2016/01/24 のログ
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > 「…よし」

休日。
蘭は午前中から訓練施設を訪れていた。

先日の魔球魔術の二重詠唱の練習が、疲れにより途中になってしまったのと…その時途中まで順調だった感覚を、忘れないようにするためだ。

訓練場に入り、手慣れた様子で端末を操作し始める。

美澄 蘭 > 訓練場に姿を見せるのは…もはやお馴染みになりつつある、コゼット先生の元素魔術用の的である水晶体だ。

(良い意味で)適当な距離をとって、それに向けて手をかざす。
慎重に魔力を練り上げて…

「『ガイア・ガイア』!」

瞬き3回分の差で、バレーボールほどの大きさの岩の球体が2つ出来上がる。
大きさに、あまり差はないようだ。

「…えいっ!」

瞬き1つ分の差で放たれる二つの球体は、まっすぐ的に向かっていき、ぶつかり砕け散った。
水晶体は、透明感に乏しいアースカラーを示している。

「………この間よりは良さそうね」

的の近くにより、水晶体の色を近くでじっと見つめたり、岩の欠片を手に取って観察したりする。

美澄 蘭 > やがて、岩の欠片は魔力に戻って空気中に溶けるように消える。

「…ちょっと、魔力を形にする時間を縮めてみましょうか」

端末を操作して、一度水晶体の状態をリセットする。
それから、再度的に掌を向けた。

「…『ガイア・ガイア』!」

瞬き1つ分の差で岩の球体が2つ出来上がったが…1つ目はともかく、2つ目はハンドボールくらいまで小さくなってしまった。
動揺してか、少し視線が泳ぐが…何とか、的の方を見据えて先ほどと同じタイミングで魔球を放つ。
魔球は的を掠めるように当たって、後ろの壁にぶつかって砕けた。
水晶体は、掠めた部分がわずかに黄色っぽくなったように見える程度だ。

「だめね…力が上手く形作れなかったのもあるけど、動揺しちゃった」

1つ、深めのため息を吐く。
切り替えないと…と呟きながら、再度端末を操作して水晶体の状態をリセットした。

美澄 蘭 > もう一度、的の方に向き直る。

(今度は、瞬き1つ分さっきより時間をかけて…魔球の大きさのバランスがおかしな事になっても、落ち着いて…)

的の方に手を伸ばす。
ピアノをかなり弾きこなすことが出来る蘭は、標準的な瞬き1回分の時間をかなり正確な感覚で掴む事が出来た。

「『ガイア・ガイア』!」

二つの岩の球体が作られる間に空いた時間は、瞬き2つ分。
1つ目の大きさは今まで通りだ。2つ目は…大きさはまだ1つ目に並ばないが、先ほどよりは1つ目と比較した際のバランスを感じない。

「…えいっ!」

瞬き1つ分の時間差で、魔球は的めがけてまっすぐに放たれ…カーン、という気持ちのいい音を時間差で響かせ、砕けた。
その場に鎮座する水晶体は、最初よりも気持ち透明感のあるアースカラーだ。

「…うぅん、魔力のコントロールが問題なのかしら…?」

そんな事を言いながら、的の方に近づいていってしゃがむ。
蘭の視線が向かうのは、的の方ではなく、その足下で粉々になっている、岩の球体だったものだ。
魔力との親和性に恵まれていなければ、欠片がどちらの岩の球体のものかなど判別しようもないが…

「………」

蘭は黙って、真顔で、岩の欠片のいくつかに指で触れていく。

美澄 蘭 > …と、蘭の細く白い指が、欠片の1つを摘んだ。

「…これは、多分1つ目の方ね」

摘んだ欠片を、自分の右側に移す。
次は、別の欠片を摘んで

「………これは、違う」

そう言って、その欠片を自分の左側に移す。

「………ちょっと、分けてみようかしら」

そう言って座り込み、「普通に見ただけでは」区別出来ない岩の欠片を分類し始める。
蘭の持つ魔力への親和性…魔力「それ自体」を感じ取る能力によって。

美澄 蘭 > 感じ取りやすいものから判別しているというのもあるが…実は、その正答率は9割を越えていて。
魔力への親和性について掘り下げた事のない、魔術を学び始めたばかりの少女が、自分の感覚だけを頼りにそれだけの判別能力を発揮しているとなれば…その能力に、驚愕する者もいるかもしれない。

美澄 蘭 > …だが、その作業を始めて5分くらい経った頃だろうか。
岩の欠片たちは、宙に溶けるように跡形もなく消えてしまった。

「あっ………」

元素魔術によって生成した物体は、留める工夫をしなければ、いずれ魔力に戻って世界に還る。
分かっている事ではあったはずだが…蘭は岩の欠片の「違い」が気になって、すっかり失念していたのだった。

「………無駄になっちゃった………」

その場で、ちょっとしょんぼりする。

美澄 蘭 > しかし、今の経験により、蘭は1つの考えを思いついた。

(残して、先生に比べてもらって…っていうのを自分にフィードバックしていけば、魔力のコントロールのいい訓練になるかも。
私が何となく感じてる事に、先生達ならきちんと理屈を付けてくれそうだし)

画期的に見えたアイディアだが…1つ、問題があった。

(…残すための術式を、魔球に組み込めるかどうか、よね)

美澄 蘭 > 先日の獅南先生から出された「課題」など、示唆が全くないではない。
…が、それを魔球魔術に組み込んで機能させる事が出来るのか。もし組み込めたとして、それで魔術としての難易度が上がって余計魔力のコントロールに困ることになったら本末転倒ではないか。
…など、懸念材料はないではない。しかし…

(でも…闇雲にやるだけじゃ、効率が悪い気がするし。
まずは、どうやったら出来そうか、考える材料を集めるところからね)

そう決意すると、蘭は訓練施設を後にする。
少しの休憩と昼食の後、図書館で調べ物をするために。

ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。