2018/02/08 のログ
ご案内:「スラム」に江風 白さんが現れました。
■江風 白 > スラムの中心地に近い場所。
あの時と同じ服装でようやくそこにたどり着いた。
もうかれこれ二年前、この島にきてしばらくいた場所。
「今でも思い出しますよ先生。でも先生達が僕を捨てたなんて信じません...。
...必ず戻って見せます。」
目の前にある建造物。自身が所属していた違法な研究機関の実験施設だった場所。
今はもうその痕跡もなく、ただの空き家になっているが、体は覚えている。
自分はここで生きてきたのだと。
■江風 白 > 建物の中に入り、壁を手でなぞりながら空っぽの部屋を歩いていく。
かつての面影は最早ないが、この匂いは変わらない、昔のままだ。
「先生、見ていてください...。僕が役に立つってこと、お見せしますから。」
まるで子供が親に見せるような無邪気な笑みを浮かべれば、部屋の中央で膝を抱えて座り込む。
このまましばらく懐かしさに浸っていよう。
ご案内:「スラム」に刃々斬鈴音さんが現れました。
■刃々斬鈴音 > 形の残った建造物はこの治安の悪いスラムでは浮浪者の住居になる事も少なくない。
帰る家のない者とか、傷を負った通り魔だとか…。
「誰かいるの…?」
部屋の奥から声が響く。
当然この住居の本来の持ち主の物ではない。
その声と共に現れたのは全身傷だらけの少女身に纏った衣服も
ところどころ破れてボロボロになってしまっている。
■江風 白 > 「先生...父さん...母さん...。」
目をつむり、そう呟く。
そんな時、部屋の奥から少女の声が聞こえた。
顔を上げ、声の方向に顔を向ければ。
「君は...誰かな?
ここは僕の家...いや、前の住人だったんだけど...。」
若干震えた声でそう声をかけてみる。
見た感じ大丈夫そうではなさそうだ。
■刃々斬鈴音 > 「そうなの?ごめん、少し借りてるね。
ちょっと、失敗しちゃって…。」
普段の鈴音を知る者ならば違和感を感じるほどに弱々しい。
「鈴音は鈴音…刃々斬鈴音だよ。」
鞘に入った刀を杖にフラフラとした足取りで少年の方へと近づいていく。
■江風 白 > 「...失敗?
誰にでも失敗はあるよ。次同じ失敗をしなければいいだけだと思うな。」
首を傾げながらそうありきたりな回答をしてみる。
ゆっくりと近づいてくる少女を座ったまま見つめながら、おどおどした様子で自己紹介を返す。
「僕は...えっと、江風..えっと、白。
よろしくね?」
■刃々斬鈴音 > 「鈴音は失敗したことすぐ忘れちゃうからな…。
何回もやっちゃうんだよ。」
こんな反省も今のような時でないとしない。
「かわかぜしろい…じゃあシロちゃんだね。よろしくね。」
おどおどした少年を真っすぐ見つめて軽く微笑む。
そして申し訳なさそうに…
「あの、シロちゃん鈴音のお願い聞いてる?
ちょっとあったばっかりなのにこんな事頼むの変だと思うけどね…」
距離が近づくフラフラとユラユラと少女の刀が届く距離。
■江風 白 > 「そうだね...メモに書くとか...誰かに教えてもらうとか?」
人差し指を立ててそう提案してみる。
「あ、うん。シロちゃんかぁ...ふふ。よろしくね、えっと...鈴音さん?」
初対面でこんなに話しやすい人は久しぶりだ。しかも生まれて初めてあだ名で呼んでくれた。
少しうれしくなって口元に笑みを浮かべる。
見た目はボロボロだけどもしかするといい人なのかもしれない。
「お願い?うん、僕ができることなら聞いてあげられるかな。
でも...できることは少ないかもしれないけど。」
頬に指をあてて少し考えながらもそう返す。
彼女の刀のことなど気にもしておらず。
■刃々斬鈴音 > 「普段はちーちゃんが教えてくれるんだけど今は寝てるから…。」
少し、寂しそうに呟く。
「鈴音でいいよ!さんってつくと離れてる感じがするし!
あっ鈴音ちゃんでもいいよ?」
杖にしていた刀をふらつきながらも持ち上げて…。
「えっとね…シロちゃんそのね…少し斬らせて。」
鞘から現れたのは錆びた刀身。
ところどころに赤黒い液体が付着した鋭さのない鉄の棒切れ。
「ごめんね普段なら痛くないように出来るんだけど…。
今は血が足りないから凄く痛いと思うの…ごめんね。」
少年の目の前で抜いた刀を謝りながら振り下ろす。
その威力も速度も万全でない。
気がつくことが出来たなら躱すことも可能だろうし防ぐことも出来るかもしれない。
■江風 白 > 「ちーちゃん?お友達かな...?
