2016/05/01 のログ
ご案内:「研究区中央公園」に久藤 嵯督さんが現れました。
久藤 嵯督 > 夕焼けに臨むジャングルジムの上に、風紀委員の制服を着た男が座っている。
眉間にしわを寄せて生きているような男が、今は割かし穏やかな顔をしている。

最近はどうにも、非番な時間が多い。
元々他の風紀委員とのソリが合わずに単独任務以外の仕事がもらえなかったのが、
治安が比較的落ち着いてきたことによって、お役御免と化している。
新入生の実践教育でもやればこうもならないのだが、きっとこの男のやり方は参考にならない。
誰もがそう思っていたし、嵯督自身もそう思っていた。

「………はぁ」

特に、親しい相手がいるわけでもない。
仲間は多くいるが、いずれも友達以下で、仕事上の付き合いだと思っている。
何もすることが無いと、自然とここへ足を運ぶのだ。

久藤 嵯督 > 『もっと青春しろよ』―――と、財団の方の上司から言われたこと。
青春の定義を聞きただせば、やれ部活だのやれ恋愛だのやれ学校行事だの……
……しかし彼女は、嵯督に風紀委員をやれと命令した。

学生気分で常世島の治安を担えるとは到底思えない。が、それを実践してみせた人間は何人か知っている。
少しは考えてみてもいい……と、思わなくもなかった。

(……しかしな、何から手を付けろって言うんだ。
 共有出来る趣味など何一つ持ち合わせちゃいないってのに)

―――ミッション・インポッシブル。この上なき困難。
嵯督の青春は今、思い出の場所で黄昏ることにのみ浪費されていた。

久藤 嵯督 > ふと、片手を両目に添えた。瞳の黒が晴れ、虹色の光があふれ出す。
しかし、『門』の予兆を感じ取ることはない。頭痛も、目の痒みも、何もない。
門の外からの侵略者による攻撃も、今では鳴りを潜めている。

「……役立たずめ」

反応があることを淡く期待していた嵯督は、二度目のため息と共に落胆した。
ジャングルジムの鉄骨に背中と後頭部を預け、だらしなく寄りかかる。
緋色一色だった空が、半分青く染まっているのが見えた。

久藤 嵯督 > この分だと、今日一日はお呼びがかかることはないだろう。
「ホテルで予習でもしてくるか」とジャングルジムから飛び降りて、ポケットに手を突っ込み歩き出す。
沈みかけの夕陽を浴びて、肌寒い風に白金の髪を揺らされながら。

ご案内:「研究区中央公園」から久藤 嵯督さんが去りました。