2016/01/04 のログ
ご案内:「訓練施設」にステーシーさんが現れました。
■ステーシー > 夕方の訓練施設は結構、混んでいる。
学校帰りの生徒が魔術や異能の特訓に励む、それだけのことなのだけれど。
……正月も明けて四日なのに結構人がいるってすごい。
「えっ、私? スリーピングクリスマスに寝正月だったけど?」
誰に向けての独り言だ、誰に向けての。
この施設は異能や魔術をシミュレーターの仮想敵に対して行使することを想定している。
身体強化型の異能や魔術を持つ者や、身体変化系、加速系など様々な戦闘タイプの敵と戦える。
学生証さえ出せばほんの硬貨数枚分の値段で使用できるのだからリーズナブル。
リザルトは各種データ取り揃えて紙にまとめられて出てくる。
科学と魔術は、ここまできた。それがこの世界の特徴。
■ステーシー > 目の前の火炎放出系異能の持ち主は、防御装甲系の異能を持つ相手を想定してシミュレーターに挑んでいる。
敵の見た目はワイヤーフレームで構成された人体からリアルな悪党面まで様々だ。
強化ガラス越しに異能者の特訓を見ている。
次は自分の番なのだけれど。
彼はなんだか自分とは違う気がする。
それは……彼が自分の長所を把握して、自分の長所を伸ばす訓練をしているから。
戦う上での自分の長所とはなんだろう。
素早いこと? 銘刀旋空の切れ味?
今でもよくわかっていない。
■ステーシー > 以前、話をした蓋盛先生の言葉が脳裏に浮かぶ。
まだ私は敵を斬る覚悟すら決めていない。
それでも、剣技を磨くことを忘れられない。
目の前のブザーが鳴った。
次は私の番。
敵は身体強化系の異能を持つ相手を想定している。
速度、攻撃力、防御力、どれをとっても強敵だ。
「ス、ステーシー・バントライン入りまーす」
敵の骨格ワイヤーフレームが浮かび上がる。
開始の合図と共に敵は左右に動きながらこちらに接近を試みる。
「私の長所……私の長所…」
ぶつぶつと呟きながら刀を抜く。
■ステーシー > 防御に振った切っ先が硬質の何かに触れる。
この感触も、シミュレーターで。幻影なのだけれど。
はっきりと敵が筋肉を硬質化させて腕でこちらの刀を弾いたのだと理解できる。
「きょ、今日は新技、新技を試す日……!」
攻撃を受けても僅かな衝撃と共にリザルトに『もっと回避をがんばりましょう』と出るだけだ。
でも、これがリアルであるならば。
そう考えると必死に回避する気になる。
「い、いくぞー! 流し斬り!!」
相手の腕を狙った峰打ちの斬り上げ。
敵の攻撃力を削ぐのが目的の最近ひらめいた技。
が。
目の前の幻影は腕をすぐに引っ込めて蹴足で応戦してくる。
「お、わ、ちょ!?」
ひらめき、失敗。
歴戦の剣士じゃないと相手の狙った一部位を完璧に攻撃、とはいかない。
相手の白打を受けてじりじりと下がる。
実戦だったらかなりのダメージだ。
■ステーシー > 「猫撫で斬り! ハイブリッドレインボウ! 木っ端微塵斬り!!」
思いつく限りの技を連射する。
だが目の前の幻影は時に回避し、時に防御し、時に肉体で受けながら前進してくる。
強い。
歯噛みしながら後退するも、背中が壁に当たる。
これ以上ダメージを受ければ戦闘不能と看做され、シミュレーターを止められる。
ならば、何も結果が出ないよりは。
「プラーナを……放出する!!」
全身から白い光を放つ。
全開ではないが、自分がこの世界に存在するための力を使うのだ。
……これで何も成果を得られなかったら本当に悲しい。
「トリニティバインド!!」
袈裟懸け、逆袈裟、低身横薙ぎの一閃を重ねる。
プラーナによって三角形になったその剣閃の軌跡は、刀身で押せば相手に向けて光の呪縛となって飛ぶ。
想定外の攻撃に一瞬反応が遅れた幻影の敵は、四肢を三角形の輝きに囚われる。
この瞬間を逃さないのが、この技で最も肝要なところ。
