2016/01/22 のログ
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > ティータイムを、少し過ぎたくらいの頃合い。
蘭はピアノの練習の後、訓練施設を訪れていた。
最近、魔術を学んでいると語ると、理由を尋ねられることが増えたように思う。
知識欲・好奇心共に旺盛な蘭の場合、
『祖母から受け継いだ部分が大きい自分の力がどこまでいけるのか試してみたい』
というのが今は一番大きな理由なのだが、魔術を専門にしている人間以外にこれを語るのは憚られた。何しろ、魔術は「力」なのだから。
そのため、表向きは「護身術」と答えている。
そして、表向きの目標は、概ね達成されていると判断していいのではないかと考えた蘭は…この日は、魔術の威力の向上よりも、術式構成の難易度を上げるための訓練のつもりでやって来ていた。
■美澄 蘭 > 今日練習するつもりなのは…蘭が現在履修している魔術の実技授業の中で、より「実技」の色合いが強い方…コゼット先生の魔球魔術の発展系。
多重詠唱の初歩、二重詠唱だ。
魔術の訓練を行っているのは大体週1〜2日だが、流石に継続して訓練を続けていれば慣れる。
手慣れた様子で、訓練施設の端末から魔球魔術用の的を呼び出した。
■美澄 蘭 > 水晶体の的が、訓練場に姿を見せる。
「…いきなり、違う属性の二重詠唱は難しそうよね…」
そう呟きながら的の方に向き直り、手を伸ばす。
深い呼吸を1つ。そして、魔力を流す。
「『フレア・フレア』!」
バレーボールほどの大きさの炎の球体が2つ、蘭の手元にほぼ同時に出現する。
わずかに先に出現した魔球の方が、大きさも気持ち大きいようだ。
最初に生み出した方の魔球はまっすぐ的に飛んでいったが…二つ目の魔球は若干軌道が逸れ、水晶体を掠める形となった。
一応、2つの魔球が的に当たった分が反映されて、水晶体は鮮やかな緋色に染まったが…
「………制御、難しい」
困ったように少しだけ眉を寄せ、そうぼやいた。
■美澄 蘭 > 同じ属性を重ねたはずなのに大きさが不均衡になるのもおかしいし…言い始めればきりがない。
「…これは、ちょっと大変そうかも」
筆記用具と魔術勉強用のノートを取り出し、気になった点をメモにとる。
それから、思いつく改善方法をまずは意識レベルで列挙し…
「…こんなところかしら」
自分がとったノートをもう一度しっかり確認して、
「………よし」
ノートを閉じてブリーフケースの上に置くと、端末を操作して的の状態をリセット。
訓練を再開する。
■美澄 蘭 > そうして数回、火の元素の魔球の二重詠唱の練習を行う。
一瞬の間をおけば魔球の動きを制御出来るようになり、大きさの不均等も多少改善されたところで、
「…あんまりこれだけで疲れるのもなんだし、他のも試しておきましょ。
二重詠唱の感覚自体は、ある程度掴めたと思うし」
別の元素の二重詠唱を試すことにしたようだ。
端末で的の状態をリセットした後、また1つ深い息をして的を見据える。
■美澄 蘭 > 強い光を宿した瞳で、的の水晶体を見据える。
「『アクア・アクア』!」
バレーボールほどの大きさの水流の塊が2つ、瞬き1つ分ほどの間をおいて生み出されると…やはり瞬き1つ分ほどの間をおいて的めがけてまっすぐ放たれる。
水の魔球は2つとも的に直撃し…2つの魔球が合わさった結果か、水晶体は深い青に染まりきっている。
「………うん、大分良さそう」
同時というわけにはいかないが…それでも、魔球をきっちりコントロール出来たことに、蘭は確かな手応えを感じていた。
■美澄 蘭 > 念のため、その後も何回か水の魔球の二重詠唱の実践を重ね、自分が得た感覚を確かめる。
「………よし」
納得出来たらしい声を漏らして、再度端末を操作する。
次の訓練に入るようだ。
■美澄 蘭 > 再び無色透明の状態に戻る水晶体。
それに向き直って、蘭は軽く…しかしやや強めに息を吐いてから、まっすぐに見据えた。
「『エア・エア』!」
