2016/10/10 のログ
ご案内:「訓練施設」からソニアさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から滝川 浩一さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」に美澄 蘭さんが現れました。
美澄 蘭 > ここのところの蘭は、発表会への追い込みのため、昼間にまとまった時間が出来ればまず音楽実習棟に篭っていた。
特に休日は、午前午後合わせて6時間くらいは篭っている。
いい加減、頭の中がピアノの音が一杯になって感覚が麻痺しそうだった。

…そんなわけで、休日の夕方、日照時間の終わり頃。
蘭は、気分転換に訓練施設を訪れたのである。

美澄 蘭 > いつもより、やや大股の歩き方。
力の篭った身体の調子で訓練スペースに入り、訓練用の端末を操作する。
いつものメニュー、コゼット先生の元素魔術の練習仕様だ。

「…これでよし、と」

まずは、水晶体の的を、半径10mの半円状に出現させ…蘭自身は、その中央に、的が描く弧と対峙するような向きに立った。

美澄 蘭 > す、と、水晶体の的の方へ、軽く広げた腕を伸ばす。
一秒数えないくらいの間、目を閉じて、そして…開いた時、瞳には意を決したような光が浮かんでいた。

「『フレア・フレア』!」

黄色がかった橙の炎が、10m半径の標的を丁度飲み込むように、半円状に広がった。
炎が消えた後…そこには、鮮やかな緋色に染まった水晶体。

「…うん、いつも通りね」

蘭はそう口に出すが、分かりきっていることではあった。
何せ、どの程度の加減をすれば、どうなるのか…元素魔術に関しては、かなりの精度で分かるようになってきていたからだ。

美澄 蘭 > そして、的をリセットすると…今度は、5m半径の半円状に水晶体を出現させる。
再び、その中心に立つ。両手を手を的の方にかざし、目をつぶる…自らの中の「力」を、感じ取る。

(同じように魔力を籠めたら、きっと…)

予測を立てて目を開く。そして…

「『フレア・フレア』!」

同じように唱えた。5m半径の標的丁度の範囲に、真っ白の炎が高く、高く広がる。
先ほどと同じだけ…しかし、狭い範囲に籠められた魔力。それを受けた水晶体は、同じように鮮やかな緋色に染まりながらも…魔力の氾濫、躍動を反映するかのように、生きているかのごとく色彩を蠢かせていた。

「………凄い…何が起こってるのかしら、これ………」

蘭自身も、始めて見る光景らしい。的の傍に近寄って、しげしげと見つめる。
…と、少しの間そうしていてから、携帯端末のカメラ機能で動画に収めた。よほど興味深かったものらしい。

美澄 蘭 > 動画に収めて満足したのか、蘭は再び的を一旦消して…再び、10m半径に的を設置した。
同じような位置に陣取り、同じように集中する。
そして、次に唱えるのは…

「『アクア・アクア』!」

天井に届きそうなほどの大波が、10m半径の半円、放射状に広がり、そして水晶体の的を丁度飲み込んで消えた。
残ったのは、海のように深く青い色をした水晶体だけである。
物量で攻撃しても、魔力が消費されればそのものが残らないという点で、魔術は「便利」だ。

美澄 蘭 > (…まあ、外での使いどころなんて今のところないんだけど)

そんなことを考えながら、再び的の状態をリセットする。
そして、先ほどと同じように構える…が、今回は目を閉じる時間が長い。

(さっきの時点で天井に近かったから、単純に圧縮したらぶつかって面倒ね…
籠める魔力を減らしたら比較にならないし…)

そして、しばし考えるように静止する。

(………詰め込みましょう)

何か、少女の中で結論は出たらしい。意を決したように、目を開いた。

「『アクア・アクア』!」

蘭がそう叫ぶと、蘭の足元から、渦を巻きながら天井スレスレの大水が発生し、半径5mの的を飲み込む丁度の範囲に、放射状に展開した。
大水が引いた後、残ったのは深い青が内部で渦巻く水晶体。

「よし、制御成功」

蘭は、小さくガッツポーズをとった。

美澄 蘭 > どうやら少女は「気分転換」に、自分が扱う属性の放射魔術の多重詠唱を、一通り試していくつもりらしい。
再び、無色透明の水晶体を半径10mの半円状にセットする。

「『エア・エア』!」

同じような準備、構えから繰り出された風の魔術は、もはや風というよりも「侵攻を許さぬ空気の壁」であり、質量すら備えているように思われるものだった。
その空気の壁を受けて、水晶体が、孔雀石のような鮮やかな緑に染まる。

「『エア・エア』!」

5m半径に範囲を狭めた二重詠唱で起こったのは、拒絶するだけでなく、圧し潰すかのような大気の奔流だった。

美澄 蘭 > (前より魔術の練習の時間は減らしてるけど…調子は悪くないわね。
放射魔術の出力に慣れてきたかしら?)

