2017/03/31 のログ
ご案内:「常世第一総合研究所」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 『美澄さん、最近は制御能力の向上が著しいですね』

「ああ、そうなんですか?割と最近調子がいい気はしていたんですけど…
結果がちゃんと出てるみたいで良かったです」

もはや習慣と化している、異能の制御訓練。
研究員の男性にデータの報告を受け、蘭は安堵の笑みを口元に浮かべた。
…が、

『ええ、そうですね…安定した向上が見られるのは、この3月の後半からでしょうか。
2月の後半から1ヶ月くらいはちょっと不安定でしたね』

…と具体的に説明を受けて、何故か口元を押さえて俯いてしまった。

『…美澄さん、どうかしました?』
「い…いえ、何でも!
…それで、今後はどうしましょうか?」

研究員に見咎められて、あわあわと動揺しながら誤魔化そうとする蘭。

美澄 蘭 > 研究員は、そんな蘭の様子に少しだけ笑みを零すが、深くは追求しなかった。

『…そうですね。来年度は学園の方でも異能制御や異能学を学ばれるつもりだと仰ってましたし、こちらでの制御訓練は確認程度で良いと思っています。
美澄さんも、進路を検討される大事な時期でしょうからね』

「…そう言ってもらえると、有難いです。
出来れば、本土の大学に進学したいと思っているので…来年度からは、受験対策の演習授業を増やさないとと思っていましたから」

研究員の真摯な対応に先ほどまでの動揺を抑え、真面目な顔で頷く蘭。

美澄 蘭 > 『なるほど、本土の大学ですか…
となると、来年以降は魔術のお勉強はなさらないのですか?』

そう尋ねる研究員は、平静を保ってはいるが少し残念そうに見えた。
異邦人の血筋に由来する特殊体質の事例がその特性から遠ざかるのだから、彼の興味の方向を考えれば仕方ないのかも知れないが。

「…難しいですね…時間割を組んでみないことには、どうにも。
魔術も異能も行使する者ですから、卒業試験の際には制御出来ることを披露しなければいけないでしょうし…完全に切るつもりはないんですけど」

完全に切るつもりはないと言いながらも蘭が逆説で言葉を区切ったのは、「力」とどう向き合うか考えた時に、優先順位はつかざるを得ない実感があったためだ。
破壊よりは、再生を。攻撃よりは、守りを。そう考えた時、「驚異的な適性」と評価された元素魔術の優先順位は、低かった。

美澄 蘭 > 『…いえ、我々のために、わざわざ時間割などを曲げて頂くのも申し訳ないですから。
ただ、魔術の履修状況が固まったら、我々にも連絡を下さると嬉しいです。
調査の内容に、変更や調整が加わるかもしれませんので』

「…分かりました」

真面目な顔で頷く蘭。
…と、研究員が、何でもない風な表情で、

『…つかぬことをお聞きしますが…本土の大学への進学を希望されているということなんですけれど、志望する分野などはお決まりでいらっしゃるんですか?』

と質問を口にしてから、

『ああ…これは研究には直接関係はないので、お答え頂かなくても結構ですよ』

と、少し慌てたように付け足す。
蘭は、その様子に少しだけ笑みを零してから、

「ああ、そこまで厳密に決まってるわけじゃないんですけど…
ちょっと、ジャーナリズムに興味があるので、そこにつながる分野に進みたいなぁ、と思ってて」

と、少しだけはにかみ気味に微笑みながら答えた。

美澄 蘭 > 『なるほど…それでは、今はそのために何を勉強すべきか調べている段階ですか』

「はい、そんな感じです。一応そういう感じの本も借りてはみたんですけど、進路としての話はあんまりなくて…。
今度、進路指導室に資料でも見に行こうかなって思ってます」

研究員にそう答える蘭は、以前と比べると肩の力が抜けた様子で。
そんな少女の変遷に、人としての好ましい変遷を見て取った研究員は、

『そうですか…自分で調べて動けるのは良いことですね。
困った時には、身近な、信頼出来る大人にも相談するんですよ』

と言って、柔らかく笑った。

美澄 蘭 > 「ありがとうございます…来年度からも、引き続きよろしくお願いしますね」

研究所としてはやや不釣り合いなほどの、柔らかい空気に心を穏やかに満たされて。
蘭は研究所を後にした。

まっすぐ、前を見据えて。

ご案内:「常世第一総合研究所」から美澄 蘭さんが去りました。