2017/04/02 のログ
ご案内:「訓練施設」にセシルさんが現れました。
■セシル > 年度始め。
「防御術式の習得後に正式に警備課配属」ということになり、セシルは実際に防御術式の実戦訓練を行うべく、図書館に本を返したその足で訓練施設にやって来た。
「えーっと…防御訓練の項目は…」
訓練スペースに入り、端末を操作する。
剣の鍛錬補助とは勝手が違うため、準備には少々手間取ったが…端末操作自体は、大分慣れたものだった。
■セシル > (…まあ、初級で良いか)
設定を終えると、訓練スペースの中央に立つ。
「付与・魔力《エンチャント・オーラ》」
まずは、サーベルを抜いてそれに魔力を纏わせる。
刀身に質量のあるサーベルの方が、セシルの扱う剣としてはまだ防御向きなのだ。
それに…防御術式も発動自体は大分こなれてきたが、全面を覆うのには到底及ばない。
………というか、セシルの覚えた防御術式は、セシルのような剣士が全面を覆うのには向いていないのだ。
「震える大気よ、我が守護となる壁をなせ…高周波振動壁(ソニック・ウォール)」
剣を構えたセシルがそう唱え、その背後に、振動する大気の壁が出現したのと、セシルの正面と右側から氷の弾丸が飛ばされてきたのは、同時だった。
■セシル > 風の元素というのは、大気そのものを司る。
そして、大気を「風」として動かすよりは、圧縮して扱うだとかした方が、往々にして他者への干渉に使うには効率が良いのだ。
風の元素魔術の派生のこの防御魔術も、そういった方法論の1つだ。
セシルが飛んで来た氷の弾丸を剣で砕くと、次の瞬間、背後から炎の球体がセシルめがけて飛ばされた。
…かつてなら無理に振り返って対応したが、セシルは動かない。
そして…炎の球体は、大気の壁にぶつかって、「砕けた」。
ただの空気の塊ならば止めて終わり…いや、炎を飲み込んでそのまま炎の壁とかしたかもしれない。
しかし、高周波の振動が加わることで、そのエネルギーが飛来物を破砕してしまうのだ。
肉弾戦を仕掛けてくる相手がこの空気の壁に身体を突っ込んだら、多分、凄く痛い。
■セシル > もっとも、セシルはよほどのことがない限り、近接戦闘の使い手にこの術式を使う気はない。
この術式でセシルが防ぐことを想定しているのは、剣では対応しきれない数の飛び道具である。
特に助けるべきものがいる場では、セシルの得意とする「回避」の手段がとりづらい。
そういう場面に対応するための、セシルの新たな手札だった。
「…ハッ!」
正面に飛んで来た炎の球体を、セシルは魔法剣で斬って捨てる。
■セシル > そして、背面から人の頭ほどの大きさの岩の塊が飛来する。
大気の壁は、当然それを破砕するが…
「………けほ、けほっ!」
破砕して出来た砂塵を、留めきることが出来なかった。軽く咳き込みながらも、セシルは、背面以外に飛来する電撃やらの処理を継続する。
…そうして、訓練が終了するのと、大気の壁が力を失うタイミングはほぼ同じだった。
■セシル > 「………ふぅ」
息を吐いて、軽く髪などについた砂塵を払ってから訓練スペースを出る。
いくら魔術により出現した物質はそのうち消えるとはいえ、気分として不愉快なものは不愉快なのだ。
(初級だから、砂塵が舞う程度ですんだが…勢いと質量を備えたものは、貫通されるのだろうな。
大気の壁の厚さか…あるいは、「圧」とでもいうものが足りないか…?
それに、立ち回りの中であまり「攻撃」の部分に悪さをさせないためには、もっと細かい制御が必要だ…)
自販機で缶コーヒーを買って、その場で立ったまま飲み干しながら、そんなことを考える。
(…魔術は奥が深いな…身体を動かす感覚ならば、間違いはないのに)
術式は一応効果があることを確認出来た点は収穫だったが…「守る」ために扱うには、課題もまだまだ多いことを認識させられてしまった。
飲み干した空き缶を、ゴミ箱に放る。綺麗な放物線を描いて、ゴミ箱に収まる空き缶。
■セシル > 身体は動かしたが、剣術そのものの「鍛錬」をしたわけではない。
そう考えたセシルは、気持ちの切り替えついでに再度訓練スペースに入り…今度は剣術の基礎鍛錬を行って、それから帰途に着いた。
セシルの警備課所属への道は、少しばかり長そうだった。
ご案内:「訓練施設」からセシルさんが去りました。