび上がった。
ヤツがどんな目的でいるかは知らないが、このままにはしておけない。

イレイス >  
「はいお客さん、お店で暴れられちゃ困りますよっと」

骨怪人にしがみついた。
骨の中には鋭利に突出したものがあるようだ。
生身ではこうはいかない。

「どうどうどう、落ち着いて、それ以上すると怖いおじさんが来ますよお客さーん!!」

しかしイレイスは2メートルを超える怪人の長身にパワー負け、あっさり吹き飛ばされた。

「ぬわーっ! ったく、暴れん坊だなこの子は…」

アーマードヒーロー状態じゃなければ振り払われただけで全治一ヶ月コースだっただろう。
このままじゃ、まずい。
どうする? 倒すか?

イレイス >  
「適当に殴って風紀の到着を待つ、としたいもんだが……」

見上げた。
このサイズにこのパワー、時間をかければはっきり言って死傷者が出る恐れさえある。

誰が、どんな悪意の種を撒いたら、こんな存在が形を成すというのか。

「……スラム街にも必死に生きてるヤツはいるんだぞ…」

滑り込むように駆け、巨骨の怪人の足元を蹴った。
ただのスライディングキック、だがこちらにも人口筋肉と機械式強化の恩恵がある。
相手の足首を砕いて、倒せればよし。

だが。

「!?」

頑強なる骨はまるで受け付けず、右足を蹴ったイレイスを左足で逆に蹴り返した。

「ぐう……!!」

火花を散らしながら転がる。
俺、カッコワリー。

イレイス >  
「参ったねどうも……レッド、お前ならどうした?」

立ち上がりながら今は亡きレッドに語りかける。
敵組織、ブラックデザイアに殺された旧友に。

「俺にはどうにも上手い答えが出せそうにねぇや…」

いつも思う。
怪人を殺して、その怪人の元になった人物の家族はどんな顔をするのだろうと。

でも。
それでも。
誰かが戦わなくちゃ、誰かが犠牲になる。

「出力アップだ、いくぞ……!!」

赤いエネルギーラインが強く発光しながら、骨の怪人に殴りかかる。

「うおらああああああああぁぁぁぁぁ!!!」

相手のボディを殴りつける。
強固なる骨にヒビが入り、怪人が呻いた。

「オイオイどうしたァ!! 俺はここだぜ!」
「どこの馬の骨ともわからねぇ野郎に骨折させられたのは骨身に沁みたろ?」
「恨み骨髄ってわけか? かかってこいよ! 骨身を惜しまず相手してやらぁ!!」
「それも無駄骨にならねーといいがな!! この地に骨を埋めるつもりで来いよ骨ヤロー!!」

滅茶苦茶に煽った。
相手の意識をこちらに向ければ、危険なのは自分だけで済む。

イレイス >  
骨の怪人が拳を振り上げる。
よく見ろ、相手の動きは決して速くねえ!

寸前で打ち下ろしを回避し、次に来る前蹴りをかいくぐる。

相手の目の前で軽く跳躍した。

こうしないと届かない――――コイツの正中線には。

「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

丹田・鳩尾・喉笛を拳にて突く。
正中線三連突き。

砕けた骨片が散り、怪人の呻き声が低く聞こえた。

イレイス >  
「今だ!!」

後方に跳躍する。月に緑のシルエットが重なる。
赤いマフラーのエネルギーが燃え、推進力を生み出す。
イレイスは、蹴りの姿勢のまま骨の怪人に突き進む一本の矢となる。

「パニッシュメントX!!」

余剰エネルギーで十字に地面が突き崩れ、そして粉塵が周囲を覆い隠した。

「って………」

足元を見ると、下水溝への道。
下に落ちて、骨の怪人は逃げたようだ。

「ふぃー」

変身ベルトを外すとグリーンのアーマーは光の粒子となって消えて。

「骨折り損のくたびれもうけだな、ったく」

取り逃がした怪人を深追いするとロクなことがない。
経験則に従い、竹村は騒がしくなってきたその場を後にした。

ご案内:「スラム」からイレイスさんが去りました。