2017/06/17 のログ
■美澄 蘭 > 訓練スペースに入り、端末を操作する。
今年練習しているのは照射魔術だ。
「これでよし………と」
照射魔術練習用の的を呼び出すと、蘭はその正面に陣取った。
■美澄 蘭 > 的に向けて手をかざし、魔力を練る。
「…えいっ!」
それから、気合の声と共に放たれた魔術は…炎というよりは、可視の熱線だった。
黄みを帯びた、バスケットボールの直径ほどの太さの光線が真っすぐ的に伸び…それが、5秒ほど続く。
その光線が消えた後には…
「………うん、いい感じ」
朱に染まりきった、水晶体の的があった。
■美澄 蘭 > (…でもホント、使う魔力も段違いだし、レーザーを保つのにも集中力使うから、連発は出来ないわね…。
的のリセットは良い切り替えだけど、それだけだとちょっときついかも。
…まあ、ゆっくりやりましょ)
端末のところにゆっくり向かい、的の状態をリセットする。それから、またマイペースに的の正面の位置に戻った。
「………。」
それに加えて、深呼吸を1つ。
蘭の練度では、そう簡単に連発出来るものではないのだ。…少なくとも、今はまだ。
ご案内:「訓練施設」に藤巳 陽菜さんが現れました。
■藤巳 陽菜 > 初心者に向けて書かれた魔術書を持って訓練施設にやって来たは良いものの…。
どんな感じで施設を使えばいいのか良く分からない。
始めるより前に他の人がどんな風に施設を使うのか少し見て回る事にした。
(あれは…。)
以前、会った事のある一人の先輩の姿が目に入った。
…レーザーで的を撃っている。
それが陽菜がこの島に来て初めて見た攻撃的な魔術だった。
「あっあの、美澄先輩。お久しぶりです。」
最後に会ったのはゴールデンウィークの前ぐらいだった気がする。
■美澄 蘭 > そうして、ゆっくり、ゆっくり、時間をかけながら、1つ1つの属性の照射魔術を確認していく。
水の照射魔術は強力な水流、風の照射魔術は衝撃すら起こしそうなほどの勢いで叩き付けられる空気の塊。
「…えいっ!」
…しかし、地の照射魔術だけは試行錯誤が必要だった。岩石でレーザーを作るのは無理がある。
最初は勢いのある「泥」で試してみようと思ったのだが、これを5秒レーザーとして真っすぐ保つのは、尋常じゃない集中力を要した。
そのため「砂嵐」のイメージで試してみたのだが…
「………照射魔術の後にしては、色が薄いわね」
水晶体のアースカラーは水の中に絵の具を滲ませたような、薄さだった。
「………あー、ちょっとくらくらする………流石に休憩ね」
間を空けつつとはいえ、何だかんだで10回くらいは照射魔術を行使している。
休憩のために訓練スペースを出たところで…見知った後輩に声をかけられた。
「…あら、陽菜さん。こんにちは」
「ちょっとやつれて見えるかしら?」なんて苦笑いする蘭の額には、うっすら汗が滲んでいる。その一方で、顔色はいつもより血の気が薄いようだ。
■藤巳 陽菜 > 「こんにちは。はい、結構疲れてるように見えます…。
…というか大丈夫なんですか?」
一気に魔術を使いすぎると疲労感があったり慣れてないと意識を失う事もあるらしい…。
最近読んだ初心者向けの魔術本に書かれていた知識だ。
「えっと、何を練習してたんですか?
