2015/08/24 のログ
ご案内:「研究区路地」に十六夜棗さんが現れました。
■十六夜棗 > 研究施設の並ぶ一角、その路地。薄暗く研究者は気に留めなさそうな場所。
この前使った変装姿で十六夜棗はまた、外壁から繋がるケーブル等を探していた。
「やりたい事って、ふと思い浮かぶのよね…」
思い浮かんでしまったからには、意図を余り決めずに調べる、と言う事はもう出来ない。
…狙いは一つ。その狙いの物がありそうな場所は、公安委員会、風紀委員会、そしてここ、研究区。
■十六夜棗 > …一番リスクが低そうなのはここ。だけれど、メリットとして大きそうなのは風紀や公安。
どこが手薄か確認すると共にやりやすそうなのはどこかを探らなければならなさそうだ。
それに…多分私のやり方だとここの方が、セキュリティが高そう…それでも手薄そうな場所があるか、調べておかなくては。
路地を歩き、施設それぞれの、ある程度の外から見たセキュリティの高さを、自信は全くないけれど測る。いっそ、稼動しているなら遭遇する方が施設や組織を相手取らなくて済むのだけど。
「…実際いるかどうかよね…自立式アンドロイド」
■十六夜棗 > 研究区にこそありそうで、実稼動しているなら公安や風紀にこそありそうで。…力づくじゃなく、書き換える。
人や人ならぬ生物が信用できないのだから、自分で書き換えたアンドロイドなら、そう思う。
「…不安は残るわよね。やっぱり。でもそれでも…」
耐え難い。作成するような費用もない。何よりも――
「…考えるより、動きましょう」
電気ケーブルや回線の位置、手を出しやすい場所にある施設こそ、施設としては、手を出しやすい場所。実際にはアンドロイドを探して個人的に接触できればベストだから、そうした存在を探したいけれど…
ご案内:「研究区路地」にアトラ9さんが現れました。
■アトラ9 > 長い黒髪をなびかせ、闇よりも黒い浴衣を纏った女が一人、研究区の路地を歩く。
女が一歩ずつ足を進めるたびに、辺りにはカラン、コロン、と下駄の音が響くだろう。
一見、単なる浴衣を纏った人間の女に見えなくもないこの女。
しかし、彼女は――この研究区で開発されたガイノイド、アトラ9なのだ!
「…………オヤ?」
アトラ9の視界に入ったのは、建造物の外部を物色する眼鏡の少女の姿。
一体彼女は、何を探っているのであろうか?
少女から若干離れた位置。そこから、しばし様子を窺う。
■十六夜棗 > 路地だからか、薄暗さがちょっと目に優しくない。
目を擦ろうとして…眼鏡がある事に気付く。
それに、カラコンもしてたから擦ると危ない。
もうちょっと、ケーブルの配置を見て…。ここも、露出はしていない。
さぁ、次…足音?
「…にしては軽いわね…?」
周囲を見回してみれば、……ちょっと角度の問題で見えない。もうちょっと路地から乗り出せば見えそうだけど、それも不自然。ちょっと考えて。
メモ張を取り出して、外壁の状態を書き込む。見咎められた際のごまかし用に。
■アトラ9 > どうやら、向こうからは角度の関係上、こちらの様子がまだ見えていないようだ。
であれば――と、こちらから少女に対して接近を試みる。
段々と距離が詰まってくれば、下駄の鳴る音に混じるかすかなモーター音が、眼鏡の少女にも聞こえてくるだろうか。
やがて、少女からもはっきりと視認できるであろう距離まで移動した後。
「……コンバンハ。ソコデ何ヲシテイルノデ?」
声をかけ、少女の行動の意図を問うてみる。
■十六夜棗 > 下駄の音なんて聞いた事がなかったから、軽い足音としてしか解らない。
それでもちょっとした何かに混じった音を聞いて――。
「コッ、ココココンバンワッ」
どもった。普段人と話したりしない分、挙動不審さが目立つ。
人の形をしているだけで、それに、自分より体格がかなり大きいと言う事もあって、さっき聞いた音の事の失念して態度がおかしくなってしまう。
「イエ、ソノ、建造物の外壁の調査をっ。
状態とか、変色とかっ」
今しがた書き始めたメモ帳、1ページ目の体たらく。
腐食及び変色とその原因の考察がちょろっと書いてある位。
