2018/06/07 のログ
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「まぁ、この辺じゃ珍しいことでもないですからね……」
路地裏やスラム街で殺人が起こることはそんなに珍しいことではない。
殺す側が悪いという前提があるにも関わらず、この場所では足を踏み入れた側にも非がある、
そんな扱いを受ける場所だ。
見た感じこの男も何かしらの組織にいたのだろう。堅気には見えなかった。
「とはいえ、死体をこのまま放っておくというのも目覚めが悪いですね……」
立ち上がてその場を後にしようかとも考えたが、
このまま道の真ん中に放置するわけにもいくまい。
どうせ通報したところで適当に処理されるのがオチだ。
それならば私がこの手で弔ってやるほうが彼にとっても救いになるだろう。
そう考えると、異能を使って死体を浮かせて、先日掃討作戦で大規模に崩落した場所へと向かう。
コンクリートが広がるこの町で、穴を掘れる場所はここら辺しかないのだ。
異能を使って瓦礫と土を浮かせ、適当な大きさの穴を作れば、そこに男の死体をおさめる>
ご案内:「スラム」に江風 白さんが現れました。
■江風 白 > 最近散髪に行ってないせいか、鼻まで伸びた前髪を指先に巻きながら指定されたポイントへ向かっていく。
目的は依頼された死体の回収、というよりも現場の掃除といったところか。
携帯の地図を見ながら目的地へと歩いていく、あとはその角を曲がれば....。
「....?誰かいるなんて聞いてないけど...。」
死体しかないはずのそこにいたのは見知らぬ女性。服装を見る限り同業者ではなさそうだが。
再度端末を確認しても応援もなし。となれば...。
「あの...すみません。ここで何してるんですか?」
穴の中にいるその死体をちらりと見ればおどおどとした声でそう尋ねる。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「っ!!」
足音が聞こえた。誰かに見られれば誤解を避けられないうえ、
こんな場所をうろついている人間がまともなやつとは思えない。
ほぼ反射的な動作で警棒と鉄球を手に取って振り返る。が。
「何って、見ての通りです……
そこに倒れてたから、どうせ放っておいても、通報しても適当に処理されるだけですし……」
そこにいたのは性別の判断がしづらい、自分と同じくらいの背丈の人。
こんな場所にいるのがおかしいと感じるくらいにはひ弱そうな人物。
しかし相手から見た自分もそんな風に見えるかもしれない。
とかく、誤解されたのではないかという不安が頭の中で膨らんでいく>
■江風 白 > 「見ての通り...。」
相手と死体を交互に何度か見れば、頬をかりかりと掻く。
それに相手が持っている装備、間違いなく戦える人間。だからと言って仕事をほっぽり出すわけにもいかない。
「えっと...そこで死んでるそれとは全くの他人なんですよね?
貴方が両親で処理しようとしてるのは理解できるのですが...それ、僕に譲って貰えませんか?」
相手のほうを見ながら人差し指で穴の方を指さす。
まずは提案、断るのであれば少し手荒な手段も仕方がないと思考を巡らせる。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……なぜです?
私はあなたが何者なのか知りません。
あなたが適切にこの死体を処理してくれるというのであれば譲ってもいいですが…」
そうでないなら、嫌です。そう言葉を続ける。
適切に処理する。というのは、もちろんただこの場所をきれいにしろということではない。
この男を、一人の人間として弔ってくれるのか、ということである。
別にこの男と接点があるわけではないが、
一人の人間が物の様に扱われて、この世からいなくなるというのが嫌なのだ>
■江風 白 > 「何故...えっと、仕事だからでしょうか?
それに知る必要のないことを知ろうとするのは危険なことです。」
止めていた足を進め、穴の中にある男の死体へ向かっていく。
適切に処理?何故そんな手間のかかることをしなければならない?
