2016/02/08 のログ
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
■美澄 蘭 > 休日の午後。
午前中に図書館へ行って借りた本を返し、それからピアノの練習。
昼食を食堂で摂った後、蘭は訓練施設を訪れていた。
蘭にとっては、割と「いつも」の休日の過ごし方である。
「…さて、今日も練習練習…と」
手慣れた様子で訓練用の端末を操作していく。
■美澄 蘭 > やがて、現われる魔球魔術用の的。
「まずは、地の二重詠唱の練習ね」
以前考えた「魔力制御の確認」は結局頓挫したものの、度々通って地道に練習を繰り返した成果か、制御は大分出来るようになりつつあった。
的の方に向けて、手をかざす。
「『ガイア・ガイア』!」
瞬き二つ分ほどの差でほとんど大きさの変わらない岩の球体が生み出される。
その大きさは、バスケットボールほどだろうか。
「…えいっ!」
そして、一瞬の差で、的めがけて正確に放たれる二つの岩の球。
二つの岩は的に勢い良くぶつかって砕ける。…その結果、水晶体は透明感のないアースカラーに染まっていた。
「…うん、大分良い感じになってきたじゃない。
あとは、他の元素と大差ない程度に間を詰められれば…」
練習の成果を確認して満足そうに頷くと、蘭は端末を操作して的の状態をリセットしながら、次の課題を確認した。
■美澄 蘭 > 再び無色透明を取り戻した水晶体に向き直り、再度手をかざす蘭。
深く深呼吸を1つした後…
「『ガイア・ガイア』!」
そう唱えて、魔球魔術の二重詠唱の発動を試みる。
一瞬の間を置いて出来た魔球の大きさは…一つ目は先ほどと変わらず、二つ目は…直径にして、4〜5㎝ほどの差だろうか。
それを、また一瞬の間をおいて、正確に的にめがけて飛ばす。
魔球の衝突を真正面から受け、その魔力を写し取った水晶体は…先ほどよりも、やや透明度の高いアースカラーだ。
「………前よりは大分良さそうだけど、もう一声かしら…ね」
そこからは、黙々と練習である。
毎回気分を切り替えて集中し、出来るだけ正確に時間を測れるようにして…。
根性的な意味で、かなり集中力を使う練習である。
それを10回ほど繰り返す頃には、この季節にもかかわらず、蘭はじわりと汗のようなものを知覚していた。
ご案内:「訓練施設」に頸城 陸さんが現れました。
■頸城 陸 > かつり。
訓練施設の隅、床を鳴らす足音が一つ。
「あー……先客、いたんだ」
ぽつり、呟いく。その視線の先には一人の少女。
どうも、魔術の訓練をしているようで。
その様子を見て、少し見学でもしてみようかと、そう思った。
■美澄 蘭 > それから少しして、大分二つの魔球の大きさが均等になってきた頃…
「………ああ、ちょっと、きつい………」
慣れていないせいもあるのだろうが、均等にするために集中力を高める、そのために消費する頭の体力が半端ではなかった。
長距離走でもこなしたかのような、疲れた息を吐いて。
「ちょっと、休憩しよう…」
何とか…という風情でブリーフケースを拾うと、ややふらつく足取りで休憩スペースの自販機の方に、吸い寄せられるように歩いていく。
ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
■頸城 陸 > ぼう、っと様子を眺める。
二つの球体。それの大きさを合わせているように見える。
魔術に関しての知識は全くと言っていいほど無いので、どういう意図でやっているのかはよくわからないが、その表情から大変そうだな、と少年は思った。
しばらく見ていると、少女が移動を始める。
休憩だろうか?と、考えて、確認のために声をかけてみる。
「……あ。すみませーん!一旦休憩ですかー!?」
■美澄 蘭 > 自販機の前で、声をかけられてふとそちらの方を振り向く。
柔らかい栗色の髪が、やや汗ばんだ頬に、少し貼り付いているようだ。
「ええ…ちょっと、疲れちゃって。
…魔力制御って、難しいわ」
「複数の魔術発動をくっつけてるみたいなものだから、余計にね」と、苦笑いを浮かべて、自分よりわずかに背の高い少年に答えた。
■頸城 陸 > 「あ、わかりましたー!」
どうやら、本当に休憩中のようだ。
彼女の言葉と、汗ばんだ頬からして、中々複雑な事をしていたのだろう。
「あー、確かにそんな感じらしいですねー。僕、その辺全然わかりませんけど……」
言葉を返して、苦笑を一つ。
そう言えば、少女が休憩中なら、少しの間自分が訓練スペースを使っても大丈夫だろうか?
