2016/08/02 のログ
迦具楽 >  
「……うん、やっぱり私、その性癖にだけは馴染めなさそう」

 『神薙流古武術・震螺』
 手ごたえは十分有ったし、衝撃を伝える事に重点を置いたこの技はどの部位で防御されても、体に当たればある程度の効果は出る。
 だから相当に痛いはず、と思いながらもその表情を見ると頭を抱えたくなる。
 そもそも、人間以外と戦うために考案された武術と技を受けて、喜ぶのなんて変態以外に居ない。
 端的に言って、気持ち悪かった。
 ちなみにこの武術の最適化と使用に消費したのは514kcal。

「あー、うん、私はちょっと友達やめたくなりそう」

 まあ冗談ではあるけれど、僅かに本音交じりだ。
 ましてやさらに次を要求されると、ますますやる気がそがれていく。
 変態って強いなあ、と思いつつ、なるべく大きなコートを作って放り投げる。
 これにも印があり、また動き出した時には魔術をもう一度待機させた。
 このコートによる消費、40kcal。

「何もしない、って言うのも一つの方法かしらね」

 飛んでくる刀は完全に無視して、足元を狙いにきた石蒜に向けて腕を振りかぶった。

   convert
 ――《変換》――

 腕の材質を軟化させ、網状に形状を変える。
 腕が変化した網には熱量を消費して電気を通した。
 その動作の最中に刀が迦具楽に命中するが、やはり音を立てて弾かれた。
 それと同時に投げ捨てたコートがばらばらに千切れ、転がっていたスコップが粉のように砕けるのが見えるだろう。

 そしてそのまま腕を振り下ろす。
 足元に来たところを、網で捕まえるような動作だ。
 ここで網に捕まれば、捕獲されて電気ショックが待っている。

 この腕の変形と電流による消費、114kcal。

 

石蒜 > 「釣れないなぁ。石蒜、すっごい楽しいのにっ。」
刀はやはり弾かれた、と同時に視界の端で投げ捨てられたコートとスコップが破壊される。さっき当たった時も硬い物にあたる音がしたはず。
ようやく理解できた、印のある物に被害を肩代わりさせているのか。

理解できたところで、今度は迦具楽の腕が投網になった。なんとも芸達者なことだ。
目の前で投網が広がる。痛みに鈍る体では滑走の姿勢をすぐには変えられないし、慣性にも逆らえない。
このままでは捕まえられてしまう。微かに鼻に届いた空気を焼く匂いからするに、電流が流れている。
「っ!」
力を込めるだけで激痛の走る左腕で、思い切り地面を叩いた。
全開にした斥力で石蒜の体は跳ね上がり。
「あはっはははっ!」
電流の流れる網ごと迦具楽に抱きつこうとする。
一緒に楽しもうよ!

迦具楽 >  
「――げっ」

 また驚かされる。
 目が丸くなりつつ、けれど思考は別に動く。
 網にした右腕以外の皮膚の材質を、絶縁体に《変換》した。
 この変換の消費、175kcal。

「よ、っと」

 とりあえず、電気を流した網ごと石蒜を受け止めて。

「……楽しい?」

 そうなんとも言葉にしがたい表情で聞きながら、しっかり抱きしめて捕まえた。
 

石蒜 > 「~~~~~~ッッッ♥♥♥♥」
筋肉が勝手に収縮して、まるで抱き返すように迦具楽の背に手が回った。
電流で痙攣する体では言葉を返すことは出来ないが、石蒜の目が恍惚に歪むことで返答した。最高に楽しい、と。

いくら痛みが快楽に変換出来る異能を持つ極度の被虐趣味者でも、電流を流されては身動きを取りようもない。
迦具楽が開放してくれるまで独特の痛みを楽しみながら抱き合うことになるだろう。

迦具楽 >  
「あー……どうしよう、これ」

 楽しそうなのは、もうこれでもかと言うほど表情でわかるものの。
 このまま抱き合っているのもわりと精神衛生に、とても微妙によくない。
 日本語が困った事になるくらい、ちょっときもい。
 友達にこんな事を思うのは流石に申し訳ないところもあるのだけど、きもい。

「……まあいいや」

 使った分だけ回収して解放してあげよう。
 そう思って、石蒜と接触している部分から熱量を奪っていく。

 ――熱だけ、体温だけ。

 流石に友人の魂を食べて色々盗み見てしまうのは気が咎めるらしい。
 そのまま体温を奪い続けて、寒くて体の動きが鈍くなる程度まで奪うと、網を腕に戻し、電気を止めて石蒜を解放した。

「はい、今回はこれでおしまいね」

 と、さりげなく石蒜を見下ろしながら終了宣言。
 今回の消費、1173kcal
 石蒜の体温、priceless

 

石蒜 > たっぷり感電した上に体温まで奪われた石蒜は、地面に倒れたまま緩慢に体を丸めた。
「うぅー……。た、たの、し、かった、けど……負け、た…。」
舌をもつれさせながら、途切れ途切れに呟く。消耗しているようだ。

「かっ、かぐ、ら、さ。よわ、く、なった?……前、さ。き、斬っ、ても、平、気…だ、った、じゃん…。
あ、あんな、か、かた…か、肩、代わり、させ、なくて、も、よ、よか、った、のに…。」
胸元で両手を擦り合わせる。視線は手元を見つめている。今は顔をあげるのもしんどい。

