2015/06/25 のログ
ご案内:「第一演習場」に日恵野ビアトリクスさんが現れました。
日恵野ビアトリクス > (演習場に足を踏み入れたのは
 一冊のスケッチブックを抱えたビアトリクス)

「……さて、今回こそうまく行けばいいけどな。
 発動まで行っても触媒が全部燃え尽きてるようじゃ
 実用性はゼロだ……」

日恵野ビアトリクス > (演習場に自分のイメージを伝えると、
 彼の前方数十メートルの地点に
 巨大な鉄柱が迫り上がる。
 標的としてはこれで十分だろう)

「さて…………」

(スケッチブックの表紙に手をかける。
 すると、風もないのに頁がペラペラとめくれ、
 ひとりでに舞い上がっていく……)

日恵野ビアトリクス > (頁はそれぞれが別の単色で塗られている)

(イエロー、アップルグリーン、クロムグリーン、
 セルリアンブルー、ブルー、パンジー、フランボワーズ――)

(舞い上がった頁はビアトリクスの頭上の宙に平行に、
 円状に配置されていく)

日恵野ビアトリクス > (マゼンタ、カーマインレッド、バーミリオン――)

(イエローを頂点として、
 円に沿って色相のグラデーションを構築しながら
 配置が進んでいく……)

(いつしか、一冊のスケッチブックには
 到底収まりきらないような量の頁が
 舞い上がっている。
 頁自体を魔術によって召喚しつづけているのだろう)

日恵野ビアトリクス > (――やがて、
 ビアトリクスの頭上に直径10メートルほどの
 水彩紙を繋ぎ合わせた色相の環が完成する)

(ビアトリクスが水彩絵の具を用い、
 数日をかけて完成させた魔術触媒だった)

(彼が集中を続けると――
 もし霊的感覚を持つものがこの光景を見ていたなら
 環の中心に魔力が収束しつつあるのを感じることができるだろう)

(色彩にはそれ自体に魔力が宿る――
 水彩紙の環は魔力の供給源であると同時に
 さながらレンズのような役割を果たしていた)

日恵野ビアトリクス > (――『詠唱を必要とする魔術師は弱い』
 師匠でもある母親に、耳にタコが出来るほど
 言い聞かされてきたことのうちのひとつだ)

(何故か?
 理由はいくつかある。
 発声ができない状況では術を行使できない。
 発声によって自分の存在を晒す。
 切迫した状況では詠唱に用いる体力すら惜しい。
 ……など。)

(……故に、詠唱を用いない
 魔術師になれ、と)

(この論には賛否はあるが、ビアトリクスは概ね正しいものとして
 受け入れている)

日恵野ビアトリクス > (しかしあえてここは口にする)

「――《色葬環(フューネラル・サークル)》!」

(そう小さく叫んだ瞬間、
 サークルの中心で臨界点に達していた魔力が解放される)

(閃光)

(純粋な殺傷エネルギーの槍と化して
 光の速さで眼前の鉄柱を撃ちぬいた)

日恵野ビアトリクス > (それぞれの色にはそれぞれが象徴する魔力が宿る)

(つまりすべての色を集めたなら
 理論上はあらゆることが可能となる
 破壊はその権能のうちのひとつにすぎない)

(果たして鉄柱はえぐり取られ、
 へし折れて轟音を立てて倒れる)

日恵野ビアトリクス > (集中を解く)

(制御を失った、サークルを形成する水彩紙が
 バサバサと落ちてくる)

(そのうちの三割ほどが負荷に耐え切れず、
 焼け焦げてしまっている。
 もう一度同じことをやるには補充しなければならない)

「……少しは上達してるな」

日恵野ビアトリクス > (今回標的にしたのは鉄柱程度だが――
 この魔術は準備に時間をかければかけるほど
 性能が向上する。)

(サークルを形成する色の数を増やし、密度を上げれば――
 理論上、この世界に存在するあらゆる物質を破壊することができる。
 もちろんサークルの密度が上がるほど、
 形成には時間がかかるのだが)

日恵野ビアトリクス > (しかし……)

「戦闘じゃ使えないな」

(難が多すぎる)

(サークルの形成中は無防備だ。
 白兵戦に持ち込まれれば終わる)

(“刀を帯びた通り魔”みたいな相手に襲われれば
 てんで無力なのだ)

(ついでに言うと、
 サークルを用意するためにはある程度の空間も必要だから
 狭い場所では使えない)

日恵野ビアトリクス > 「……ま、実技試験で見せる分には十分だろ」

(喧嘩に活かしたくて魔術を学んでいるのではない)

(破壊の魔術を編み出したのは
 壊すことは一番簡単だからだ)

(実用に至らない戦闘用魔術……
 手の内に持つにはむしろ気楽な代物だ。
 自分には実にちょうどいい)

日恵野ビアトリクス > (疲労の濃い表情で落ちた水彩紙を拾い集める。
 鍛錬が進んでいれば触媒がこんなに焼けてダメになることもないし
 跳ね返る疲労も少なくて済むのだが)

「……今日はここまで。
 また余裕のあるときに修練しよう」

(すべてをスケッチブックに挟み終わると、
 演習場を後にする)

「……必殺技を叫ぶのは
 実戦ではやめよう」

(恥ずかしいし)

ご案内:「第一演習場」から日恵野ビアトリクスさんが去りました。