「ひっさぁぁぁぁぁぁつ!! 覇王彗星斬!!!」
プラーナを込めた真っ向からの唐竹割りで幻影を両断する。
「我が旋空に、断てぬものなし!!」
光が拡散し、そして……シミュレーターは終わった。
■ステーシー > 「どうもー、どうもー」
お世話になったスタッフに頭を下げながら機械から即時出てきた解析データに目を通す。
「うっ………」
回避、ダメ。防御、ダメ。攻撃面、効率悪いんだよ。
そんなことが機械的に書かれていた。
「はぁー………」
深く重い溜息を吐きながら長椅子に座り込む。
覇王彗星斬。確かにプラーナを使ってこの攻撃力では、剣技として失敗だ。
「……年末に見たアニメを参考にしたのに…」
ご案内:「訓練施設」にスノールさんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に東郷月新さんが現れました。
■東郷月新 > 落第街の地形を大体叩き込んだこの男、それなりに街にも出没するようになる。
特に学園、腕の立つ人物が多い場所へと現れる事が多い。
「ふむふむ……」
今日は学校の施設のひとつの屋上から、ゆったりと訓練施設を眺めている。
どうやら刀を使う剣士のようだが……
「ふむぅ……」
しゅたっと飛び降り、訓練施設へ向かう。
この男、お尋ね者という自覚がまるで無いかのようだ。
■スノール > 異形が降り立つ。
喧噪を掻き分け、ただ片手を掲げるのみで迫るものを制止し、道を往く異形。
手で触れて等居ない。
目で見てすら居ない。
その異形は、その身を咎める者達にただ立ち居振る舞いで道を譲らせる。
無理にではない。
だが、それは片鱗でも武に携わる者ならば肌で感じるもの。
剣気。
それは、他の如何なる言葉でも、著す事は叶うまい。
その覇を纏うは一つの偉容。
その威を放つは双つの紅眼。
竜頭人身。その竜人。
巨躯を顕すその竜人は、獣心を戴く少女の剣客を前にして、漸く立ち止まり……その眼を見下ろした。
■ステーシー > 喉が渇いた。ジュースでも買おう。
ポケットをまさぐった。
硬貨がない。紙幣を使うのは今後に響く。
諦めよう。そしてシャワーを借りて帰……
「!!」
剣気に反応して立ち上がった。
腰に帯びた旋空がカタカタと揺れている。
「震えるな、旋空ッ!」
結果として腰の刀に手を当てた格好で、竜人を見上げる。
あまりに大きい。
自分の背が低いことを差し引いても、目の前の竜人の威容は身が竦む思いだ。
「な、何………?」
刀の柄に手を置いたままの彼女は、迫るロストサインの剣鬼に気がつかない。
■東郷月新 > 「おやおや」
なにやら先客が居た様子。
見るからに強そうな竜。
さて、どうするのか……
「とりあえず、見物ですなぁ」
気配を消すと、ひょいっと訓練施設の機材の上に乗り、高みの見物を決め込む。
■スノール > 少女の問いに、竜人は答えない。
言葉を発さない。
ただ、紅眼を細め、唸るように吐息を漏らす。
熱の籠った、焦熱の吐息。
それが霧散した直後。
竜人は腰に手を伸ばし、剣を抜く。
右手に佩びるは蒼の大剣。
薄く稲妻を帯びた、異界由来の魔石剣。
だが、それは振るわれない。
ただ、竜人はその柄を胸先に。切っ先を天へと掲げ、少女を見る。
言の葉は不要。答えなど不要。
ならば、次に剣を持つものが必要とする応えは……如何なものか。
無言の剣気を静かに放ち、ただ、竜人は『応え』を待つ。
■ステーシー > 蒼の刃を握る彼に緊張が走る。
が、切っ先を天へと掲げる竜人。
「………!」
直感的に察する。この竜は、剣客なのだ。
自分と同じ、剣客。
「幾十許の言葉よりも、時として雄弁に語るものがある…ッ!」
ステーシーは、旋空を抜いて天へ掲げた。
「貴種龍を断つ剣の兵装として研鑽を重ね、日々を流れた……」
