2015/08/27 のログ
ご案内:「第一演習場」にライガさんが現れました。
■ライガ > 仮想フィールドを『荒野』に設定した、演習場の隅に胡坐をかき、右ひじを立てて顎を乗せ、顔をしかめている。
目の前には何もないように見える──いや、距離にして5m、高さにして20mほど離れた空間に、直径50cmほどの岩が浮かんでいた。
左手をまっすぐ前方にかざし、人差し指と中指を少しずつ動かしている。
「あと……32枚」
■ライガ > 岩の下の、何もないような空間は、よく見ると周囲の景色がゆがんで見える。
どうやらそこに、岩を浮かせている仕掛けがあるようだ。
「《風衝》で、見えないカベとフロアをつくってみたけど、これ……バランスと強度悪すぎるな。
フロア6枚とそれぞれにカベ5枚ずつ、あと補強のカベいくつか入れてやっと、2階建てくらいの見えない建物ができるくらいかな?
……滅茶苦茶辛いけど」
額から汗がしたたり落ち、シャツはぐっしょり濡れている、顔は真っ青だ。
魔力が底をつきかけている、これ以上は危ないだろう。
「……でもなんか、眼は冴えてるんだよな」
袖で汗をぬぐうと、眼鏡を外し、虚空を見つめる。
普通の人間にとっては、岩が浮いていてわずかに景色がゆがんでいる以外、特に変わったことはない。
だが今のライガの視界は──薄暗い空に、暗雲が渦巻いていた。
「ったく、見えにくくて困るったらありゃしない」
■ライガ > と、ずる、ずるると、空中の岩が右に滑っていく。
2mほどすすんだところで、何かにぶつかり跳ねかえった。
「うぉぉ、あっぶない、重みでフロアが凹んできた」
みし、と腕を軋ませながら、風の魔力を送り続け、フロアのゆがみを直す。
そのままフロアを向こう側に延長し、同時に少しずつ、角度をつけて下げていく。
やがてゆるやかな斜面を作り上げると、岩の周辺をすこしずつ隆起させながら移動先を誘導していき、最後に一押し。
空中を、そこに坂があるかのように、岩が転がり落ちていき、盛大な音を立てて地面に激突する。
■ライガ > パキィン、と音を立てて、魔力が霧散する。
見えない建物は消え、景色のゆがみは何事もなかったようになくなっていて、
残るのは岩と、両手をついて荒い息をつくライガだけ。
しばらくたって、岩も消える。仮想フィールドの付属品だったようだ。
「うっぷ、吐き気が……」
匍匐前進のようにずるずると、入り口まで這っていく。
やっとのことで壁に寄り掛かると、よろよろと医務室に向かう。
■ライガ > 口をゆすいだ後、椅子にぐったりともたれかかる。
「魔力容量、減ってるのか戻ってるのかわからないな、これじゃ」
眼鏡を掛けなおすと、自嘲まじりにため息をつく。
いや、入学当初に比べて魔力の出力は上がっている。が、総量そのものは全盛期に近づいた気はしない。
「いや、違うな」
近づいたっていうよりも。
こう、魔力を高めるそばから、どこかへ洩れていくような……
■ライガ > 不意にぞくりと寒気を感じ、頭を振って思考の彼方へ追いやる。
今の考えはどこから出てきたのだろうか。なんだか嫌な予感がする。
「たぶん、疲れてるんだろ」
自分に言い聞かせるようにつぶやく。
しばらく休んだら、訓練の続きを始めるつもりだ。
今日の目標は“魔術による見えないカベの応用、その耐久力調査、範囲拡大限界の調査”。
まだやることの半分も終わっていない。
ご案内:「第一演習場」からライガさんが去りました。