2016/12/03 のログ
飛鷹与一 > 「……いや、うんまぐれだろう。取り合えず続けてみよう…」

スコープから一度顔を離し、若干だが何時もの気だるそうな雰囲気も消し飛んでいた。
緩く頭を振ってから、再度スコープを覗いてボルトアクション。
ガァンッ! 2射目…ヘッドショット ガァンッ! 3射目…ヘッドショット ガァンッ! 4射目…ヘッドショット。

(………えぇ~…?これ、銃に何か仕込んであるんじゃないのか…?)

そう思うのも無理は無いだろう。そして5射目。今度はわざと狙いを下に逸らす感じにしたのだが、見事に心臓辺りをぶち抜いていた。
最早何と言うか言葉が出ない。ヘッドショットとハートブレイクオンリーである。

「……ああ、うん。我ながらどうなってるんだろうな…これ…」

マガジンにはあと5発入っているが、それを撃つ所ではない。まさか狙撃に適性があったのか?自分は。

(…まさか、名は体を表す的なのが本当になったと?いや、あの先輩の当てずっぽうだろう…それ以前にこれ護身向きじゃないだろ…)

どう考えても後方援護とか暗殺向きです、ありがとうございました…いや、ありがたくないが。

飛鷹与一 > 「……いや、今さっき初めて銃撃ったばかりの俺がこれはおかしい…まぐれだな…まぐれ…うん…」

思わず銃を下ろして頭を抱えて唸る。別にこういう才能や適性が欲しい訳ではないのだが。
そう、あくまで護身の延長上の武器でいいのだ。それ以上は自分には荷が重すぎる。

今回のこの狙撃練習だって、半ば銃を撃てる機会がある、というつもりでやってみた気持ちが多分にある。
何より、ただの新米風紀委員がそもそもスナイパー役なんてやる事がまず無い。
よほどの大事件か騒動が起きたときの鎮圧、その後方援護くらいだろうに。

「……狙撃の適性より魔術の適性が欲しかったな…せめて…」

自分はとことん魔術と相性が悪いのか、もしくは才能や適性がどっかに飛んでるのか。
手に持った狙撃銃を、何時もより2割り増しくらいにどんよりとした死んだ瞳で見下ろす。

飛鷹与一 > 「……那須与一だったらせめて弓の方がまだマシだった気もするけど」

別に与一という名前は偶然のもので、何の関係も無い筈…だが、驚異的な射撃の腕前、というのは共通事項、になるのだろうか?

「…何だろう、ますます魔術から遠ざかっている気が…本当に適性が無いのかな、そっち方面は」

初歩の初歩的な魔術すら使えない。魔力はあるし、座学も平均値はキープしている。
なのに使えない。魔力を魔術として形にする機能がまるで欠落しているかのようだ。

訓練を続ける気にもなれず、取り合えずマガジンを外してから狙撃銃をボストンバッグに押し込めるようにして片付ける。

(一応、結果報告するように○○先輩には言われてるし…気が重いな…)

その先輩のおふざけ半分の言葉が、もしかしたら本当だったのかもしれないのだから。
…嗚呼、本当に気が重い。役立つ箇所も限定される技能を持ってもな、という思いもある。
もうちょっと、こう汎用性がある技能とかならまだしも。

飛鷹与一 > 「……どうせなら…全弾撃ち尽くしてから帰ろう」

コンソールを操作して的を片付けようとしていた手をフと止めて。改めてボストンバッグから狙撃銃を取り出す。マガジンを装着し、ボルトアクションで装填。残りは5発。

銃を構えて振り向く。狙いは150メートル先の的と、200メートル先の的。徐にスコープを覗いてから一息…次の瞬間。


ガァンッ!ガシャリッ、ガァンッ!ガシャリッ、ガァンッ!ガシャリッ、ガァンッ!ガシャリッ、ガァンッ!


ボルトアクションなので連射性は低いが、その分確実な動作性能はこちらの方式が上だと聞いた。
結果、150メートル先の的の頭部に2発、胴体に1発。更に、200メートル先の的の頭部と心臓部にそれぞれ1発ずつ命中する。

「………。」

それを無言で見届けてから一息。のらりくらりとまた狙撃銃を片付ける。
ついでに、コンソールを操作して的も片付けておきながら。

「……何というか……どうなってんるんだこれ…」

思わず、そんな呟きが漏れた。結局、初の狙撃で全部的に命中してしまった。

飛鷹与一 > 「……取り合えず帰ろう。何か疲れた……精神的に」

狙撃銃を仕舞い込んだボストンバッグを担ぎながら、最後に散らかってないか、忘れ物は無いかを確認してから立ち去ろう。
○○先輩に報告したら、そのままこの銃を持たされそうだなぁ、とか思いながら。
疲れたような足取りで訓練施設を一人後にする。

自称「凡人」の新米風紀委員が、自称「凡人」の天性のスナイパー…に、覚醒したかは…さて?

ご案内:「訓練施設」から飛鷹与一さんが去りました。