あのさっきの何というか…ビームは?」
色の変化した水晶体の方を眺めながらそんな事を尋ねる。
■美澄 蘭 > 「ちょっとね…まとまった時間練習頑張ろう、って思うとやり過ぎちゃうことが結構あって…前よりはマシになってるんだけど、なかなか学習しないわ、私。
少し休めば治るから、大丈夫よ」
「新しく覚えることって、すぐ試したくなっちゃうから」と苦笑い。
それから、休憩スペースにあるベンチに腰掛けて。
「ああ、コゼット先生の元素魔術の実技の練習よ。
照射魔術…ビームというかレーザーというか、そんな感じね。出したのを維持するの結構しんどいから、あんまり初心者向けじゃないかも」
と、自分の練習内容をさらっと説明する。
椅子にかけて身体の負担を減らすだけでも、状態は幾分良くなって見えた。
■藤巳 陽菜 > 「集中しすぎちゃう感じなんですね。
…私はついダラダラやっちゃうタイプなのでそれよりはいいとおもいます。」
新しい事を試したくなるというのだけは同じだけど陽菜には計画性が欠けている。
新しい事をやる事に追われてやるべきことが出来ていない感じがする。
そして、目標があまりにも大雑把すぎる。
「元素魔術…。あの炎とか水とかの奴ですよね…。
見たのは今日が初めてですけど…あのビーム何に使うんですか?
美澄先輩もやっぱり何かと戦ったりするんです?」
手をスペース内のターゲットに向けてみたりする。
…当然手からはなにも出ない。
「あっ私はこの初心者用の本の中身を試しに来たんですよ。
私も美澄先輩に勧められてから魔術の勉強はじめましたからね。」
■美澄 蘭 > 「そう…周りのことも、よく見えなくなっちゃったりするのよね。
気をつけてはいるんだけど…やらかしてから反省することばっかり」
努力を継続する力ならば、蘭は一端だろう。計画性も、まあ悪くはないと思われる。
…ただし、スイッチが入ったときの過集中というか過熱中というか。自分のそういった部分を、蘭は扱いにくいクセのようなものと認識しているらしかった。苦笑いが強くなる。
「そう、炎とか氷とか…私は、本当は雷が一番得意なんだけど。
………何に使う、ってわけじゃないんだけどね。護身術には過剰気味だし。
ただ、自分がどこまで出来るのか試してみたいのと…そうして試すことを望む、協力者がいるってだけ」
あれだけの力を行使しながら、積極的に何かと戦う予定はないらしい。
そうして陽菜と雑談している過程でも、蘭の顔色は少しずつ血の気を取り戻していくようだった。
「あら、魔術の勉強始めたの…思い切ったのね。
初心者向けって…具体的にどんな感じ?」
「本、見せてもらってもいい?」と陽菜に尋ねるその瞳は、顔色がまだ万全でない顔の中にありながら、好奇心できらきらしているだろう。
■藤巳 陽菜 > 「集中力がありすぎちゃうタイプなんですね。
何というかそんな感じがします。」
かなり、真面目でいけるところまで追求するイメージ。
その真面目さが良くも悪くも集中力に繋がるのだろう。
「…これ人に当たったら死にますもんね。
じゃあ、スポーツ競技みたいな感じなんですね。
どこまで記録を伸ばせるか…みたいな。」
そう言う風な感じならきっとこの目の前の先輩とは相性が良いように思う。
きっと、この人なら自分が限界だと感じるまではやる気がする。
「えっと、本当に初心者向けですよ?」
手に持っていたのは二冊。
一冊目は平仮名で「よくわかるまじゅつ」と書かれた明らか小学生向けのカラフルな表紙の本。
よく見れば図書館で借りてきたものである事が分かるだろう。
もう一冊『魔女入門』そんな風に書かれたのは本というよりは紙の束。
授業で配られるプリントをまとめたみたいな手作り感あふれるもの。
■美澄 蘭 > 「あり過ぎ………っていう言い方で良いのかしら。
ついつい自分基準で考えちゃうから、よく分からないのよね」
苦笑いが柔らかくなる。この少女、自分が「真面目」だという認識すら希薄なのだ。
「魔術の素養があると、それで防いだりとかも出来るらしいんだけど…人に向けるものじゃないわよね。
魔力をどこまで制御して、形に出来るかを成績にしてるイメージかしら、基本的には」
苦笑い気味ながらも、「やってる人はやってるんだけどね、戦闘訓練みたいなの」と、何物騒なこともさりげなく付け足す。
「初心者って言っても、分野は色々でしょう?
