2015/06/04 のログ
ご案内:「第一演習場」に矛海 遼さんが現れました。
■矛海 遼 > 風を斬る音が響き、子気味良い音を立てて氷の槍が的を貫いて行く
「鈍っている………修正が必要だな」
軽く右手首にスナップを利かせると端まで歩いて行き、壁に寄りかかりながら、スーツの懐から取り出したペットボトルのキャップを開けて口を付け、透き通った水を喉に通す
■矛海 遼 > 的に刺さった氷の槍は気化し、残ったのは風穴が開いた的だけだ
「………この時間は静かだな」
おもむろに懐からちくわを一本取り出し、口にくわえて上を仰ぐ
■矛海 遼 > 一件、無表情の張り付いたようなスーツの青年が喫煙しているように見えなくもない、が。実情はちくわである。
ちくわなのである。
■矛海 遼 > 「………………すこぶる暇だ」
一つちくわを飲み込むと、新たにちくわを取り出し―――――小さい穴を側面に数個開けて先端を咥え――――
ちくわを笛にして、訓練場に音色を響き渡らせていく
ご案内:「第一演習場」にクオンさんが現れました。
■クオン > その音色を破るようにして、大きな音が響き渡る。それは、巨大な翼竜によるはばたきだった。
空を悠然と舞いながら演習場に人が居ることを見て取ると、彼はゆっくりとグラウンドに降り立った
■矛海 遼 > 「――――――あっ」
風の勢いでちくわが手元から飛んで行き、彼方へと飛んで行く
■クオン > 大きく息を吐いたか、その際に喉元から漏れた火炎がちくわをつつむ。
「あっ」
――気まずかった。
■矛海 遼 > 沈む、ただひたすら空気は沈んでいく。
「……………」
新たに、懐からちくわを取り出し、自身の数十倍はある赤き竜に向けて足を進め、手を差し出す
「―――お一つ、如何かな?」
■クオン > 「……いただこうかな」
体を丸め首を伸ばす。自分のつめ先ほどもない小さなちくわを咥えると、身体を戻し咀嚼した。
「ちくわの良し悪しはわからぬが、ふむ、なかなかの味わい」
飲み込むと、小さく笑みを浮かべて
「失礼。気をつけたのだが、少々着地が乱暴すぎたようだ」
などと、翼を畳みながら謝罪した
■矛海 遼 > 「気にはしていない。まだまだちくわは残っている物で、な」
咀嚼し、翼を畳む赤き竜から少し距離を置き、隣に並ぶように座って新たにちくわ………では無くスイカバーを取り出す
「食べ物を粗末に扱うのは気が退けるが、元々買いすぎていた物故に、な」
■クオン > 「生憎と、こちらから差し出せるものはなくてね」
遠慮しがちにゆっくりと身体を落ち着けると、もう一度小さく息を吐いた。
「君は休憩中かね?」
訓練用の標的の方を一度見やってからそちらへと視線を移し
■矛海 遼 > 「生徒が来れば仕事にはなる。そうで無ければ自由時間だ」
片手で眼鏡を整えつつ、しゃくしゃくと音を立ててスイカバーを食べ進めてゆく
「――――サボりという物とも言えるかな?」
■クオン > 「なるほど」
相手の言葉を聞いた後、ふむ、と思案げに瞼を伏せて
「それならば、私も似たようなものだ。このナリでは教室にはいることもできぬからな。生徒が来るまでは寝て過ごしているようなものだ」
つまり、似たもの同士かな。と笑いを上げる。喉奥では赤い燐光がちらちらと舞っていた
■矛海 遼 > 「サボりに自主休学はこちらでは珍しく無い物で」
似た物同士と言う弁には違いないと返し、吹きすさぶ風に黒い髪を靡かせる
「こんなにも心地の良い陽に風があるならば、眠ってしまっても良かろうよ。ましてやこの数の住人密度だ。木の葉の隠しようもあるだろうよ」
■クオン > 「詩的だな。ロマンがある」
矛海の言葉。自堕落めいた言葉にも感じたが、それ以上に快い風だった。
吹き付ける風に合わせるように、空へと吼えた。
それは古い竜の言葉でもあり、歌であるとも言える声であった。
■矛海 遼 > 「―――――本当に、良い風だ」
放たれた咆哮に耳を傾け、蒼く広がる空へ視線を落とす
■クオン > 「少し興が乗ってしまった」
わずかに空へと火を漏らすと、
「さて、私もそろそろ生徒に講義を行なう時間だ。先に失礼させてもらうよ」
と、改めて翼を広げた。
■矛海 遼 > 「あぁ、それではまた」
空を覆うかのような赤い翼を見上げ、言葉を溢す
「次は酒でも用意しておくよ」
■クオン > 「酒か。まだこちらの酒を飲んだことはないな」
楽しみにしていよう。そう言って笑うと、今度はあたりを吹き飛ばさぬよう慎重に飛び立っていった。