迦具楽 >  
「はいはい。
 なんかもう、精神的には私が大敗してる気がするんだけど」

 震える石蒜を、屈んで体をさすってあげる。
 ちょっと食べ過ぎたような気が、しないでもなかった。

「んー、弱くなったかって聞かれると、多分、ものすごく弱くなったと思う。
 もう全身をあのときみたいにするのは出来ないし、切られたら……というか、人が死ぬような損傷をしたら死ぬと思うし」

 恐らく、石蒜の刀が刺さっていたり、最初に斬られていたりしたら、あっさりと死んでいたに違いない。
 だからこそ、色々な防御手段を考えては蓄積しているのだ。

「……期待はずれだったかしら」

 だとしたら申し訳ない。
 そう思いつつ、顔を覗き込む。
 迦具楽自身は今の自分を気に入っているのだが、それが友人をがっかりさせていたらと思えば、少しは申し訳なくも感じるのだ。

 

石蒜 > 「ま、負け、はさ、負け、だよ。ん…あ、りがと。」
冷えて疲れきった体に迦具楽の体温が心地よくて、目を細める。

「そ、っかぁ……。ううん、楽しかった、よ。期待してた、迦具楽とは、違ったけど…。
迦具楽、もさ、変わったんだ、なぁ、って、思った、んだ。
体が、弱く、なった分だけ、手を、変えて、さ、戦えるんだ、もん……。石蒜、はね、弱く、なっても、変わらない、から、負けたんだよ、きっと。」
石蒜の顔は先程までとは打って変わって酷くしおらしいものになっている。かつての石蒜なら、這いよる渾沌をその身に宿していた石蒜なら、全身を衝撃が突き抜けようと感電しようと変わらず戦えただろう、だがもうその力は無い、無くしたからこそ今もこうして生きていられるわけだが。
「はー……、ごめん、ウジウジしちゃった。サヤみたいだね。」
右手を地面について、上体を起こす。いつまでも土の上に横になっていたくはない。

迦具楽 >  
「……どうかなぁ。
 まあ石蒜が相変わらず性癖に素直すぎたのは、多分敗因の一つだとは思うけど。
 でも、私が変わったかといわれると、どうなんだろう。
 私はただ、多分、生きていたいだけだよ。
 生きていたい、死にたくないから、必死になって身を守る方法を考えてる。
 それはあの頃も、今も変わってない」

 表面に現れている部分は変わっているのかもしれないけれど。
 その根幹は少しも変わっていないのだ。
 状況が変わって手段が変わった、それだけでしかない。
 それが出来なかったから石蒜が負けた、そう言うのならその通りなのだろうけれど。

「ウジウジしたっていいじゃない。
 私もさんざんウジウジして、好きな人に甘えて、友達に甘えて、ようやく立ち直れたんだから。
 ……うん、そうね。
 石蒜の言うとおり、私も変わったみたい。
 きっと私を受け入れて、友達になってくれた人たちのお陰じゃないかしら」

 あの頃は、人間は全部食べ物でしかなかった。
 言ってしまえば、料理が服を着て歩いているようなものでしかなかったのだ。
 美味しい物を後回しにしたり、より美味しくなるのを待ったりはしたし、その中でも特別な存在がいたりはしたけれど。
 それが今では、友達だったり、頼ったり頼られたり、ただの食べ物としては見れなくなりつつある。
 そういった精神面の変化が、思考や行動に現れていないとは、きっと言い切ることは出来ないだろう。

「だからなんだ、って話だけどね。
 まあ、私に勝ちたかったら、私よりも変わって見せる事ね」

 起き上がった石蒜の頭をぽん、と叩いて立ち上がる。
 ちゃんと遊んだのだから、とりあえず約束は一つ完了だ。
 一人満足げに笑いつつ、うん、と大きく背伸びをする。
 

石蒜 > 「死にたくない、そっか……。」
迦具楽の耐久性が人間並なら、今の戦闘で何度か自分は迦具楽を殺しかけたことになる。
だが迦具楽の攻撃はどれもこちらを殺すようなものはなかった。
「迦具楽は死にたくないのに、石蒜、殺すところだったんだ。ああ、良かった、迦具楽が生きてて。」
顔についた土落とすためにゆるゆると顔を振るが、汗と一緒に張り付いた土はほとんど落ちなかった。

「友達かぁ……。石蒜もサヤも友達は……迦具楽でしょ、畝傍、は恋人だけど、あと千代田と、風間と……うん…。」
友達、と呼べるような相手は片手の指で足りる程度だった。
石蒜はそもそも畝傍と千代田以外の相手にはあまり興味を持ったことはない。
その生き方を後悔するわけではないが、改善した方が良いかもしれない、とは思うのであった。
肩をすくめると、左腕の痛みが走る。

「変わる、かぁ……。うーん…わかった、次は負けないよ。」
満足気に伸びをする迦具楽を見上げながら、迦具楽の言葉を思い返す。生きていたい、ウジウジしてもいい、自分も好きな人に甘えて、友達に甘えて……好きな人?!
「……ちょっとまって、今好きな人って言った?
迦具楽好きな人居るの?それ、えーとー……名前が二文字でサから始まる?」
サヤの記憶ではサヤは迦具楽に片思いしていて、迦具楽は特に相手は居ないはずだ。
でもそれも随分前の記憶だから、相手ができていてもおかしくはない。
確認しておかないと…!

ご案内:「演習施設」から石蒜さんが去りました。
迦具楽 > 【時間が延びすぎたので中断します。ルームは気にせずお使いください】
ご案内:「演習施設」から迦具楽さんが去りました。