私があんまりやってない分野かもしれないじゃない」
楽しげにそう言って、陽菜が手にしていた教本を覗いてみる。
「よくわかるまじゅつ」と書かれた、子ども向けと思しき教本は…物を浮かせて動かしたりだとか、安全な明かりを灯したりだとか、生活に役立ちそうな魔術の、難易度の低めのものが選ばれて掲載されているようだった。
蘭がかつて受けていた講義だと、魔術学概論が分野としては近いだろうか。難易度は非常に差があるが。
そして、もう1冊の方は………。
「………魔女入門?」
「魔女」というワード自体は、お年頃の少女たる蘭にはなかなかときめくものがあるものの。
…先ほどの教本とはうってかわって、手作り感溢れる紙の束だったのがかえって目を引いた。大きな目を丸くして、ゆったり気味のまばたきを2つ。
■藤巳 陽菜 > 「凄いですね魔術本当に漫画みたい。」
撃ったり、防いだり漫画でよく見た光景がまさか本当に存在しているとは…。
…あまり撃ったり防いだりするような事に関わりたくはないけれど
防ぐものぐらいは作れた方がいいかもしれない。…安全のために。
「えっと、これが簡単な魔術が幾つかとあと仕組みとかが書いてる本ですね。
はい、こっちの魔女入門が、師匠が纏めてくれたやつです。私専用の本なんですよ。」
自慢気な様子で見せる。
伝統的な魔女の魔術や魔法薬の作り方。
儀式などの行い方や守るべきルール。
炎や風を使役する魔術の中でも使いやすいもの。
そんな風な事が記されている。
魔女の格好をしたデフォルメのキャラが分かりやすい解説をしてくれたりしている。
丁寧で分かりやすいまさに入門書といった内容の本だった。
「…あげませんよ?貸すのもなしですからね。」
■美澄 蘭 > 「漫画とかみたいなことが本当に起こりうるのが、この島だしね。
危ないところは、私もむやみに突っ込みたくはないんだけど」
そう言って、少しだけ悪戯っぽく笑う。お姉さんっぽさとでもいうべきものが、表情から気持ち薄れたように感じられるかもしれない。
「やっぱり、生活に役立てるのがメイン、って感じなのね。
…あら、勉強始めたばっかりなのに、もうお師匠様がいるの?」
自慢げに語り始める陽菜の様子を、こちらも楽しげに見やりながら、ざっくりと「魔女入門」の中身を見ていく。
蘭にとっては馴染みの薄い、儀式などの伝統的な魔術を中心に、丁寧に分かりやすく解説された…手作り感溢れる外見とは裏腹に、よく出来た教材だった。
「…陽菜さん専用のものなんでしょう?横取りするほど欲張りじゃないわ。
でも…こういう伝統的な形式の魔術はあんまり勉強してこなかったから、ちょっと興味わいちゃうわね」
「図書館で関連分野の本探してみたいけど、しばらくは忙しいかしら」と、ちょっと困ったような、でも楽しげな笑顔を浮かべる。
■藤巳 陽菜 > 「そもそも私のこの姿が一番漫画というかフィクションみたいなんですけどね。
…いや、この島だとちょっと一番じゃないかな?」
この下半身にも少しずつ慣れてきた。
認めるつもりはないし絶対もとの身体に戻るがそれはそれとして…。
この島ではそこまで特別珍しいものでもないという事が分かって来た。
「ええ、魔術の勉強を始めようと思った時に丁度。
見るからに魔女って感じの人がいて…その人が丁度後継者を探してて…。」
…自分で言っててなんだけど凄い偶然、仕組まれてるんじゃないかとかって心配になる。
でも、そんな事をする意味はない。
「えっと、ミザリー先生って知ってますか?魔女の格好をした先生なんですけど…。」
あまり授業はやっていないと言ってたからもしかした知らないかもしれない。
「多分、こういう風な昔の伝統的な魔術の方が元の身体を取り戻すのにも近いと思うんですよ。
いや、そんな感じがするだけで実際は分からないんですけど…。」
魔術はあくまで手段に過ぎない。
元の身体を取り戻すための手段の一つ。
