2017/12/01 のログ
クローデット > しかし、せっかく様々な研究が公開されている時期に、後ろ向きな思考に沈む非効率を抱えながら卒業研究を進めるよりは、刺激を得たい。
そう思って、クローデットは研究発表ブースに足を運んだのだった。

「………。」

「刺激を得たい」というクローデットの意図は、今のところ順調に達成されていた。
今彼女が熱心に見入っているのは、「新しい「呪い」とそれへの対応」という、白魔術に関する発表である。

クローデット > 「世界に新たな存在が現れる」
ということは、
「人々の恐怖・不安・嫌悪の対象のリストに新たなカテゴリーが加わる」
ということでもある。
それを元に新たな呪いがどう「作られ」ているのか、そしてそれにどのように向き合っているのかという…関係者以外であれば素通りしてしまうような、地味な実務研究の発表だった。

(…ほとんど、「枯れた」分野と思っておりましたのに)

「実用」という観点からいえば、「枯れている」というのは「完成している」ということでもあるので、悪いことではない。
…しかし、研究となると話は別で、クローデットが白魔術を得意としながら卒業研究・発表にその題材を選ばなかったのも、「研究」という観点から見た白魔術の「割の合わなさ」のためというのが少なからずあった。
この学園都市に潜入するための「留学」という名目にしても、白魔術であれば、「ここ以外ではそう見られない」ようなものはほとんどないし。

そこにいるのは「魔女」というより、興味のある対象にまっすぐな視線で食いつく「探究者」であった。

クローデット > 一通り見て、満足げに振り返ったクローデット。
何気ないしぐさで見た先にいた人物を見て、驚愕に目を見開き、硬直する。

クローデットより幾分明るい銀髪は分かりやすい癖っ毛というか天然パーマで、子どもがこの髪色・髪質であれば「天使」とも形容されたかもしれない。
その身長は180cmほどで、れっきとした成人男性…歳は、40代から50代だろうか。
歳の割に締まって見える体躯は、世界中を調査のために飛び回るアクティブさと、いざという時のために嗜んでいる体術のおかげだろう。
研究発表ブースで遭遇した知人と、朗らかに語らう青い目は、いかにも人が良さそうだ。

クローデット > 「………。」

クローデットは、しばし視線を宙にさまよわせた後…深呼吸をして、「いつもの」微笑を顔に貼り付けた。
歓談する2人に近づき…

「…ご歓談中のところ、失礼致します」

と、柔らかい声音を心がけて声をかけ、頭を下げる。
銀髪の男性は、その声にまずびくりと肩を震わせ、それからクローデットの姿を認めると、目を丸くした。

『クローデット…』

ぽつりと呟く男性の方を…その微笑を貼り付けたまま、改めて見る。

「ええ…お久しぶりです、お父様」

再度、頭を下げる。その声は、わずかに震えているようにも聞こえた。

ご案内:「常世祭・魔術学部研究発表ブース」からクローデットさんが去りました。