2016/06/05 のログ
ご案内:「訓練施設」に八雲咲雪さんが現れました。
■八雲咲雪 > 更衣室で制服を脱ぎ、競技用スーツを着込む。
ボディラインがはっきりとでて、真ん中の素材は微妙に透けている。
最初の頃はこの素材が恥ずかしく、透けているのも恥ずかしかったが今ではなんともない。
――男子の視線さえ、アレでなければ。
次に魔道具を装着していく。
まず足。
これから行なうのに、必ず必要で、咲雪はもはや癖で足から装着していく。
次に、背中。
ロボットがつけていそうなブースターを背中の肩甲骨あたりにうまく装着させる。
「――っふぅ」
装着させる瞬間、ビリリとした感覚が走る。
魔力回路と魔道具を接続させるためだ。
■八雲咲雪 > 更衣室内ではあるが、軽くブースターに魔力を流してテスト動作を行なう。
本日も快音。
感度は良好。
最後にポニーテールを一度直し、サイバーグラスをかける。
サイバーグラスには、一緒についているアンテナを通じて周りの状況が映し出される。
■八雲咲雪 > このサイバーグラス、空を飛ぶ際には目を守る役割もあるがこのようにマッピングの機能もある。
周回制の種目に出る際などは、ここに運営から渡されたマップが表示され、相手の位置などが分かる。
それはともかくとして。
最後に、薄く透けているスカートを穿き、更衣室をでる。
訓練施設へは徒歩。
いくら飛ぶための魔道具を装着していても、基本的にその場までは歩いていくのがマナーだった。
■八雲咲雪 > 夜中の訓練施設は静かだった。
観客はおらず、ただただ静かな場所だった。
「…………」
フィールドの中心に、一つの機械をおき、スイッチを入れる。
すると、ポヒュ、ポヒュと情け無い音とともに風船がいくつも浮かび上がり、それぞれ一定の位置で止まる。
バルーンファイトと呼ばれるその種目は、1対1で行なわれる種目。
用意された風船と相手への有効打撃でポイントを稼ぎ、最終的に多い方が勝ちとなる種目。
咲雪は、その種目を練習するための機械を展開させた。
■八雲咲雪 > 「――ふっ」
地面を軽く蹴る。
それだけで、足につけた魔道具は魔力を形として形成し、咲雪を空へと飛ばすために羽を与える。
咲雪は、フィールドから少し離れた場所。
風船の群集から何mか離れたところに浮かぶ。
■八雲咲雪 > 5――。
内心でカウントが始まる。
脳裏には、いつも響く無機質なカウント音。
4――。
試合を行なうとき、この瞬間だけはいつも周りが静かになる。
いや、静かにさせているのかもしれない。自分の脳が、音を排除して。
3――。
このカウントは、自分を集中させるための暗示。
子供の頃から何度も聞いた、暗示の魔法。
2――。
練習も試合も、区別はない。
場に一人だとしても、見えない相手が、向こうには居て。
1――。
「いきます!」
その見えない相手に勝つため、飛び出す。
■八雲咲雪 > 10分後。
大きく息をつきながら、地上に降り立つ咲雪。
最高速で小さなフィールドを、縦横無尽に飛び駆けるのには体力がいる。
日常的に運動をしていても、10分後にはすぐヘロヘロになって汗をかいていた。
「よ、いしょ……」
すた、と地上に降り立ち地面に投げておいたタオルで顔を拭く。
ご案内:「訓練施設」に迦具楽さんが現れました。
■迦具楽 >
【学生ではない迦具楽だったが、夜にもなれば、セキュリティを潜り抜けて学園の施設へ浸入する事も出来なくはない。
そして、たまには思い切り運動したいと思えば、この訓練施設を利用しにもぐりこむこともある。
昨日、久しぶりに友人と再会したのだが、その友人が辛いときに傍に居れなかった事、何一つ解決してあげる事が出来なかった事。