目の前の剣客は、求めているのだ。
それに応えてしまいたい。そう思った。
「我が名はステーシー・バントライン……この地での名を星薙四葉」
「凶星を断つ剣なりッ!!」
■東郷月新 > 「おや、応えますか」
これは愉しそうだ。
まぁ、少々見物していくとしよう。
あんな児戯のような剣技ではなく、本物が見られるのかどうか。
「もし、本物なら……」
自分が斬るに値するのなら。
それはそれは愉しくなりそうだ。
あの竜人の方でもいい。
さて、満足する事が出来るのやら
■スノール > 少女の咆哮。剣気と共に放たれた、高らかな名乗り。
竜人は言葉を知らない。文を知らない。この常世の理など何一つ知らない。
だが、それでも。
眼前据わるは同じ剣客。
武に身を賭した剣の信徒。
なら、その名乗り。
なら、その意乗り。
応えるならば示唆は一つ。
咆哮をあげ、竜は飛び退き、ただ構える。
間合い。それは立ち合い前のそれ。
構え。それは戦前のそれ。
柄を鳩尾に。切っ先を『強敵』……ステーシー・バントラインに。
剣気が膨れ上がる。
先ほどまでの抑えたそれではない。
立ち会うに相応しい『強敵』へと向けた、仕合のそれ。
仕立ての用意は整った。
さぁ、いざや、尋常に。
■ステーシー > 「場所を変える余裕なんて、ありはしないでしょうね……」
息を呑み、構える竜人を前に切っ先を下げる。
青眼の構え。
師匠に、たとえ瀕死でもその構えが取れるようになれと叩き込まれた基本中の基本。
強敵を前に自然とその構えを取った。
「いざッ! 尋常に……勝武ッ!!」
バントライン一刀流。その真髄は一対一での剣戟。
蒼黒の猫が地面を滑るように走る。
「バントライン一刀流……天笹ッ!!」
相手の持っている剣を狙って思い切り刃を叩きつけた。
まずは相手の得物の正確な重量と長さを知る。
秤は手の感触、物差しは自分の刀。
■東郷月新 > 男は特に動かない。
まぁ、どちらかが斬られても、残った方と戦えば良いのだから。
だが、不思議とあの少女が死ぬ気がしなかった
■スノール > 少女と共に竜が、吼える。
腹底から放たれる大音声。
それ自体を威として纏いつつ、少女に向い、真向真正面から飛び込んでいく。
地を抉る蹴り脚は最早、竜爪を持つ後脚となり、剣を持つ腕は刃を振るう牙となる。
合わせて放つ一撃は、小細工なしの横薙ぎ一閃。
利き手一本片手薙ぎ。
身を捻り、急制動により地を蹴爪で抉りながら、少女の身の丈ほどは優にある大剣を軽々と振り回す。
蒼い稲妻の軌跡を迸らせながら、躊躇わず魔石剣の剣先を相手の得物と合わせる。
竜とて武人。
ならば、その身の丈の持つ威の強み、生かさぬはずもない。
少女の牽制。
その一合ごと、斬り伏せるのみ。
■ステーシー > 竜の咆哮、それに続く剣閃は竜の爪牙の一撃に違いなかった。
それほどの威力。
それほどの威容。
それに牽制をぶつけようとした己を内心嘲笑う。
刀と横薙ぎ一閃がぶつかる瞬間、全てを察して刃を引く。
と、同時に姿勢を下げて猫の俊敏性で敵の一閃をかわす。
「……!!」
僅かに切っ先が触れただけ。
それだけなのに持っていた手の感覚がなくなるほどの衝撃ッ!
まともに斬り合えば命はない。
右手にプラーナを奔らせて痺れを癒す。
猫を斬れば剣客は一人前。以って斬猫(ざんみょう)の極致とする。
なれば刀を持つ猫は、どれほどの高みへ登れるか。
部屋の隅にあった機材を蹴って空中にひらりと身を翻す。
膂力で下回れども、速度で上回る。
「バントライン一刀流……雪童ッ!」
空中で体を捻りながら左肩、喉元、右肩を狙った刺突。
剣速を持って稲光を超えるならばその剣、風の如く。
■東郷月新 > 剛の剣に対して、速度を使った柔の剣。
「いかにも教科書的ですなぁ」
だが、鋭い一撃には違いない。
何やら気のようなものを練っているようだが、あれはさて?