姑息な言い訳だった。
■アトラ9 > 「フゥーム……外壁ノ調査……トイイマスト、貴女ハ整備課カドコカニ所属サレテイルノデショウカネ?」
アトラ9の記憶媒体には、自身が所属していない生活委員会の情報は基本的な部分しか記憶されていない。
よって、建造物の調査であれば、もっぱら生活委員会整備課の役目であろうと推察した上で再び質問するに留め、断定はしなかった。
「マァ、コノ辺リモ相当ガタガ来テル所ハアリマスカラネー。私モコノ辺ニ住ンデマスカラ、ヒトクチニ研究区ノ施設ト仰イマシテモ、ピンカラキリマデアルコトハヨーク存ジテオリマス」
アトラ9は研究区内のとある施設で開発され、現在もその施設で寝泊りをしている。
研究区内を日常的に歩いている関係上、研究区に存在する建造物の年季については割と詳しいほうだろうと、
周囲の評価はともかく自負してはいるのだ。
■十六夜棗 > 「いえっ。何処かの所属ではないろれすっ。」
噛んだ。…舌痛い。
舌の痛みが止むまでちょっと待って。
「建造物の劣化と、地区傾向について考察材料を集めていたんですっ。
材質と劣化と環境の関連性についてちょっと。」
生活委員会とか、そんな所に照合されたらたまらない。あくまで自分一人でやってる理由をこじつけて、こじつけて、後先を考えずに口走った。
やっと少し慣れてきた。授業の時は心の準備をしてから話すから、会話がちょっと大変だ。
「ガタ、ですかー。……予算が厳しい所は改築も出来ないですわよね……」
これはちょっといい情報。
つまり、建造物のメンテに手が回らない研究施設もそれなりにありそうと言う事。一歩前進、目の前の前進に動転から立ち直らずにまだ気がついてないけれど。
■アトラ9 > 「ソウデスネー。……フムフム、成程。個人デノ調査……デスカ」
腕を組み、頷く。委員会は無関係の、ごく個人的な調査。
そういうことであれば、納得がいく部分はある。
――しかし、アトラ9の電子頭脳は少女の動向をどこか怪しくも感じていた。
アトラ9は公安委員であり、重大な事件の発生を未然に防ぐのが目的だ。
とはいえ、怪しい動きをしている者がいるからといっていきなり捕縛を試みるような真似はできない。
まずは聞ける限りのことを聞いてみて、できるだけ多くの情報を集める。
実力行使は相手から暴力に訴えてきた場合の、あくまで最後の手段。それがアトラ9のやり方だった。
「シカシ、何故ソンナ調査ヲ?ヤハリ建築系ノ講義デ用イル資料収集、ナドデ?」
そうでもなければ、単なる一般生徒がわざわざ建造物についてそこまで詳細な情報収集を試みはしないだろう、という推察。
■十六夜棗 > 「そういう事ですわ。ところで、えっ?」
話題を切り替えようと、ぎこちない笑顔で笑って、別の話題を口にしようとして、新たな問い、と言うより当然ともいえそうな問いが向けられて、固まる。
こじつけだから、その先をまだ考えてない。
「それ、お答えする必要、ありますの?」
時間稼ぎの一言を挟んで、考える時間を稼ぐ手に出る。
笑顔のまま、今のうちに理由付けを…どうにかこうにか!
■アトラ9 > 「イエ……タダ、少シ気ニナリマシテネ。ソレダケ熱心ニ建物ノ状態ニツイテ調ベテイラッシャル、トイウコトハ、恐ラクハ建築ノ道ヲ志サレテイルノデハナイカト、ソウイウ、飽クマデ私ノ推察デス」
特に調査の指令も下りていない一般生徒に対して、公安委員の身分は無闇に明かすべきでない。
怪しい動きがあれば後ほど報告書にまとめて提出し、上の判断を仰いでから行動に移るべきだ。
そう判断しているアトラ9は、あくまで自身の所属を伏せたまま、
やんわりとしていながらどこか無機質な笑顔を作り、眼鏡の少女に伝える。
■十六夜棗 > 「うーん。違うんですよー。」
こうなったら、ヤケだ。ヤケクソだ。
ちょっと意を決してつり目が更につりあがる。
「建造物に見られる、異能や魔術による変質とそうでない変質。
自然な変質とそうでない変質が見分けられれば、この島での事件がおきてる場所を避ける事もできるんじゃないかしら。
も、もちろん、変質が起きてなければ確実に安全って事はありませんわよ?