自分の不甲斐なさにフラストレーションが溜まって、それを晴らす為にひと暴れしようと思って訪れたのだ。
……しかし】
「――綺麗」
【静かに、時に激しく、曲線や鋭角を描き空を舞う白。
その白が飛んだ軌跡は、飛行機雲《コントレイル》のように白く鮮やかな色を残していく。
そしてその目を奪われるような光景は、迦具楽にもう一つの感激を与える。
――楽しそう。
あんなふうに空を飛べたなら、きっと楽しいに違いない。
自由自在に空を飛んで、自分の色、コントレイルで染め上げる。
――私も、飛んでみたい。
そう思わされるほどに、迦具楽は目の前の光景に目を奪われていた】
「ねえ、貴方」
【だから、白い雪が地上に舞い降りて来たとき。
迦具楽は迷わずに歩を進めて、赤い瞳を真っ直ぐに向けてこう言った】
「――私に飛び方を教えて」
■八雲咲雪 > 「――えっ」
おもわずそんな声をあげる。
飛んでいるところを見られたのだろう。
どんな意図があって彼女がそういったかは分からない。
ただ、彼女の目は、真剣そうに見えた。
「……あの、えっと。
いいのだけれど……その、名前だけ聞いてもいいかな」
ちょっと、苦笑した笑みを浮かべ名前を尋ねる。
■迦具楽 >
「……あっ、ごめんなさい。
夢中になりすぎて手順をすっ飛ばしちゃったわね」
【浮かんだ苦笑に、照れたように舌を出す。
目の前の『雪』は、迦具楽を飛行で魅了しただけでなく、とても美味しそうですらある】
「私は迦具楽。
貴方の軌跡に魅了された、しがない異邦人よ」
【『雪』と向き合って、称えるような笑顔を向けながら自己紹介をする。
察した通り、冗談や冷やかしのような響きは無く、心の底から感激しているように聞こえるだろうか】
■八雲咲雪 > 異邦人。
噂には聞いてたが実際に会った、と認識したのは今日が初めてか。
それはともかく。
魅了された。
それは素直に嬉しく。
「八雲咲雪です。
えーと……迦具楽さんは【エアースイム】はやったことない、んですよね?」
と、首をかしげて尋ねる。
■迦具楽 >
「咲雪……アナタにとても似合う名前ね。
ふうん、【エアースイム】って言うんだ」
【まったく聞いたことが無い。
さっき飛んでいた様子、風船を多数浮かべていた所から察するなら、恐らくなんらかの競技性があるものなのだろうけれど】
「ええ、まったく知らないし、見たのも今がはじめて。
でもアナタがあんまり綺麗で、楽しそうだったから、私も飛んでみたくなったの」
【そう答えつつ、両手を広げて、夜空を仰ぎながら目を閉じる。
まぶたの裏には、まだあの白い軌跡が映っている。
あんな風に綺麗に飛んでみたい、そう思う】
「私もアナタみたいに飛んでみたいの。
その道具があれば、私も飛べるのかしら?」
【再び向き合えば、咲雪が装備している魔道具を興味深そうに眺めだした】
■八雲咲雪 > 「そうですね。
この魔道具――【S-Wing(スウィング)】っていうんですけど」
足を少し上げて迦具楽に見せるようにし。
「足のスウィングを基本にして飛んで、補助として背中、腰、腕のどこかにもスウィングをつけます。
そうすることで、安定して飛べるんです」
背中のスウィングも見せる。
■迦具楽 >
「ふぅん、スウィング、ね」
【そう説明を受けながら、まじまじと足と背中の装備を観察し】
「足だけじゃ飛べないの?」
【背中の翼のような道具を見ながら首を傾げる】
■八雲咲雪 > 「…………飛べる、といえば飛べるんですけど」
ちょっと考え込むような顔をしてから近くにおいてあったバッグから靴を取り出す。
簡易用スウィングだ。
「ちょっとこれ、履いてもらえますか?」
百聞は一見にしかず。
実際にはかせて飛ばそうということなのだろう。
■迦具楽 >
「あ、飛べるんだ?
