2016/05/17 のログ
ご案内:「訓練施設」に高峰 司さんが現れました。
高峰 司 > 帽子を目深に被って、首をぽきぽき鳴らしながら訓練施設に顔を出す召喚士の少女。
とは言え、今回は召喚獣の確認などが目的ではない。必要分は既に済ませてある。
今回の目的は、自分自身のスペックの再確認である。

「これで上手くいくかも試してーしな」

そう言って手に取ったのは、小さいルーンストーン。
ルーン文字を刻んだ石である。

高峰 司 > 向かう先は射撃系の訓練施設。
そして、司が得手とする射撃系の魔術は主に一種類。ガンド撃ちである。
ガンド。ルーンとはまた別系統の、北欧の呪術。
指差した相手の体調を多少悪くする程度の軽度の呪いで、北欧圏では「他人に指差すのは失礼にあたる」と言うのは、このガンド撃ちを仕掛けようとしているように見えるからだとも言われているものだが、所詮は軽度の呪い。
『射撃魔術』として運用するには些か以上に心もとない。
豊富な魔力を持っている一級品の魔術師ならば、「フィンの一撃」などと呼ばれるような、物理的破壊力を持ったガンド撃ちを放てるのだが、そんな魔力は司にはない。
―――が、そもそも魔術師は、足りなければ他所から補う生き物。
不足があれば、それを補う何かを付け足せばそれでよい。
そう言う合理性を、司も持ち合わせていた。

「まずは……ケンにすっか。一番分かりやすいしな」

ルーンストーンをひとまず仕舞い、自分の右手の甲に平仮名の「く」に似たルーンを刻む。
ケン。炎を象徴し、情熱的な行動力や勇気を与えるルーンだ。
これを攻撃に転用すれば、炎の魔術となる。ルーンでのメジャーな攻撃手段と言えるだろう。
それを刻んだ右手で的を狙い……。

「……ケン!」

ガンド撃ち。加えて、そこにケンのルーンを乗せる。
ガンドは、フィンの一撃と呼ばれるようなものをピックアップして「射撃攻撃」と誤解する術師もいるが、上述の通り本質は呪い。
『相手に何かしらのマイナス状態を付与する』のがガンド撃ちの本来の在り方である。
よって……そのガンド撃ちの効果に、ケンのルーンを乗せる。
そうすると……。

「ま、ここまでは予定通りだな」

ガンドの当たった的が炎上し始めた。
つまり、相手に『発火』と言う状態異常を与えたような形である。
これが、高峰司の得意とする『ルーンガンド』である。

高峰 司 > そして、これが従来のルーンガンド……銃身となる手、主に手の甲に先んじて与えるつもりの効果を持つルーンを刻み、ガンドに乗せる手法だ。
が、この手法にはいくつかの欠陥がある。
その一つが『逐一付与する効果のルーンを刻まないといけない』ことだ。
つまり、通常のガンド撃ちに比べて、銃弾の装填ともいえるワンアクションが余計にかかるのである。
これでは、緊急時に使うには遅い。
主に召喚も出来ない様なシチュエーションで使う想定なのだから、一からルーンを刻むワンアクションが致命的にもなり得るのだ。
加えて、空中ではなく手の甲にルーンを刻むのは、若干難しい。
なんせ場所が狭いのだ。少しブレるとルーンの記号が崩れて、効果が発揮されない可能性がある。
それらを克服するために持ち出したのが、このルーンストーンだ。
先程と同じケンのルーンを刻んであるルーンストーンを握りこみ、先程と同じように的に狙いを定める。

「……ケン!」

そして、ガンド撃ち。
手の甲のルーンは使わず、手に握りこんだルーンストーンに刻んであるルーンを適応したのだ。

「……よし、上々だな」

結果としては……得られた効果は同じ。
取り出す手間はあるものの、いちいち両手を使って(刻む先の手の甲を見ながら、もう片方の手で刻むので両手が使えなくなる)ルーンを刻んでから撃つより、余程早く使えるようになっているはずだ。

高峰 司 > 「んで、今度は……」

そして、本題はこっち。
手に複数のルーンストーンを握りこみ、三つ出現させた的の一つに狙いを定める。

「……ケン!」

一射。第一の的が炎上する。

「イス!」

二射。第二の的が氷結する。

「ラーグ!」

三射。第三の的が水に覆われる。

「……どう、だ?」

撃ち終わってから、それぞれの的に近寄って確認する。
今回試したのは、同時に複数のルーンストーンを持ちながら、その効果を使い分けるやり方である。

高峰 司 > 複数のルーンストーンを同時に持ちながら、その効果を任意に使い分ける。
これが出来れば、戦術の幅は大きく広がるのである。
そして、魔力の精密操作を得手とする司には、それが出来る自信があった。
が。

「だークソ、駄目か……!」

ちっ、と舌打ちする。
最初のケン……炎のルーンによる炎上効果はいい。
が、その後のイス……氷のルーンによる氷結は、ケンの効果が混ざったせいで氷結が甘く、既に氷が溶け始めている。
そして、ラーグ……水のルーンは、水が凍り始めている。イスの効果が混ざったのだ。
つまり、直前のルーンの効果が混ざってしまい、本来のルーンの効果と競合してしまっているのである。

「訓練でこれじゃあ、本番となるとちとやべーな……」

人間、訓練で発揮するスペックの半分を本番で出せれば上等とすら言われている。
訓練で完璧にこなせないなら、本番で使い物になるかは怪しいところだろう。下手をすれば、大事な場面でルーン効果の対消滅などもありうる。

高峰 司 > 高峰司は、当人にあまり自覚はないが、慢心の悪癖がある。
が、それは『やるべきことは全てやって備えてある』と言う自負から来る慢心であり(要するに予想外の事態に弱いのではあるが)、その備えに関しては一切の妥協をしないタイプでもある。
そんな司にとって、この結果は到底承服出来るものではなかった。

「チクショウ……これじゃあ使えねぇ」

再び戻って、同じような的を三つ出現させる。
そして。

「……ケン!イス!ラーグ!」

三連射。
先程と同じように、的に向かってルーンガンドを放つ。

高峰 司 > 「はぁ!?」

だが、今回は前回より悪かった。
『魔力の切り替え』を意識しすぎて、それぞれの効果が非常に弱くなってしまったのだ。
ケンは先程より小さい炎しか出していないし、イスはほんの一部しか凍っていない。ラーグに至っては効果が発揮すらされていない。

「焦り過ぎちまったか……?クソ、どーっすっか……」

ここで一旦間をおいて考え込む。
こういう時、無暗に続けるとドツボになる場合があるのを、司は経験則で知っていた。
ルーンストーンを使ったルーンガンドは、単発ならば実用段階にある。
ならばここは複数装填式のルーンガンドは諦め、単発で妥協しつつ、機を改めて複数装填式を練習すべきではないのか、と考え始めたのだ。

高峰 司 > しばし考え込んで……。

「……しゃーねー。今日は休むか」

溜息を吐いてルーンストーンを片付け始める。
実際、ここ最近疲れているのである。
それは、自分が召喚獣として使役しようと狙っている女性が、無邪気に連れ回してくるのが大体の原因だったりするのだが……さりとて、今後を考えるとそれを止めるわけにもいかない。

「(……コミュニケーションって、めんどくせぇ)」

そんな、あまりにらしくない事を内心でボヤきつつ、その場を後にするのであった。

ご案内:「訓練施設」から高峰 司さんが去りました。