2015/08/25 のログ
■アトラ9 > 「クッ」
満月の言葉に思考を揺さぶられかけるが、平常心を取り戻し。
視界の外に消えた満月を追い、今度は来た道を戻りつつ、先程と同じように強化クモ糸を駆使して路地を進んでゆく。
ここで特殊機能の一つ、≪サーモスキャナ・アイ≫を使用。
アトラ9の双眸は熱源探知機能を発揮し、建物越しに美月の姿を捉えた。
しばしの間追い続け、やがていずこかへと駆ける彼女の姿が目に映れば、すかさず彼女の足下めがけクモ糸弾を複数発射し、動きを止めることを試みる。
■十六夜棗 > 笑い声を上げているのだから、追われやすいし、サーモアイが無くとも、追いかける事は楽だろう。
ただし、ただし。
クモ糸で追われている事はさっきの異常機動で予想だけはできる。
「ははははっ。…アハハハハッ!
喚べ、舞えっ!ウェイブッ!」
何かの発射音と同時に詠唱。
電撃の波を起こして、クモ糸弾を電磁波で開かせない様に飲み込ませる。しかし足を止めてしまう事には変わりないし、クモ糸弾の塊が砲弾として足元に着弾、つま先を傷める。
広がった電流が路地の建物の壁を伝わり、壁などに移動用に張っているだろうクモ糸に伝わるまでには多少の時間差がある。そしてその可能性にまだ気がついておらず、苦しげな表情を浮かべるまま。
「ぐ……」
■アトラ9 > 「…………!」
何かを察知し、すかさずクモ糸移動をやめ地面へと降り立つアトラ9。
わずかな間を置き、張り巡らされた強化クモ糸に電流が流れる!
間一髪、遅れれば電流によって機能停止まで追い込まれていた可能性が高い。
クモ糸移動ができないとなれば、自らの足で追うしかない――そう判断する。
アトラ9には加速装置の類は搭載されていない。飽くまで人間と同程度の移動速度。
故に追いつけるかは定かではないが、サーモスキャナによって位置を確認しつつ、まっすぐに満月の元を目指し走り出す。
■十六夜棗 > 足を怪我しているからには、歩みが遅くなるのは当然。
路地を曲がって、ぶつぶつと呟く。段々距離がつめられていく事を感じながらも。
「舞え、狂え、飛べ、穿て、崩れろ、沈め――」
呟きは、詠唱。何かを道連れにするにしても、それだけの大出力が必要だから、何かの理由で、クモ糸切れなのかもしれない、とにかく地面に降り立った以上、上から来ないだけでもあり難い、その間に、詠唱の時間を稼ぐ。それでも、目視されるほどに追いつかれるまで、3,4つ角を曲がるのが限度か。当然、道連れになるような施設は発見できない…但し、追いつくとなるとかなり距離は近くなる分、距離を開けたいなら目視までの追いつかれるまでの距離は増すが。
■アトラ9 > 速度こそ常人と大差ないものの、ガイノイドは疲れ知らずだ。
少しずつ距離を詰めてゆけば、やがて満月のものと思われる、呟くような声が聞こえてくる。
「(コレハ……詠唱、カ)」
そう判断したアトラ9は、どうにかして満月の口を塞がんとする方法をその電子頭脳で模索する。
クモ糸弾で塞いでしまうのが手っ取り早いだろうが、未だ命中させられるほど距離は詰まっていない。
急がねば。魔術が発動すれば、手遅れになりかねない。今はただひたすら、走って追いかける!
■十六夜棗 > 足の痛みに耐えて駆ける。格闘術を学んでいたお陰で、我慢して駆ける位は問題はないけれど、痛みを我慢する事と、怪我を押して走る事では大いに違う。足を引き摺らないだけマシ、と言うレベル。
思考そのものは、ほしい、ほしい、無理、得られない。
狂気かつ短慮にどんどん変わっていく。
「憎しみ、恨み、堕ちろ――」
ただただ、出力を上げる。
どんな魔法だったか、よく思い出しもせずに、詠唱を重ねて…。
もはや、どこにたどり着いたか、たどり着いているかも解らない。
ふと、足を止める。その原因は――
路地の向こうの通りに見える、夜中に歩く、研究者らしき姿。ああ、あれでも、いいか。足を止めた以上、追いつかれるだろうけれど、望月満月と名乗った棗は曲がり角を曲がって少し過ぎた所で立ち止まった状態。角から顔を出せば近距離になる。
「負の極へ、進め、進め――」
詠唱は続く。さて、判断は――?