鈴音ちゃん...うん。じゃあ鈴音ちゃんで!」
これが友人ができるという感覚なのだろうか。
自分の思い出深い場所で友人ができるなんてなんて素晴らしいことだろうと満面の笑みを浮かべる。
やっと自分も人としての一歩が踏み出せる、そう思った瞬間だった。
「はぇ...あ...。
すず...ねちゃ...。」
完全に気を逸らしていた彼は攻撃をかわすことができなかった。
右肩から斜めに切り降ろされた傷からは赤黒い血液と明るい血液がどくどくとあふれ出す。
そのままの体制のまま彼女を信じられないという目で見つめ。
■刃々斬鈴音 > 「うーん…ちーちゃんはね友達っていうか良く分からない…
うん!鈴音ちゃんならいいよ!」
笑みを返す邪気もなにも籠ってない。
「あっ痛かった?ごめんねシロちゃん!
結構深くいっちゃったね…痛い?痛いよね?」
錆びた刀は簡単には抜けない。
「でも、これでちーちゃんも復活するかな?」
新しい赤も黒に混ざれば黒くなり刀に纏わりついてどんどん古い血の匂いが強くなる。
それは未だに身体の中にあるままで周りの血を吸い上げていく…。
「ありがとうシロちゃん!!シロちゃんのお陰で鈴音助かっちゃった!!
シロちゃん本当にいい子だね大好き!!」
■江風 白 > 「すずね...ちゃ...い...痛い...痛いよ....。」
口から血塊を吐き出しながらも苦痛を漏らしながらもそう相手にぎりぎり聞き取れるであろう声量でいう。
その瞬間刺さっている部位以外の傷がみるみると再生していき。
「痛い...こんな...!!酷いよ...!!」
突き刺さった部位からは途絶えることなく血液が流れ出る。
まるでそこから新しい血液が生み出されているかのように。
刀を素手で掴めば、無理やり引き抜こうと力を入れ。
「うぐっ...あああああ!!痛いよ...酷いよ...。友達になれるって思ってたのに!」
無理やり引き抜き、抉れた傷も僅か数秒で再生する。
体が重い、吐きそうなくらい気分が悪い。いったい自分は何をされたのか分からず、2歩、3歩と相手との距離を取り。
■刃々斬鈴音 > 「あっ…えっ?」
痛みを訴える言葉は鈴音の耳には届かない。
治る様子に少し困惑して…。
「えっ何で治るの?何で治るの!!凄い!」
無理矢理引き抜かれたその刀は今までのどんな血を吸った時よりも赤色。
普通の人間であるなら死ぬ…最低でも意識を失う量の失血をしても未だに立っている
そんな少年を前にして鈴音はその瞳を輝かせる。
「ごめんね、シロちゃん…いきなりでビックリしたよね?
痛くしてごめんね…鈴音ちーちゃんにあっこの刀に血を吸わせないと生きていけないから…。」
今までの様子とはまるで違う妖刀と言われる刀が持つそれの迫力。
「シロちゃんありがとね。」
■江風 白 > 「こんなもんじゃ僕は死なないよ...先生たちがくれた力だからね。」
先ほどの笑顔と違い、不機嫌そうな顔で相手を見つめる。
「血...僕の血を...。先生からもらった大切なものなのに...!!返してよ!!」
自分と先生達をつなぐ唯一の手掛かり、それを奪われるなんて許されることじゃない。
ポケットから護身用のナイフを取り出せば、怒りに任せて大振りで相手を切りつけようとする。
「よくも!!よくも!!」
■刃々斬鈴音 > 「凄い!凄い!便利だねー!!
いっぱい斬っても大丈夫なんだ!!」
不機嫌な顔に返されるのは場違いな笑顔。
友人に向けられるようなそんな笑み。
「それは困るよ…鈴音も血いるし…。
あっでもいっぱい取れたから少しだったらいいよ!」
刀が血を帯びれば少女の動きは目に見えて良くなる。
素人が振るう大振りのナイフなんて刀を沿わせて容易に受け流せる。
「そんなに暴れたら危ないよ!ちーちゃん!」
『血腐レ─鈍血』
刃と刃が触れ合った時金属的な声と共にナイフにベタリと赤黒い液体が貼りついた。
■江風 白 > 「痛いのは嫌なんだよ...。なのになのに何で君は...そうも楽しそうなんだよ!!
僕はこんなにも...痛いのに!!」
涙を浮かべ、先ほどまで傷のあった場所に手を当てる。
震える声を無理やり大声でそう叫べば、相手に接近し。
「大切な僕の体...先生達に貰った宝物なのに...!!
君なんかが持っていいものじゃないんだよ...。」
一瞬聞こえた2人とは違う無機質な声、一瞬それに動揺するも、相手に向かって走っていき。
ナイフを握る力を強くし、そのまま相手に突き刺そうと。
■刃々斬鈴音 > 「…?だって鈴音痛くないもん。」
キョトンとした様子で言葉を告げる。
「そんな事言うならもう一回先生からもらってくればいいじゃない。
さっきもらったのはもう鈴音のだよ!」
見せびらかすように刀を見せる。
周囲に滴る赤黒い液体の殆んどは少年の血が元になったもの。
「そんな怒らなくてもいいじゃない…。」
勢いよく向かったナイフは鈴音の身体に突き刺さらない。
まるで摩擦がないかのようにナイフはニュルリと横に逸れて二人の距離は一気に近づいた。
手をのばせばそのまま抱きしめられそうなぐらいの距離。
■江風 白 > 「...なんでそんなことが言えるの?
