2017/04/27 のログ
ご案内:「演習施設」にステーシーさんが現れました。
■ステーシー >
腰に刀を二本差して演習施設を歩く。
…重い。サムライは長刀と短刀を持ち歩いたらしい。
けど黒刀と旋空は両方とも打刀サイズだ。長い。
今日は黒刀を上手く使いこなすために来た。
せっかく退院したのだから、好き勝手遊び呆けてもいい。
けど、腰の重さが現実を自分に刻んでくる。
黒刀を抜くと、紫電がパチリと空気に爆ぜた。
■ステーシー >
これは自分の刀ではない。
百鬼に会ったなら即座に突っ返すつもりだ。
でも、自分の腰にある刀のイロハも知らないのは、剣客として目に余る醜態だ。
この黒刀、退院した後に何度か振ったが、意外と素直な子だ。
プラーナ、つまり自分がこの世界に存在するための力を通すと。
「……はぁぁ…!」
黒刀が帯びる雷が紅に変化する。
力を貸してやる、と言っているのか。
あるいは冥府への誘いか。
「ま……仲良くしましょ」
ワイヤーフレームが人型をしたような、ヒトっぽい何かが目の前に浮き上がる。
演習用の仮想対戦相手というわけだ。
相手の想定は剣客。一から十まで百鬼憎しで動いているわけではない。
が、やはり意識してしまう。
目の前のヒトガタが刀を抜いた。
■ステーシー >
まずは刀を打ち合う。
刃毀れ一つさせても預かっている自分の落ち度。
慎重に、そして丁寧に扱う。
ヒトガタの連携は緻密だ。
攻撃力のない白刃という矛盾を孕んだ武器を振るうヒトガタの攻撃を時にかわし、時にいなす。
そして。
「まずは試す……鎧袖紅電ッ!!」
紅の電流を全身に纏う。
剣戟の速度、いってしまえば攻撃の威力が上がる。
一撃で防御ごとヒトガタを吹き飛ばした。
「いける……!!」
■ステーシー >
直後。
「……っ!!」
手に血が滲んだ。
鎧袖紅電のパワーに体が追いつかない。
毛細血管が破裂している。
斬りかかろうとした足にブレーキをかけて、プラーナで手の傷を消した。
「ううん……身を削る価値はありかなしか………」
猫耳をへにゃりと垂れ下げながら紅電を消した。
線と線で結ばれたヒトガタが斬りかかるのを後方にのらりくらりとかわしながら考える。
■ステーシー >
形質変化で膂力を上げる。
それもまた雷との付き合い方の一つかも知れない。
でも自分らしさはまた別にある気がした。
「なら、こう………迅雷紫電ッ!!」
紫電が黒刀を奔る。
イメージは、電流を神経に通す感じ。
紫電が視界をクリアにさせていった。
気付けば後退しすぎてもう後が無い。
背後に壁を背負い、なお斬りかかってくるヒトガタ。
その直前で―――――消えた。
迅雷紫電は反射速度と身体加速を目的とした技。
自分の身体能力と猫のしなやかさであれば、さらに加速していける。
ヒトガタの左右を跳び回りながら、幾重にも剣戟を重ねていく。
斬り削られていく線と線。
仮想敵であるヒトガタはたまらず距離を取った。
■ステーシー >
「バントライン一刀流………」
今の速度なら。今の神経なら。
師匠が使っていたあの技が使えるかも知れない。
後方に退いたヒトガタに向かって納刀。
深く身を沈めると、抜刀居合い。
真空の刃を飛ばした。
「神刀(じんとう)ッ!!」
そして、その真空の刃が相手に迫る直前に自分もまた前方に加速。
―――二の太刀のタイミングは、殆ど勘だ。
獣性と理性の狭間で追撃の刃を振るう。
「姫神刀(ひめじんとう)ッ!!」
真空の刃が相手にヒットすると同時に、駆け抜けて逆袈裟の刃を重ねた。
ヒトガタがX字に切り裂かれ、雲散霧消する。
「いや………あえて名付けるなら」
「雷震姫神刀――――」
黒き刃を納刀、ぱちんと音が鳴ると、スタッフの声がフィールドに響いた。
『ステーシーさん、状況終了です。速やかに退場し、負傷している場合には治療を――』
「はい、ありがとうございまーす」
そう感謝の言葉を告げて演習場から去っていく。
確かな手ごたえを感じながらも、これでもヤツに…
百鬼に届かないという確信めいた答えを自分の中に見つけ出していた。
ご案内:「演習施設」からステーシーさんが去りました。