■アトラ9 > 走り続け、やがて曲がり角の陰に隠れる彼女の姿が間近に目に入る。
これ以上詠唱を続けさせるのは危険だろう。だが、真っ直ぐに曲がり角の向こうへ追いに行けば、至近距離からの不意打ちを受ける可能性は大きい。
それを想定し、まずは曲がり角の向こう側の彼女を遠くから捕捉できる位置へと跳躍。
そして近辺からの車両の接近がないことを確認すると、
まずはこれ以上の逃走を阻止するため、その両脚へ。
続いて、満月が振り返ることを想定して顔面へと、クモ糸弾を連続射出する。
■十六夜棗 > ああ、来る前にやっちゃおう。
跳躍の間にも、溜め込んだ詠唱が進む。
「壊れ、こそげ落ちろ。奈落の彼方へ!」
両足に、クモ糸弾。だが、振り向かない。足を絡め取られても、既にターゲットは決まっているのだから。
「堕ちろぉっ!ネガティブ・アクトレイラァッ!」
詠唱完了と共に、クモ糸弾が顔を捉える。
そして、制御を失った魔術が、自分を中心として周辺の電圧を落とし流していく。その範囲は高速で広がり――生体電流も、機械電流も、バッテリに蓄積された電気も、地下へ、落ちていく。電位差による地中への電流の強制落下。生体であれば一時的な脱力状態で済むが、機械や電気に頼るものはそうは行かない。
■アトラ9 > 「ナ……ッ」
読みが外れた。拘束にこそ成功したものの、詠唱を封じることには失敗。
次第に呪文の効果が表れ、建造物の照明や街灯も消えてゆくのが視認できる。
そして――アトラ9の機体に内蔵されたバッテリーもまた、停止。
言葉を発する間もなく、黒髪のガイノイドはあっさりと、地に倒れ伏した。
■十六夜棗 > 頭部に受けた衝撃で、朦朧。
足も絡め取られて、更に、大魔術。動く事は難しい。
それに、自分自身の脱力状態も、避け得ない。
暫くの間、膝から崩れ落ち、魔術の効果から立ち直るまで、身動きも取れない状況。
誰かが来るか、それとも、棗が復帰し、クモ糸を解くか、アトラ9が復帰するか、誰かが外に出てくるか…どれが先かで運命は変わりそうだ。
■アトラ9 > 「…………」
――しばしの静寂。倒れたアトラ9は未だ沈黙を保ち、その機体はぴくりとも動かない。
停止したバッテリーが復旧するのは、早くても魔術の効果が切れる頃だろうか。
■十六夜棗 > 中央から、徐々に魔術の効果は切れ始める。建造物内は、人がいれば、まずは脱力状態から脱した後内部の電気系統等の復旧が先だろう。
そうなると、何者かがこの騒ぎに駆けつけなければ…中央である分だけ、棗の方が若干早い。足に絡みついたクモ糸を外すのは困難だし、顔も片側半分は見えない。足だけでも外せれば…いや、倒れているなら、張って進むほうが早い。…動かない間に、手を施さなければ――徐々に、進む。魔術切れからのバッテリー復旧、及び起動までの速度と、這いながら、動かない相手にまだ魔術を意識内で構築して叩き込もうとする棗、どちらが早いか。
■アトラ9 > やがて魔術の効果が切れ始めれば、バッテリーが復旧しはじめたアトラ9の視界は、また徐々に開けてゆく。
眼前には、徐々に這い寄りながら魔術を叩きこまんとする満月の姿。
「マッタク……大シタ執念ダ……。貴女ノ本性ハ、コノ私ノ身ヲ以テヨク理解デキマシタヨ」
本調子でないアトラ9には、普段のように軽口を叩く余裕はない。
クモ糸弾を複数その身に受けてもなお這い寄ってくる少女。勝ち目がないのは明白だ。
ゆっくりと体を起こし、立ち上がって背後へ跳躍。またしても先程の魔術を叩き込まれる前に、この場から逃れんとする。
やがて、浴衣を纏ったガイノイドの姿は研究区の夜闇へと消えゆくだろう――
ご案内:「研究区路地」からアトラ9さんが去りました。
■十六夜棗 > 逃げられた。逃げられた逃げられた…
アハハ、ハハハハッ!流石にそろそろ動くのも辛い。体力も厳しい以上、隠れて、足だけでもクモ糸を剥がす事に専念する。
この後、どうしよう、逃げられた以上、破滅が近い。その前に…公安を相手にする?他のアンドロイドを掌握して備える?
どっちにせよ、もう静かな孤独とは別の生活になる。
■十六夜棗 > むしろ、人を抑える?
あ、でも私にはたどり着くのはどうなるだろう?
この変装さえやめれば…?どうなる?
クモ糸を剥がしながら、それでも…ああ、静かな孤独とはやっぱり無縁になりそうだ。
「…手に入れよう。動かなきゃ手に入らないんだから。」
言葉にして、決意を強く持つ。今夜は一度、剥がしきって、クモ糸を回収、処理してから、逃げよう。魔術の痕跡は、電流となって自分の魔力は残っていない筈、だからそこだけは大丈夫。物理的な痕跡の処理の時間はない。
誰かが来る前に…路地から歓楽街方面へ、抜ける。その後は、思考がちょっとバラバラだし後で考えよう。処理はさっき考えたのでいいはずだから…。そして、歓楽街方面の夜闇へ、自分に打ち込まれたクモ糸弾と共に、消える。
ご案内:「研究区路地」から十六夜棗さんが去りました。