それでも、異常な変質は避けられるのではないかしら?」
ちょっぴり焦った。表情は硬めになったけれど、論理的な矛盾は、こじ付けとヤケにしては見当たらない、と思いたい。
■アトラ9 > 「フゥーム」
眼鏡の少女の説明を聞きながら、数度頷き、納得がいったような表情になる。
「……成程。研究ノテーマトシテハ、興味深イ所デス。ソレラノ見分ケ方ガハッキリシテクレバ、注意ヲ促スコトモデキマスシネ」
異能や魔術による建造物の変質を見分け、それらが関連する事件の回避を回避する。
少女が語るその目的には、何ら邪な意図は感じられない。
アトラ9は眼鏡の少女が語るその言葉を、完全に信用しきっていた。
■十六夜棗 > やけっぱち成功したっ!危ない危ない…
「とは言っても、異能や魔術は星の数程あるのでしょうから、
自然の変化と見受けられる変質だけをまず集めないとどうしようもー
今集めてるものだって、異能や魔術の影響下で変質しているのかも知れませんから…」
肩を落として、今のこじ付けを遣り通そうとしたときの苦労を想像してげんなりとした表情を浮かべる。
「ところで、そちらは私を見かけての様ですけれど、何かご用事があったりしませんの?先ほどちょっと駆動音の様な物が聞こえましたし、何かの機材を動かしていたのでは?」
不意に顔を上げて、手を打つ。そうだ、さっきの駆動音。確かめておかないと、と話題を変える試み。
■アトラ9 > 「……アア、コレデスカ。特ニドウトイウコトノナイ、普通ノサーボモーターデスヨ」
眼鏡の少女から言及されれば、軽く首や手足を動かしてみる。
アトラ9の各関節を構成する高性能サーボモーターの駆動音が、
眼鏡の少女にもはっきりと聞き取れるであろう距離だ。
「私ハコノ研究区デ開発サレタ、ガイノイド……アトラ9ト申ス者デス。帰リ道ノ途中、偶然貴女ノ姿ガ見エマシテネ。少シバカリ気ニナリマシタノデ、オ声ヲカケサセテイタダイタ次第デス」
赤い瞳が光った。少女に自らの名を名乗り、目的を説明する。
■十六夜棗 > 一応携帯で写真も撮っておかないと折角のやけっぱちも水の泡、携帯をポケットから取り出して撮っておきましょう。
「サーボモーター…?」
おぉ、と目を丸くする。関節にモーター、…ノイド、ガイノイド?
アンドロイドの女性形…チャンスが巡ってきた、と考えていいのかしら。
手に汗が滲む。
「ええ、アトラ9さん、ですわね。よろしくおねがいしますわ。
このような場所ですから当然気になるのでしょう、お手を煩わせてしまいましたわ。
私は、」
偽名、偽名よね、変装してるのだし。
えっと、えっと。
「望月満月(もちづきみつき)ですわ。」
安直にしちゃったぁぁぁぁ!
し、しかたない、このまま押し通して…
いや、ガイノイドなら、後でこの名前、検索されるのでは?
まずい。意識内で魔術詠唱して、ぶっつけ本番、や、やるしかない!
意識内詠唱、開始!プログラムを構築しなければ…!
■アトラ9 > 「望月満月サン……デスネ。エエ。記憶シマシタ。ソレト」
こちらに名乗りを返した眼鏡の少女――満月の名を、自らの記憶媒体へしっかりと焼き付けておく。
アトラ9の電子頭脳の性能は悪くはないが、少女の名が偽名であることを即座に見抜くことまではできないのだ。――そして。
「≪……私ノ事は"姉様"トオ呼ビナサイ≫」
すかさず、その機体に隠された特殊機能がひとつ、音声による催眠機能≪ヒュプノ・ボイス≫を起動。
満月と名乗った少女に精神干渉への耐性が無ければ、アトラ9は以後、彼女に自身のことを『姉様』と呼んでもらえるだろうか。
まだ、少女がしようとしている行動には気付けていない。
■十六夜棗 > 「え、あっ、……はい、姉様っ!」
気付かない。その上に詠唱に集中していれば、精神がその分外側からの侵入に弱くなる。
呼び方が変わっている事にも気付かずに、意識内における詠唱は続く。
構成式を起動。口止め、いや姉様の主になってしまえば、口封じも出来るしその後の目的も隠蔽もやりやすくなる。
マスター認識、マスター権限の望月満月への書き換え、それを直で送る為には、様々な認証を電子的な手順で踏むわけにはいかない、つまり、直でマスター認証プログラムのある位置に[プログラミング・オーラ]を叩きこむ他はない。ありえそうなのは、頭部か、胸部。一か八か。意識内で仕上げたプログラムを、魔力に染みこませて…ここで既に魔力反応が高まってる事が魔力系のセンサーがあれば判別できるかも知れない。
「姉様、髪、触ってみても、いいですか?」
そんなミスにも気付かず、お願い事をして、手を伸ばす。
頭部に魔力を流し込んで書き換える一発勝負。電脳の頭脳部やマスター権限のプログラムがある位置が頭部ではない場合はアウト、頭部に触れられなくても、アウト。魔力を検知されていたらその時点できっとアウト。潜り抜けるには関門が多いけれど、果たして。
■アトラ9 > 「髪、デスカ?エエ……髪グライナラ、イクラデモ。何セ、可愛イ妹ノ頼ミデスカラネ。ウヘヘ……」
若干ぎこちなくにやつきつつ、満月の頼みを快諾するアトラ9。
そう――彼女が抱いている何らかの企みに、このガイノイドは未だ気付いていなかったのだ!
