2016/08/12 のログ
滝川 浩一 > 「はは…」

乾いた笑顔でそう返す。
スタート地点が違う。その通りだ。俺はみんなより遅くスタートした。本来、この学園に一年以上いるはずなのにそれができなかった。
一年…もう一年早く生まれていれば、もう一年早く異能が発現していれば、もう一年早く勉強をしていれば
もっともっと早く何かを実行できていれば、努力していれば、滝川 浩一という名で風紀委員の一員になっていたのではないのか?
唐突に自己嫌悪が襲ってくる。今までの怠慢のツケが今の自分にのしかかってきているようで不安になり、冷や汗をかく。

レイピアの突きを見て、それをとても遠い存在のように眺める。
拳を握り、下を俯くと自分の不幸と努力不足を呪い、下唇を噛む。

那岐夜車丸汀 > 「今日の実験は…34点でしょうか。全て倒れる時間がかかり過ぎましたし。
 もっと効率の良い方法を模索しなければ。…異能のレベルを上げるわけにもいきませんし。
 色々と努力と鍛錬を致さねば。…楽器を弓に変更して物理を専攻すべきか……ああ。すみません 色々と考えておりました」

考えたら 色々と入学後にやっていた。
地図を作って 島の構造を調べていた。目的は脱迷子だった。
幼女姿になっていたのは 変化術の習得と応用について自己実験で幼女になっていたとも。
猫とか犬とか動物になってはいたがあれでは人の言葉が喋る事が不可能だった。

次は 護衛の要らない効率の良い魔法剣士的なスキル習得だ。
レイピアの様な弓をどこかにしまい込むようにしまい込むと手ぶらとなって。

そろそろ帰らないとご主人様が直で来られてしまいそうな気がしてきた。
僕としては避けなければならないし 後が大変だ。

「滝川さま 顔色が聊か… な、なんでもございません。
 私そろそろ お暇を致しますので… お先に失礼致しますね?」

どう声をかけたらいいか分からない。ドギマギした挙句、
居た堪れない様に? 彼に向って会釈をすると 去る前に訓練施設で派手に実験をした事を伝える為に そちらと寄ってから去っていった。

ご案内:「訓練施設」から那岐夜車丸汀さんが去りました。
滝川 浩一 > 「っ…はい。これからも訓練頑張ってください!ファイトです!」

顔から不安と焦燥、負の感情を抜き取ると笑顔で汀に向かってそう返す。
努力。今の自分に必要なのは努力だ。勉強、運動、筋力、技術、体力、知能、異能、魔法、技能。
全てを強化、習得するには努力が必要だ。
しかもただの努力じゃだめだ。人一倍…いや、人三倍の努力が必要だ。今までやってこなかったツケをようやく返す時が来た。

恐らく、異能が発現しなければもっと酷かっただろう。
誰も居ない田舎で、誰も咎めない環境で、ただ必要最低限のことを必要最低限の時間で努力せず、ただ余った時間を無下に浪費することになっただろう。

去っていく汀の背中に手を振りこう考える。

(努力しよう。筋力が足りないなら筋トレしよう。知識が足りないなら勉強しよう。技術が足りないなら繰り返そう。知らないものを減らし、知ってるものを増やす。

何もかもを覚え、何もかもをこなし、みんなに追いつこう。
これが俺、滝川 浩一に残された、唯一のハッピーエンドへの道なのだから)

心の中でそう決意すると立ち上がる。
その握った拳には不安や焦燥は消え、ただ燃え滾る闘志が宿っていた。
そして最後にこう呟き、再度訓練へと赴いた。

「都会に来て、よかった」

ご案内:「訓練施設」から滝川 浩一さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に糸車 歩さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」に滝川 浩一さんが現れました。
ご案内:「訓練施設」から滝川 浩一さんが去りました。
糸車 歩 > 夏休みも盆の時季になり、帰郷や墓参りの準備などで人もそこまで居ない訓練場。
そこに現れたのは、白い厚手の袋が4つ5つ、積まれた台車を押している少女。
ぶつけないように気をつけながら、空き部屋の一つに、入る。

中を見回し、備え付けの端末のところへ歩いていくと、物理、魔術様々な発射装置を起動させた。

「的を設置するのはあの辺ですから、……5m……10m……これくらいに設置すればいいかしら」

んー、と口元に指をあてて少し考えると、
弾の種類、速度や角度や位置を細かく指定し、白い指でタッチパネルを操作する。
5m、10m、20m、30m。
それぞれの位置に砲台がスタンバイするのを確認すると、台車に置いてある袋の口を開け、
針金のフレームスタンドや、1m四方のクリーム色をした布、網目も色々なピンク色のネット、それに、紐が付いた毛糸玉のようなものを取り出した。
それぞれの数は、ざっと数十枚。
一枚一枚数えて、合っているのを確認すると、少女はフレームスタンドを組立て、砲台の射線上──最初の砲台から5m離れたところに、重しをつけてしっかり固定した。