そんなことを考えながら、端末を操作する。
地の元素魔術はやや苦手だ。それなりに意識して取り組まねばならない。
同じようにまずは10m半径の試し撃ち、手を軽く肩幅くらいに広げて的の方に向けて差し伸べ、目を閉じて、集中して…

「『ガイア・ガイア』!」

水の放射魔術に近い規模の砂の波が、10m先、半円状に展開した水晶体を丁度飲み込んで、落ち着く。
水晶体は透明度のないアースカラーに染まりきっていて、砂の塊の鉱物を磨き上げたかのような、奇妙な様相を呈していた。

美澄 蘭 > 続いて、5m範囲の放射魔術。
同じように構えて、目を閉じて…水の時同様、少し長めに「計算」をする。

(…「砂」だと、ぎりぎりね。
実戦で使う気にはなれないけど…)

そんなことを考えて…目を開く。そして…

「『ガイア・ガイア』!」

展開されたのは、まさに「凶器」のごとき術式だった。
蘭の足元を出発点に、雨後の筍か何かのように波を作りながら飛び出すのは、人の身の丈を超える岩の槍だ。
岩の槍の波が、5m半径に次々と突き出し…そして、丁度標的の水晶体を飲み込んだのをきっかけに、一斉に砕ける。
残された水晶体は流砂か何かのように蠢くアースカラーで、ともすれば水晶体の表面に、実際にあるはずのなめらかな表面とその光沢すら、見失いそうなほどだった。

「………練習としては成功だけど、人がいる場所では使えないわね………」

そんなことを微妙な顔と声で呟きながらも水晶体の状態はちゃっかり動画に録画するあたり、「成績」の観点からはまんざらでもないらしい。

美澄 蘭 > ここからは、基礎を少し離れた「発展」だ。
二重詠唱は、まだ練習していない。
まずは10m範囲に的をセットする。
集中して、魔力を「計算」して…

「『フロワ・フロワ』!」

蘭の足元から、先ほどの岩の槍のように、尖った氷塊が波のように次々と発生し、10m先の標的に向かい…そして、飲み込む。
エンジェライトのような美しい…しかし、透明度のない淡い青に、水晶体が染まりきっていた。

美澄 蘭 > 次は、5m半径の範囲だ。
位置取り、構え…そして「計算」。
何となく、「いける」と思って…

「『フロワ・フロワ』!」

蘭がそう叫ぶと…蘭の眼前に、鋭利な氷を術式展開範囲に寄せ集めたような、「山」が出来上がった。
「生えた」のではなく…「生まれた」。一瞬で。

「………刺さらないけど、これはこれで危ないわよね………?」

そんな、当たり前過ぎることを言いながら出来上がった「山」をしげしげと見つめるのは、わずか数秒のこと。意識しなければ、魔力で生み出した元素の塊は残らない。
そして、氷の「山」が消えた後に残った水晶体が、その中で透明度の無い淡い青を激しい吹雪のように渦巻かせているのを、動画に収めた。

美澄 蘭 > そして…最後は、今まで散々制御に苦労させられた、「雷」。
まずは10m範囲で、慎重に魔力の「計算」を—

(………え?)

強烈な違和感を覚えたのか、不安そうな顔で目を開いて、両掌を自分の方に向け、瞬きしながらしばし見つめる。
…が、再度しきり直して同じように構えをとって、目を閉じ…

(………やっぱり、そう。「そんなにいらない」みたい…
………今までまともに「最適化」出来てないんだし、やってみる価値はあるでしょ…!)

唇を軽く噛みながら、目を開く。どこか、自棄が入ったかのような、攻撃的な視線。

「…『サンダー・サンダー』!」

蘭がそう叫ぶと…半径10mの範囲を埋めるような、雷の雨が降り注ぐ。
しかし、その雷の雨は半径10mちょうどに収まっており…その「雨」が止んだ後の水晶体は、神秘的な濃さと不透明さを持った青紫色に染まっていた。

「………ほんとだ、「アレ」でいいんだ………」

信じられないように目を大きく見開きながら、水晶体の方に近づいて、一つ一つをしげしげと観察し…たまに、端末で写真に収める。

…実は蘭は、今までの放射魔術に比べて、籠める魔力の量をかなり減らしていたのである。

美澄 蘭 > (…こんなに、効率の差って出るものなのかしら…?)

そんな疑問を持つが…今はそんな調べ物に時間を割く余裕はない。
一旦脇におくことにして、5m範囲の放射魔術を試すことにする。
同じように構え…「計算」。

(………ぎりぎり…いける?)

出力の仕方こそ違えど、同じ二重詠唱だ。魔力の籠め方を変えたくはない。
周りに誰もいないのを良いことに、目を開けて…「踏み込む」ことを選ぶ。

「『サンダー・サンダー』!」

5m半径の範囲が、雷の白光一色に染まる。
範囲から漏れることこそなかったものの…光が消えた後に残った水晶体の色は、白光と近い、白に近い黄色だ。そして、その中で雷の鳴動に共鳴するかのように「色」が震えている。

「………うーん…際どいわね…」

と言いつつ、水晶体の様子はしっかり動画に記録する蘭だった。

美澄 蘭 > そうして、少し思案がちな顔こそしているものの。
最終的に、蘭の顔はどこかすっきりしていた。

「………よし、気分転換兼魔術練習終わり!」

いつの間に本気の魔術練習になったのか、全ては蘭の頭の中にしかない。
とりあえず、そう言って両手を勢い良く頭上にあげて「バンザイ」のポーズをした後、端末を操作して、訓練スペースの状態を元に戻す。

そのまま、最初とはうってかわって適度に力の抜けた軽い足取りで、蘭は訓練施設を後にしたのだった。

ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。