2015/11/28 のログ
ご案内:「訓練施設」に霜月 零さんが現れました。
■霜月 零 > くぁ、と欠伸をしながら訓練施設に顔を出す。
今日は少し思いついたことがあったので、それを試してみる事にしたのだ。
「さて、と」
太刀を抜き、右上段に構える。それだけで気分が一気に入れ替わる。
そして、その構えた状態から、ふっ、と一息。真っ直ぐに振り下ろす。
「……ま、こっからが難しそうなんだよな」
それ自体は目新しい事もない、単なる上段からの斬り落としだ。
今回はこの動作を軸に、変化をつけていくのである。
■霜月 零 > 自分の頭の中で、今の斬り下ろしを分解する。
今のは力で振り下ろすというよりは、重力を活かして地面に落とす、と言う力の運用が近い。
上段に構えた腕を、重力に逆らわず下に落とす。位置エネルギーをそのまま斬撃の威力に乗せるタイプの斬り方だ。
そう、位置エネルギーである。
そもそも力で移動するのではなく、寧ろ力を抜いて体が落下するエネルギーを利用する技法は、古流武術においてはそこまで希少なものではない。
例えば、示現流の打ちはこれに力を加え、地軸の底までを打ち抜くイメージで放たれるし、『膝落』と呼ばれる古流技法は、膝を抜いて体を落とし、足に溜めこまれた力を移動に使用する技術である。
そして、零が練習しようとしているのはまさに、この『膝落』の応用であった。
「一歩を重ねて詰めるんじゃなく、一歩を広くして詰める……こっちの方が、奇襲力は高けぇよな」
■霜月 零 > 零は今まで、間合いは『ゆっくりと詰めていく』か、『細かい足捌きを連続する』ことで詰めていた。
これは剣術的には基本的な詰め方ではあるのだが……ここは異能学園。
遠い間合いから、悠長に詰めていては、間合いの外から一方的に攻撃されてしまうシーンは多々あった。
それに対する対策技法として考えているのが、この『膝落』の応用である。
「落ちる力を……前にっ、と!」
膝を抜き、下に落ちるエネルギーを、体捌きで前に移し替える。
まずはこれが第一歩、これが出来てやっと、目指している段階の稽古を行う事が出来る。
が。
「う、おっ!?」
これがなかなか、難しいのだ。
■霜月 零 > なんせ、放っておけばひたすら下に落ちていくエネルギーである。それを無駄なく前に移すのには、身体操作の妙が必要となってくる。
今までそれをあまり意識していなかった零にとって、それ自体が中々に難しい事だった。
「うあっ!?」
接地に失敗し、足を滑らせた。
そのまま、バナナの皮を踏んだかの如く後ろに反り返ってしまう。
「いってぇ……」
傍から見ればかなり間抜けな絵面だが、本人はいたって真面目だ。
■霜月 零 > 「くっそ……難しいな、これ。徒手空拳格闘術ももっとやっとくべきだったか」
はぁ、と溜息をつく。
実際、どちらかと言えばこの技法は徒手空拳の格闘術に近い。
例えば、空手道の中段逆突き。
カウンターで逆突きを放つ際、膝を抜いて発生するエネルギーをそのまま拳に乗せる場合がある。これにより、大きく踏み込まずとも力のある突きが放てるのだ。
それを剣術に応用するというのも難しい話だが、それ以前に、零は剣術ばかりを重点的にやってきており、徒手空拳格闘術は基本+α程度しかやってこなかったのだ。
その弊害がここでモロに来てしまっているのである。
■霜月 零 > そもそも、上から下に打ち下ろす剣術の動きと、前に真っ直ぐ突き出す空手道の動きは体の細かい使い方が大きく異なる。
故に、そのまま応用するのも難しいのだが……
「……いや?そっちでもいいんじゃねぇか?」
そこまで考えたところで、ふと思い至る。
■霜月 零 > そう、突きだ。
それこそ空手の基準で言えば、『肘を軸にして放つ、弧を描く技』を『打ち』と言い、『肘の延長線上に直線に打ち出す技』を『突き』と呼ぶ。
『突き』の応用を『打ち』で行おうとするから、ややこしいのだ。
剣術にも勿論『突き技』は存在する……まずは、そこから入るのはどうか。
そう考え直し、今度は刀を中段に構える。
「…………」
そしてそのまま、しばらく動きを止め、脳内でイメージを構える。
両手で持つ関係上腰を切らないのが空手道の突きと異なるが、落ちる力のままに前に踏み出せば、恐らく大差なく移動できるだろう。
■霜月 零 > 「……ふっ!」
気合一声。
通常の突きと異なり、沈む込むようにしながら前方に突きを放つ。
体が随分と下に沈み込んでしまうが、踏み込む事が出来ない場合にはちょうどいい突き技になっただろう。
……が、これはまだ第一段階、である。
新しく会得しようとしている技法……『縮地』は、それの更なる応用になる。
■霜月 零 > 「問題は、こっからだな……」
今の突きは、その場で落下するエネルギーを、そのまま前に突き出す『その場の突き』である。
当然ある程度間合いは伸びるが、言っていることはどちらかと言えば寸勁……ワンインチパンチなどの技法に近い。
それを、前に更に移動させる。
沈み込む力を使って……前に、飛ぶのだ。
■霜月 零 > 「まずは、一歩」
落ちる力を前にスライドさせるだけでなく、その力を使って前に踏み込み、低空飛行を行う。
中段に構え、もう一度意識を集中する。
そして膝を抜き、前に力をスライドさせ……そのまま、抜いた右足で大きく踏み込む!