わかった、履いてみるわね」
【頷いて靴型のスウィングを受け取る。
少しだけサイズが合うだろうかと考えたが、多少合わなかったところで、自分の形状を変えればいいだけだと気づく。
後は説明されるとおりに靴を履いてみることだろう】
■八雲咲雪 > どことなく、ワクワクしてる自分がいる。
その理由ははっきりしている。
競技人口がふえて、一緒に飛ぶ人が増えるのが嬉しいんだ。
まだ競技人口が少なく、開発する余地のあるこの競技。
マイナーなせいもあって、研究の余地はたくさんあった。
そんな競技に、人口が増え、尚且つ一緒に飛べる子が増えるのは、誰だって嬉しい。
「えっと、履けたら私の手をしっかり握ってください。
絶対に離さないでくださいね。
握ったら、足に魔力を少しだけこめてください」
足に魔力をこめることができれば、ふわ、と浮かぶことができるだろう。
ただし、姿勢は取りづらい――いや、ほぼこけそうになるだろう。
■迦具楽 >
「りょーかい……ええと、コーチ!」
【少しだけ冗談交じりに咲雪をコーチと呼んで。
言われたとおりに手を握る】
「これで、魔力をこめるのよね」
【魔力の類のコントロールはかなり得意な分野だ。
外部の装置に魔力を注ぐ、というのはあまりやった事のない事だけれど。
それでも極微量ずつ行っていけば危ない事もないだろう、と思ったが】
「……あっ、浮い――あ、あれ?
あれれ――わ、うわぁっ!?」
【体が浮き上がった瞬間、とても嬉しそうな表情を浮かべるが。
それはすぐに困惑した顔になり、すぐにあせった表情になり。
最後はぐるん、と。
咲雪と手を繋いでいるにも関らず、ひっくり返るように転んでしまった】
「い――ったぁい!」
【迦具楽は咲雪の隣で、手を繋いだまま、宙返りを失敗したかのように回転して頭を打つ。
スウィングへの魔力供給は即座に停止したようで、今は手だけ繋いで仰向けにひっくり返ってしまっていた。
少しだけ涙目になっているものの、大きな怪我をしたようには見えないだろう】
■八雲咲雪 > 「コーチ……」
ちょっと、どきっとする。
まさかそんな呼び方をされるとは思わなかったのだろう。
少し、嬉しそうな顔をしつつ。
「あ、慌てないで、おちつ――きゃっ!」
仰向けになった迦具楽につられ、押し倒すような形で迦具楽に覆いかぶさる。
が、すぐに迦具楽の頭を確認しに行く。
「迦具楽さん、大丈夫?
そのまま動かないで、横になったままでいて」
頭を打ったのだ。
重症になっていないか、すぐさま確認をしていた。
■迦具楽 >
「あ、うん、大丈夫。
ごめんね、巻き込んじゃって」
【多少痛みはあったものの、痛いだけで特別怪我をした感じはない。
むしろ巻き込んで引き倒してしまった事が申し訳ないくらいだ】
「多分怪我は無いと思うわ。
これくらいでどうにかなるような、まともな体はしてないから」
【言われたとおりに大人しくしているものの。
咲雪が頭を触ってもなんとも無いだろう。
たんこぶの一つも出来ていないくらいだ】
「んー……飛ぶのって難しいのね。
ちょっと軸がぶれたらバランスが保てないんだ」
【さっきの一瞬、浮かび上がった浮遊感。
なるほど足だけで浮かんでいるようなものなのだから、体の軸がぶれればバランスを崩してひっくり返るのも道理】
「――でも、これなら何とかなりそう」
【要するに、バランスを崩さず保つことで浮遊、意図的にバランスを崩すことで機動に変化をつける、そういうアイテムなのだろう。
だとすれば、慣れて体の制御さえ出来れば、何とか飛ぶ位はできそうだった】
■八雲咲雪 > 特にたんこぶのような感触はない。
ほっとし、迦具楽の顔をみる。
「ふふっ、そうなのよ。
靴だけで飛ぶのはバランスがどうしても保てないの。
どこに重心をおいたらいいかわからないから」
いまの一瞬だけで理解できた、というのは有望株だ。
これなら【エアースイム】もすぐに参加できるように――。