糸車 歩 > そこに、1m×1mの布をもってきて、4隅を針金に括り付ける。
ちょうど、砲台に面を向けるようにスタンドの向きを調節すると、空いた箇所にも布を結びつけていった。
一度に張ったクリーム色の布は、合わせて4枚。
スタンドの上下左右に一枚ずつ、十字型に固定されている。

「これでよし、と。さて、はじめましょうか」

ぱたぱたと端末の傍へ戻っていき、万一に備えて自身の前に障壁を出現させてから、砲台を起動させる。
まずは5m、それから10m地点。発射されるのは、通常の拳銃にも使われる鉛弾。

1発、2発。
発射されれば、銃弾が布へ向かっていく。それらは標的に穴をあけて貫通、後方へ飛んでいくかと思われたが。
ボスッ、バスっと間抜けな音を立ててはじき返され、ひしゃげた鉛玉がフロアに転がった。

糸車 歩 > 少女は腕を組みその様子を眺めていたが、ふんす、と鼻を鳴らし、さも当然であるかのように次の射撃を行わせる。
10m地点、20m地点、30m地点。
いずれも銃弾は跳ね返され、布には若干の皺ができるものの、全体としてそう大きな損傷はない。
一般的な銃撃に対する耐性は、ある程度みられるといっていいだろう。

「後はこれを裁断して、耐久度が落ちなければ、一応は成功ですわね。
もっとも、ライフル弾による狙撃等に対しては効き目が薄いでしょうけれど……」

装置を一旦停止して、次に取り出したのは、ピンク色をした網。細かさは3mm 5mm 8mm 10mmと、4種類である。
先程の布を丁寧に外して、代わりに一面にネットを張る。
遠目に見ると粗いストッキングのようにも見えるそれに対するのは、魔術の弾を撃ち込む装置であった。
プログラム上では、火球、氷片、空気砲、石弾から選び、撃ちだす仕組みである。

「素材の都合上、火球と空気砲は自信があるのですけど。他がどうなるか……とくに石弾」

小さくつぶやくと、射撃を続行させる。

糸車 歩 > 結果は、網目の細かさによって異なるものであった。
3mmと5mmは石弾以外はすべて弾き、
8mm、10mmのネットが防げたのは、空気砲のみであった。

「うーん、やはり石弾は無理でしたか。この様子だと先程の鉛弾も防げなそうですわね。
網目を細かくすれば、氷片も防げるのは大きいですが、これ、単に目が細かくて氷柱が刺さらなかった可能性もありますし。
うーん。もう少し考えてみましょうか」

腰に両手を当て、ため息をつく。
今回は単発だからこういう結果になったが、仮に火属性であっても炎柱を上げるほどの火力だったらどうなるだろうとか。
他の属性、例えば電気や光線などは通すのかとか。
これは、まだ改良が必要だろう。

「先程の布と組み合わせれば……でも現状じゃ肌触りが最悪……」

ぶつぶつと呟きながら、ネットを外して熱を冷やし、落ち着いたところで筒状に丸める。

ご案内:「訓練施設」に滝川 浩一さんが現れました。
糸車 歩 > 射撃装置を停止させて、待機状態へ。
端末でそれぞれに指示を出した後、オートで回収され姿を消すのを見ながら、布やネットを袋にしまい込む。
最後に取りだしたのは、大小様々毛糸玉のようなもの。40cmほどの紐がついており、端には持ちやすいように結び目がある。

「もうすこし紐を伸ばしたほうがいいんでしょうか。体格差もありますし」

少女はそう言いながら、紐の端を握って軽く振り回すと、ひゅんひゅんと音を立てた。
確かに、自分に合わせてしまったからこの程度の長さだが、長身の方ならばいささか窮屈に感じるだろう。
だが、それはそれとして。
射撃場によくある的を呼出し、距離を目視で測る。ざっと15m。今回はそこまで飛ぶようなものじゃないので、
肩の上で振り回し、勢いをつけて纏めがけて放ると。

毛糸玉は緩やかな放物線を見て飛んでいき、的のわずか数センチ前でばあっと放射状に広がれば、漁網のようなものがばさりと音を立てて的へかぶさった。

糸車 歩 > 開かれた口からでたのは、喜びとは程遠い、機嫌の悪そうな低い声だった。

「お そ い」

標的に命中。無事網を展開したにもかかわらず、その表情は険しい。
しばらくの間、光の消えた眼でかぶさった網を睨みつけていたが、やがて肩を落とし、ため息をついた。

「はーぁ。やっぱり人族のやり方じゃ、のろますぎますわ。
一体、構えてから当てるのに、何十秒かかるのか」

滝川 浩一 > リュックサックを背負い、周りをキョロキョロ見ながら訓練施設の廊下を歩く。
風紀委員会に入りたいという志を叶えるため、まず何を極めるかを考える。

(俺みたいな異能だけで学園都市に来た奴なら、当然の事ながら異能を極めるだろうな…。
個人がそれぞれ持ち得る異能はオンリーワンの物で、誰かが気安くアドバイスして上達するってわけでもなさそうだ。

それで成長しにくい…と言われればたぶん違うだろう。
例えば、異能は手足のようでやろうと思えば案外すんなりと使いこなせるのではないか?
赤ん坊がアドバイスされないと手足を動かせない。なんて馬鹿げた話聞いたことない)