■美澄 蘭 > 「…そうね…この島だと「一番」って決まらない気がするわ。
本当に、色んなヒトがいるもの」
くすりと、邪気のない笑みを零す。
「ヒト」という言葉に、この世界でいう「人間」以外のものも内包するつもりで発した少女の意図は、通じるだろうか。
「…魔女の、後継者…。
伝統的な魔術ってことも合わせると、何か凄そうね。私もそういう世界はあんまり詳しくないんだけど…」
そう言う蘭の顔は、少しばかり真面目な思案顔。
儀式の作法やら何やら、伝統芸能に近い重みを感じるのだが…そこで継承されるのは「力」なのだ。学園で普通に講義として開かれている魔術を学ぶのとは、重みが違う印象を蘭は受けていた。
「………魔女の格好をした先生、か…コゼット先生もそれらしい帽子は被ってるんだけどね。
私も、魔術は基本的に人間関係の繋がりで履修してるから…知らない先生は全然知らなくて」
「ごめんなさい」と、ゆるく首を横に振った。
「…でも、そうね…昔から言い伝えられる「魔女」のイメージだと、変身なんかもお手のものって感じだし…私が勉強してる分野よりは解決に近そうだわ。
………上手く、いくといいわね。色々と」
最後には、そう言って優しく笑んだ。
■藤巳 陽菜 > 「そうですよね、私なんかは見た目からですけど…。
中身だけでも変わった人多いですからね。」
その一言に込められた意味に陽菜は気づかない。
気づかないままに陽菜が返した人は「この島の住人」という意味での人。
自分も含めての「この島の人」当然異種族なんかも含まれてくるだろう。
「…私もまだ全然分かってないんですけどね。
何か凄そうっていうのには全く同意見です。」
結局、何をするのか未だ教えて貰えていない。
何を継げばいいのかとか詳しい事はこの入門書にも書いていない。
師匠はなんで後継者を必要としたのだろう?
「そうですよね、でも…問題があって。
なんか禁術らしいんですよ変身魔法…伝承されてないらしいんです。
師匠が言ってたので詳しい事は分からないんですけど。」
少し躓いてしまっているが師匠も元に戻すために頑張ってくれているし
事態は良い方に進んでいる。
「ええ、ありがとうございます。上手くいくように頑張ります。」
その微笑みに対して自然に微笑み返して頭を下げる。
そう、頑張ろう、頑張らなくては。とりあえずはこの本に載ってるものの練習から。
「えっと、練習の邪魔しちゃってごめんなさい。
また、魔術の事とか他にも色々教えてくださいね。」
そう言ってもう一度頭を下げると陽菜は別の練習ブースへと向かうだろう。
■美澄 蘭 > 「…色んなあり方、考え方のヒトがいるものね。見た目だけじゃなくて」
概ね、蘭の意図は陽菜に伝わったらしい。
すれ違いに頓着するでもなく、くすりと笑った。
「…そういう話、最初にした方がいいと思うんだけどね」
後継者となる本人も理解出来ていないというのに、危ういものを感じて、ちょっとだけ渋い顔。
…が、変身魔法が禁術と聞くと、目を丸くして。
「…あら、そうなの?
昔読んだ古典ファンタジーだと、動物に変身出来る魔法使いはお役所か何かに登録しなくちゃいけなかったはずだけど…そういう社会的な問題か…それとも、もっと別の問題なのかしら?」
と、顎に指を当てて思案顔。
「ええ…私で助けられることなら手伝うから、何かあったら声をかけてね」
頭を下げられれば、人の良さそうな笑みで応える。
「それに…丁度良い休憩になったから、気にしないで。
…陽菜さんも、頑張ってね」
練習ブースに向かう陽菜を見送り、もう少し休憩をしてから…蘭も、魔術の練習に戻っていく。
進度も、やることも全く違う女生徒二人。
それでも、前を向く意思だけは、通じ合うものだろう。
ご案内:「訓練施設」から藤巳 陽菜さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から美澄 蘭さんが去りました。