...君は痛みを知らないのかい?怖くないのかい?」
ありえないものを見るような表情でそう呟く。
ナイフは逸れ、万策尽きた。ナイフから手を離せば、力なくその場にへたれこむ。
「先生はもう...。それにこんな状況見せたらまた失望される...。」
ナイフについた血液を指でなぞりながら、小声でつぶやく。
なぜ相手はこうも前向きなのか。
「僕を殺すのかい?君は...。」
■刃々斬鈴音 > 「そりゃ…鈴音が痛いのは嫌だけど。
シロちゃんが痛いのはあー痛そうにしてる可哀想だなーって思うくらいだよ?」
可哀想と言うがその手を止める事は無い。
可哀想な物を見るのは好きだ。
「そっか、もうシロちゃんの先生いなくなっちゃたんだね。
また…って事は一回がっかりさせたからいなくなっちゃったって事なのかな?」
優しく少年に尋ねる。
「ううん、殺さないよ。
だって折角何回斬っても死なないなんて…理想の人だと鈴音思うの。」
■江風 白 > 「可哀そうって思うならとめてくれないかな...。
僕は痛いのが大嫌いで...。」
会話ができる分まだ期待が持てるのではと思いながら相手をそう見上げる。
「僕が悪い...んだと思う。僕がいつまでたっても成長しないから...。」
相手の発言には悪意はない、優しく温かいものを感じる。
「殺さない...?理想の人?僕は必要とされてるのかな?
君は怖い人だと思う...だけど...優しい何かを感じるってことは君はいい人なのかい?」
■刃々斬鈴音 > 「分かった…ごめんねシロちゃん…。
もう、痛くしないね…。」
妖刀血腐レは本来ならば痛みなく血を吸う事も出来る。
今回は十全に力を発揮していなかった故の悲劇である。
「じゃあ、シロちゃんがいっぱい成長して先生がシロちゃんが成長したことを知ったら
迎えにきてくれるって事だね!」
笑みを浮かべて告げる。まるで事実を確認するような口調で。
「鈴音は…いい人じゃないかもしれない…。
でも、シロちゃんがいてくれたら鈴音は凄く助かるよ!」
血の質も良いし、治るのであれば殺してしまう心配もない。
「ねぇだから鈴音と友達になってくれる?
鈴音もシロちゃんの為なら何でもしてあげるよ?鈴音に出来る事ならだけど!」
■江風 白 > 「痛くないなら...って、血を取るのは変わらないんだね...。
でも...うーん...少しくらいならあげるよ...」
先生からの贈り物を取られるのは嫌だが、誰かの為であれば許してくれるかもしれないと心の中で思う。
「たぶん...だけどね。僕に見込みがあるなら...僕はまた家に戻ることができる...と思う。」
自信なさげにたどたどしくそう言葉を紡ぐ。
おそらく一番これが現実的な手段なのだろう。
「友達...。うん。わかったよ。鈴音ちゃんはすごく強いし、とても心強いい。」
彼女と一緒にいれば自分の価値が高まる、そんな気がした。だからこその返答だ。
「あ、えっと...さっきは怒ってごめん...。」
■刃々斬鈴音 > 「本当!?ありがとうシロちゃん大好き!!」
流石にすぐ治るとはいっても同じ人からたくさんとるのは危ないかもしれない。
…少しずつ貰う事にしよう。
「やっぱり!頑張ってね!鈴音も応援するからね!!」
自信なさげな少年の手を取って嬉しそうに言う。
実際どうなのか分からないというのに。
「やったー!鈴音友達初めてできたよ!!
よろしくねシロちゃん!!」
少年の手を握ったままでブンブンと嬉しそうに上下に振るう。
「謝るのは鈴音のほうだよ鈴音の方こそごめんね…。」
一瞬シュンとして頭を下げたと思えばすぐに頭を上げて
「…あっそう言えばここ元々シロちゃんの家だったんでしょ!せっかくだし色々案内してよ!!」
そんな事を急に言い始める。
今日もどこまでも刃々斬鈴音は自由だった。
ご案内:「スラム」から刃々斬鈴音さんが去りました。
■江風 白 > 「あ、えっと...うん。」
こんなにも前向きで明るい人間。
自分の施設にいた同期達にはなかったもの。無論自分にも。
そんな彼女がどこかうらやましく思えた。
「あは...は?僕も初めてだよ、友達?っていうの..。」
怖いけど優しい人。それが彼が彼女に対しての印象だった。
だが何はともあれ初めての友人だ、このつながりは大切にしなくては。
「うん、いいよ。今はもう全部なくなっちゃったけどここが・・・・・・」
部屋を一つ一つ案内している間、今はもうない先ほど斬られた傷を彼はなぞる。
あの時の痛みを思い出せば、彼は無意識に口元を釣り上げていた。
ご案内:「スラム」から江風 白さんが去りました。