2016/12/24 のログ
ご案内:「常世第一総合研究所」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 先日の、転移荒野の一件の後。
教務課に「力」の件で相談した蘭は、異能・魔術・異邦のことを総合的・学際的に研究しているこの研究所を紹介された。
紹介された研究者に力の件を相談し、ネットワークを介して聞き取りを行われ、必要な実験・検査についてまとめてもらい…
それらを、クリスマスを含む週末に、泊まりがけで一気に行ってしまうことになったのである。
「…話に聞いてただけあって、大きなとこね…」
実験・検査のためにやって来た蘭は研究所の入り口前で、その先進的で巨大な建物を見上げていた。
■美澄 蘭 > この研究所を紹介されたのは、蘭が
「異能だけでなく、異邦のことや魔術のこともある程度紐づけて検査結果が考察出来る」
「インフォームド・コンセントがしっかりしている」
という希望を出したためである。
建物の中に入れば、エントランスはいかにも清潔で、後ろ暗いところなどまるでなさそうだった。
「すみません、この週末泊まりがけで検査予定の美澄ですけど…」
受付にそう声をかける。
『かしこまりました、こちらでお待ち下さい』
受付係にそう言われ、エントランスの椅子に腰掛ける。
暇つぶしのために持ってきた本を鞄から取り出して、ぱらぱらとめくった。
既に何度か読んだ小説の、好きな部分を抜き出して流し読みしているのだ。待ち合い段階で、読書に深入りは出来ない。
■美澄 蘭 > 結局、さほど待たされなかった。
五分経つか経たないかの頃合いで、白衣姿の男性が姿を見せる。
蘭は、わたわたと立ち上がった。
『美澄さん、よくいらっしゃいましたね』
名札には、蘭がメールなどでやりとりをしたのと同じ名字が記されていた。
「…こちらこそ、お手数をおかけしています」
深めに頭を下げる蘭。男性は穏やかに笑った。
『いえ、《大変容》以後に現れたものとの融和を目指すのが私達の…ひいては常世財団全体の理念ですし、そういったことで悩んでいらっしゃる生徒さんがいらっしゃるなら、それに応えるのは私達の義務ですよ。
今回は総合的な検査・実験になりますので長丁場になりますが、頑張って下さいね』
「ありがとうございます…こちらこそ、よろしくお願いします」
蘭は再度、今度は浅めに頭を下げた。
■美澄 蘭 > 『それでは、まずは今回の検査のスケジュール説明を改めてさせて頂いた後、問診票を記入して頂きますので、こちらへどうぞ』
白衣の男性が、通路の奥の方を手で示す。蘭は、
「あ、はい」
と言って、その後ろをついていく。
■美澄 蘭 > (…にしても、酷いクリスマスだわ)
男性の後ろをついて研究所の中を歩きながら、蘭はそんなことを考えていた。
恋人と過ごす…なんて話は、夢のような憧れに過ぎないから、それはいい。
でも、家族や友達と過ごすでもなく、去年のようにクリスマスにまつわるイベントに携わるでもない。
誰かと何かを分かち合いもせず、無機質な建物の中で己を腑分けするだけのクリスマス。
本音を言えば、とても寂しかった。
■美澄 蘭 > でも、向き合わないわけにはいかない。
相手が「ヒト」ではないのはもちろん、学園に所属する存在でもなかったのが不幸中の幸いだが、既に「こと」は起こってしまったのだ。
自分の「力」を、その手綱を握る「心」を、直視しなければいけない。
蘭は、そう覚悟を決めていた。
蘭は、男性に続いて、病院の診察室のような部屋の1つに入っていった。
ご案内:「常世第一総合研究所」から美澄 蘭さんが去りました。