■十六夜棗 > うへへ?
いや、それよりも、出来上がったプログラムを崩さずに髪に触れて、ごまかすように微笑んで。頭部に直接…プログラムを叩き込む。無言語版[プログラミング・オーラ]!
<プログラムの行数は少ない。ガイノイドのAIにおけるマスター権限とマスター認識のname、及び配属などのパーソナルデータ部分を望月満月に上書きするだけのもの。機械的な関門は魔力の状態で突破するものの、魔術発動位置、その近辺にそれに類するプログラムが存在しなければ、マスター権限が二つに増えたり、或いは意味のないマスター認識を書き加えると言う代物>
「……気分は、如何、です、の?」
触れて、魔術を流し込んで…結果を待つばかり。破滅か、成功か。意識がグルグルしそうだ。プログラムに間違いはなかっただろうか?場所はあっていただろうか?そもそも、魔術対策がなされてないだろうか?不安がよぎる…。
■アトラ9 > 「アバッ……アババババーッ!」
魔術を叩きこまれると突如奇声を発し、しばしの間意識を失ったかのように沈黙するアトラ9。
しかし、次の瞬間……アトラ9は満月の方を向き、
「甘イデスヨ……」
その赤い瞳を、線香の火のように光らせる!
アトラ9の体を覆う人工皮膚や関節を動かすサーボモータなどの駆動部といった部分には、魔術耐性は全くない。
しかし、アトラ9の記憶媒体は、公安委員会への配属時にデータ流出を危惧し、数段階の攻性防御プログラムをはじめとしたハッキング対策がなされている。
魔力の9割以上を遮断し、魔術に対する物理的な障壁となりうる特殊素材製カバーを用いた記憶媒体周辺への魔術遮断措置も、そのひとつだ。
さらに、記憶媒体そのものの位置も頭部と胸部、胴体部の複数個所に分散させ、
マスター権限等の重要なデータは複雑に暗号化処理を施している。
これほどまでの厳重な措置が施されていればこそ、アトラ9はガイノイドでありながら公安委員としての活動を行えるのだ。
アトラ9はすかさず、近くの建造物に向けて右手から強化クモ糸を射出。
そのまま糸を使って跳躍し、追撃に備え満月から距離を置く!
「仮ニモ一介ノ公安委員デアル私ノ記憶媒体ガ、何ノハッキング対策モサレテイナイト思ッタノデ?」
ここで初めて、自らの所属を満月と名乗った少女に明かしつつ、
アトラ9は眼前のハッカー少女に対する認識を改める。
■十六夜棗 > ……うへ、と…やばいって顔をする。
糸を使った異常な機動。これこそ危険だった。
「公安?公安っ!?」
やばい、まずい、きつい、逃げたいいやだめだ。それなら…
失敗、失敗失敗失敗失敗っ!ぐるぐると回る、狂気が巡る。
「姉様もいじめるンデスネ、アハハハハハハ!
そう、全部全部…やっぱり私は厄介払い、何も上手く行かないように、それなら…!」
聞こえている様で聞こえていない態度、狂気に似た何かを目に宿す。
「知識不足?いいでしょう、準備不足、いいでしょう。対策が硬かった、いいでしょう。ですけど、ここまでですよぅ?」
直ぐ傍の建物の壁にさっき髪に触れた手で触れる。
「何人いるでしょうね?
私は失敗したんです失敗なんです破滅なんですよ!」
はったりだ。そんな威力は持ってやしない。
「成功がなければ崩れ落ちるもの、中の人と姉様自身、どちらを取りますか?」
■アトラ9 > 「……コリャ、コトダ」
呟く。眼前には自棄を起こし、建造物に対して何かを仕掛ける少女。
もし満月の言う通りのことが起きれば、惨事は免れまい。
しかし命あっての物種。ガイノイドのそれが命と呼べるかはともかく――
まずは、自身の安全を確保しないことには始まらない。
強化クモ糸を連続射出し、遠くへ、遠くへと移動。
最初に満月が触れた建造物から、とにかく距離を置かんとする。
■十六夜棗 > 「ソウデスカ、公安も、自分が可愛く、誰かの為に命を賭けるような事もしないのですわねー?」
じゃあ、と魔力を注ぎ込んだ振りをして、奥まった路地へと移動する。
せいぜいやれる事は、壁の向こう側に配線があれば、一時的に遮断を起こす電気遮断位。しかし今はしない。
「アハハハハハッ!」
笑いを上げて、駆ける。もう、なんでも、どうでも、いいや。
力もない、磨いた魔術も通じない。
誰もいない。
何かを道連れにするなら、一箇所位だろうか。病院や、何かの危険な実験施設。それを目指す。