そう思い、念のため確認をとってみる。
「あ、今使っても大丈夫ですかー?」
■美澄 蘭 > 少年のアバウトな感じの言い回しに、おかしそうに、くすりと小さく笑いを零して。
「魔力を使う魔術は、結構個人差大きいみたいよね…
この学園の大きな特徴の1つだと思うんだけど、その割には勉強してない人も多いし」
「異能よりは、色んな人が覚えやすいはずなのにね」と、肩をすくめながら微笑む。
…と、訓練スペースを使って良いかと問われれば、軽く周囲を見回す。
いつの間にか、他の訓練スペースも埋まっていた。
「ええ…私は多分しばらく休憩しないといけないから…どうぞ」
そう言って、手で訓練スペースの方向を指して、促した。
これだけ疲れていて、その上でここから立ち去らないのは…そもそも、帰ること自体が休憩しないとしんどいくらいの感覚になっているためだ。
今の状況だと、蘭は少年の訓練をしばらく、ぼんやり眺めていることになるだろう。
■頸城 陸 > くすり、と少女が笑う。
その様子を見て、少し照れくさそうに頬を掻く。
……やっぱり、バカっぽかったかな、今の。
等と考えながら。
「あはは。そー……みたいですね。まぁ、僕も魔術系の授業はとってないんで……」
苦笑交じりに言って、頭を掻く。
「あ、ありがとうございます」
言葉の後、頭を下げ。
ふらり、訓練スペースの方へ歩を進める。
スペースが使えるのなら、普段通り、やることをやるだけだ。
■美澄 蘭 > 「まあ、授業選べるのもこの学園の良いところだし、無理する必要はないと思うけどね」
照れくさそうに頬をかく少年に、そうフォローをして人懐っこそうな笑みを浮かべる。
こうしてみると、10代半ばの少女らしい顔立ちだ。
「頑張ってね」
そう、少女らしいソプラノで少年の背中に応援の声をかけると、自分は自販機でチョコレートフレーバーの温かいミルクティーを購入。
やや力ない足取りで、休憩スペースの適当なベンチに…特に意味はないが、少年の方を向くように、ぼんやりと座った。
■頸城 陸 > 少女の見せた人懐っこい笑み。
それに、不意にどきりとしてしまう。
「……で、ですよね」
そう、短く言葉を返す。
「……あ、はい。頑張ります」
頬を両手で叩き、気合を入れる。
平常心平常心、いいところを見せようとか、考えちゃだめだ。
……絶対、失敗しそうだし。
訓練スペースに立ち、端末を操作する。
現れたのは、人型の訓練標的が一つ。
「……それじゃ、はじめようかな」
深呼吸を一つして己の異能を起動し、白い装甲を身に纏った。
■美澄 蘭 > 少年の、年頃らしい動揺を知ってか知らずか。
ミルクティーの蓋を開け、香りを楽しむくらいの、軽い一口。
それから、ふわっとしたため息をついて、少年の入った訓練スペースの方を見やる。
(…何か、小さい男の子が好きそうな、ヒーローみたいなの着てる…
魔術系の授業は取ってないって言ってたし、それらしい荷物も見当たらなかったから…異能かしら?)