「えっ?」
何とかなりそう、と答えた迦具楽に面食らう。
「え、えっと……、どうにかなりそうって……」
■迦具楽 >
「うーん、さすがに二回目でってのは無理そうだけど……」
【新しい世界に夢中で、面食らってるコーチに気づいていないのか。
立ち上がると、早速靴に魔力をこめた】
「……と、ぐ、ぐぬぬ!」
【一人で僅かに浮かび上がると、今度は両手両足を広げてバランスを取ろうと試みた。
《検索》――《該当:読込》――《最適化》――
参考にするのはバランスに重心移動や姿勢を重視するスポーツの選手や、様々な格闘、武道家。
それを自分に合わせて経験として《読込》、今の状況に合わせて少しずつ《最適化》していく】
「ほ……っと……!」
【それでも何とか浮かんでいるのがやっとではあったが、今度はひっくり返ることも無く浮かんで、バランスを崩す前に両足で着地するまでができた】
「……うん、もう少しでコツをつかめそうな気がする」
【――面白い。
バランスを取るのは難しかったけれど、こうして試行錯誤をしてみるのはとても楽しかった。
そう、無邪気な笑顔を浮かべている】
■八雲咲雪 > ――いや、いやいや。
まってくれ、まってほしい。
そんな簡単に足だけで浮かぼうとするのか。
そんな思いが、咲雪の中に芽生える。
なんせ、他の装備なしで浮かぶというのは難しいことだ。
羽根のなかった人間が、地に足をつけていた存在が。
地面をなくして浮かぶという行為が、どれだけのことか分かっているのか、と。
「――」
なにかいいかけたその時、アラームが鳴り響く。
そろそろ、かえる時間だ。
「あ……ごめん、迦具楽さん。
私、そろそろ帰らないと……」
■迦具楽 >
「え、あ、そうなんだ?
……残念、もっと教えて欲しかったのに」
【そう心から残念そうに肩を落とすと、履いていた靴を脱いだ】
「それなら仕方ないわよね、靴ありがと。
そう言えばこのスウィングも、作るにはレギュレーションとかあるわよね?
そういうのって調べてみれば分かるのかしら」
【と、靴を返しながら訊ねる。
咲雪は知る良しもないだろうが、迦具楽は大抵の物質であれば創り出す事ができる。
今履いただけでは難しいかもしれないが、そのうちショップにでも出向いて幾つか製品を眺めてみれば同じようなものは作れるだろうと】
「楽しかったからもっと練習してみたいし、用意してみようかしら。
そしたらまた、色々教えてもらえる?」
【そう、楽しくてたまらないというように輝いた、期待のこもった視線を向けた】
■八雲咲雪 > 「う、うん。それはもちろん。
調べれば分かるし、今後も色々教えてあげますけど……」
まっすぐな瞳をむけられ、ちょっと負けたように、頷く。
そう、競技人口が増える。
凄く喜ばしいことだ。
迷う事もない。
「それじゃ、迦具楽さんまた今度ね」
笑顔で迦具楽にぺこりと頭をさげ、靴を還してもらい、その場を去る。
一緒に飛べる人が、増えた。
その事に胸を躍らせながら――。
ご案内:「訓練施設」から八雲咲雪さんが去りました。
■迦具楽 >
「そっか、よかった!
それじゃあ今後ともよろしくね」
【実際に競技をやるかはわからないけれど。
努力するのは面白かったし、きっと飛べるようになればもっと楽しいのだろうと。
咲雪から教えてもらえるのがとても、楽しみだった】
「うん、またねコーチ。
もう遅いから、気をつけてね」
【そう見送って、姿が見えなくなるまで見送って。
迦具楽はとても清清しい気分で夜空を見上げた】
「【エアースイム】か。
うん、ちょっと頑張ってみようかな」
【見上げてみれば、そこにはまだあの白い軌跡が残っているように感じられた。
それをもう一度、しっかりと思い浮かべて、迦具楽は訓練施設を後にする。
アレほどモヤモヤしていた気分は、いつの間にかどこかへと吹き飛んでいた】
ご案内:「訓練施設」から迦具楽さんが去りました。