穴の元までたどり着けばしゃがみ込み、男の容姿見れば、本人だと確認する。
彼女の方を見ればどもりながらも、さも当然のように。
「人間の道を一度外れた人間が、まともに扱われるわけないでしょう?」
相手と目は合わせずそう一言だけ答えた。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですか。
知る必要がないかどうかは、知ってからじゃないとわかりません。
知らないものに対する判断なんてできませんから」
少なくとも、推し量るという領域を逸脱した事物に対しての判断など、できないのだから。
そして本人確認をする彼女、いや、彼。
その言葉を耳にすると、ぞっとしたように目を見開いて、
その内側にこみあげてくる怒りとも、悲しみともとれる感情に力が入る。
「たとえ、彼が悪に染まった人間であったとしても、彼の尊厳は守られるべきです」
その言葉は半分、自身に向けられたものでもあった。
自身の過去に重ねてしまった。
しかしひ弱そうな彼はこちらの境遇を知らない。
しかし、彼がこの男を人間として弔わないというのであれば、
彼に死体を譲るわけにはいかない。譲ればそれは、自己の否定に他ならないからだ>
■江風 白 > 「.......。」
世間一般ではこういうのを正義とか善人とかいい人とか言うのだろうか。
自分のことよりも他人を優先するその精神。実に非合理的で何故か無性に腹が立った。
僕等被検体が作られ、必要ないなら捨てられる。それが普通。彼女の言うことは僕等を否定しているのと同義だ。
「あぁ...。むかつくなぁ...。」
そうぼそりと一言。それと同時に左の掌を彼女の腹部に向ける。
「知ってからじゃないと...?尊厳?そんなもの僕達の世界には存在しないんですよ!」
相手の腹部めがけて放ったのは魔力の弾丸。少し痛い目を合わせてやればこの苛立ち、収まるだろうか。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「存在しないのであれば、自分で作って、持ち続けないといけない」
放たれた魔力の弾丸。
しかし気が立った状態で行われる動作はあまりにも雑だ。
左足を軸に身体を引けば弾丸は的を失って外れるだろう。
そして右手の警棒で彼の手首をたたけば、そのまま左手で首をつかんで地面に組み伏せようとする。
「察するに、あなたもどうせ使われるために生まれて、
好きなように使われてきた身なんでしょう。
自身の不遇を受け入れられず、駄々をこねる子供みたい」>
■江風 白 > 「自分で作る?何を...ッ?!」
右手に走る鈍い痛み、それに顔を歪ませていれば続く組み伏せ。
細く、貧弱な体の自分では抵抗することもできない。
こんなことなら早めに行動しとくのだったと今更後悔しても遅い。
「不遇...?僕は自分を不遇だと思ったことはないですよ!!
使われることこそ僕達にとっての...ガァッ?!」
笑みを浮かべながらそう答えて見せるが、突如苦悶の表情を見せる。
それと同時に彼の腹部を突き破るように血液で構成された赤黒い槍が彼女を貫こうと。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「自分が生きる理由を、自分のなかに作れということですよ。
それが自身に対する尊厳となります。
使われることが……生きる理由であり向かうべき目標ですか?」
組み伏せるのは存外簡単だった。
しかし、彼の腹部から現れる槍を受けて、距離をとらざるを得なかったため、
せっかく組み伏せたというのに拘束を解いてしまった。
「いいですね、そういう生き方もありでしょう。
ありもしない尊厳をすてて、道具として生きていく。
でも、あなた自身がそういう生き方を選ぶのであれば――」
私はアナタを道具トしてショリしマすよ?
言葉が不明瞭になると、まるで獣のような走り方で距離を詰める。
人間離れした速度で近づき、見上げるその目は、獲物を捕らえた肉食獣そのものだ>
■江風 白 > 「生きる理由?使われること?尊厳?僕は...ッ!!
...僕の生きる理由は先生たちの役に立つこと。それを証明することのみです。」
困惑で思考がぶれたその瞬間、レールをもとに戻すかのように落ち着きを取り戻す。
腹部の傷口を抑えながらよろよろと立ち上がれば、まだ空いている左手をちらりとみる。
「はは...この人強い!先生、見ていてくださいね...僕が使えるってこと、証明してみせます!!」
接近してくる相手に対して右腕を向ければ、底から茨のような弦が十数本相手を捕縛しようと伸ばされる。
死から最も程遠い自分が死の恐怖を感じるほどの殺気。まるで獣...猛獣だ。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「役ニ立つコトをショウメイ スル?
イイデスネ そノ 先生 ハ ドコニ イルンデショウ?」
まるで茨のような弦が延ばされると、
背中に背負っていたケースを身体の前に突き出してそれを盾にする。
そうやって攻撃をしのげば、今度は両手に警棒をもって跳躍。
ほとんど水平に彼へと向かう姿は、まるで対象を死へと引きずる死神のようでもある。
「証明トイウノハ ホカに可能性ガ無いコトヲ示すサギョウ ナンデスヨ
使えナイ 可能性が ノコル アナタハ
イツマデモ 出来ノ ワルイ生徒ダ」>
■江風 白 > 「これでも駄目...!!知ってたところで教える訳がないですよ!!」
腕一本犠牲にしても足止めにもならない。ならどこを犠牲にする?足?脳?臓物?骨?
どの手段を使っても自分の経験では殺しきれない。
この化け物を止める手段は...。
そうこうしている内に敵はもう目の前、何もできない自分は言い返すことしかできなかった。
「獣風情が...わかったようなことを!!