ご案内:「第一演習場」からクオンさんが去りました。
■矛海 遼 > 「……暇と言えるほど、退屈しなくてよかったよ」
飛び去る竜を見送ると穴の開いた的を片付け、残ったアイスの棒を咥えながらその場を後にする
ご案内:「第一演習場」から矛海 遼さんが去りました。
ご案内:「第一演習場」に湖城惣一さんが現れました。
■湖城惣一 > ――演習場に涼やかな音が響き渡る。
その場には一人の男。片手には鞘を提げ、片手で用意された標的を切り捨てたところであった。
奇妙な男だ。和装を基調とした服に違いはあるまいが、腹部がさらけ出され、そこには真一文字の傷が刻まれている。
■湖城惣一 > ともすれば不審者だ。しかし、和装の男が刀を手に提げ演習場に佇む光景は最早非日常に違いない。
鞘を投げ捨てると両の手で刀を握る。静かな所作で、次々と標的を切り落としていく。
■湖城惣一 > 一つ、二つ、三つ。男の身体がその結果を見るまでもないとばかりに瞼を下ろし、ゆっくりと鞘を拾った。続いて快音を立てて標的が落ちる。
それを背に、美しい所作で鞘に刀を収めると――
『グゥウウウ……』
腹の虫が鳴いた。
■湖城惣一 > 「…………」
近頃、風紀も公安も騒がしい。お陰で"仕事"を回される頻度も多くなってきた。別段それを気にかける彼ではなかったが、いかんせん、腹の虫と遠のく意識だけはどうしようもない。
「……持ち合わせの食料は……」
無かった。おにぎり四個、干し肉十切れ。いずれも完食済み。はっきりいって血が足りない。
■湖城惣一 > 「…………献血ばかりは、やりすぎたか」
無表情を崩さぬ男が、珍しく眉をひそめた。
全国の子供達に愛の手を! などといった文句で迫ってきた看護婦に罪はない。かような不審者に声をかける勇気を、むしろ賞賛したいほどだ。
その後の日課。間違いなくそのせいだ。男が本気を出すためには、日常的に血を抜く必要がある。だが、その、なんだ。ちょっと抜きすぎた。
■湖城惣一 > 「…………」
鍛錬は欠かせぬ。血を抜くのも欠かせぬ。食事も、欠かせぬ。だがその重要なファクターが、今はひとつ足りなかった。ひとつだけ、足りなかった。
自覚するほどに腹は鳴る。夕方の漫画。あれを買ったのが痛かった。面白かったが買う必要はなかった。自業自得、ここに極まれり。
■湖城惣一 > 「…………」
仕方なし。ひとまず献血で貰った『一発元気ベジタボウ』を飲むことにする。市場価格120円。値段の割にこぶりな紙パック。
「ズズズ」
啜るもしかし、所詮は果糖。頭の回りはよくなるかもしれないが、決して血にはならない。血には、ならない。
■湖城惣一 > 「何が一発元気なのだろうか」
終いにはネーミングに突っ込み始めたがやむを得ない。急激な空腹、急激な貧血。いや、実際は急激でもなんでもなく、血を抜いたときからそうだったのだが、その症状を自覚したのは今しがたであった。
なので、恨み言を呟くのはやむをえまい。
■湖城惣一 > 「…………」
次第に口数が少なくなっていく。いや、元から少なかった。
思えばこちらに来てから食事の危機ばかりではないか?
実家に居た頃が懐かしい。そんな年頃の男子と同じようなことをぼんやりと考えていた。
■湖城惣一 > 今日はここで寝てしまおうか。動くことすら気だるくなり、演習場の端で背中を預ける。住所不定ここに極まれり。ここで寝たら死ぬような気がするが、倦怠感がそれを凌駕していた。
"仕事"に招集されるならば話は別だが、気合を込めて動くのも面倒だった。要するにただのアホである。
■湖城惣一 > 「……しかし」
最近は真にキナ臭い。壁に背中を預けながら深くそう思う。
変革剤、といっただろうか。異能を増幅するという薬物の類。詳しい話は知らないが、どうやらそれが関わっているらしい。
異能。薬物。増幅。果たして、それを手に入れて使わない自信はあるだろうか?
「…………馬鹿馬鹿しいな」
神域に至るという目的のためにすべてを捨てた男だ。仮にそれが真実だとすれば、使ってしまうかもしれない。
だが、それだけだ。男の信条は変わらないし、仕事も変わりはしない。
■湖城惣一 > 「…………」
欠伸を噛み殺す。いつでも刀を抜けるように片側に置くと、そのままずるずると座り込む。
腹の虫は収まらない。空腹も貧血もどうしようもないというのなら、休むほかないだろう。
■湖城惣一 > 「…………武士は食わねど高楊枝か」
昔の武士はエラいことをしたものだ。自分には真似できそうもない、などと益体もないことを考える。