そんなことを考えながら、ぼんやりと少年の訓練風景を眺めつつ、ミルクティーをちびちび味わっている。
魔術で消耗するのは主に脳みそなので(もはや、蘭は魔球魔術の二重詠唱の連発程度では、「魔力消耗からくる」疲れは感じなくなっている)、ミルクティーの甘みと、チョコレートフレーバーの華やかな香りだけで、結構疲れは取れてくるように感じていた。
■頸城 陸 > 「……よし」
軽く手のひらを閉じて、開く。
精製自体は問題なく行えているし、気分も落ち着いている。
……大丈夫、大丈夫。
そう、心の中で呟く。
ゆらり、自然な足取りで訓練標的へと歩を進め、その前で足を止める。
その後、強化された拳、その全力で訓練標的を殴りつける。
地面から離れ、宙を舞う標的。
くるり、くるりと回転した後、施設の床へと激突する。
標的の方へと歩を進め、拳を打ち付けた部分を確認する。
そこにあったのは、己の手によってできた大きなへこみ。
……まだ、強化の具合が強すぎる気がする。
もう少し弱く出来ないだろうかと、そう思った。
■美澄 蘭 > ミルクティーをちびちび味わっていると、少年が人型の標的を殴りつけるのが見えた。
標的はその衝撃で宙を舞い、くるくると回って床へ落ちる。
「すごーい………」
体育は基礎的な体力作りレベルの授業を履修して済ませてしまっている蘭(球技…特に団体競技には良い思い出がないのだ)は、その威力を見て感心したように声を漏らす。
声量としては完全に独り言。通常の聴覚で、訓練に集中していればまず聞こえることはないボリュームだ。
■頸城 陸 > 「んー……あぁでも、全力で殴らなかったら大丈夫、なのかな」
端末を操作し、訓練標的を再び出現させ。再び殴りつける。
今度は全力では無く、少し力を入れる程度で。
その後も、様々な強さで何度も少年は標的を殴りつける。
その作業に集中しているようで、少女の声は聞こえることはなかった。
■美澄 蘭 > 少年は、様々な強さで人型の標的を殴りつけているようだ。
(…子ども向けのヒーロー番組だと、蹴り技も結構花形だった気もするけど…)
自分もまだ小さかった、男の子とそこまで険悪でなかった年頃で、蘭の特撮などに関する知識は止まっている。
ただ殴るだけ…ただ力の加減の調節をするだけに見える訓練風景。
それをぼんやり眺めながらちびちび飲んでいるうちに、ミルクティーはいつの間にかなくなっていた。
「………あ」
ちょっと間の抜けた声と表情。
一応最後にぐーっと傾けて、中身が本当になくなったのを確認すると…自販機の横のくず入れに、ミルクティーの容器を捨てに行く。
元々身体の方にはさほど疲れがきていなかったので、足取りもだいぶしっかりしていた。
■頸城 陸 > 幾度か標的を殴りつけた後、大きく息を吐き、異能を解除する。
白い霧となって、身にまとっていた鎧は空気にとけて消えていく。
「んー……やっぱりまだ、人に向けるには危険すぎる、ような……。でもこれ以上下げるのってできるのかな……」
ぶつぶつと呟きながら、自販機の方へと歩き出す。
僕も、少し休憩しよう。
色々と、考えたい事もあるし。
■美澄 蘭 > 丁度、蘭がミルクティーの容器を捨てたところで、先ほどの少年が、元の姿で自販機の方に近づいてきた。
何やら、考え事をしているようにぶつぶつと呟いている。
…が、母親以外の人の異能をあまりしっかりと見る経験に乏しい蘭は、まず彼に
「お疲れ様」
と、朗らかな声をかけることにしたのだった。
母親以外の人の異能を見る経験は、興味深いものだったし。
■頸城 陸 > びくり、肩を震わせる。
不意にかけられた少女の言葉に、思考の海から現実へと引き戻されたからだ。
「あ……ありがとう、ございます」
ぺこり、頭を下げる。
そう言えば、見られていたんだった。
「……あんまり、見てて面白いものじゃなかったでしょ?」
苦笑交じりに、言葉を出す。
■美澄 蘭 > 「そんなに、硬くならなくて良いのに…」
頭を下げられれば、苦笑して。
…しかし、(自分が男子の前で緊張している時も、相手はこう思っているのかも?)と、脳内では我が身を若干省みたとか。
「そんなことないわよ…小さい頃に男の子から聞いたTVの中のヒーローを思い出して、ちょっと懐かしい気分になっちゃった」
苦笑混じりに問われれば、ゆるく首を振ってからこう答えて、いたずらっぽく笑った。
大人しそうな見た目の割に、お茶目な部分はお茶目なのかもしれない。
■頸城 陸 > 「あ……うん。わかった、よ……」
小さく息を吐く。
やっぱりこう、年の近い女性と話をするのは苦手だ。
……まぁ、経験がほとんどないから、なのだが。
早くなれたほうが良いな、なんて事を思った。
「あー、皆‥…そう言うん、ですよね。……見た目が、ヒーローぽいって。中身は、こーんな地味な人だけど」