■スノール > 颶風と共に振り抜き、稲妻が追随する剣閃の先。
果たしてそこには……少女の姿どころか、影もない。
猫どころではない。
宛ら、鬼を跨ぐ天狗が如き身の熟し。
竜は口元を吊り上げる。
望む以上の敵が眼前にいるその歓喜に……震える。
中空、竜の体躯を持ってしても見上げるほかない天の頂。
頭を越え、天より飛来する星光三条。
受けるか。躱すか。
否。断じて否。
至高の斬撃。躱すは難く、受けるは惜しい。
ならば。
咆哮一閃。
両肩。ただ『食らい』、血飛沫散らし。
喉元。咢を開き、牙にて『喰らい』。
文字通り歯止め、間合いは剣よりその内。ならば。
躊躇おうはずもない。透き手、左腕。その拳。
中空、ならば、今は身動きも困難であろう敵へと、ただ放つ。
■ステーシー > 「!?」
相手がそのタフネスで剣閃を受けるという選択肢は想定していた。
だが、竜牙にて刀を喰らおうとは。
身震いがする。そうだ、旋空も同じだ。
「うっ!?」
左拳をまともに受けて吹き飛ぶ。
強化ガラスに背中から叩きつけられ、ガラスに微細なヒビが入る。
周囲の人間がいよいよもって本格的に騒ぎ始める。
「騒ぐなッ!!」
一喝。そして剣を支えに立ち上がる。
「今……いいところなのよ…」
そうだ、先ほどの旋空も震えていたのではない。
武者震いをしていたのだ。
訓練で浪費し、先ほども回復に使ったはずのプラーナが満ちてくる。
旋空が与えてくるのだ。
刀が、自分の意思を持って、この世界に存在し戦えと告げている。
そしてその身に先ほどまでの貧困な発想とは程遠い、戦いの知識が入る。
亜人の王との戦いで最後に繰り出した剣技、白刃一掃。
それを思い出していた。
あれは自分でひらめいた技だと思っていた。
だが違う。
旋空が、先代の持ち主の剣技を覚えていたのだ。
「ししょー……技、借ります…」
ゆらりと気配が世界に溶ける。
騒ぎ立てる周囲の喧騒が遠くなる。
独特の身のこなしにより、自らの影と一体となる。
流麗たる動きに、鋭い三連閃。連影撃。
辿り着いたるが無の境地ならばその剣、林の如く。
■東郷月新 > 男はうっすらと目を開く。
興奮してきた証か。
さぁ、あの少女の技とは一体
■スノール > 立ち上がるまで、竜人もまた追い打ちはしない。
相手が構え直すまで。相手がこちらに向かうまで。ただ待つ。
尋常なる立会いである。技を競う場である以上、競い、争い続ける『機』は逃さない。
生と死は結果でしかない。
故に、過程として求める必要はない。
求むるはただ、その剣。その武。その技。
全て味わう前に、喰らい尽くすなど……武人であるなら、余りに惜しい。
己の命。それ以上に。
故に竜もまた……備える。
己が武。その技。ただ、魅せる為。
異界の呪文を詠唱し、地精を吸い上げ、身に纏う。
ただでさえ硬質の肉が詰まったその体躯がさらに膨れ上がり、先ほど受けた傷口を筋肉でもって無理矢理塞ぐ。
失血はわずか。
むしろ膂力、そして、それを駆動させる速度を先より蓄えて、構え直し。
疾る。
巨躯が霞み、風鳴りの音すら置き去りにして、向かい合う。
迫る三連重ね。最早流星の煌めきと化した刃の切っ先。
だが、竜は立ち止まらない。竜は省みない。
速度は劣る。
だが、身の丈、その間合いは、覆ろうはずもない。
ならば。
その影迫る間。その合、確かに見計らい。
振るうは豪剣、大上段の唐竹割り。
間合いの理を手放さず、巨躯の持つ遠間の理に速度を乗せて。
風切音を刃で追い越し、稲妻の蒼光を気迫と共に迸らせ。
ただ、打ち込む。