2015/07/09 のログ
ご案内:「第一演習場」に頸城 陸さんが現れました。
■頸城 陸 > 平な床に設定された演習場の隅に、一人。己の手には、そこそこに中身の入った鞄が一つ。
「……よし、じゃあ……始めようかな」
言い終えた後、自らの異能を発動させる。
己の体から黒い霧が吹き出すと、即座に鎧の形を取り硬質化。
漆黒の装甲を身に纏うと、鞄をひっくり返し、中身を乱雑にぶちまける。
鞄の中に入っていたのは大量のドミノ牌、それらは床とぶつかり合い、甲高い音を奏でて跳ねまわる。
「……そーっと、そーっと」
ゆっくりと、装甲に包まれた指で散らばったドミノ牌のうち一つつまみ上げ、床へと立てる。
物を摘んで置く位は特に問題ない。今のところは。
■頸城 陸 > 漆黒の鎧は装着者である少年の身体能力を向上させると同時に、性格を好戦的に変化させる。
その性質上加減が効かず、トラブルを起こすことも少ないこの力を使いこなすために何をすべきなのか。
考えた結果、やるべきだと思ったのは力の加減を出来るようにすること、そして異能の使用中であっても、冷静でいられるようにすること。
……その二つの条件を満たす特訓として少年が選んだのはドミノ倒しだった。
どこかずれている気もするが、本人的には大真面目である。
しかし、漆黒の鎧が黙々とドミノを並べる様は、傍から見ればどこか滑稽な光景だった。
「……よい、しょ」
ドミノ牌を摘み上げ、ひとつ置く。
これ、意外と良い訓練になるんじゃないだろうか、などと考えながら。
■頸城 陸 > 慎重に、冷静にまた一つドミノ牌をつまみ上げる。
身体能力が向上している今、力を入れ過ぎるとプラスチック製のドミノ牌など容易く握り潰してしまうだろう。
だから潰さないように、ゆっくりと。
うん、これ意外と簡単じゃないだろうか。
目的を持っているからだろうか、外部刺激が無いからだろうか、気分も普段とあまり変わらない。
ドミノ牌を置き、もう一つ摘む。順調順調。簡単じゃないか。
顔を覆う兜のなかで、少年は軽く笑った。
■頸城 陸 > ……開始から数十分後、先ほどまで存在していた余裕は消え去っていた。
「……やばい、これ辛い」
三分の一程数を減らした牌を震え気味の指で摘みあげる。
思ったよりも神経と体力を削られている気がする。
恐るべしドミノ倒し。そりゃあ競技にもなるわけだ。
■頸城 陸 > (もうこんなことやめて全部破壊したい、そして適当に誰か殴ってから家に帰って寝たい)
疲労のせいか、そんな考えがふと頭をよぎり摘んでいた牌を指でへし折る。
破片が床へと落ち、甲高い音を立てた。その衝撃で、並べていたドミノ牌がパタパタと倒れていく。
無駄に帰す、努力。
「グッ……ウォォ……!」
思わず頭を抱えてしまう。
一体誰がこんな酷いことを。自分自身だ。
なら、この怒りを、一体どこにぶつければいいんだ……。
地面か、地面だな。
「クソックソッ!」
怒りに身を任せ、地団駄を踏む。何度も何度も。
■頸城 陸 > 「やってらんないないよっ!」
怒りを込めて、力いっぱい地面を踏み抜く。
その後、両肩で大きく息をし、呼吸を整える。
……ちょっとすっきりした。一旦休憩しよう。大きく深呼吸して、異能の装甲を解除。
体を覆っていた装甲が黒い霧へと姿を変え、周囲の空気へと溶けこんで消えていく。
「だー、疲れたー……」
ぱたり、演習場の床へと倒れこむ。
結局暴れてしまった。
「……まぁ、初めてだし、失敗も仕方ないってことで」
呟いて、小さく苦笑。
今後はなんとかしよう。
■頸城 陸 > 「……うん、今日はもう帰ろう」
立ち上がり、ドミノ牌拾い上げてを鞄の中に詰め込む。
すべての牌をつめ終えると、ふらふらとした足取りで少年は演習場を後にした。
ご案内:「第一演習場」から頸城 陸さんが去りました。