僕は...僕は....っ。」
近づいてくる死の恐怖、自分は死なない。不死身だ。そう作られた。何度もそう言い聞かせる。そう考えるうちにどうしてか笑みがこぼれる。
手段を模索するのに時間を割きすぎた、魔術も行動もう間に合わない。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ワカリマストモ。
ワタシモ 役ニ立ツことヲショウメイ スル 為にイキテ イタ身デスカラ」
警棒が、彼をとらえた。
身体の前で交差させた警棒で彼の胸部をとらえると、そのまま勢いで押し倒す。
馬乗りになってマウントをとれば、彼には目だけがギラギラと光る化け物に見えるだろう。
髪の毛も肌の色も白いにもかかわらず、眼だけが見えるというのは不思議なことだが。
「……ほら。自分の外に理由を作るから迷うんですよ。
もっとわがままに、自分のために生きたらどうです?」
あとはとどめを刺すだけ。
しかし、警棒を振り下ろすでもなく、噛み殺すでもなく、次第に落ち着きを取り戻していく。
「私があなたを殺したら、あなたがあの男を処理するのと同じですから。
大丈夫、殺しませんよ。今この瞬間、あなたが私を殺すかどうかはあなたの自由ですが」>
■江風 白 > 「......。」
彼女の瞳を見るととてつもない恐怖と同時に何故か嬉しく感じた。
獣でもなく猛獣でもなく、ましては人間でもない。化け物。自分を殺せるかもしれないという期待。
しかし何もしてこない、こうしている間にも負傷個所は再生し、完治する。
「...何もないから、何も知れないから外に理由が必要なんですよ。先生達という理由がなければ...僕はもう壊れてしまうんです。」
この距離ならどんな術だろうが外さない、そう思い術を起動しようと力を籠めるが、起動できない。
心のどこかで殺すことを躊躇っているというのだろうか?このチャンスで?
「なんで...。なんで僕を殺さないんですか...?なぜ僕はあなたを殺せない。非合理的です...。同じ?わからない....。」
怯えたような声色でつぶやく。
死の恐怖とは違う恐怖が自身を襲う。自我なんてなかったはずなのに。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あら、それは自分の中に理由を作ることを怠っているようにも見えますよ?
いつまでも"先生"に甘えるだけでは見切られてしまいます」
生き物はいつか一人で生きていかなきゃいけない時が来るもんなんですよ。
「あなたを殺さない理由ですか?――私のためにならないからです。
私を殺せない理由ですか?――それは知りません。
あなたが一番よくわかっているのでは?
合理だけで物事が解決するなら、あなたは私と会話すべきではなかったのかもしれませんね?
さっさと殺して私も一緒にしょりするべきでした。
あなたが思っているほど、あなたは合理的じゃないのかもしれません」>
■江風 白 > 「怠ける?先生...。先生に見切られる?先生...あっ...なんでどうして?僕は...。」
相手の言葉で忘れようとしていた事実を理解する。
自分は捨てられた存在、もう既にこんな努力をしても手遅れなのだと。
「やめろ!!もう聞きたくない!!僕は優秀な存在...。使える存在...なぜ僕は捨てられた?期待値に満たない個体だから?嫌だ...考えたくない、僕は...。」
相手の声を遮るように叫びながらも目を大きく開き、息が荒くなる。
頭を押さえながら、無駄な思考を抑えるように脳に訴えかけるがいうことを聞かない。
もういっそのことそこで死んでいる彼と同じように殺されたほうがマシだと思えるほどに。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「あらあら、やっぱり駄々をこねる子供のようじゃないですか。
早く大人になりなさい?目を背けるだけではいつか何も見えなくなってしまいますよ?」
突然癇癪を起したように叫ぶ彼。
彼の生い立ちはわからないが、全く予想できないわけでもない。
昔の自分によく似た境遇の様に思える。
「安心してください。
ここに先生はいません。どこにいるというんですか。
そろそろあなたも卒業しないといけません」
細い体を抱きしめると、頭をやさしくなでる。
そのまま魔術を使えば、次第に心に落ち着きを取り戻していくだろう。
彼の考え方や生き方を変えることは難しいだろうが、
とりあえず落ち着かせるくらいならできるはずで>
■江風 白 > 「僕は物のはずなのに...。機械であるはずなのに...。」
混乱する。大人とはなんだ。今の自分では理解のできない感情だった。
だったら自分を作る為に廃棄されたあれらは一体何の為に。
「...この行動は貴方にとってためになるのですか?
どうして僕はこんなに暖かい気持ちになるのですか?
わからない...怖いんです。」
自分の中にあった感情が抑制されていく。
これも魔術なのだろうか?いまはもうそんなことどうでもいいかと。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「わからないものの中から、本当のことだけを探していくんですよ。
よく言うでしょう?我思う、故に我あり。って。
ええ、私のためになりますとも。
私の中の倫理観を損なわずに済みますから。
大人になるっていうのはですね、
わからないことに対して自分なりに答えをこじつけるってことなんですよ。
そこに先生はいないんです」
しばらく彼のことを抱きしめたまま、落ち着くのを待つ。
離れても大丈夫なようであれば、男の死体を埋める作業にもどるだろう>
■江風 白 > 「僕は...。」
自分の中にある、この十数年間教え込まれたそれに背くことはできない。
だが、背くことが卒業につながるのであれば。
自分の自我への興味が満たされるのであれば。
「先生...ごめんなさい。」
転移魔術を発動させる。学園で学んだものと同じ術式だ。
同時に彼の体は霞のように消え、その場から立ち去るだろう。
ご案内:「スラム」から江風 白さんが去りました。
ご案内:「スラム」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。