言い終えて、頭を掻く。
「やっぱり僕もこう、中身も地味な感じから卒業すべきなのかな……」
ぽつり、言葉を吐きだして。
■美澄 蘭 > 小さく息を吐く少年の様子に、先ほどの脳内の思索と照らし合わせて。
…相手が、まさに「男子の前で緊張している自分の鏡」のようなものなのではないかと思い至った蘭。
ここで慌て出して
「…あっ、ごめんなさい…私、馴れ馴れしかった?」
と、心配そうに少年の顔の様子を伺った。
そして…「見た目がヒーローっぽい」異能と、中身が地味な自分との対比に悩む様子の彼に…何と言葉をかけていいか、逡巡したようにしばし視線を迷わせた上で…決意したように、改めて少年の方を見て。
「…今日、会ったばかりの私が言うのも、なんだと思うけど…
「力」に合わせて無理するなんて、しなくて、良いと思うの。
その…無理して、背伸びして…どこかに無理がきて…それで、「力」と「心」のバランスが崩れるの、って、すごく…良くないと、思うし」
「力」と「心」のバランスで思い浮かべるのは…蘭にとって身近な異能者である母親だ。
彼女も、『無理して感情ごと異能を抑えつけようとするより、あるがままの平穏を心がける方が、結果的には異能と上手く付き合えた』という話をしていたし。
…未だに、たまに爆発はしているのだが。
「………ごめんなさい、馴れ馴れしい上に、えらそうなこと言って………」
持論を述べてから…きまり悪そうに、俯いた。
■頸城 陸 > 「……やっ!全然大丈夫!大丈夫だから!」
慌ただしく両手を振り、少女の言葉を否定する。
ものの見事にテンパッていた。
「……バラン、ス……?」
少女の言葉に、少し考えこむ。
要は、自然体でいろ、ってことなのだろうか。
……ただ、思考を変化させる『自分の本来の異能』で、それが上手くできるのだろうか。
少し、不安だった。
「……ううん。別にいいよ。誰かにアドバイス貰えるだけでやっぱり嬉しいし」
俯く少女に向けて、小さく笑って言葉をかける。
もっとも、彼女に自分の表情が見えているかはわからないが。
■美澄 蘭 > 少年のテンパり方から、自分より重症かも知れない…なんてことを思ったとか思わないとか。
それでも、テンパりながらも全力で否定してくれている…ということは、悪い感情は持たないでいてくれるのかな、と少し期待をして。
「…そう?…でも、これからは気をつけるわね」
そう言って、少し申しわけなさそうな笑みを少年に向けた。
「「力」が伴う異能なら…余計に、呑まれちゃいけないと思うし」
少年の「本来の」異能を知らない蘭は、真剣な表情でそう言う。
…そして、少年が小さく笑って言葉をかけてくれれば…声の優しさから、顔を上げて
「………良かった」
そう、安堵の笑みを少年に向けた。
■頸城 陸 > 「……あ、うん」
申し訳無さそうな少女にはただ、頷いて言葉を返すことしか出来なかった。
力に飲まれないように、自分がとった道は、力を押さえつけることだった。
今度は、別の道を探してみるべき、なのだろう。
「……そう、だよね。うん、そうしてみる」
ゆっくりと頷く。その表情は、真剣なもの。
「……だから、そんなに気にしなくても」
大丈夫だよ、と言いかけて、施設の時計を見る。随分と話し込んでしまった。
「あ、僕、そろそろ帰らなきゃ……」
■美澄 蘭 > 「…私もね、最初は魔術の制御に、もっと苦労してたの。
…だから、頑張りましょう?」
少年の頷きに、そういって優しげな笑みを向けた。
「そう…」
少年が帰らなければいけない、と言うと、少しだけ名残惜しそうに。
…それから、意を決したように芯の強い光を宿した瞳で、少年を見て。
「………私、美澄 蘭。1年生なの。
また、こことか…他のどこかで会ったら…よろしく、ね?」
最後の方にいくにつれて、声から段々自信のなさが現れて来るような自己紹介だった。
■頸城 陸 > 「……あ、そう、なんだ。じゃあ、一緒に頑張らないと、ね」
そう言って、笑い返す。
「……あ、えっと、一年の頸城陸……。うん、またどこかで会えたら、よろしく」
自己紹介に対して、こちらも返す。
「……それじゃ」
軽く手を振って、出口の方へと歩き出していく。
ご案内:「訓練施設」から頸城 陸さんが去りました。
■美澄 蘭 > 「ええ」
少年に笑い返されれば、笑みがぱぁっと広がる。
「頸城君ね…よろしく」
名乗り返してもらえれば、表情を明るくして、にっこりと微笑んだ。
「ええ、またね」
陸の後ろ姿を、こちらも小さく手を振って見送る。
それから、訓練を再開し、地の魔球の二重詠唱の感覚を掴んで。
今後の課題について考えながら、疲労でややふわふわした足取りで、家路に着いたのだった。
ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。