だが、彼が異能を極めても、それこそオンリーワンだからこそある弊害に差し掛かる。
それの解決をするため訓練施設へ来た。
幸い、お盆で帰省している連中が多いのか、施設はがら空きだ。

「ここで良いか」とつぶやきながら一つの部屋の扉を開けると、
紐を振り回し投擲している糸車の姿を見てとっさに扉を閉めた。

糸車 歩 > 「……あら?」

ぎゅる、とすごい勢いで振り返ると、沈黙する扉を凝視する。
今、扉の開くような音がしたのだが。首を傾げるその顔からは、既に鬼気迫る表情が消え、瞳には光が戻っている。

「うーん、誰かの声が聞こえたような気がしたのですけれど。
……確かめてみましょうか」

すすす、と音もなく歩くと、ドアの取っ手に手をかける。
特に抵抗もなければ、外の様子をうかがうだろう。

滝川 浩一 > 「………ど、どうも」

目の前の扉が開き、美術館で出会った女性が目の前に出現すると
笑顔でそう挨拶する。
しかし、顔が全体的に引きつっており笑顔としては不自然。また冷や汗を掻いており、何より腰がとても引けていた。

(ま、まさか人がいるとは思わなんだ。というか、さっきのアレ…何!?
めっちゃ紐まわしてたよ!?カウボーイって奴か!?)

頭の中でグルグルと色んな事が渦巻き、
もしや見てはいけないものを…という不安感が迫ってくる。

糸車 歩 > 「あらあら、誰かと思えば。
浩一君じゃない、こんなところでどうしたの?」

つい数日前に美術館で会った少年が、開けた扉の向こうにあらわれると、少女の表情がぱあっと明るくなる。
なんだか笑顔が引き攣っているが、緊張だろうきっと。

「って、遊びに来たわけじゃないよね、ここは訓練施設なんだし」

片手で扉を開けて固定し、どうぞ、と空いた手で招き入れよう。
部屋の中はそれほど目立ったものはない。しいていえば奥の方にネットをひっかぶった射撃の的が立っていることと、
手前側に袋をいくつも積んだ台車があることくらいか。

滝川 浩一 > 「あ、あぁ…ありがとうございます。失礼します」

何とか落ち着こうと深呼吸をすると、普通の笑顔に戻って促されるまま部屋の中に入る。
ネットのかかった的と荷台の袋を見て、何をやっていたかというのがとても気になりだす。

しかし、敢えて聞き出すなどという野暮ったいことはせず、荷台の近くに自分のリュックサックを置き、口を開く。

「えぇ、まぁ、そうですね。異能の訓練をしようと思いまして」

明るくなった彼女の表情に合わせようとこちらも明るい笑顔で答え。

糸車 歩 > 少年がリュックサックを置いていると、少女は扉を静かに閉めてから、的のある場所へ音もなく歩いていく。
その途中、少年の視線の先にある荷台に気づいた。

「……気になる?」

確かに、ときに模擬戦が行われるような場所に、店先にありそうな台車があれば気を引くという物だろう。
ちなみにこのカートは学園から借りた物である。
的にかぶさった網を引きはがしながら、ふうん、と考え込む。

「そうなんだ。異能……そっか、浩一君は能力者なんだ。
邪魔はしないから、見学してって、いい?」

他人の異能や魔術など、ホイホイそう間近で見られるとは限らない。
なので、首だけ振り向き、とりあえず聞いてみる。

滝川 浩一 > 「まぁ…ほんの少しですけど」

少女の声を聞き、荷台から視線を逸らして少女の方を見る。
確かに、これほどまでの大荷物、中身が何なのか多少気になる。
的にかぶさった網を見る限り、袋の中には網や布、または武器が入っているなど自分なりの想像を立てながらそう返す。

「いいですけど…そんな面白いものじゃないと思いますよ?」

少女にそう返し、荷台から離れ的に向き合うように位置取りする。
的からは大体20mほどだが、実際のところ攻撃訓練ではなく異能で何を生成できるかの確認だけだ。

もし仮に生成に成功したとして、使えるかどうかの確認。
ただそれだけの見栄えの無い訓練だ。

糸車 歩 > 網を引きはがし終えると、くるくると縦横に複雑に畳み、丸めてひもで縛った。
台車のところまで戻ってくると、袋の口を開けて紐やフレームスタンドを片づける作業にとりかかる。

「見ての通り、布、網、あと毛糸の束かな。
武器とか、貴金属を期待してたらごめんね」

申し訳なさそうに言いつつ、袋の中身を見せる。
そこにはピンク色の網らしきもの、クリーム色の布、後細かな道具が数えられるほどあった。

「ん。だいじょーぶだいじょーぶ、
そういって謙遜する人は大抵面白い力もってるから」

きらきらと期待のまなざし、あっこれハードル上げる奴だ。
少女は荷台に寄り掛かり、積み重なった袋に体を預け、よりかかった。
視線は、位置を調整している少年に向けられている。

糸車 歩 > 【続きます】
ご案内:「訓練施設」から糸車 歩さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から滝川 浩一さんが去りました。