風の元素は、大気に通じている。
それを動かすから「風」となるのであり…蘭の魔術の先輩というべき女子生徒も、それを圧縮して使う方法を見せていた。
…もっとも、蘭はその感覚を未だに掴めていないので、「風」として扱うしかないのだが。
実際、生み出されたのは竜巻を球状にしたような魔球2つ。
…ただ、先ほどまでの二種の魔球よりは、気持ち大きく感じられるだろうか。
「…えいっ!」
先ほどまでと同様、一瞬の間をおいて放たれる魔球。
的に当たった魔球は、ひゅるりと渦巻く風の音を軽く輪唱して、消えていった。
1つ1つの魔球は単独で生み出す時と比べてだいぶ小粒だ。
それでも、水晶体は鮮やかな緑に染まっている。
「…制御さえ出来れば、効果はこっちの方が高い、かも…?」
的の方に近づいてその色を見つめながら、思案顔。
■美澄 蘭 > 風の魔球の二重詠唱の練習は、軽めにすませて。
蘭は再び端末を操作して、水晶体の状態をリセットする。
「…次は地…か」
四大元素の中では一番扱うのが得意ではないもの。
そして、魔球として形作るのが面倒なもの。
(…まずは、時間をかけても良いから、きっちりコントロールして…)
魔力の扱い方をイメージしながら、深く、強く息を吐いて…蘭は、的に向き直った。
■美澄 蘭 > 念入りに、魔力を整えてから、水晶体に向けて掌をかざす。
「『ガイア・ガイア』!」
魔球の形成に、瞬き2つ分。
魔球を放つタイミングに、瞬き1つ分。他の元素の魔球より長めに時間をかけて、放った。
■美澄 蘭 > 魔球の大きさはサッカーボールほど。
岩で出来た魔球は、わずかに放物線を描きながら、緩やかに…それでも、一応的めがけて飛んでいく。
二つの魔球は多少の時間差がありながらもきちんと的に当たり、砕け散った。
水晶体は、やや透明感のあるアースカラー…という感じだろうか。
「………うーん………」
魔球1つであれば透明感を無くすほどきっちり魔力を元素に変換出来るのが、随分劣化しているように見える。
蘭は、的の方に向かい、水晶体の周りを観察しながら歩き回り…不満げに、眉間に皺を寄せた。
■美澄 蘭 > 「…これでも、丁寧に魔力を練ったつもりなんだけどなぁ…」
足りないのは集中する時間か。それとも、集中の程度だろうか。
一旦訓練スペースを離れると適当なベンチに腰掛けて、もう一回魔術勉強用のノートを広げる。
また、改善方法を考えるつもりのようだ。
■美澄 蘭 > 魔力を他の元素に変換する感覚に差はなかったか。
余計な心配が集中を妨げたりはしていなかったか。
時折、何かを確かめるように手を握ったり開いたり、何かを思い出そうとするように眉を寄せながら…ノートに何かを書きつけ、思考を整理しようとしていく。
「………うぅん、難しい」
そう声をあげて、一旦ノートを閉じる。
そして飲み物の自販機の方へ。気分転換のつもりのようだ。
■美澄 蘭 > ショコラフレーバーのついたミルクティーを買ってベンチの方に戻ってくると、ボトル缶の蓋を開けて、一口。
ミルクティーの甘みが、身体の隅々に滲むように染み渡る。
…ここでようやく、蘭は自分の疲れを自覚した。
(…そうよね、今までと段違いに難しいことやってるもの。疲れてない方がおかしいわよね。
魔力練るのも大変だし、コントロールにすごく頭使うし…地の二重詠唱でやたら力が入らなかったの、そのせいもあったのかも)
こくこくと、疲れた身体に魔力を補うかのように、ショコラフレーバーのミルクティーを飲み干す。
■美澄 蘭 > 「…今日はこれ以上やっても良い成果出なさそうだし、この辺にしときましょ」
ミルクティーを飲み干すと、ゴミ箱の方に歩いてボトル缶を捨て(投げ入れるような運動能力は蘭にはない)。
ノートや筆記用具をブリーフケースに入れ、訓練スペースの端末を初期状態に戻して。
蘭は、その日は訓練施設を後にしたのだった。
ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。